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モニカ・エヴァレット

登録日:2025/12/01 Mon 20:51:59
更新日:2026/07/09 Thu 10:51:11
所要時間……や、約 20 分で、読めます...っ


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「むっ、無理、ですっ! どうしてわたしが……っ」

モニカ・エヴァレット(Monica Everett)はライトノベル「サイレント・ウィッチ」の主人公。
CV:会沢紗弥


●目次

■概要

リディル王国における魔術師の最高峰〈七賢人〉の一人であり、世界で唯一無詠唱魔術を行使する。二つ名は〈沈黙の魔女〉
その功績に加えてほとんど人前に姿を見せないことから神秘的な超然とした人物というイメージを持つ者もいるが、その実態は超絶人見知りかつ対人恐怖症。その性格故、人里離れた山小屋にて難解な魔術式や数式の計算仕事を請け負っていた。
ある日、七賢人の同期であるルイスによって「第二王子を本人にも気づかれずに護衛する王命任務」への参加を強要……もとい要請される。
断り切れなかったモニカは、王侯貴族の子女らが通う名門校セレンディア学園に正体を隠して「モニカ・ノートン」として潜入することになった。
本編開始時16歳。

「いやだよぅ、怖いよぅ……うっ、うっ……胃がキリキリするぅ……」
*1


■人物

「山小屋帰りたいよぅ〜……どうせわたし、無能な引きこもりだもぉん……」

前述の通り極度の人見知りであり、人前で口を開くのにすら難儀する。
頑張って開いたとしても吃音ったり詰まったり、噛んだりする事が多い。酷い時には緊張の余り吐いたり卒倒する事すらある。
そこまで行かずとも気の弱さから奇声染みた悲鳴を上げたり物陰に隠れると言った挙動不審は日常茶飯事。

作中でも不審者扱いされた時や正体がバレそうと思った時は勿論、単に生徒会室の扉をノックしようとしただの強面の男性教諭に声をかけられただの些細な事で都度奇行を晒す。
そう言った小動物染みた言動を「子リス」と揶揄われることもあり、フェリクスに意表を突かれた際に「殿下」が言えず「でんでん」を繰り返すのはお家芸ですらある。
「でででででで、でんっ、でんっ、ででんっ……」「うん、小気味良いね」


無詠唱魔術も、人前で魔術の詠唱ができないため極力口を開かずに済むよう短縮詠唱を習得しようとした際に、その類稀な計算能力が開花して実現に至った。
その偉業や〈七賢人〉という立場から名前の知名度は高くなってきたものの、容姿については殆ど知られていない。
と言うのも式典では常にフードを目深に被り、自身の研究発表をするような学会でも論文だけ提出して全て欠席しているため。*2
普段から人目を気にしているのも警戒心や恐怖心からくるもので、自己顕示欲は限りなく低い。

その為〈七賢人〉の地位や肩書にも余り執着はなく、七賢人の証として支給された杖を物干し竿代わりにしている始末。
相応に高額な給金にも殆ど手を付けていないらしい。
とは言え半ば無理矢理巻き込まれた任務だろうとやるからには真摯に取り組むだけの責任感や、
誰かに頼られたら役に立ちたいと言う人並みの意欲は持っている。
作中は殆どの場面で素性や能力を隠しているが、この辺りの真面目さや一生懸命さが次第に周囲に認められるきっかけとなった。

当初こそ「人のいない山小屋で数字と向き合ってさえいればそれで良い」と言うスタンスで、積極的に人と関わろうとはしなかった。
むしろ関わることで人に迷惑をかけたり手間をかけさせることを極度に恐れ避けてすらいた。
だが仮初の学園生活で学友に恵まれた事から、徐々に彼らの役に立ちたいと言う前向きさを見せていく。
こうした意識の変化は、鍵かけの引き出しに仕舞った「大切なもの」が増えて行くと言う形で間接的に表現される。
それに伴って本人も少しずつできる事が増えて行く成長が作品全体を通して丁寧に描かれており、本作の一番の見どころと言っても過言ではない。


不完全な数字や数式、魔術式を目にすると露骨に目を曇らせる一方、優れたそれらを見ると目を輝かせる。「黄金比、なんですっ!」
更に数字を使った作業に没頭すると過度に夢中になる悪癖があり、ひとたびそうなるとどれだけ声をかけられようが引っ叩かれようが止まることはない。
これは過度なストレスを受けた時も同様で、他者の言葉を全て数字の羅列にしか感じられなくなってしまう。
この状態になったモニカは、猫の肉球のような柔らかい物でタッチされた時に漸く我に返る。「聞いて、ネロ。殿下には…………肉球があるの」「ねぇよ」

これらの気質は幼少期の環境により形成されたもの。経緯を考えれば周囲や社会を恨んでもおかしくない境遇である。
そんな中で彼女は恨みや怒りと言った外向きの発散ではなく、他者への失望と自分の中にある数字の世界への逃避、自己肯定感を著しく下げると言った手段で精神を守ってきた。
故に人間不信を拗らせている割には自衛のためだけに他者に危害を加えるようなことはなく、
それどころか任務の為とは言え周囲を欺く事に強い罪悪感を覚えるなど、極めてまっとうな倫理観を持ち合わせている。

「……わたし、今日、いろんな人に、親切にしてもらったの」
「本当は、ちゃんと、ありがとうございますって、言いたかったのに……」



■容姿

非常に小柄で更に凹凸も少なく、本編時点では十代前半と見間違われる程。当然ながらまな板完備。
これは成長期に栄養失調が1年程続いたことと、その後も日常的に食事や睡眠を疎かにしている事に起因する。
薄茶の髪は肩よりも長いが普段は雑に三つ編みにしている。清潔感は人並みにはあるようだが身だしなみと言う観点では無関心。
本編開始後は友人であるラナにヘアスタイルを教わり、サイドの髪を細い三つ編みにして後頭部の低い位置でひとまとめにしていることが多い。
いわゆるアホ毛も装備しているが、小説1巻の表紙絵等フードを被っている場面では目立たなくなる。
瞳は髪と同じく薄茶色だが、光の加減によっては緑色が混じる。

容姿に関しては周囲の人間に褒められる場面は少なく、自己評価も低い上に何なら地の文でも度々「地味で冴えない」「ちんちくりん」と書かれる始末。
非モテ女性主人公にたまにあるような「素材は~」とか「脱ぐと実は~」みたいな逆転ホームランは残念ながらない。
とは言え目が大きく丸いため、「笑えば人並みの愛嬌はある」とされる。前述の性格故に人前で笑う事は余りないが、だからかたまに見せる彼女のへにゃりという笑顔に魅力を感じる友人は多い。*3*4

普段は衣服に隠れて見えないが肩から背中にかけては複数の古傷が残る。詳しくは後述するが父の死後~養母に引き取られるまでの間につけられたもの。
今は痛みや行動に支障もないため本人はあまり気にしておらず殊更に隠そうともしないが、周囲のリアクションからするとかなり酷く残っている模様。*5
体型等も以前は気にしていなかったが、セレンディア学園での交流を経て「幼児体型」等と言われると軽く凹む程度には気にするようになった。

「そ、そんなに、幼児体型、幼児体型って言わなくても……」



■能力

  • 無詠唱魔術
世界で唯一の使い手にして、「難解な数式の解を途中式を用いずに導き出す」が如き神業。即ちその本質は人間離れした計算能力にある。
この世界における魔術は、精霊や竜に比べて魔力操作の不得手な人間が、魔術式と言う数式に近い形で魔力のコントロールを試みて編み出したもの。
その為毎回のように座標、出力、形状、方角、速度etc相互に絡み合う複雑な計算を詠唱に乗せて初めて行使が可能となっている。彼女はこの計算が恐ろしく早い。
その上、多重強化・遠隔・追尾・魔力節制と言った追加術式を盛りに盛ってその代償を詠唱に押し付けたうえで、0は何倍しても0と言わんばかりに全部踏み倒しているチート技能。

+ 更に詳しく
発動に際しては詠唱は勿論、予備動作や杖のような道具も不要*6。探知魔術等と併用して発動場所さえ明確ならば視界に収める事すら必須ではない。
これにより魔術発動自体を周囲に悟らせることなく行使が可能な上、風魔術のような目に見えないものなら自然現象と誤認させることもできる。
極めて静粛性・隠密性に優れた技能であり、(術者本人の気質や運動能力を度外視すれば)潜入や暗殺にうってつけと言う特性を持つ。

攻撃だけでなく防御面においても「結界魔術を必要最低限の持続時間で断続的に張る事で魔力消費を抑える」
「結界魔術を二重に展開し、片方が割られたら即座に無詠唱で再構築することの繰り返しで減衰させ、最終的に戦略級の魔術すら無力化する」と言った形で応用が利く。

なおこの無詠唱魔術は多くの魔術師が尊敬し褒め称えているが、当の本人からの評価は低い。曰く「発動が速いだけ」「魔導具と大差ない」とのこと。
実際は前述の通りかなり応用が利く上、魔導具とは込められた魔力が桁違いなのは間違いない。
恐らく本人の性格による自己評価の低さや卑屈さも混ざっていて必ずしも客観的評価とは言い難いと思われる。

  • 魔術属性
得意属性は風属性で、王国内でも数えるほどしか使い手のいない高等魔術「風の精霊王召喚」を杖の補助なしで行使できる。*7
緊急時に咄嗟に使う魔術も風属性が多く、風魔術は不可視なこともって本編の隠密任務においては使いどころは多い。
その上で風以外の魔術もかなり高度なレベルで扱え、切羽詰まってなければ状況に合わせて使い分ける。一見地味なことだが作中の他の魔術師は大抵自分の得意属性で何とかしようとするため、モニカ程のオールラウンダーは珍しい。

  • 魔力量・魔力操作・魔術式理解力
魔術師の能力を示す3要素のうち、魔力量と魔力操作は七賢人の中では平均的*8だが、魔術式の理解力に関しては七賢人含めた王国の中でも第一人者。
ミネルヴァ在学時代つまり十代前半までに既存の魔術式をほぼ解読、魔術教本に記載される魔術の三割に影響を与え、魔術講師曰く「近代魔術のセオリーをひっくり返した」と評される程。
作中でも他人の発動した魔術をリアルタイムで書き換えて主導権を奪ったり、ルイスが1か月かけて設置した結界をわずか1分でトラップ含めて解読し作り変えると言った芸当の他、潜入任務の傍らで新作の魔術式を発表している。
挙句これら新作魔術式の論文は、教本が書き換わるレベルのものを年1かそれ以上のペースで発表し続けているらしい。*9

論文はその内容もさることながら、理路整然とした文章も含めて評価が高い。何かと辛辣なルイスやクローディアをしてこの論文に関しては手放しで褒めている。
実際短編集では彼女の書籍で勉強して短期間で短縮詠唱を会得した学生もいるので、高度なだけでなく分かりやすいようだ。

+ ただし欠点がない訳でもなく…
天才肌によくある拘りが強いタイプで、魔術式単体での美しさや効率性に執着しがち。
具体的には術式分割*10に強い抵抗感を示す。なんでも分割の際に追加される式が余計なものに見えて仕方ないらしい。
だがこの世界の魔術式は魔力操作や習得難易度、役割分担を考慮すると分割した方が実用性が高い事も往々にしてあり、そう言った問題にぶち当たるたびに苦悩や挫折を味わっている。
そもそも自身も四重強化相当の魔術行使には分割しないと魔力操作が追い付かないのが実情。
四重強化を使用する際には無詠唱のまま二分割して行使し、その後己の不甲斐なさに自己嫌悪に陥るまでがセット。

  • 運動能力
壊滅的。地の文でも度々「鈍臭い」と記載され、バランス感覚がなく何もない所で転びかけるほど。
運動不足・栄養不足・睡眠不足の三重苦で人並みの体力もなく、走る様は「ボテボテ」、全力疾走をしても「ボッテンボッテン」、挙句すぐにスタミナが尽きて「ボテェ、ボテェ」などと表現される。
そもそも健康体と呼べるかも怪しい。医師であるロザリー・ミラー夫人からは初対面で「栄養失調の患者」扱いされていた。
ミラー家での生活指導と嫌でも規則的になる学園生活によって多少はマシになったものの、何かと事件が起きる度に睡眠時間や精神が削られている模様。
主な舞台となるリディル王国では身体操作や強化魔術がほぼ全面的に禁じられているため、他作品にあるような魔術による底上げも期待はできない。

  • 飛行魔術
Web版と書籍版以降で扱いが異なるので特記。
本作の飛行魔術は風属性魔術の範疇でありながら、繊細な魔力操作とバランス感覚が必要な高等魔術である。
モニカの場合魔術要素は問題ないのだがバランス感覚が壊滅的に悪いので苦手と言うのはいずれの媒体でも共通。
Web版では一貫して「使えなくはないが苦手」で、バランス感覚がそこまで要求されないただの大ジャンプや短距離直線飛行ならば何とかこなせると言う位置づけ。
一方書籍版では、序盤は「使おうともしない」レベルだったが、学園で友人に勧められて受講した乗馬のコツを応用し、本人の向上心もあって徐々に上達していく。
最終的には杖やホウキのような棒状のものを軸にそれなりに自由に扱えるようになると言う、モニカの成長を表す一要素として描かれている。

  • 算術・計算能力
数字や算術には滅法強く、一目見た数字は忘れない上に会計書の改ざんなどは瞬時に見抜く。
必要ならば人の顔や体型を長さと角度に変換したり、王国史のような数字の絡みにくい勉学も独自の法則で数字に変換することでいくらでも覚えられるらしい。
カードゲーム等をやらせると意識せずともカウンティングが出来てしまうため、それなりに運が絡むゲームでないと勝負にならない。
チェスも無数とは言え有限のパターンの中から最適解が計算できることから、僅か2週間で学内ではほぼ敵なしとなった。

物体や地形の長さや角度、距離を目測でかなり正確に測れる。
前述の数字の記憶力と併せて人の顔や体型を長さと角度に変換して記憶する、遠隔魔術行使の際に発動座標を割り出すと言った形で応用が利く。
+ 更に詳しく
作中殆どの魔術師が手元で発動させた魔術を投擲や射出と言った形で攻撃に転じるのに対し、モニカの場合はこの空間把握能力の高さと計算の速さ、
そして無詠唱による発動ラグの無さを活かし、遠隔術式を使って目標の眼前で発動させそのまま直撃させると言う手法を好む。
これにより動きの速い翼竜の眉間を20体以上一度に貫く、相手の魔術発動を見てから後出しで叩き落すと言った芸当が可能となっている。

  • その他
家事全般は苦手。養母がドが付く家事音痴なのと、本人にあまり興味がないのが理由。食事も栄養摂取と割り切っている上、研究に夢中になると睡眠時間も含めて疎かにしがち。
干し肉や干し魚をただ茹でただけの戻し汁を「お肉のスープ」「お魚のスープ」と呼んで憚らない。
同居しているネロからはよく苦情が上がるし、本人も美味しいものを食べて感動する感性は持ち合わせているのだが、
自分で作ろうとすると材料の計量までは完璧にしておいて、火加減や煮込み時間等が一般的な感覚とズレて台無しになる。これは養母に似た模様。
また整理整頓に関しては本人にしか分からない「数学的に優れた並べ方」で並べる悪癖がある。

記憶力はよく、そのお陰か他人に興味がない割に結構細かい所や些細な変化にも気づく。
本作は部分的にミステリーのような展開もあり、そういった場面で発揮される。
ただし人の感情の機微に疎いため、その変化の意味は分っていなかったり勘違いしている事も少なくない。



■関連人物

◆ネロ
モニカの使い魔。黒猫の姿をしているが人語を解し、時に姿を変え青年の姿も取れる。
序盤のモニカは相談相手もいないので、彼がその代わりを務める場面が多い。
猫の姿で自然にフェリクスの近くにいたり、魔力の流れを感知する能力を活かして不審な魔力の流れを見つけたらモニカ知らせると言った形で護衛任務サポートしている。
作中を通してさも付き合い長そうな雰囲気を出しているが実は知り合ってまだ数か月程度だったりする。

◆ラナ・コレット
セレンディア学園で初めてモニカに声をかけたクラスメイト。
服飾やお洒落に詳しく、元々世話焼きな性格もあってそういったことに余りに無頓着なモニカを気に掛けるようになる。
嬉しいことは一緒に喜び、美味しいものは共有しあい、友人の才能を妬まず誇ってくれる彼女の信条はモニカの(主にバーニーのせいで)歪んだ友人観を改めてくれた。
特に中盤に差し掛かるところで何気なくかけた一言は、後のモニカにとって大きな行動指針の一つとなる。

◆シリル・アシュリー
セレンディア学園生徒会の先輩。自信家であると同時に自分にも他人にも厳しい人物で、何かと卑屈で小心者のモニカとは相性が悪いようにも見える。
だが実際の所は、モニカはシリルの自信の裏にはたゆまぬ努力があることを知って密かに尊敬しているし、
シリルもモニカなりに一生懸命成長や改善をしている姿を認めているので、生徒会活動での接点が増えるにつれて打ち解けていく。

◆フェリクス・アーク・リディル
護衛対象にして黄金比の人。モニカが只者ではないことは割と早い段階から見抜くものの、それを踏まえてみても普段の彼女が余りにポンコツ無害であるため、揶揄いつつ様子見をしている。
ただ接していくうちに何かしら思う所があったらしく、執着とは言わないまでもただの関心以上の肩入れを見せるようになる。
コールプラトンの祭りで出会った際には「夜遊び仲間のアイク」を名乗り普段とは違った一面を見せ、以降は秘密の共有仲間と言う関係にもなった。
実は〈沈黙の魔女〉の大ファンであり、夜遊びの際にそれを明かされてからはモニカの胃痛の種が増えている。

◆ルイス・ミラー
七賢人の同期。モニカにとっては初対面以前からの恐怖の象徴であり、何かしら失態を犯したと自覚した際には脳内ルイスが高笑いしながら罵倒を浴びせて来る。
実際七賢人の就任式典では、人前で使い物にならないモニカに対してまさしくスパルタ特訓でどうにか乗り切ったと言う経緯があり、決して彼女の被害妄想ではない。
とは言えモニカとしても式典の件では恩を感じているし、罵倒の裏に敵意がないのが分かるのかルイスの言動によって心的外傷を抉られることは滅多になく、むしろタチは悪いが結果的に叱咤激励になっている事が多い。
実際ルイスの方も容赦こそないがモニカの能力は高く評価している。
ただしルイスは知り合った頃の性格や態度を見て「人間不信であること」をある意味無詠唱魔術の隠密性以上に護衛任務向きと考えていたが、実際の彼女は心を開いた相手には結構絆されやすい性格である。

◆イザベル・ノートン
学園内で数少ないモニカの正体を知る協力者。黒竜騒動ではモニカに領地を救われた事で多大な恩義を感じており、その為ルイスから援助の申し出があった際には二つ返事で承諾したとのこと。
実家のケルベック伯爵家は王族や公爵家でも迂闊に口を出せない大貴族であることを活かして、表ではモニカを虐める悪役令嬢を演じつつ裏では適格なサポートをしてくれる。
モニカの方はイザベル達に必要以上に迷惑をかけたくないと考えているが、イザベルの方はサポートの過程で自身や伯爵家が周囲に疎まれたり恐れられる事も覚悟済み。
その為時には大胆とも言える手段を取る。ルイスの提案した設定に手を加えてモニカがノートン家の一員である(=他貴族が迂闊にちょっかいをかければ報復の理由にできる)と言う形にしたのもその一環。
なお任務とは無関係に〈沈黙の魔女〉の大ファンその2。

◆ケイシー・グローヴ
ラナの次にできた友人。快活で物怖じしない上に面倒見がよい性格なため、モニカと打ち解けるのも比較的早かった。
モニカの周囲には何かと癖の強い人物が多い為、彼らの間を取り持つことが多い。
+ ネタバレ注意
実はケイシーはある目的の為に生徒会役員と分かっていてモニカに接触し利用しようとしており、モニカも割と早い段階で感づいていたが関係を崩したくなかったため黙っていた。
ただしその関係の中に友情がなかったかと言われれば決してそんなことはなく、立場を違えた別れ際に不器用ながらも再確認する場面は、モニカの変化と成長を描く名シーンの一つ。
なお書籍版ではケイシーが馬術に誘わなければモニカが飛行魔術を習得する事はなく、それによって解決できた事件も変わるため王国の命運は大きく変わった可能性がある。

◆バーニー・ジョーンズ
モニカがミネルヴァ在学時代に初めてできた、そして唯一の同年代の友人。
それはバーニーにとっては自尊心を満たすための歪な関係であったが、それでもモニカにとってはかけがえのない友人だった。
だがモニカが突如として開花させた無詠唱魔術と言う才能に彼が激しく嫉妬し、一方でモニカの方はそのことに全く無自覚のまま接してしまった事でその関係は崩壊する。
バーニーから放たれた拒絶の言葉はモニカにとって酷く重い楔となり、開きかけた心を再び閉ざすきっかけとなってしまった。

◆ヴェネディクト・レイン
モニカの亡父。博識で医学や数学、魔術学など多方面に精通していた。無詠唱魔術に至るモニカの計算能力のルーツも彼にあると思われる。
人格的にも優しい人物でモニカも非常に懐いていたが、禁術を研究していたと言う告発を受け処刑されてしまった。
今でもモニカの中には亡父の言葉が強く残っており、行動指針の一つともなっている。
寮の屋根裏部屋に持ち込んだコーヒーポットは唯一の遺品であり、モニカが鍵かけの引き出しにしまう「大切なもの」は当初このポットのみであった。
なおアニメ本編のナレーションは、ヴェネディクトの声優と同じ宮本充があてている。


◆モニカ・ノートン
今から数年前、ケルベック伯爵領にある某修道院に身寄りのない哀れな娘がいました。
そんな哀れな娘に、ケルベック前伯爵夫人は亡き夫の面影を見出し、娘を養女にします。娘は前伯爵夫人に可愛がられて幸せに育ちました。
しかしある時、高齢だった夫人は病に倒れ、帰らぬ人となってしまいます。
後見人を失った娘は伯爵家に疎まれ、伯爵令嬢の使用人としてこき使われました。
そしてその伯爵令嬢がセレンディア学園に入学することが決まると、娘も伯爵令嬢の世話係として一緒に編入させられることになったのです。

「か、可哀想……」

「はい、この可哀想な娘が貴女の役です。」

「……はい?」


……と言う設定にて伯爵令嬢イザベルと一緒に編入することになったノートン家の養女。イザベルから見ると義理の叔母にあたる。
これはケルベック伯爵家と言う大貴族の末席に居ながら16歳になるまで社交デビューしていなかった事や、社交界や礼儀作法に疎いくせに読み書き等は問題なくできると言うモニカの実情に即したカバーストーリーとなっている。
なおファーストネーム「モニカ」を変更しなかった件については作中においては特に言及はなく、地の文で「王国ではモニカと言う名前は珍しくない」と示唆される程度。
もっとも、ただでさえ対人経験値が圧倒的に不足しているので、馴染みのない名前を呼ばれた際に反応がいつも以上に不自然になりそうなのは十分に予想できるところではある。

ちなみにもともとルイスが持ち込んだ設定は「令嬢の世話係で伯爵家の鼻つまみ者」程度のもので、ここまで設定を盛ったのはケルベック伯爵家によるもの。
同時期王都で流行していたダスティン・ギュンターの娯楽小説*11の影響により脚色されたと言う面もあるが、
  • これだけ複雑かつ厄介な事情なら他の大貴族や王族から迂闊に深入りされない。
  • 万が一モニカの身に危険が迫った際に、ノートン家の一員として扱う事で伯爵家が干渉できる。
と言う思惑も込められている。
+ (ネタバレ注意)
実際作中ではこれらの目論見は完全に機能しておりフェリクスやシリルがケルベック伯爵家に口出しする事はなく、逆にモニカに危害が及んだ際には主犯に対してあからさまな報復を行ってけん制した。
もっとも前者に関しては、モニカにできた友人達の前ではいじめ演技を行わなかったと言うイザベルの立ち回りの上手さもある。

ただ冬至休みに偵察に来た他領の密偵に対して領民と口裏を合わせ代役を立ててまで演技をすると言った妙な拘りを見せる一方で、出身の修道院が決まっていなかったりモニカ自身が余り役設定を覚えていないと言う詰めの甘いところも。



■来歴

魔力を行使して、奇跡を起こす。
詠唱によって魔術式を編み、魔力を行使する術を、「魔術」と言う。

人は詠唱なくして魔術を扱う事はできない。
ところが、その不可能を可能にしてしまった一人の天才がいた。

名をモニカ・エヴァレット。リディル王国における魔術師の頂点、〈七賢人〉が一人、〈沈黙の魔女〉。
史上初めて無詠唱魔術を生み出した魔術師である。


【本編開始までの経緯】

生い立ち

研究者ヴェネディクト・レインの一人娘として生まれる。母親は幼少の頃に亡くしたため男手一人で育てられた。
貴族ではなかったようだが、ヴェネディクトは希少な素材を使用したコーヒーポットを工房に発注し個人用に所有するなどそれなりに裕福だったことがうかがえる。
モニカも父には懐いていたようで、父の研究室にある学術書を絵本代わりに育ち、いくらか中身も理解していたとのこと。
娯楽小説よりも数学書を好んだり贈り物にメジャーを所望して目につくもの全部計測して回るなど少し変わったところはあったが、当時は人並みに話し笑う子どもだったらしい。

しかしながらヴェネディクトが禁術研究の重犯罪者として突然告発されたことで、その生活は一変する。
親切だった近所の人が火刑にくべられた父に罵声を浴びせながら石を投げ、モニカの訴えに耳を貸さず蔵書を全て燃やす光景は彼女にとって激しいトラウマとなるとともに、他者への強い失望へと変わった。
また父の死後モニカを引き取った叔父はこの件で失業してしまったため酷く荒れており、食事を抜くなどの育児放棄は当然のこと日常的に暴言や暴力も振るった。
これらの事が積み重なり「年齢不相応なほどに小柄な身体」「各所に残る古傷」と言った身体的特徴や、「自分の意見を口に出すことを極度に恐れる」
「強いストレスを受けた時に数字の世界に逃げ、人の言葉や表情を数字に変換し悪意と認識しないようにする」と言った人格が形成されてしまう。

そんな生活が1年ほど続きもはや命の危機にも瀕していた所を、かつて父の助手だったヒルダ・エヴァレットが発見し保護する。
諸般の事情から身元は隠され、ヒルダが引き取った孤児と言う形で養子となりモニカ・エヴァレットと言う名前になった。
ヒルダの元ではある程度人間らしい言葉と生活を取り戻し、さらに魔術研究所の上級職員である彼女との共同生活において魔術式研究者としての才能の片鱗を見せるようになる。
そしてヒルダの推薦で、全寮制の魔術師養成機関ミネルヴァに入学することになった。

ミネルヴァ在学時

いくらヒルダの元でリハビリしたとは言え一度深く刻まれた対人恐怖症は容易に克服できるものではなく、まして平民出身なためミネルヴァに多い貴族の子女からは孤立。
その無口で無感情な様子から〈無言のエヴァレット〉と蔑まれ虐められた。
ある日いじめの現場に通りかかった優等生バーニー・ジョーンズに庇って貰って以降は、彼を勉学等も含めて強く頼るようになる。
バーニーの方も頼られて悪い気はしないので邪険にはしなかったが、裏でいじめられているのを見て見ぬふりをする等、モニカが自分に依存する関係を改善する気はなかった。
基礎魔術学の授業で「人に注目された状態では緊張して詠唱を口に出せない」という問題に直面した際、バーニーの勧めで「短縮詠唱」の習得を目指すことになる。
同学年ではバーニーにしか扱えない高等技能ではあるものの、モニカも魔術式理解の筆記では優秀だったのでできないことはないだろう、と言う程度の助言だったのだが……。

次の授業で短縮詠唱どころか前代未聞の無詠唱魔術と言う奇跡を披露したモニカの世界は再度一変した。
あれよあれよという間に特待生扱いとなり、ミネルヴァでも最も権威のあるラザフォードの研究室に所属することになった。
ここでは学内の奇異の目などを避けつつ好き勝手魔術式を研究できる環境を与えられ、数々の論文を発表し高く評価される等、ある意味では充実した学園生活となった。
ただしバーニーとは疎遠になった上に他に友人はおらず、研究室に引きこもっていたので極一部の大人以外とは口も利かないと言う、年頃の少女としては歪な生活でもあった。

そんな生活が何年か続いたある日、ラザフォードに連れられ七賢人選抜試験に臨む。
面接では緊張の余り泡を吹いて失神すると言う醜態を晒す一方で、魔法戦では他の候補者を寄せ付けない圧勝であった。
恐らくラザフォードとしてはモニカの才能を七賢人に認識させ、弟子入りなど何らかの形で保護されることを期待しての受験であったが、結果として枠が空いたためそのままモニカ自身が七賢人に就任することになる。
この時弱冠十五歳、史上最年少での就任であった。
なお一緒に選抜試験に臨み、枠の関係で同時期に七賢人に就任することになったのがルイスである。

七賢人就任後

就任後に報告と感謝を伝えるためバーニーの元へ駆けつけたのだが、そこでモニカに浴びせられたのは賛辞ではなく、明確な敵意だった。
バーニーはモニカが無詠唱魔術と言う奇跡を起こした時からその才能の差に打ちのめされ、深く嫉妬していたためである。
しかし対人経験値の少ないモニカは無自覚に彼の地雷を踏んだ挙句、その真意を推し量れず表面的な敵意と拒絶を真正面から受け止めてしまった。

「貴方なんて、人のいない山小屋にでも引きこもっているのがお似合いだ」

この言葉を真に受けたモニカは以降、時折ルイスに引っ張り出されるとき以外は殆ど山小屋に籠る生活となる。

黒竜撃退

ケルベック伯爵領ウォーガン山脈に現れた黒竜の討伐も、ルイスに引っ張り出された任務の一つだった。
竜や黒竜は怖くないと言う一方で同行する竜騎士団を怖がり、挙句彼らを名前ではなく数字の塊で認識する始末。
その為同行・護衛の申し出を徹底的に断って単独で山に入り、黒竜を追い払った後にそのことを報告。黒竜を失って暴れ始めた翼竜の群れをやはり単独で全滅させた。*12

このことに感銘したケルベック伯爵家は宴の席を用意していたが、モニカはこれを丁重に断り、さらには逃亡し最終的には身元を隠して1人(と1匹)で山小屋に帰った。
同時期に黒猫の使い魔を使役し始めている。

任務開始

黒竜撃退から3か月程経った頃にルイスが再び山小屋に現れ、「第二王子を本人にも気づかれぬよう護衛せよ」と言う王命への参加を要請される。
無詠唱魔術の隠密性はともかく、「こんな地味な小娘が護衛の七賢人だなんて、誰も思わないでしょう」と言う割と無茶苦茶な理由ではあったが、
黒竜騒動で恩義を感じているケルベック伯爵家の協力を事前に取り付けていると言ったルイスの根回しの良さから逃れる事はできなかった。

かくして「孤児院からケルベック伯爵家に養女として迎え入れられたものの、後見人の逝去に伴い疎まれるようになり、
学園に入学する伯爵令嬢に虐められつつ世話係として一緒に編入されたモニカ・ノートン」と言う肩書でセレンディア学園高等科2年に潜入することになる。


■名(迷)言集

「……二八年目は三一万七八一一匹、二九年目は五一万四二二九匹……」

「立派なお部屋でなくていいから……せめて、屋根裏部屋がいいよぅ……」

「黄金比、なんですっ!」
「わたしは目で見た物の長さを言い当てる自信があります。殿下は頭の横と縦の比率が1:1.618でした。これは人間が最も美しいと感じる黄金比に限りなく近い数値です。
「服を着ていても足の長さで大体へその位置は割り出せます。昨晩の人物も、殿下も、へそで分割した時、上と下の比率がこの黄金比でした。
 更になんと! 下半身を1とした時、上半身と下半身を合計した全長が1:1.618になるんです。まるで計算されたような黄金比です! こんな人、滅多にいませ…」

「……この才能を……呪いだと思ってほしくなかったの」

「とっても美しい、数列の夢です」

「──七賢人が一人、〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレットの名の下に……開け、門」

「絶対、忘れ、ません」

「こ、高等科の、二年生に見えますかっ?」

「実は、わたし、不良なんです!」

「この本に……これだけの価値をつけてくださって、ありがとうございます」


■余談

  • 一部ファンコミュニティでは、外伝である人物が呼んだ「モニモニ」と言う愛称が定着。モニカの小動物のような行動や奇行は「モニモニしている」、彼女のそんな姿を見に来ることを「モニモニしに来た」とも。
    • アニメ化の際にはバリエーションの多い変顔と会沢紗弥の怪演名演によりモニモニ具合は見事に表現された。

  • 物語の登場人物として世に出た一番最初の台詞はよりによって命乞いである。*13
    • ルイスと初対面の時、彼の在学(ヤンキー)時代の悪評を事前に聞いていて本気で怖い人間だと思っていたため。実際に知り合うと別の意味で怖い人間だったが。

  • アニメ制作にあたり原作者は「モニカは可愛くしなくていいです」と依頼したらしい。これは「コメディパート等では思いっきり崩して描いて欲しい」と言う意図とのこと。

  • 現代日本で知られる精神疾患の一つに、親しい人であっても顔を認識できなくなる症状は「失顔症」や「相貌失認」と呼ばれ、モニカの場合幼少期のトラウマにより後天的に発症した可能性がある。
    • しかも本人は「他人に興味がないから覚えようと思った事がないだけ」と考えているが、類稀な数字記憶力と空間把握能力で無理矢理誤魔化しているだけで本編の時系列でも全く治っていないのでは?と言う指摘がある。

  • 誕生日は作中では「冬招月(シェルグリア)の初週一日」とされている。原作小説及びアニメ公式Xによるとグレゴリオ暦で言う12月1日にあたる。


  • 現代に蘇った女ピタゴラス 万物は数




「まっ、まずは……追記する項目のテンポの分析と目次の照合。編集の最中の手、腕、肩の角度を解析して記憶する作業から始めたいと思いますっ!」
「……ノートン会計。貴様は頭を使う前に、体を動かせ」


この項目が面白かったなら……\……数を数えてやり過ごしたいっ/

最終更新:2026年07月09日 10:51

*1 小説家になろう サイレント・ウィッチ作品あらすじより

*2 幸いリディル王国や周辺国では「魔術師はローブこそが伝統的正装」と言う文化があり七賢人もローブが支給されているため、式典等でフードを目深に被っていても失礼だと咎められることはない。

*3 もっと言うと中盤以降の彼女は決して非モテではない

*4 アニメではコメディパートこそ思いっきり崩されているもののそれ以外では美少女アニメキャラ平均の顔立ちをしている。

*5 アニメではこのことに直接触れる会話シーンが尺の都合で省略されたため、着替えシーンで僅かに見える程度

*6 ただし指さし等があった方が精度は上がるし、杖があった方が消費魔力も抑えられることは作中で言及されている。特にアニメでは魔術行使を視聴者にわかりやすくする意図もあってか、人目がない場面では指さし程度は行っている。

*7 ちなみに術式詠唱部分は無詠唱だが、召喚対象に対して敬意を込めて行う儀礼詠唱部分はモニカも省略できない

*8 勿論魔術師全体の中では上澄みである

*9 ルイス曰く、「教本の書き換えが年2回を超えたら教本業者に迷惑かかるので今後は発表のタイミングを考えろ」

*10 一例として、水攻撃魔術を「水の生成&形成」と「射出」に分割しそれぞれ別の魔術として行使すること。魔力操作が簡単になる一方、基本的に魔術師が同時に行使できる魔術は2つまでの為に他の魔術と併用できなくなったり、消費魔力が増えると言ったデメリットもある。

*11 メタ的には連載当時「小説家になろう」等で流行していた悪役令嬢モノ

*12 Web版では先に翼竜を蹴散らしてから黒竜の山に登ったため、書籍化にあたって順序が逆転している

*13 「記憶喪失軍医ロザリー・ヴェルデの考察」にサブキャラクターとして登場した時のもの。サイレント・ウィッチ本編よりも公開は早い。