アットウィキロゴ

SCP-3903-JP

登録日:2025/12/10 Wed 00:34:40
更新日:2026/07/17 Fri 11:38:27
所要時間:約 6 分で読めます




彫刻には魂が宿る

SCP-3903-JPは怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスは Safe

項目名/メタタイトルは「石像のきもち」。
JPとある通り日本支部で作成されたオブジェクトである。

概要

SCP-3903-JPはサッカーボールを蹴る服を着たクマが象られた石像である。SCP-3903-JPは不定期に45db程度の男児の声を発生させる(普通の会話が50db程度と言われているので、それよりもやや小さい程度といえるだろう)。
具体的には、「いくよー」「がんばる」「けっちゃうよー」など、この他に47種類のパターンが確認されているようだ。

小さな声で喋る以外の異常性はなく、特別収容プロトコルも下記の通り。
SCP-3903-JPはサイト-81██の低危険度物品収容ロッカーに収容されます。
Anomalousアイテムとして扱われそうなレベルで無害なオブジェクトらしい。


インタビュー記録

さて、次にSCP-3903-JPが収容されるきっかけになった人物についてのインタビュー記録を見ていこう。

SCP-3903-JPは長友文義さんという方が制作したもののようで、SCP-3903-JPは彼の自宅から発見された。
以下は調査の際に長友さんに対して行われたインタビューである。

<録音開始>

山内研究員: それでは長友さん、あの石像についてお聞かせ願います。

長友氏: 分かりました。順を追って説明します。まず、4年前に石像を作った当初はクマだけを象ったものだったんです。少年のような格好をしたクマが躓いて、今にも転ぼうとしている様子を表したものだったんですよ。ボール部分は後付けなんです。

山内研究員: そうだったのですね。では、どういった目的で躓いた姿のクマを製作されたのでしょうか。

長友氏: えっと、庭で息子たちが転ぶのを防ぐためですね。当時は8歳と7歳の息子がよく庭ではしゃいで遊んでいたんですが、ある1ヶ月くらいの期間に何回も転んでしまって。息子が連れてきた友達も、追いかけっこやサッカーをしていた時に転倒して怪我を負ってしまいました。

山内研究員: そんな短期間にですか。それは不幸でしたね。

長友氏: はい。だから、庭に厄が溜まっているんだと思いまして厄落としに像を作りました。転倒する様相の像を据えて、子どもが転んでしまう厄を代わりに引き受けてもらおうとしたんです。

山内研究員: なるほど。

長友氏: で、像を庭に置いてから数ヶ月後のことです。庭の清掃中、石像からかすかに声が聞こえてきました。幼い少年の声です。……彫刻には魂が宿るという誰かの言葉について、私は一理あると思っていますが、まさにそれを裏付けるようなことが起こっていました。

山内研究員: 既にその頃から像に異常性は発現していたのですね。

どうやらもともとは、転びそうになっているクマの石像だったようだ。
五月人形が子供の厄を引き受けるという話もあるように、このような厄除けの手法はよくとられるものである。
しかし、この厄除けによってクマの石像は異常性を持ってしまったようだ。

長友氏: はい。なんですが、その時は今と違って声の調子が暗くて、怯えているみたいだったんですよ。声量も、絞り出しているように小さかったです。近くで耳を澄ましてみて、やっと何と言ってるか分かるくらいで。……それに、喋っている言葉も今とは違っていて。

山内研究員: どのような言葉だったのですか。

長友氏: 「こわい」とか、「いやだ」とか、そんなことを言っていました。

山内研究員: ……それは確かに違いますね。現在の明朗とした声質や文言からは考えられません。

長友氏: 初めてそれを聞いたときは不気味でしたね。いたずらを疑ったのですが、特に何か仕掛けられた痕跡はありませんでした。それからは、たびたび嘆く石像に耳を貸しながら、一体全体どういうことかと暫く頭を悩ませていました。

山内研究員: 怯える石像なんて、あまりにも気がかりですしね。

どうやら異常性が発言した当初は全く異なる音声が確認されていたようだ。現在のかわいらしいものとは異なり、恐怖の声色を含んだ不気味なものだったようである。
これが現在の声に変わったきっかけについて、詳しく見ていこう。

長友氏: ええ。ただ、そんなふうに熟考している最中、「ころびたくない」という言葉がクマから飛び出してきたんです。

山内研究員: 「ころびたくない」ですか。

長友氏: それを聞いてやっと、私はクマの像について1つ仮説を立てることができました。……えっと、さっき、彫刻には魂が宿ると言いましたよね。

山内研究員: はい。

長友氏: ……私には幼い頃からふんわり思っていることがありまして。もしも彫刻が魂を持つのなら、それは作られた姿と意義に延々と囚われることになるのではないかと。そうだとすると、彫刻は自らの姿に付随した感情を朽ちるまで抱き続ける。たとえそれが恐怖であってもです。

山内研究員: ああ、つまりクマの石像は自身の姿のせいで苦しんでいたと。躓いて転倒しようとする姿が抱くのはおそらく焦りや恐怖で、彫刻は形が定まっているために常にその感情が付き纏うことになる。そう推測されたのですか。

長友氏: そうなんです。私の試みは、クマの体勢の持つ意味合いを変えてしまうことでした。サッカーで遊ぶ息子から着想を得て石のサッカーボールを像に結合することで、転倒するクマから、球を蹴ろうと脚を振り上げるクマに生まれ変わらせたんです。

山内研究員: そうやって石像の感情を変えることに成功したんですね。

長友氏: はい。思惑通りにいってほっとしましたよ。それ以降は「キック!」「さわやかにいこう!」っていうふうに、声に元気が満ちていて本当に楽しそうにしていますね。これにて一件落着、というところです。えっと、これで石像のいきさつについては以上です。

山内研究員: 貴重なお話を伺えました。インタビューにご協力いただきありがとうございました。

<録音終了>

インタビュー記録は以上である。
長友さんの思惑通り、サッカーボールの彫刻を置いたことで不気味な声は止まり、現在の可愛げのあるものに変わったという訳だ。
このインタビューが行われた後、長友さんの過去の作品などもが行われたようだが、結果は異常なし。
ということで長友さんとその周辺の人達には記憶処理が行われ、この件は一件落着となった...。

補遺

──と思っていたら、詳しい研究の結果どうやら先述の声とは別の音源の声が存在しているらしいということがわかった。
この声はクマの石像が出す声と同時に鳴っているようで、その音量の微弱さもあり人の耳ではハッキリと聴くことは難しかったようだ。

研究の結果、現在までに声の種類は14種類が確認されている。うち一部を抜粋する。

「こわい」

「やめてよ」

「けられちゃう」

──彫刻には魂が宿る。それがたとえ無生物を象ったものであっても…。

なお、この異常性を発現させた長友さんはすでに記憶処理が行われ一般社会に復帰済みであり、もはや彼の恐怖を取り除けるものはいないようである。

余談

このSCPは執筆時点で+168を記録しており、2025年に投稿された記事のうち6番目に高い評価を得ている。また、2025年に参加したサイトメンバーによる記事の中では二位と大差をつけてダントツの一位でもある(2位は+106を記録しているSCP-2538-JP)。

しかしながら、なんと著者であるQurisone氏は、サイトに参加してからわずか21日で処女作としてこの作品を投稿している(加えて余談だが、SCP-2538-JPの著者であるPenters氏は2日でかの作品を投稿している。これもめちゃくちゃすごい)。このような大型ルーキーが登場してくるうちは、日本支部の将来も明るそうである。

追記・編集はコケないようにお願いします。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年07月17日 11:38