SCP-2538-JP

登録日:2025/06/27 Fri 20:42:27
更新日:2025/07/15 Tue 02:08:59
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SCP-2538-JPは、シェアードワールドSCP Foundation」に登場するSCPオブジェクトの一つ。
オブジェクトクラスは 堂々のKeter
メタタイトルは「そうなったらもう逃げられない」。何とも仰々しいタイトルである。


目次


特別収容プロトコル

コイツは現在収容されていない。
代わりに財団はWebクローラーや機動部隊を使ってコイツの隠蔽工作に力を入れている。
ただし、後述するインシデント-2538-JPの発生現場は保存され、二週間に一度調査が行われる。

概要

コイツが何なのかというと、身長2.7m、手の長さが1.9mの人型実体である。
目と体毛がなく、肌は灰白色。非活性状態と活性状態を繰り返し、真夜中の活性状態時に人を襲う。
鏡像空間という鏡の中の異世界と現実を往来するのと、あらゆる物理攻撃を無効化し跳ね返すという、二つの特殊能力を備えている。
ビジュアルはほぼスレンダーマン、中身はほぼコイツである。しかもあっちと違って反射できる攻撃の上限はない可能性が高い。
ここまで見ると、ただのぼくのかんがえたつよい単なる敵対的な人型Keterにも見えるが……?


補遺1. 収容試行ログ-2538-JP-1

以下はSCP-2538-JPを財団が収容しようとした時の初めての記録である。
深夜のショッピングモールで警備員が「鏡の中から化け物が出てきた」という通報があり、その後に通信がロスト。
それを傍受していた財団のエージェントによりオブジェクトが発見された。

<記録開始>

(前略)

アルファ: 通報の発生源と思われる目標地点のトイレに到達。多量の血液痕はあるが警備員の姿は見えない。アノマリーは攻撃的な可能性がある。司令部、緊急時の攻撃の許可を要請する。

サイト81█司令部: 許可する。ただし、必要最低限にとどめるように。

デルタ: 隊長、この血痕は洗面台の鏡に続いているように見えます。

アルファ: 確かにそう見えるな、異常性に関連しているかもしれない。注意せよ。

(特記事項がないため省略)

ブラボー: 司令部、衣服屋に到着しました。(2秒間の沈黙) 何か、視界の端に見えた気がします。気のせいかもしれませんが。

(くぐもったような笑い声)

エコー: 今のは隊員の声ではありません。どうやら気のせいではないようですね。

アルファ: 最大限警戒せよ。

(試着室の覆いが膨らみ、覆いの下からSCP-2538-JPの右腕が見える。掌底は血液に見える液体が付着しており、腕はエコーに手を伸ばしている。くぐもった笑い声はそこから聞こえている。)

エコー: おそらく形状からして人型オブジェクト。発砲します。

チャーリー: 発砲します。

(銃声。チャーリーとエコーが倒れる。チャーリーは下顎を撃ち抜かれ、エコーは額から致命的な出血をしている。)

チャーリー: (呻き声)

ブラボー: クソッたれ。司令部、アノマリーは攻撃を反射する性質があると推定、エコーは即死、チャーリーも下顎を撃たれ重症。

(銃弾によって試着室の覆いが崩れ落ちる。鏡像空間にSCP-2538-JPの姿があり、鏡面から頭部、右腕及び左腕が突き出している。右手にチャーリーの、左手にエコーの頭部を掴む。)

チャーリー: (叫び声)

アルファ: 畜生。

(SCP-2538-JPがチャーリーとエコーを鏡像空間に引き摺り込み、右手に移動して消える。)

フォックストロット: 司令部、チャーリーとエコーが鏡の中に連れ込まれた。おそらく両名ともにロスト。

アルファ: 帰還命令を要請する。

サイト81█司令部: 帰還命令を発令。

アルファ: (遮るようにして)ロット! 後ろの鏡だ!

(SCP-2538-JPがフォックストロットの後ろの柱に接着された鏡面に姿を現す。くぐもった笑い声が聞こえる。)

フォックストロット: 待て、リーダー。

アルファ: (2秒間の沈黙)なるほど。

(SCP-2538-JPの上半身がフォックストロットの背後の柱に備え付けられた鏡面から基底現実に現れる。)

アルファ: ブラボー、奴を避け鏡面のみを狙え!

ブラボー: 了解。

(アルファ、ブラボー、フォックストロットが鏡面を撃ち破壊する。SCP-2538-JPが叫び声を上げる。SCP-2538-JPの上半身が鏡面から垂直に滑り落ち、着地と同時にガラスが砕けるような音を発しながら、全身が黒色の結晶片に分解され、瞬時に消失する。)

アルファ: 無力化してしまったかもしれんな。すまない、司令部。責任は私が負う。

サイト81█司令部: (5秒間の沈黙)即刻帰還せよ。

ブラボー: 待て。

(くぐもった笑い声)

アルファ: 何処からだ。

(アルファの右眼球からSCP-2538-JPの左腕が出現する。瞬間的にフォックストロットの頭部を掴む。)

アルファ:(叫び声)

フォックストロット:(不明瞭な怒鳴り声)ファック。

ブラボー:(罵声)

(SCP-2538-JPの左腕がフォックストロットをアルファの右眼球に引き摺り込み[編集済み]。ブラボーは自身の眼球を携帯していたナイフで切り裂き逃走を開始する。逃走は約2分間続く。)

ブラボー:(激しい息切れ)クソ。

(頭上からくぐもった笑い声が聞こえる。)

ブラボー:(笑い声)お前の好きにはさせねえぞ。

(ブラボーが自身の心臓を撃ち抜く。)

(くぐもった笑い声が遠ざかっていく。以降特筆すべきことはない。)

<記録終了>

この直後、なんとサイト81█司令部の博士の眼球からSCP-2538-JPが出現。何があったかは[編集済み]で分からないが、同サイトが破棄されたとあるあたり大規模収容違反が起きたのかもしれない。
どうやらコイツは眼球を鏡とみなして出入り口にできるだけでなく、通信先の位置を特定する能力があるようだ。
しかし世界を滅ぼしたりこそしないとはいえ、なかなか厄介なオブジェクトである。財団はコイツに手を焼き続けるのであろうか……



補遺2.インシデント-2538-JP

コレは特別収容プロトコルでも述べられていた、インシデント-2538-JPの記録である。一体これ以上どんなに恐ろしいことが待っているのか。
ちなみにインシデントの発生場所はどこかの美術館であった。        

<記録開始>

(前略)

(SCP-2538-JPが天井の鏡面から上半身を垂れて現れる。SCP-2538-JPはくぐもった笑い声を上げている。)

高田氏: な、なんだ!?

(SCP-2538-JPが高田氏に飛び掛かる。)

高田氏:(叫び声)

(SCP-2538-JPが床の鏡面を透過する。2秒間の沈黙後、SCP-2538-JPが絶叫する。

(特記事項がないため省略)

<記録終了>

インシデント発生当時、この美術館では「万華鏡展」という一面鏡張りの展覧会を行っていた。
それもなかなか大規模なものだったようで、上述の通り壁だけでなく床や天井まで鏡で覆うというものだったらしい。
そしてここで問題になるのがこのオブジェクトの能力。「鏡面世界との移動」と「物理反射」はあっても、飛行能力は持っていなかった。

つまり何が起きたかというと、天井と床が合わせ鏡になったせいでSCP-2538-JPは着地できず永久紐なしバンジー!ということである。*1
無限ループって怖くね?とはよくいうが、これはオブジェクトからしても同じだったようだ。
しかも、攻撃を反射する能力のせいで空気抵抗なども反射してしまって、終端速度をガン無視し亜光速に到達。*2その落下距離はまさかの2光年以上と見積もられている。単位が全て天文学的スケール。

報告書の時点で1092日ほどこの状態のままになっているらしく、
財団はコイツがこちらの世界に再び現れる可能性は低いと考えオブジェクトクラスの再分類を検討している。
ここでもう一度メタタイトルを見てみよう。


SCP-2538-JP

そうなったらもう逃げられない


いや、お前がかい!


余談


現時点では見事に収容されているオブジェクトだが、鏡像空間の詳細が不明なことや、
床と天井の合わせ鏡のが外因によって維持できなくなった時にどうなるかは少々気になるところではある。
……とはいえ、記事のDiscussion内にて作者のpenters氏より「永遠に落ち続ける」と明言されてしまっているため、そのあたりの心配はいらないようだ。

コイツが落っこちた時に絶叫しているあたり、意外とビビリなのかもしれない。
となると、機動部隊に半身だけ出してた鏡を破られた時も叫んでるあたり演技ではなく割と本気でビビっている可能性もある。

Disscussionでは、作者のpenters氏に「運と知性と慎重さが足りず文字通り足元を掬われた」と割とボロクソに言われている。
まあ一般的な活動範囲には「枠に手が届かない大きさの合わせ鏡が天井と床に配置されてる」なんて状況はまずないのだが、
そんな激レア初見トラップに自分から突っ込んでしまったあたりこの評価もやむなしと言ったところか。


ついでに、コイツのように自身のことを過信して墓穴を掘ったマヌケテルKeterクラスオブジェクトを紹介しておこう。

  • SCP-4338 - ヴァルカン、破滅なるもの
『炎上する海の神』などと謳われる、浮遊する知性持ちの超巨大火山岩。
神様らしく供物を求め、機嫌を損ねればたちまち災害を起こす。
ただある時からあるものをいたく気に入ったようで……?

  • SCP-019-JP - 普通のボノボ
典型的な堕落した現実改変能力者。
自らの力に溺れ、IQ300と救世主を自称して暴れ回っている。
財団も流石に放置できないとしてこいつを終了させる計画を立てている模様。
オチは特別なのは体だけで頭は猿並みという結構キツめの皮肉である。


追記・修正は亜光速で無限に落っこちてからお願いします。


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最終更新:2025年07月15日 02:08

*1 詳細は不明だが、鏡像空間の内部が無限の深さを持つ重力のある空間になったらしい

*2 観測したところ、亜光速における様々な物理変化が見て取れるんだとか。もはや貴重なサンプルである。