登録日:2025/12/20 Sat 01:55:12
更新日:2025/12/21 Sun 15:22:11
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『ドクター・フー』第3シリーズ「まばたきするな」より
嘆きの天使(Weeping Angel)は、イギリスのSFドラマ『
ドクター・フー』に登場する地球外種族の1つ。
2005年以降の新シリーズにおいて、第3シリーズ「まばたきするな」で初登場を飾った。
スティーヴン・モファット脚本回に多く登場しており、特にモファットが制作総指揮を務めたニュージェネレーション(第5シリーズから第7シリーズ)において主要なアンタゴニストとして登場した。
特徴
見たままヒューマノイドの天使の石像のような姿をしている。
体は薄着の人間の女性に類似し、背中には鳥類のような1対の翼が生えている。
ただしこの翼を用いて飛翔行動を取る様子は確認されていない(何らかの手段で飛翔性を持つ可能性はある)。
「嘆きの天使」という名称の通り、顔を両手で覆って嘆くような姿勢を示すことが少なくない。
一般的な天使の容姿は成人女性のものに類似するが、乳児や少年を模したものも存在しており、形態にはある程度のバリエーションが存在するようである。
第7シリーズ「マンハッタン占領」ではニューヨークに存在する自由の女神像自体が嘆きの天使であることが明かされている。
人間やタイムロードと対等に会話したり、通信端末やタイムマシンのような機械を操作・操縦したりと、高度な知性を持つ知的生命体でもある。
ただし作中の行動の多くが一方的に他種族を襲撃するものであるほか、会話シーンにおいても他種族に対して共感性を発揮しておらず、知性があるからといって相互理解が可能な存在ではない。
その起源は不明であり、宇宙創成とほぼ同時期から存在したとも説明される。
量子ゼノン効果と時空間転移
嘆きの天使の最大の特性は誰かから見られているときに動けないというものである。
この性質は量子ゼノン効果(クォンタム・ロック)に従っている。
量子ゼノン効果とは、量子系を頻繁に観測するとその系の時間発展が抑制されて量子状態が固定されるというものである。
本来この現象は量子力学的事象であるが、これが人間大あるいはそれを遥かに上回る体サイズの天使にも適用されている。
これは天使にとっての完全防御形態であるとともに、彼らの行動を完全に静止させてしまう呪いでもある。
天使が顔を覆い隠している理由は、同族を視認して量子ゼノン効果に置かないためである。
その結果として、彼らはエンダーマンや
SCP-173にも似た性質を帯びる。
他者からの観測外に置かれた嘆きの天使は非常に攻撃的である。
「まばたきするな」で初登場を飾った際、天使による襲撃を受けたドクターは「Don't blink. Don't even blink.」から始まる有名な台詞を発言している。本記事の冒頭部に掲載された台詞がそれである。
彫像の天使が目の前に現れたなら、背を向けてはいけない。目をそらしてもいけない。まばたきさえしてはならない。
例えその所作が一瞬であったとしても、その刹那を突いて嘆きの天使は攻撃に転じる。
嘆きの天使の攻撃パターンは一定でないが、多くの場合は攻撃対象を過去へ時空移動させるというもの。
天使による攻撃を受けなければ対象は時間軸上にそのまま存在するはずであるが、天使による時空移動で時間軸上を移動することになる。
ここで、本来存在するはずであった対象の時間軸上の時間エネルギーを吸収する……というのが天使の生態である。
これ以外の方法でも時間エネルギーを摂取する方法はあるらしいが、作中での常套手段は人間を含む他種族を過去へ飛ばしてエネルギーを脱出することである。
飛ばされる時間の長さはまちまちであるが、同一個体であれば同じ時代に飛ぶことがあるらしい。
しかし自由度は高いらしく、天使同士で協働して時間を調整することもあり、2012年のニューヨークで人間狩りを行っていた天使の集団は皆一様に1938年に人間を送り込んでいた。
また、時間移動を伴わず獲物を空間転移させることも可能である。
作中で描かれた範囲内では、数千年や数万年といった理不尽な時間スケールでの転移は発生していない。
2000年代後半から1920年、2012年から1938年、1967年から1901年……のような100年以内の時間移動がもっぱらである。
ただし、100年以内とはいえ元の時代へ回帰する前に寿命を迎える人間は少なくなく、また幸運にも生き延びたとして老いた体で自分の元いた時代を目の当たりにすることになる。
『ドクター・フー』というドラマの大きな特徴である時間を、とことん残酷に描き出した存在と言うこともできよう。
なお、時空間移動を伴わず対象を古典力学的に殺傷する場合もある。
第5シリーズ「天使の時間」「肉体と石」では数百年という時間を経て時間エネルギーを失い飢餓状態に陥った嘆きの天使が登場し、長らく極限状態に置かれていたためか、現場の踏査に現れた武装聖職者隊の悉くを頸椎の破壊により殲滅している。
第7シリーズではリヴァー・ソングやクララ・オズワルドといった一部のコンパニオンも天使に腕や足を掴まれているが、ただちに時空間移動に晒されたわけではない。
また必ずしも危害を加えるとも限らないようであり、第13シリーズ「天使たちの村」では13代目ドクターがまばたきをしても天使が彼女に襲い掛からない、というシーケンスが見られた(もっとも、天使には天使なりの謀略が存在したわけであるが)。
天使の姿をしたものは
第5シリーズ「天使の時間」で明かされた天使の性質もまた、嘆きの天使を論じる上で重要である。
それは天使の姿をしたものは全て天使になるという法則。
当該エピソードにおいて嘆きの天使の捜索・捕獲作戦に同行した11代目ドクターは、嘆きの天使について記載された書籍を読む中で違和感に気付く。
天使に対する注意を促すことを目的として執筆された書籍であるにも関わらず、天使の写真が掲載されていなかったのである。
誰にでも伝わるように、理解度を高められるように、可能な限り詳細な図説が求められてもおかしくはない文書なのにも拘わらず。
そんな文献に写真が無いこと、そしてこの箴言からは、撮影された写真や録画された映像であっても天使は天使であり、本物の嘆きの天使としての実体を有するようになるということが導かれる。
実際に「天使の時間」では記録映像の中の天使が動き始めており、同様の演出は第13シリーズ「天使たちの村」にも継承されている。
また「天使たちの村」では紙に描かれた天使のイラストまでもが具現化しており、この法則の強力さを物語っている。
なお第6シリーズ「閉ざされたホテル」ではチボリ星人が心底怖れる存在として嘆きの天使の偽物が登場していた。「天使の姿をしたものは全て天使になる」の法則に照らせば、偽物の天使像もまたいずれ本物の嘆きの天使として生を受けていたのかもしれない。
その他の特性
嘆きの天使にはこれら以外にも様々な特殊性質が存在する。
例えば、長時間にわたって天使と目を合わせた人物の脳には天使が侵入するほか、天使の外見を強く想起した人物の脳内でも具現化する。
こうした人物は目から砂が零れ落ちるような被影響過程を経て、やがて天使に変化していく。
目を離すまいと天使を凝視してしまえば、逆に天使の侵入を許しかねない懸念があるということになる。
どないせいっちゅーねんこんなん。
またサイキック能力者の脳内に侵入した天使が宿主と意思疎通をするシーンも存在しており、精神世界を介したコミュニケーションが可能なようである。
また現実世界に存在する天使についても、人間の大脳新皮質を剥ぎ取ってそれを利用し、通信端末で流暢な会話をする場面が存在する。
通常嘆きの天使は発声するとして金切声のような非言語的なものしか発さないが、実際には卓越した文章能力と会話能力を持つようである。
また量子ゼノン効果に束縛される可能性を低減する仕組みとして、照明器具に対する干渉が可能。
2000年代であろうと51世紀であろうと照明器具を明滅させている描写が存在しており、暗闇を意図的に生み出して視認されることを防いでいる。環境利用能力も高いということになる。
活躍
嘆きの天使はシリーズ中の数多くのエピソードに登場しており、それぞれのエピソードで強大な脅威として恐れられている。
10代目ドクターは彼らを最も孤独な暗殺者と呼び、第10シリーズに登場した修道士という侵略種族も
ダーレクやサイバーマンに並ぶ人類の脅威として嘆きの天使を挙げている。
人類の中には嘆きの天使を崇拝する教団を結成する者も居た。
特に第5シリーズにおいては宇宙自体が消滅の危機を迎える中、ドクターと敵対していたさまざな種族や集団が同盟を結成していた。
主な構成要素としては民族浄化の極致とも言うべきダーレク、銀河系内無敗のサイバーマン、「諸君我々は戦争が大好きだ」を地で行くソンターラン、公務執行妨害すなわち死の宇宙警察ジュドゥーン、児童臓物(ガキモツ)売捌(トバ)してそうな宇宙極道スリジーン……といった錚々たるメンツであるが、この同盟に嘆きの天使は在籍していない。
他のあらゆる生命を根絶やしにするような宇宙最大の脅威が生存のため他種族と手を取り合っている最中にも、嘆きの天使はこの同盟に含まれなかったのである。
その理由は明示されていないが、嘆きの天使の能力的な性質や精神的な性質が大いに阻害したというところが大きそうである。
地球に侵入したことが何度もあるが、シリーズ中で最大の被害を計上した惑星はアルファヴァ・メトラクシスと呼ばれる系外惑星である。
この惑星はアプランと呼ばれる双頭ヒューマノイドの種族が生息し高度な文明を発展させていたが、嘆きの天使の侵入を許してしまった。
惑星に存在した全てのアプランが嘆きの天使に虐殺され、エピソード本編においては既に滅亡した惑星として登場している。
なお第13シリーズにおいては初期のタイムロードが創設した影の組織"デイヴィジョン"と協働する描写が存在している。
他種族との交流や知的種族としての社会性が完全に皆無というわけでもなく、また自己の生存以外の目的で組織的行動を示すことが明かされた。
余談
タイムロードとの関係
タイムロードとは、『ドクター・フー』の主人公ドクターが属する種族である。
2009年スペシャル「時の終わり」パート2では、タイムロードの最高指導者であるラシロンから嘆きの天使への言及があった。
ラシロンは評議会において自身に反対した2人のタイムロードに処罰を加えていたのであるが、その2人は顔を覆い隠す形でラシロンの傍に立たされていた。
彼らへの「古の嘆きの天使のように」という発言から、嘆きの天使とはタイムロードの成れの果てなのではないか、というファンの推察も存在する。
ラシロンと同じく黎明期のタイムロードであるテクテユンは第13シリーズで登場している。
当該シリーズではテクテユン率いるデイヴィジョンという秘密組織が登場しており、嘆きの天使もそこに与する様子が描写されているが、タイムロードと天使をそれ以上に結びつける事実は開示されなかった。
モファットによる考案
2016年に公開されたRadio Timesの記事によると、スティーヴン・モファットはドーセット州の墓地付近で天使像を目撃し、嘆きの天使のアイディアを思いついたという。
現場には危険を示す看板が設置されており、モファットは興味本位で散策を行っていた。
数年後にモファットが息子を連れて再び同地を訪れた際にこの天使像は存在しておらず、彼は超常的な感覚に包まれたらしい。
2022年に公開された同じくRadio Timesの記事では、2006年時点でモファットが当時のプロデューサーに嘆きの天使の原案を送付していたとされる。それは観測されていない時にのみ命を吹き込まれる彫像のアイディアであった。
嘆きの天使が登場した「まばたきするな」は2007年6月9日に放送された。
本作は短編部門ととしてヒューゴー賞映像部門を受賞。『ドクター・フー』史上に残る傑作として高く評価され、ことあるごとに人気エピソードとして選出されている。
2025年には『ドクター・フー』でも珍しくメタフィクション的演出のあるエピソードが放送されたが、
その際に劇中に登場した番組のファンが最高傑作として挙げていた作品がこの「まばたきするな」である。
(ただし説明が「まばたきを禁じられる」とドヘタクソであったため、それを聞いた主要人物は困惑していた。)
なお「まばたきするな」の放送から約2週間後である2007年6月22日には、4chan上で嘆きの天使と類似した性質を示す
SCP-173が投稿され、
クリーピーパスタの文脈で高い評価を得ている。
両者の関係性および発表のタイミングは英語圏のインターネット上で長らく激論が交わされてきたが、2018年に上記の時系列を示す4chanのログが発掘された。
追記・修正は幸運を祈りながらお願いします。
- 作成ありがとうございます。ドクター・フー懐かしい -- 名無しさん (2025-12-20 12:41:30)
- ホラゲ定番の「見てると動かないけど見てないと高速で襲ってくる」タイプの敵の元祖よね -- 名無しさん (2025-12-20 12:52:48)
最終更新:2025年12月21日 15:22