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SCP-1699-JP

登録日:2026/03/09 Sun 10:07:00
更新日:2026/05/29 Fri 08:32:38
所要時間:約 8 分で読めます








卒業おめでとう。 ...本当にそれでいいのだろうか?






SCP-1699-JPはシェアード・ワールド SCP Foundation に登場する オブジェクト である。
オブジェクトクラス Safe  
メタタイトルは「去りゆくものへの卒業証書」。





概要


まずは特別収容プロトコルとして、このSCPは現在Safeオブジェクトによくあるロッカーに収容されている。また、このオブジェクトの異常性に曝露して昏睡状態になった人物は脳波のモニタリングをすることを求められる。
Safeオブジェクトらしい、割と簡素な扱いである。

そしてこのオブジェクトとは、なんとアニヲタ諸君らが小学校、中学校、はたまた学校には依るだろうが高校でももらったであろう、あの勢いよく開けるとスパァンッという音が鳴る卒業証書用の筒である。


またこのオブジェクトは誰でも開けられるものではなく、仕事や何かしらの活動などをやめようと思っている人にのみ開封可能なのである。そしてこの筒を開封すると、中から詳細成分のよくわからない海の砂のようなものが出てくる。

これらの砂は自立した行動を行い、開けた人物の行ってきた活動の中でも大きく活躍した場面を擬似的に再現するのだという。

そしてその砂は先程述べた情景の再現を終えると筒の中に戻ってしまう。



これだけだとただ砂が今までの思い出を再現してくれるAnomalousオブジェクトに見えるかもしれない。しかし、このオブジェクトの異常性はここからである。この砂が完全に回収されたと同時に、開封者は昏睡状態となってしまう。そしてその昏睡状態となってしまった人物の約7割はそのまま死亡してしまうのだ。

しかし、その状態でも生理的な活動は行われ、体重が増減したり歳を取ったりするらしい。


そして重要なポイントとして、この状態で曝露者は夢を見ているのだ。

また、先程の7割とならなかった人物はそのまま覚醒し、やめようとしていた仕事や諸活動に対し、活動的な素振りを見せるのだという。彼らは夢を見ながら、やめようと思っていた事柄を再開しようとし、その瞬間昏睡から覚めたのだという。


発見経緯


そしてこのオブジェクトの中核を成す発見経緯、もといそこで発見された手紙の内容について抜粋しながら解説していく。

このオブジェクトは要注意団体である「Are We Cool Yet?」のひとりであるヨルク・サンゲッタという人物の自宅で発見され、当時コイツはこのオブジェクトの影響を受けて昏睡していた。


+ Are We Cool Yet?を知らない方へ
この集団はSCPオブジェクトを芸術作品だとみなし、財団にとって厄介な作品を数多く残している。

そしてコイツらが関わるオブジェクトの最後には必ずと行っていいほど

「 Are We Cool Yet?(俺達クールだったろ?)」という文言が置かれている。

詳しくは Are We Cool Yet? にて。




どうやらこのヨルクの友人からこのオブジェクトは送られたらしいが・・・。ではなぜコイツは昏睡状態になったのだろうか?その謎を解くためにも手紙を読んでいこう。



親愛なるヨルク・ザンケッタへ

やぁヨルク。引退を決意したと聞いたときは驚いたよ。いや、でもどこか納得したところがあるのも事実かな。


(中略)


ホントはできることなら引退してほしくないけど、これは僕のエゴだ。君が決めたことだから僕らはそれを受け入れなければならないよね。今はゆっくり休んでほしい。



どうやらこのヨルクというヤツはAWCYを引退しようとしていたらしい。そしてこの友人はそれを残念がっている様子。


そしてここからは全文を掲載させていただく。少し長い文章だが、この友人の思いや感情がよく出ているためじっくりと読んでいただきたい。


いいか、俺は今からcoolとは程遠いことを書く。 これを書いたって何も変わらないだろう。冷めた笑いでゴミ箱に捨てられるだけかもしれない。新人の俺が偉そうに言うことでもないのは重々承知している。でも君に聞いてほしいし書かずにはいられないんだ。

今アンタはアートを作ることが、嫌になっているかもしれない。けどほんとに嫌いなのか? それとも自分の才能がないという現実とやらに気づいたとでも?でも、俺たちが作りたかったのは理想じゃないのか?初心を思い出せとかいう薄っぺらい言葉を言うつもりはないよ。けど確かにお前はアートが好きだっただろ?疲れたのなら休めばいい。本当に完全に捨てていいのか?

あいつのほうが自分より凄いのを作れる?自分のcoolさが受け入れてもらえない?辛いよな、認めてもらえないのは。でもアンタはアンタなんだ。それは変わりようがない。 そのアンタで勝負してこれまで評価されたんだ。アンチなんかに目を向けるより、アンタの中の芸術に目を凝らしてくれよ。

周りのプレッシャーが重い?期待外れをさせやしないかと心配?好かれるってのは厄介だよな。でも、次の作品が駄作だって俺たちはアンタを嫌いになったりしない。もし助けが必要なら手伝うし、大事なのはアンタが作りたいものを作っていることなんだ。

続ける理由がない?胸の炎が消えてしまった?下らないことだって、刹那的だって、理由なんて何でもいい。大きく深呼吸すれば胸に酸素が送られて燻ってた火が勢いを戻すかもしれない。少し離れて一服すればまた自分のアートが見つかると思う。

いつかは別れの決断や辞める選択をしなくちゃいけないのかもしれない。でも、俺は、今はその時じゃないと思う。 アートなんていつ作ったってもいい。いつ作らなくてもいい。わざわざ選択肢を一つ握りつぶさなくてもよくないか?もったいないじゃん。いつ戻ってきてくれてもいいからさ。なんならそのまま戻らなくたっていい。完全に打ち切って、全てなくなっちゃうなんて寂しいじゃないか。 中途半端な状態だっていいよ。戻れる場所を用意しておくことの何が行けないんだ?

なぁ、本当のことを言うと、別にやめたっていいんだ。それがアンタの選択なら受け入れるしかない。でもこれだけは、お願いだ。否定しないでくれ。 いままでのアンタを、作った作品を、好きだと言ってくれた人たちを、否定しないでくれ。頼むよ。

目を背けないでくれ、アンタのことを好きだと言ってくれた人から。あるじゃないか、価値が。いるじゃないか、認めてくれる人が。必ずいる。アンタがこれまで作ったアートはそれだけのものを作ったんだ。その作品は罪であり、枷であり、澱であるかもしれない。でも、その作品は偉勲であり、宝物であり、結晶であるかもしれない。もうアンタ一人だけのものじゃない。アンタが自身を否定しても、その作品や好きになった人たちは否定しないでくれよ。



アルテュール・ベルジュローより


そしてこの後に追記として、「もし本当に引退する気ならば、『この筒を開けてくれ』」というメッセージが添えられていた。


...あくまで財団内でのAWCYのポジションは厄介なオブジェクトを制作している面倒な集団だったかもしれない。しかし、この集団にも確かに友情が、惜別が、何にも変えられない感情があったのだ。


このメタタイトルにある通り、このオブジェクトは『卒業』や『別れ』がテーマとなっているのだろう。別れにも色々あるだろう。各々の夢を目指したものか、進学や就職によるやむを得ないものか、はたまた今までの空間にいることが耐えられなくなったものかもしれない。

しかし、どんな別れでも、それは切ないものなのだ。






SCP-1699-JP

去りゆく者たちへの卒業証書






最後に、このヨルクが目覚めた後のインタビューがあるためそれを見ていこう。




ここではペルジュロー氏、つまりこのオブジェクトを作成もといヨルクに送付した人物に連絡を取ったかについて尋ねられている。

PoI-201はヨルクのことである。

PoI-201: ベルジュロー……あぁ、アルのことだな。そういえば取ってなかった。というか、思い出してみるとアルのことをすっかり忘れてた……というか気にも留めてなかったような気がする。筒もあの日以来記憶にない。

エージェント・ハナ: そうですか。わかりました。ではその後について教えてください。

PoI-201: 最初は不安だったけど、でも清々したんだ。それから過ごした日々はアートから解放されて爽やかな暮らしだった。アートに費やしていた時間が空いた分、別の仕事もはかどり健康的な生活だったさ。

エージェント・ハナ: では、なぜまたアートを始めようと思ったのですか?

PoI-201: 確かに夢の中の生活は快適だったよ。けどあの砂のアニメーションをふっと思い出した。 今はもう無理な輝かしい功績。確かにあの時私はここで幕を下ろすべきなのだと思ったさ。でも少し癪だったんだ。勝手に線引きされて、引退のお膳立てをされて、マリオネットのように終了をさせられて。だからちょっとだけその素晴らしいエンドロールの向こう側が見たくなったんだ。

エージェント・ハナ: 続けてください。

PoI-201: それで私は前の仲間にまたアートをやりたくなってきているって相談したんだよ。そしたら誰も止めないんだ。 自分たちもその苦労は知ってるはずなのに。みんな応援してくれた。資金援助を申し出てくれる奴さえいたさ。それでいよいよ押し入れから筆を見つけ出した時、目が覚めた。

エージェント・ハナ: ありがとうございます。では今はもうアートを辞めたいということはないということですか?

PoI-201: ああそうだ。いや、もしかしたらまた辞めたくなるかもな。でもそれでいいと思う。なぁそこの君、筆とキャンバスを貸してくれないか。いや鉛筆と紙でも何だっていい。とにかく今は何か描きたくて仕方ないんだ。



その後のヨルクへの鉛筆の配布は当然許可されなかった。

だって何しだすかわかんないんだもん。



因みに最後の最後にコイツはAWCYらしく、作り出したオブジェクトによって財団職員に重症を負わしている。そしてその後示し合わせたようにAWCYによる襲撃が起こり、ヨルクは脱走してしまった。こいつラストでやりやがった!



そしてそれまで彼がいた収容房には



ちょっとは俺、まだクールみたいだ。


Somehow I am cool yet.



と書かれていた。



追記・修正は今までの思いを裏切らないようにお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1699-JP - 去りゆく者たちへの卒業証書
by Jiraku_Mogana
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1699-jp

Are We Cool Yet? ハブ
by kidonoi
http://scp-jp.wikidot.com/are-we-cool-yet-hub

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最終更新:2026年05月29日 08:32