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グリーン・インフェルノ(映画)

登録日:2026/05/30 Sat 21:23:11
更新日:2026/06/03 Wed 21:44:38
所要時間:約 15 分で読めます






そこは、

人間が喰われる地獄


残酷無慈悲な

食人エンターテインメント



THE GREEN INFERNO



『グリーン・インフェルノ(原題:The Green Inferno)』は、2013年9月25日に公開された米国のホラー/スリラー/エクスプロイテーション映画。
ユニヴァーサル・ピクチャーズ/BH Tilt/フィルム・ディストリクト配給。
日本ではポニーキャニオンの配給で同年11月28日より公開された。
イーライ・ロス監督・脚本作品。


【概要】

『ホステル』シリーズなどで知られるイーライ・ロスが、1980年製作のイタリア映画『食人族』へのオマージュとして製作した作品。

もっとも、ストーリーやテーマ性は時代背景の違いもあってオマージュ元とは大きく異なっている。残酷描写こそ共通しているものの、『食人族』がどこか牧歌的な空気を残していたのに対し、本作は終始シリアスな作風で、ユーモア的な要素はほとんど存在しない。
実際、イーライ・ロスは本作について「ヴェルナー・ヘルツォークやテレンス・マリックの作品のような雰囲気を目指した」と語っている。

物語の骨子は、浅慮な理想主義に突き動かされた学生運動家たちが、自ら守ろうとしていた先住民族の集落に囚われ、その食人文化の犠牲となっていくというもの。

イーライ・ロスは本作について、「ネット文化にどっぷり浸かり、自分では何も行動していないのに、社会問題に関する記事やツイートをシェアするだけで活動家になった気分になっている人々へのアンチテーゼだ」と説明している。

オマージュ元の『食人族』では、文明人による蛮行への報復として原住民の暴力が描かれていた。一方、本作の登場人物は軽率さや自己中心的な面こそ描かれてはいるものの、あくまでも被害者であり、現代社会の基準から言えば、こんな凄惨な末路を迎えるに足るような罪など犯してはいない。そのため、彼らに降りかかる運命の理不尽さがより際立っている。
食人されてしまうのは、その残酷な行為が単純に先住民族の宗教儀礼・食文化が故にである。

なお、本作に登場する「ヤハ族」はオマージュ元とは違い全くの架空の部族であり、特定の民族をモデルとしているわけではない。

本作については、一部の先住民族保護団体から「植民地主義的な偏見を助長する」との批判も寄せられた。しかしロスは、「映画内では石油開発によって先住民族の土地が脅かされている現実も描いている」と反論している。

【物語】

大学一年生のジャスティンは、国連勤務の弁護士である父チャールズの下で育った女子学生。
母を亡くして以来、かつて打ち込んでいたフルート演奏からも遠ざかり、どこか目的意識を持てないまま学生生活を送っていた。

そんな彼女が関心を抱いたのは、大学内で活動している環境保護団体だった。活動そのものに興味を抱いたわけではなかったが、団体のリーダーであるアレハンドロに惹かれたことや、講義で学んだ少数民族問題への関心もあって、活動への参加を決意。
友人のケイシーや父チャールズは計画の危険性を指摘し反対するが、ジャスティンはアレハンドロたちと共にアマゾンでの抗議活動へ向かう。

現地では石油採掘のために森林伐採が進められており、学生グループは開発作業を妨害することで世界中の注目を集めることに成功する。
しかし、その過程でジャスティンはアレハンドロたちが自分を政治的な道具として利用していた事実を知り、大きな衝撃を受ける。

抗議活動の終了後、一行は小型飛行機で帰路につく。しかし飛行中にエンジントラブルが発生し、飛行機はアマゾンの奥地へ墜落。
辛うじて生き延びた学生たちは救助を待つが、そこへ先住民族「ヤハ族」が現れた。彼らは学生たちを捕らえ、集落へ連行する。

こうしてジャスティンたちは、人肉食の文化を持つヤハ族の支配するグリーン・インフェルノ(緑の地獄)へと足を踏み入れるのだった……。

【主な登場人物】

※以下はネタバレ含む。

  • ケイシー
演:スカイ・フェレイラ/吹替:村松妙子

ジャスティンの親友でありルームメイト。
ユダヤ系アメリカ人で、純朴なジャスティンとは対照的に活発で現実的な性格をしている。

自然保護活動を掲げる学生グループに対しては当初から懐疑的であり、その活動や思想にも批判的な立場を取っていた。そのため、ジャスティンがグループへ接近し、さらには現地での抗議活動に参加しようとした際には強く警戒している。

一方で、最終的にはジャスティン自身の意思を尊重しており、父親へ相談するよう助言したうえで彼女を送り出した。

  • チャールズ
演:リチャード・バージ/吹替:やまむらいさと

ジャスティンの父親。
国連本部に勤務する弁護士であり、娘を男手一つで育ててきた。

娘の将来を案じるあまり厳しい言葉をかけることもあるが、その根底には深い愛情がある。ジャスティンがアマゾンでの抗議活動へ参加することを知ると強く反対し、危険な計画であると警告した。

  • カーラ
演:イグナシア・アラマンド/吹替:花藤蓮

アレハンドロの恋人であり、学生グループの中核メンバーの一人。
ジャスティンがアレハンドロに好意を抱いていることを察しており、彼女に対して冷淡な態度を取る。また、抗議活動の際にジャスティンを危険な立場へ置く計画についても事前に把握していた。

飛行機墜落後は周囲の異変にいち早く気付くが、接近してきたヤハ族を警戒せずにいたため、矢で首を射抜かれ死亡する

  • ジョナ
演:アーロン・バーンズ/吹替:中林俊史

学生グループの一員。
温厚で人当たりの良い性格をしており、活動が社会のためになると純粋に信じている。

ジャスティンやケイシーと同じ講義を受講しており、二人を活動へ勧誘した人物でもある。特にジャスティンには好意を抱いていた様子で、活動中も何かと気遣いを見せていた。

飛行機墜落後、ヤハ族に捕らえられると、真っ先に生贄として選ばれる。祭壇へ拘束された後、儀式の中で惨殺され、その遺体は食料として解体された。
彼の死は、学生グループが直面した状況の異常性と絶望的な現実を決定づける出来事となった。

  • サマンサ
演:マグダ・アパノヴィッチ/吹替:清水はる香

学生グループの一員。
全身にタトゥーを施しており、自由主義的な価値観を持つ人物として描かれている。エイミーとは恋人同士。

ヤハ族に囚われた後、陸上競技の経験を活かして集落から脱出し、救助を呼びに向かうことを提案する。一度目の試みは失敗したものの、二度目はダニエルの協力もあって脱出に成功したかに思われた。
しかし、その後の消息は描かれず、後に解体された遺体の一部が登場したことで死亡が示唆される。
彼女の皮膚はタトゥーごと剥ぎ取られ、ヤハ族の装飾品として利用されていた。

  • エイミー
演:カービー・ブリス・ブランドン/吹替:横山友香

学生グループの一員。
菜食主義者であり、常備薬を携帯しているなど健康管理への意識が高い。サマンサとは恋人同士。

ヤハ族に囚われた後は極度の緊張状態に陥り、精神的にも大きな負担を受けることとなる。
その後、ヤハ族から提供された肉がサマンサの遺体であると気付いたことで限界に達し、自ら命を絶った

  • ラース
演:ダリス・サバラ/吹替:迫律聖

学生グループの一員。
マリファナの愛用者であり、普段は落ち着きのない言動が目立つ人物。しかし極限状況下では冷静な判断力を発揮し、生存のため積極的に行動する。

仲間たちが脱出方法を模索する中、ヤハ族が人肉を焼いて食べる習慣に着目し、エイミーの遺体に大量のマリファナを仕込むことで煙を吸わせ、集落全体の行動力を低下させる作戦を立案した。

作戦は成功し、仲間たちは脱出の機会を得る。しかし自身が逃亡しようとした際に妨害を受けて捕らえられ、その後ヤハ族に殺害された

  • ダニエル
演:ニコラス・マルティネス/吹替:橘潤二

学生グループの一員。
電子機器の扱いに長けており、当初は地味だったものの、状況の悪化に伴い仲間たちと協力して脱出計画の中心的役割を担うようになる。
アレハンドロに従っていたが、彼の利己的な言動を目の当たりにするにつれ不信感を強め、やがて対立するようになる。

ラースの犠牲によってジャスティンと共に脱出に成功したかに思われたが、墜落現場付近で再びヤハ族に捕らえられてしまう。
その後は見せしめとして残虐な処刑を受け、瀕死に。最終的にはジャスティンの脱出を見届けながら命を落とした。

なお、学生グループには他にも複数のメンバーが存在していたが、その多くは飛行機事故やヤハ族との遭遇によって死亡している。

  • カルロス・リンカーン
演:マディアス・ロペス/吹替:中村章吾

現地で活動する怪しい男性。
学生グループをアマゾンへ輸送した小型飛行機の所有者兼操縦士であり、アレハンドロとは以前から関係を持っていた。

表向きには活動家たちの協力者として振る舞っているが、その正体は開発計画を巡る企業間対立に関与する工作員
作中で進められていた石油採掘計画とは別の企業に雇われており、アレハンドロと協力して抗議活動による開発阻止の実績を作り出すことで、自らが支援する企業に有利な状況を生み出そうとしていた。

……しかし、その計画が実を結ぶ前に飛行機事故に巻き込まれ死亡。
アレハンドロは事故を陰謀によるものと主張していたが、その真偽については作中で明らかにされていない。

  • アレハンドロ
演:アリエル・レヴィ/吹替:加瀬康之

学生グループのリーダー。
若くして高いカリスマ性を持ち、その魅力によってジャスティンをはじめ多くの人間を惹きつけている。

しかし、その実態は極めて自己中心的かつ利己的な人物。目的の達成や自身の名声のためであれば仲間を危険に晒すことも厭わず、抗議活動においてもジャスティンを政治的な「盾」として利用していた。
また、自らが全てを把握しているかのように振る舞う一方で、実際には状況を楽観視する発言も多い。カーラが首を射抜かれた際には「矢を抜けば助かる」と口にするなど、現実認識の甘さも目立つ。

ヤハ族に囚われた後も仲間たちの脱出計画に協力することは少なく、自身の保身を優先する姿勢を見せ続けた。
ラースが立案した脱出作戦が成功しかけた際には、自分だけ取り残されることを恐れて彼の逃走を妨害し、結果的にラースの死を招いた。
さらに終盤には、今回の抗議活動のモチベーション自体が理想の追求ではなく自らの名声獲得のためであったことを認める

物語終盤まで生き残るものの、最後はジャスティンに見捨てられたままヤハ族の集落に取り残される。
ジャスティンは帰国後、彼が英雄視され、その肖像が運動のシンボルとして扱われている様子を目撃するのだった……。
明確に最期は描かれないが、その後の生存は絶望的と思われる。

なお、容姿やキャラクター造形にはチェ・ゲバラを意識した要素が見られる。


  • ジャスティン
演:ロレンツァ・イッツォ/吹替:永宝千晶

本作の主人公。
真面目で善良な性格だが、世間知らずで流されやすい一面も持つ。アレハンドロに強く惹かれたことをきっかけに学生グループへ加わり、その結果として極限状況へ巻き込まれていく。

ヤハ族に捕らえられた後は仲間たちが次々と犠牲になる中で生き延び続ける。処女でなくなったことから食料ではなく儀式の対象として扱われるようになり、皮肉にもそれが延命に繋がった。

集落では世話役の少年と交流を築き、母の形見である笛付きのペンダントを通じて信頼関係を得る。
その縁もあり、終盤には少年の助けによって脱出に成功した。

また、ブラックジャガーを神聖視するヤハ族の信仰とも偶然に適合したことで、部族からも敵意を向けられなくなる。さらに傭兵たちとヤハ族の衝突の場面では、結果的に双方の戦闘を中断させる役割も果たした。

帰国後の事情聴取では、「仲間は墜落事故で死亡した」「ヤハ族は危険な食人部族ではない」と証言し、実際に体験した出来事を隠蔽している。

なお、演じたロレンツァ・イッツォは本作をきっかけにイーライ・ロス監督と交際し、2014年に結婚。2018年に離婚している。

  • ヤハ族
アマゾンの開発予定地域に居住する先住民族。
全身を赤い塗料で彩っていることが特徴で、人肉食の文化を持つ好戦的な部族として描かれている。

弓矢や吹き矢の扱いに長けており、高い狩猟能力を有するほか、密林の頂点捕食者であるブラックジャガーを神聖な存在として崇拝している。

繰り返すが、ヤハ族は架空の存在であり、特定の実在民族を直接モデルとしたものではない。

  • ヤハ族の長老
演:アントニエータ・パリ

ヤハ族の神官を務める老婆。一般のヤハ族人とは異なり、全身を黄色い塗料で彩っている。
捕らえた人間に対する儀式や選別を担っており、ジャスティンたちの処遇を決定する重要人物として登場する。

  • ヤハ族の酋長/禿頭の首刈り人
演:レイモーン・ラオ

ヤハ族の族長。一般のヤハ族人とは異なり、全身を黒い塗料で彩っている。
大柄な体格と高い戦闘能力を持ち、一族の指導者であると同時に最強の戦士として描かれている。
巨大なを武器としており、生贄の解体や戦闘において中心的な役割を果たす。
終盤では傭兵との戦闘に臨むが、その最中に命を落とした。

  • アレハンドロの妹
声:パス・バスクニャン

本編では声のみの登場。エピローグで「衛星写真の中にアレハンドロと思われる人物を発見した」という情報をジャスティンへ伝え、兄の生存を示唆する役割を担っている。

【余談】

  • 非常に意味深なエピローグから続編企画があったようで、早々に公表もされていたものの以降の続報は聞かれていない。
  • ヤハ族を演じてるのは役者とかではなくカラナヤク族という本物の先住民。現代から隔絶された場所で生活している為映画等は知らないので監督は知ってもらう為に映像機材を持ち込んで「食人族」を見せたりしたそうだ。勿論、食人族ではないし映画での影響を考え監督が提案したインフラ工事を受け入れたり寧ろ映画に興味を持ったりする等演じたヤハ族とは対象的にとても温厚な性格をしていてキャスト達とのオフショットでは楽しそうな笑顔をしていた模様。
    • ちなみにこれ、企画としての元ネタである「食人族」でも同様の出来事があったようで、同作の脚本を一番気に入っていたのは各部族役を演じたヤノマミ族エキストラ班のみなさまだったんだとか。
  • 人が巨人に食べられる漫画『進撃の巨人』作者は、本作について別冊少年マガジン2016年6月号の質問コーナーにて「巨人が肉を食べるシーンを描いても、全然肉は食べられます。本作を観た後は、しばらくだめでした。」と述べている。



追記修正は安直に抗議活動に参加せずにお願い致します。

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最終更新:2026年06月03日 21:44