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食人族(映画)

登録日:2026/05/28 Thu 21:12:59
更新日:2026/06/04 Thu 20:50:48
所要時間:約 12 分で読めます




食人族(しょくじんぞく)とは、1980年に公開されたドキュメンタリー映画。
ニューヨークから未開のアマゾン地域の“緑の地獄(グリーン・インフェルノ)”へと突撃取材を行った、過去にも実績のある監督のアラン・イェーツ、スクリプターのフェイ・ダニエルズ、カメラマンのジャック・アンダースとマーク・トマソの4名の取材チームの遺した記録映像(フィルム)を元に、彼らと契約を結んでいた放送局の手により編集されて公開された。

因みに、記録映像は彼等が消息を絶った後に、その行方を探すことを依頼された文化人類学のハロルド・モンロー教授の手により彼等の白骨化した遺体と共に発見されるという衝撃的な経緯により入手されており、その中には取材チームが雇った現地ガイドのフェリペが毒蛇に咬まれて死んだのを皮切りに、彼等が目標としていた集落に辿り着いた後に悍ましい食人族の犠牲となってしまうまでが克明に記録されていたのだった。

同じ人類であっても、余りにも文明レベルの違う者同士が接触してしまった場合の悲劇を知らしめた本作は世界中に大きなショックを与えることとなり、ドキュメンタリーの傑作、究極的な到達点として賞賛を浴び続けている。






……追記・修正お願い致します。













あなた

食べる?

べられる?



食人族(Cannibal Holocaust)



『食人族(英:Cannibal Holocaust)』は、1980年2月7日に公開されたイタリア製のセクスプロイテーション/スリラー/ホラー映画。

また、一部には現在で言うところのフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)/ファウンド・フッテージ的構造も取り入れられており、その先駆的手法から、同ジャンルの始祖的作品の一つとして再評価する声も近年では聞かれるようになっている。

公開当時は、その演出手法や映画構成のリアルさも相まって、「これは本当に起きた出来事なのではないか?」と信じ込む観客まで続出。本国イタリアのみならず、後年公開された日本やアメリカでも大きな騒動と衝撃を巻き起こした。


【解説】

1960年代以降、やらせを多分に含んだ悪趣味映像によって、世界中の観客に“未知の世界”への興味と誤解を植え付けたイタリア発祥の「モンド映画」。本作は、その系譜に連なる代表的作品である。

監督は、実は本作以前にも『カニバル』が日本でも知られていたルッジェロ・デオダート。
以前にも『世界残酷物語』の主題曲『モア』を手掛けたリズ・オルトラーニの美しいメインテーマが、ミスマッチであるはずの残酷シーンを優雅に彩る。

本作もまた、モンド映画らしく「過度に演出された記録映像」という体裁で構成されている。しかし特徴的なのは、単なる実録風の映像集ではなく、一本の映画として明確なストーリーラインが存在する点である。
言わば本作は、“モンド映画そのもの”をメタ的にパロディ化した作品だった。

実際、作中で取材チームが行う数々の非道行為は倫理的に完全にアウトなものばかりであり、さすがに実際のモンド映画の撮影現場でここまで悪辣な真似が行われていたとは考え難い。
いくら何でも国際問題や人権問題に発展しかねないレベルの蛮行なのである。

また、中盤までは通常の映画的撮影手法で進行するものの、後半からは“行方不明になった撮影班が残した映像”がメインとなる。この構成から、本作はしばしば「世界初のファウンド・フッテージ/POV映画」と呼ばれることもある。

もちろん、99年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降に確立された同ジャンル作品群と比べれば、演出や設定の徹底ぶりはまだ粗削りである。しかし当時は、モンド映画自体が“ある程度リアリティのあるジャンル”として受け止められていた時代だった。そのため、明らかに脚本も演出も存在し、スタッフまでクレジットされている映画であるにもかかわらず、公開後にショッキングな映像を見せられた観客の一部は、本作を本当の記録映画だと信じ込んでしまったらしい。

そのあまりの反響から、後に監督ルッジェロ・デオダートは釈明に追い込まれ、会見の場には「殺されたはず」の取材チーム役の俳優たちまで登場。「僕ら普通に生きてる俳優ですがな」説明する羽目になったという。

……ただし、人間こそ殺されていないものの、劇中で犠牲になるハナグマ、カワガメ、子豚、リスザル、ヘビ……などは実際に殺されている。

この動物虐待描写については、監督が「ちゃんと食べたから問題ない」と開き直ったかのように語られることもある。しかし実際には、デオダート監督は撮影に協力し“食人族”を演じてくれた現地住民たちと長期間寝食を共にしており、殺された動物はその後、現地住民の食料になったという。恐らく、元々現地で食用とされていた動物だったのだろう。

という訳で、様々な“からくり”が明かされたことで海外での騒動は次第に落ち着いていったのだが、日本では1983年1月、20世紀フォックス配給により真相?そんなの知ったことか!と言わんばかりに、改めて“創作であること”を伏せたまま公開*1。当時としては驚異的な10億円超の大ヒットを記録した。

当然ながら日本でも「これは本物か否か」で大論争となり、本国での公開から数年経っていたこともあって、「殺されたはずの女優が別の映画に出演している」「“原住民の女”って言うけど、よく見たら泥を塗っただけの白人女性では?」など、新たなツッコミどころまで次々発見され、さらなる話題を呼ぶことになった。

そして本作のヒットを受け、“食人族映画”ブームが到来。その後も似たような悪趣味映画が全国の映画館を賑わせることとなる。

もっとも、本作は単なる悪趣味映画としてだけ語られる作品ではない。自然の中で穏やかに暮らす原住民たちと、彼らに対して蛮行を働く取材チームの対比によって、「真の野蛮人とは誰なのか?」という、現代文明社会への痛烈な批評性も込められている。

2023年には公開40周年を記念した4Kリマスター版も発売。新たに江原正士ら実力派声優による吹替も収録されている。ヘアーも見えるよ!

【主要登場人物】

  • ハロルド・モンロー教授
演:ロバート・カーマン

本作の語り部にして主人公。ヌードシーンあり。

失踪した撮影チームの手がかりを探す依頼を受け、これまで接触したこともなかったアマゾン奥地──“緑の地獄”に住む部族たちと接触。積極的に彼らの生活へ溶け込むことで徐々に信頼を勝ち取り、遂には撮影チームの遺体で作られた宗教儀礼的オブジェを発見。その中に納められていたカメラを持ち帰ることに成功した。

……本作は、そのカメラに“何が記録されていたのか”を暴いていく物語である。教授が信用を得るため水浴びしていたところを現地の若い娘達にからかわれてキャッキャウフフする場面は、本編でも数少ない癒し&ほっこりシーン。

なお、中の人であるロバート・カーマンは、元々ポルノ映画界隈ではかなりの大スターだった人物。本作で注目を浴びたことで以降は一般映画にも活動の場を広げ、晩年には通常の映画俳優としてキャリアを築いたという異色の経歴の持ち主である。
また、劇中のモンロー教授同様に本人もかなり良識的な人物だったらしく、撮影中、本当に動物が殺されると知った際には監督にタックルをかまして現場を去ったとも言われており、この件については後年まで批判を続けていた*2

  • チャコ
演:サルヴァトーレ・ベイジル

撮影チームの行方を追うモンロー教授に同行した現地ガイド。
男臭く頼もしさ全開の強面で、文明人らしい甘さを見せた教授を強引に制止する場面もあるが、基本的には教授の目的達成に協力的。
撮影チームが消息を絶った地域の事情にも詳しく、目的地へ到着した段階で「白人達(撮影チーム)が何かやらかしたらしい」と教授へ伝えていた。

  • ミゲル
演:リカルド・フエンテス

チャコの助手兼相棒ポジションの現地ガイド。ヌードシーンあ(ry
まだ幼さの残る若者だが、チャコ同様に頼れる人物。自分達の主張は通しつつも、現地住民との最低限の線引きや交渉は弁えている。
チャコが連れている現地住民の奴隷の世話も、主にミゲルの役目。
そして、前述の通り現在でも論争の的になっている“ハナグマ解体シーン”を担当しているのも彼である。

  • 女性プロデューサー

アラン達を雇っていた放送局の幹部。
モンロー教授が持ち帰ったフィルムの復元が進む中、現地での経験から「どう考えても公開すべきではない」と難色を示す教授に対し、「これはになる」と他の幹部達と共に説得を行い、半ば強引に公開へ踏み切ろうとする。

  • フェリペ
演:ギレルモ

アラン達撮影クルーを案内していた現地ガイド。
現地住民の集落へ辿り着く遥か以前の地点で、白骨死体となって発見される。

後に発見された記録映像により、途中で毒蛇に足を噛まれ、自ら足を切断するも間に合わず死亡していたことが判明する。
チャコ曰く死に様に反して「腕利きのガイドだった」とのこと。もし生きていれば、撮影チームの蛮行を多少なりとも止められていたのだろうか……。

  • 沼族

“緑の地獄”に住む部族の一つ。ヌードシーン(ry
その名の通り、水辺近くに集落を築いて暮らしている。

撮影チームにあんなことやこんなことをされる被害者ポジション。木族とは敵対関係にある。

  • 木族

“緑の地獄”に住む部族の一つ。ヌードシー(ry

樹上生活を営む部族。
撮影チームというより、主に沼族側から攻撃を受けており、それに対して反撃していた。

  • ヤマモモ族

“緑の地獄”に住む部族の一つ。ヌードシ(ry

撮影チームから散々あんなことやこんなことをされた末にブチ切れ、最終的には“あんなことやこんなこと”を倍返しして撮影チームを亡き者にした。

その蛮行は凄惨極まりないのだが、そこへ至る頃には大半の視聴者が「残当」と言いたくなっていることだろう

  • フェイ・ダニエルズ
演:フランチェスカ・チアルディ

撮影チームの紅一点でスクリプター。ヌード(ry

監督のアランとは恋人関係と思われるが、他の男性メンバーの前でも平然とになるなど距離感が妙に緩く、実質的には撮影チーム内で乱交状態だった可能性も高い。

貞操観念はだいぶユルいが、人格面では撮影チームの中では比較的まともな方。アランやジャックが流石にやり過ぎ始めた際には、それとなく制止しようとしていた。
しかし時既に遅く、最終的にはヤマモモ族の男達にレイプされた末、全身を解体され食べられるという凄惨な最期を迎える。
なお、よく見るとレイプ役の男性は着用。紳士である。

姉はシスターであり、インタビューでは「窮屈な生活が嫌で飛び出したのだろうが、優しい子だった」と語っていた。

  • アラン・イェーツ
演:ガブリエル・ヨーク

撮影チームのリーダー兼監督。ヌー(ry
かなりのイケメンだが、本作屈指の鬼畜

若くして実績を築いているが、その実態は数々の悪質な“やらせ”で衝撃映像を作り上げてきた外道であり、今回も現地住民に対し殺人やレイプを半ば遊び感覚で実行し、部族間対立を演出しようとした結果、完全に一線を越えてしまう。
その末路は、ヤマモモ族に捕らえられ、生きたまま解体されるというものだった。

なお、フェイとは恋人関係と思われる一方で、実は妻子持ち

どこを切り取っても救いようのない人間の屑であり、本作が描こうとした「文明人こそ野蛮なのではないか」というテーマを最も体現したキャラクターと言える。

  • ジャック・アンダース
演:ペリー・ピルカネン

撮影チームの一員でカメラマン。ヌ(ry
明るいブロンドヘアーと髭面が特徴的な男。
カメラマンではあるが、どちらかと言えば“やらせ演出担当”の印象が強く、数々の蛮行の実行犯として暴れ回る。

アランと共にヤマモモ族の少女をレイプしたり、木族の仕業に見せかけるため沼族を家屋に閉じ込めてを放つなど、作中でもトップクラスの外道。

最後は真っ先に捕まり、期待通りに解体され、美味しくいただかれた
後日インタビューを受けた父親も「真性のクズの怠け者。死んでせいせいした」と酷評する始末。

  • マーク・トマソ
演:ルカ・ジョルジオ・バルバレスキー

撮影チームの一員でメインカメラマン。
撮影担当だからかチーム内では比較的影が薄い。

……とはいえ、単にカメラを回していただけではなく、アランやジャックの蛮行を歓声付きで撮影していた同類であり、フェイから抗議されても平然と受け流していた
最終的にはフェイやアランの末路まで撮影していたが、結局は自らもヤマモモ族に食い殺されるという最期を迎えた。

【余談】

  • インパクトが強烈すぎるため、数ある本作のメインビジュアルの中でも“顔”として扱われることの多い串刺しになった女性のシーン。
    実はこれは、棒の上に取り付けた自転車のサドルへ女優に跨ってもらい、上を向いた状態で発泡スチロール製の杭を口に咥えてもらうという、極めてアナログな方法で撮影されている。
  • 前述の通り、監督ルッジェロ・デオダートは現地でヤノマミ族と生活を共にしながら取材を行い、出演交渉を進めていた。
    なお、実際に「こういう映画を撮りたい」と説明した際、現地住民達は怒るどころか、ゲラゲラ笑いながらノリノリで撮影協力してくれた……という話まで伝わっている。
    また、現地は本当に危険な毒ヘビが出没するようなガチの危険地帯だったらしく、監督が信用を得られたのも、他スタッフが逃げ出すような環境の中で最後まで現地に残り続けた人物だったからかもしれない。
    • ……という訳で、本作は完全なフィクション──ではあるのだが、監督曰く、公開されることこそなかったものの、映画に近い事件自体は実際に存在し、それを下敷きにしているとのこと。……んんっ!?
  • タイトルが類似している『人喰族』も80年代に公開されたイタリアの食人映画であるが、こちらはどちらかと言えばパニック映画で結末も本作と異なっている。
  • 2000年代に『食人族2』や『食人族3 ~食人族VSコマンドー~』などといった続編を思わせる作品が作られたものの、どちらも本作とは直接の繋がりが無いB級映画と言える。
  • 2013年公開の『グリーン・インフェルノ』は、タイトルからも分かる通り、本作への強いオマージュを込めた作品である。
    • 監督を務めたのは、現在ではエクスプロイテーション/セクスプロイテーション/スリラー映画界隈の第一人者とも言えるイーライ・ロス。幼少期から悪趣味系ホラー映画にどっぷり浸かって育った筋金入りのジャンル映画ファンであり、当然のように『食人族』にも強い影響を受けていた“直撃世代”の一人である。
    • その証拠に、『グリーン・インフェルノ』製作以前の時点で、既に自身の出世作にして代表シリーズである『ホステル2』へ、デオダート監督本人を特別出演させていた。


追記・修正はリズ・オルトラーニの美しい旋律に耳を傾けながらお願い致します。

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最終更新:2026年06月04日 20:50

*1 国内のCMでは「超残酷ドキュメント」と宣伝文句を打たれていた。物凄い大嘘である。

*2 もっとも、デオダート監督自身は、他スタッフが自然環境に耐え切れず逃げ出す中でも現地住民と生活を共にできたような人物だったため、死生観そのものが一般的な感覚とかなりズレていた可能性もあるのだが。