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エレシュキガル(神名)

登録日:2026/09/08 Tue 00:39:56
更新日:2026/09/08 Tue 00:43:46NEW!
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『エレシュキガル(Ereshkigal)』とは、メソポタミア(シュメール-バビロニ-アアッカド)神話に登場してくる冥界(冥府)を支配する女神。
尚、元々は彼女が冥界の支配者であったのだが、メソポタミア神話でも後期となるアッカド神話時代には後述の神話を経て配偶神(夫)としたネルガルに支配者の地位を譲っている。

また、シュメール神話の時代にはエレシュキガルの配偶神はグガランナ(グガルアンナ)とされていたのだが、後に上書きされてしまったらしい。
また、グガランナは確かにエレシュキガルの夫とはされていたが、グガランナは冥界の支配者としては扱われてはいなかった。
この名(グガランナ)は、イシュタル女神が地上に遣わして御大暴れさせてギルガメッシュとエンキドゥに討ち取られた天の牡牛と同じであり、同一視されると共に元から神というよりは怪物のような存在であったと解釈される向きもある。


……近年では『Fate』シリーズのエレシュキガル(Fate)が有名だが、ここでは原典での姿を紹介する。


【系譜と概要】

御名であるエレシュキガルとは、アッカド語で冥界の女王を意味しているとされる。
その他の訳し方としては日没する所の女王とされている場合もあり、やっぱり古代からの冥界の扱いとネガティブなイメージが共通していたことが伺える。
シュメール(メソポタミア神話)での冥界の様子については後述。

……また、名前の意味合いから、実は“エレシュキガル”とは役職や属性を示す呼び名であり、固有の神名(本名)は別にあるとも考察されたりもしている。
実際に、この女神に纏わるニンキガル、アルラトゥ、イルカルラ、ベリリ……といった別の呼び名が神話によって登場してくる。
……しかし、メソポタミア系神話が確認し得る限りの最古の神話大系ということもあってか、それらの本当の意味や区分は現代でも明確になっているという訳でもない。

系譜としては、メソポタミア神話の最高神である天空神アヌ……若しくは大気の神でありエアの息子にして最高神の地位を引き継いだエンリルの娘であるとされている。
同じく、アヌ(またはエンリル)の娘としてイシュタル(イナンナ)が存在している訳だが、エレシュキガルとはイシュタル(またはイナンナ)の姉であるという。

━━つまり、本来ならばエレシュキガルの方がメソポタミア神話の王権を背負う最高位の女神……として扱われていても可怪しくない筈なのだが、実際に最高位の女神として扱われているのはイシュタルの方であり、エレシュキガルの方は対外的には殆ど名前を知られてくることが無かった。

これは、前述の通りでメソポタミア神話でも案の定で冥界を忌避する考え方があったためである。

イシュタル(イナンナ)が“愛と豊穣”を司る女神であるというのは有名な話であったが、これは言い換えれば“生”を司るという意味合いであり、その真逆の属性を司るエレシュキガルは“死”を司るということで血統の高さに反して神話中では寧ろネガティブに語られることが殆どとなったのだ、と考えられている。

尚、この姉妹神が真逆の属性を分け合うというのも、恐らくはこのメソポタミア神話を起源として古代オリエントの人類文明の伝播と交流を通じて後代の別地域の類型神話にも引き継がれていった要素である。
また、其れ等の後代の神話ではイシュタル(イナンナ)系の豊穣の女神が同時に死の女神としての属性を獲得している場合もあるが、これも元々は二つの姉妹神であったものが一つに合一された姿であったからなのかもしれない。

実際、メソポタミアでさえバビロニア神話の時代にはイシュタル女神が前述の通りでギルガメッシュに袖にされた逆恨みだけで天の牡牛(グガランナ)をけしかけて地上を破壊するという暴挙をかましているのである。

【シュメールの冥界(冥府)の様子】

メソポタミア神話では冥界は“クル(Kur)”と呼ばれている。
この他にもイルカルラ(イルカラ)/クック/アラリ(アラル)/キガル……更にアッカド語ではエルセトゥ(イルシトゥ)とも表記されており、例の如くで複数の呼び名が存在しているのでややこしい。
また、前述の通りで此等の冥界を示す呼び名の幾つかはエレシュキガルの異名としても扱われているものでもあり、矢張りエレシュキガルという呼び名は=で冥界そのものか、冥界を示す言葉に役職(支配者/王)を示す言葉を組み合わせたものだった、と見る向きもあるようだ。

“クル”とは本来的には“土”を意味していたが後に用法が広がり“山”や“外国”……そして“冥界”を意味する言葉になっていったと考えられている。
棒クソゲーで有名になってしまったKUR NU GI A(クル・ヌ・ギア)ヌギャーとは、シュメール語で戻って(帰って)来れない土地を意味する。
アッカド語ではirusitu la tari(イルシトゥ・ラ・タリ)と呼ばれる。

エレシュキガルの居城(宮殿)をガンジルと呼び、このガンジルもまた冥界そのものを指す語としても用いられている。
ガンジルはラピス・ラズリ(青金石)で築かれた美しい城であるという。

メソポタミア神話に於ける冥界は命の源たる地下水源(アプスー)より更に下に位置する世界の最下層に位置すると考えられており、その死後の世界のイメージは古代ギリシャ(初期ギリシャの宇宙観)のタルタロス(冥界)と多くの共通点を持つとも指摘されている。
このメソポタミア神話に於ける冥界の地理として有名なのが、極めて強固な錠を掛けられた“七つの門”とシュメール版“ステュクス/三途の河”である“フブル河(人を食う河)”である。
フブル河は彼岸と此岸を隔てる境界であり、死者はフブル河の渡し守である“サイード”の舟に揺られながら七つの門を通って冥界へと渡り、エレシュキガルの支配する地の住人=死者になると考えられていた。
これは、先の通りで古代ギリシャの死生観に近しいものであり、最初は善人も悪人も区別なく単に死者が渡る場所というイメージであったのだが、時代が下るにつれて“死”を忌避する考え方からか冥界は光が遮断された真っ暗闇で住人は粘土や埃を喰らい飲めるのも濁った水だけ……と死んだことが罪かのような描写をされるようになった。
挙げ句には、生前に良いことでもして子孫にお供え物をして貰えない死者はまともな食事(地上の食物や真水)も摂れずに永遠に飢え続ける……なんて言われるようにまで……ひどすぎるやろ。

何れにしても、そうした“死”を忌避する神話からお定まりのようにエレシュキガルにも死者に賞罰を与える神、生前の行いの善悪を計る神……といった属性が与えられていった模様。
まぁ、更にストレートに死者を喰らう神として扱われている場合もあるのだが。
また、“死”そのものであることからか即死攻撃である“死の眼差し”を持つという神話までかある。

それに伴ってなのか、エレシュキガルは以下の神々を従者(スッタル)とすると云う。

■ナムタル(アッカド語:ナムタール)

エレシュキガルの腹心となる冥界の首相。
また、60の病魔を従えて人々を苦しめる疫病神でもあり、冥界の悪霊達の守護者でもあるという。
冥界の執事と呼ばれるフシュビシャグという妻が居り、彼女は死したるエンキドゥを冥界に優しく迎え入れたとする神話が残る。
二人の娘はヘムディクグとされる。
ナムタルの名前は“運命”を意味するとされる。
……こう書くと凄そうだが、元々は単なる病魔や下位の神の名前であったとも推察されており、色々と役割や名前の意味が大きくなったのは、エレシュキガルが賞罰の神としての性格を獲得すると共に彼女の腹心とされるようになってからの話である……とも考えられている。
姿は恐ろしく、正に病を撒き散らす悪魔といった様相で捻れた手や毒に満ちた口を持っていたり、剣で人を殺している姿(人にとって有害そうな姿?)で描かれる可能性があると説明されている。
こんな姿だが、中々の苦労人(?)でもあるようで冥界に引きこもっている(または出ることを許されていない)エレシュキガルの代わりに、対外交渉や神々の会合の際には代理でナムタルが出席するのだという。
ネルガル神話では、そのナムタルを侮辱(や無視)されたことに怒り心頭に達したエレシュキガルが、詫びに来させたネルガルと恋に落ちるというパターンとなっている為に、ある意味ではキューピッドである。
また、イシュタル神話(冥府下り)では、全裸にされて引き立てられた彼女に呪い(60の病)を浴びせて完全に無力化させる役目を負っている。
また、かなり後代にはネルガルの代でも彼の腹心として記録されている例が見つかっている。

■べーレット・セリ(ベーレト・セリ)

冥界の書記官と伝えられる女神。
元々はバビロニア神話の女神で、名前の意味は“草原の女主人”とされる。

■死者を裁く七人の裁判官

七つの門の各々で死者を裁き冥界に無事に到れるかを見定める。


……この他、この冥界には、かの風の魔神パズス(パズズ)や、赤子を喰らう女悪魔のラマシュトゥや、人さらいの悪魔ガラ(ガッラ)といったメソポタミア(シュメール/バビロニア/アッカド)神話の魔物達も暮らしていたという。

【冥府(冥界)下りと姉妹の確執】

イシュタル(イナンナ)とは相反する属性を分け合っているというだけならともかく、神話中では明確に敵対関係が描かれている。
イシュタル(イナンナ)に纏わる神話の中でも最も有名にして、他地域にも伝わった“冥府下り”の神話に於いて敵役として立ち塞がるのがエレシュキガルであり、細かなバリエーションの違いがあるものの、概ねは以下の通り。

①恋人(夫)ドゥムジを失ったイシュタル(イナンナ)が生きながら冥界へ

②イシュタル(イナンナ)七つの門を通る度に衣服を剥ぎ取られていき、エレシュキガルの御前に引き立てられた時には全裸に

③イシュタル(イナンナ)がエレシュキガルに殺害(無力化されて幽閉)される

④生殖活動を司るイシュタル(イナンナ)が居ないと地上が枯れるのでエア(エンキ)の介入により最終的にドゥムジ(とその姉妹)が犠牲になることでイシュタル(イナンナ)は解放される

……と、いうものである。
尚、イシュタル(イナンナ)が冥界に下ったのは傲慢にも姉エレシュキガルの支配領域である冥界をも支配しようとして返り討ちにあったのだ、とされている場合もある。
この冥府下りの神話はウガリット神話のバアルとアナト、ギリシャ神話のハデスとペルセポネ(やその他)や、エジプト神話のオシリスとイシスなど、多くの類型神話の大元となった神話と見なされている。
……日本神話のイザナギとイザナミの神話とも似た要素があるのは、当時の『古事記』の編纂者達が矢張り、同神話か類型神話を知って取り入れたのだろう……とも考えられるようになってきているようである。

【ネルガルとの出会い】

さて、先にも幾度も述べてきたようにアッカド神話の時代となるとエレシュキガルは夫としたネルガルの配偶神という立場となり冥界の支配者の地位を譲っているのだが、それには中々にR-18などエロい神話が語られている。

これも、幾つかのパターンがあるのだが、主な流れは以下の通り。

①天界で神々の宴会が催され、冥界の使者として赴いたナムタルをネルガルが侮辱

②怒り心頭となった冥界の女王を鎮める為に最高神アヌ/エンリル/エアの三大神はネルガルを詫びに冥界に行かせることを決定

③ネルガル、不遜を働いたとはいえ一応は客の為に沐浴していたエレシュキガルの裸体に欲情して挑みかかり、冥界で相手も居らずに肢体を持て余していたエレシュキガルも受け入れる、そのまま6日6晩も愛し合う

④ヤるだけヤって満足したネルガルは7日目の朝に放心状態のエレシュキガルを置いて帰ってしまうが、ネルガル砲の威力に魅せられたエレシュキガルは地上(に疫病を撒き散らすの)を人質にネルガルを戻せと天界を脅迫

⑤ネルガル今回は取り繕う必要など無いとばかりに冥界の七つの門を破壊しながら戻るとエレシュキガルを強引に玉座から引きずり降ろす

ネルガルの男らしさに更に骨抜きにされたエレシュキガルは自分の御主人様になってと懇願。これを受け入れたネルガルが新たに冥界の支配者に


……という、何とも何でこんなにエロい話にされたんだ?という経緯を経て二人は結ばれてアッカド神話(バビロニア神話)以降はメソポタミアの冥界はネルガルが支配神となったらしい。
尚、実際の記録ではあらすじなんかよりも遥かに濃密でエレシュキガルはキッチリとネルガルに孕ませられたりSM紛いの行為で屈服させられたことが語られている。

尚、このクソ強いネルガル神だが、主に戦争の神として伝えられているものの、太陽神シャマシュと同一視されることもあったという。
シャマシュは、先に述べたアヌ/エンリル/エアにも並べる位の力ある神とされていたことから、それ程の神格なら冥界の女王を男の魅力で屈服させてメロメロにすることも容易かったのかもしれない。元々は女神説があったりシャマシュとしては品性方向な性格ばかり語られてるのはこの際考えないように。

また、冥界の神となってからは死と疫病も属性とするようになっている。

ネルガルはエンリルの子であるが、その誕生経緯が少し複雑で、エンリルが処女であった植物の女神ニンリルをレイプしてしまった罪で冥界送りとなった後で、長子となる月神シンを身籠ったことに気付いたニンリルが(認知と正式な婚姻を求めて)冥界に押しかけたニンリルを言葉巧みに騙して再度レイプした時に出来た子供の一人である。
……まぁ、後でちゃんとニンリルはエンリルの配偶神となっているのだからだが、この親父あって子ありというか……というかそもそも冥界生まれなんだなネルガルさん。






追記修正はクリムゾンな恋を体験してからお願い致します。

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最終更新:2026年09月08日 00:43