オペラ座館殺人事件(金田一少年の事件簿)

登録日:2012/06/10(日) 22:21:13
更新日:2023/05/04 Thu 00:44:53
所要時間:約 17 分で読めます





地獄の業火に焼かれながら
それでも天国に憧れる


オペラ座館殺人事件とは、かつて金田一少年が解決した事件のうちの一件で、金田一少年の事件簿での最初の事件である。
単行本1~2巻に収録。全6話。
テレビドラマでは第1シーズン第3話として1995年7月29日に、テレビアニメでは第21話~第23話として1997年8月25日~9月8にかけて放送された。
ノベライズが2022年5月に発売された。

アニメ版での容疑者リストは上の段が左から仙道、神矢、早乙女、布施、緒方で下の段が桐生、亮二、日高、黒沢、歌月となっておりバックは薄い橙色。
登場する怪人は「ファントム【歌月(かげつ)】」。

『金田一少年の事件簿』シリーズの記念すべき第1話であり、ヒロインの七瀬美雪と一の良き理解者となる剣持勇もこの事件から登場している。


【あらすじ】

名探偵・金田一耕助の孫である金田一一は、どこにでもいるような普通の男子高校生。
ある日、幼馴染の七瀬美雪に頼まれ不動高校演劇部の合宿に音響係として参加することになった。
主演女優が自殺した演劇部、その合宿の舞台となる伊豆沖の孤島・歌島に建つ曰く付きの洋館オペラ座館…そこで一を待っていたのは血塗られた惨劇だった…。


【以下ネタバレにご注意下さい】




【登場人物】
  • 月島冬子
CV:深見梨加/演:園田亜希子
不動高校演劇部2年。
舞台に立つだけで周りを魅了してしまう才能とスター性に溢れた少女。
「オペラ座の怪人」のヒロイン・クリスティーヌを演じる予定だったが、合宿の1ヶ月前に硫酸を被り、顔に大火傷を負ってしまう。
そしてその数日後…見舞いに来た演劇部員の目の前で冒頭の台詞を語りながら飛び降り自殺した。

  • 黒沢和馬
CV:笹岡繁蔵/演:夏八木勲
オペラ座館オーナー。
その名の通りオペラ座館はなかなかの規模の演劇舞台がある宿泊施設であるが、特に追加使用料金などは取っていないようだ。
「掃除さえしてくだされば、機材は今でも使えますよ(=自由に使ってくださって結構ですよ)」と太っ腹なところを見せてくれている。
人のよさそうな中年男性だが頬に傷痕があり、所々恐ろしい形相を見せる時がある。
なお、4年前に娘が自殺しているが、そのことが後に新たな殺人事件を引き起こすことに…。
ドラマ版の演者はその事件の映画版で剣持警部の声を担当している。

  • 日高織絵
CV:永島由子/演:多田亜沙美
不動高校演劇部2年。
Fカップの胸を持つ明るく人懐っこい少女。一を「キンダニくん」と間違えて呼ぶ。
時折怯えたような表情を浮かべるが…
第1の被害者で照明(アニメではシャンデリア)に潰され圧死する。記念すべき(?)作品初の被害者及び女性被害者
ちなみにその時パンチラしている…生きている時に見たかった…

原作では一に興味(好意)を示していたが、アニメ版では船酔いする一に「なさけな~い」と呆れる程度で
一との絡みもほとんどなく、変わりに怯えるシーンや「どうせ私には才能がない」と発言したりと、ネガティブな場面が増えている。

ノベライズ版では役者志望の早乙女、桐生に対して、部活動レベルの認識しかない日高との差を埋めるのは難しい、と演技下手についてフォローされている。

ちなみに、ドラマ版でも彼女の死体のポーズ(左手を宙に伸ばすようにして倒れている)はきっちり原作通りだが、
アップになるシーンを見るとその左手が明らかに動いている。
実際にやってみれば分かる通り、手を中途半端に伸ばした状態で静止させるのはかなり辛いので仕方ないが。

  • 桐生春美
CV:熊谷ニーナ/演:高原遊
不動高校演劇部2年。メグ・ジリー役。
普段は眼鏡に髪を左右に結ってキツイ言動が目立つが、舞台に上がると完璧に役になりきった美少女へと変貌を遂げる。
第2の被害者であり一と美雪に
「この殺人は月島冬子の幻影にとりつかれた誰かの仕業」
と意味深な言葉を残すが、その翌日首を吊っているのを発見された。
死んでいる時Yシャツにパンツ姿で微妙に胸が透けていた…だから生きている時に(ry

ちなみに、ドラマ版では性格のみ踏襲され、舞台に上がる前の普段の姿における描写はカット。
更に、これと目立った特徴や行動も無く殺害されたので、どことなく空気な印象となった。

  • 早乙女涼子
CV:松井菜桜子
不動高校演劇部3年。
自殺した月島の代わりにヒロインになった、美人でスタイルも良いがかなりキツイ性格の少女。
上手く芝居ができない日高織絵に辛く当たり、終いには「彼女を外さないなら、自分がヒロイン役を辞める」とまで言い出す超迷惑な身勝手ガール。
日高、桐生が殺されていくことに異常とも言える怯えを見せているが…
ドラマ版では鷹島友代が代役となっている。

死の恐怖に対する明らかな怯えを見せ始めたのは、桐生の死体が発見された時。
歌月に襲われた後には、それまでの身勝手な言動やヒステリックな性格もすっかりなりを潜めてしまい
食堂に集められた際の、しょんぼりした様子のアニメ版の彼女は中々可愛らしい。
中の人は鈴木財閥のお嬢様。

  • 緒方夏代
CV:富沢美智恵
不動高校演劇部顧問。
妖艶な雰囲気を醸し出す美女。喫煙者。
演劇部顧問としてもなかなか堂に入っており、一に「あのセンセイ役者やな~」と言わしめ、部員たちの評価でも「下手な女優よりよっぽど美人」と一目置かれている存在。
シリーズで最初に一の秘めたる才能に気付いた人。
一のIQが180であることを明らかにした最初の人物(なお、一の担任は最近(2014年)の作品の時点ですらそれを知らなかった)。
3人目の被害者であり、犯人のトリックの鍵を見つけてしまったため殺害される。
死体は全裸にされて浴槽に沈められていた…だから(ry

アニメでは教師ではなくオペラ座館のシェフとして登場、盗癖があり宿泊客の物を勝手に持ち出す(後で返すとはいえ)という
問題ぶりも描かれたが、一の推理に役だったので、彼女の盗癖に感謝しないといけない…かもしれない。

  • 布施光彦
CV:伊藤健太郎/演:秋山純
不動高校3年。
演劇部部長でファントム役。
イケメンだがキザな性格で、序盤一を馬鹿にしていた。美雪を除く女の子達の前で手品用トランプを使ったトリックでカッコをつけるが、一に女の子達の前でそのタネを暴かれて恥をかいたうえに、一の本物の手品でトランプを股間に突っ込まれるという、さらなる辱めを受ける。
ちなみに、作中で有森が手書きしたオペラ座館の見取り図が登場するのだが、
彼だけ名前が書かれておらずどの部屋に宿泊しているか分からない。このミスは文庫コミックスでも修正されていない。
アニメでは有森に代わって月島冬子の自殺を一に教えている。更に原作の様なキザな一面は描写されていないが、月島冬子と恋人同士だったという嘘八百の噂を流していた。
上記のミスに加えてアニメのクレジットでは「布施一彦」と誤表記されるなど扱いが悪い。
ドラマ版の演者は、後の「銀狼怪奇ファイル」に土門竜太郎役でレギュラー出演することになり、のちの事件にも出演。さらに事件の舞台であるホテルのオーナーの甥という設定になっている。

  • 有森裕二
演:小橋賢児
不動高校2年。小道具係で美術部にも入っている。また、ヒロインの恋人も担当している*1らしいが何故か作中では言及されない。
(後の「学園七不思議殺人事件」によると「部活の掛け持ちは校則で禁止されている」らしいのだが、後に美雪もミス研と掛け持ちしていたりする)
一に月島冬子の自殺について教えた人物。今回の事件では半分助手のような役割で一と行動を共にすることが多い。一をわざと「カネダイチイチ」と間違えて呼ぶ。
なぜかアニメでは重要人物のはずなのに存在を抹消され、彼のそっくりさんが登場。
ドラマ版ではこれまたなぜか名前が「裕二」から「裕」に変更されている。

  • 仙道豊
CV:高戸靖広
不動高校2年。大道具係(アニメでは小道具係も兼任)。
原作では基本的に空気だが、アニメでは小道具製作に並々ならぬ(一曰くちょっと病気入ってる)熱意を見せたり、
「クリスティーヌは月島冬子にしか演じる事が出来ない」「何故彼女を殺したんだ」と月島冬子の演技をひどく買い被ったり*2
殺人に関して冬子の亡霊が犯人だと言ったりと、不気味さが加えられている。

  • 神矢修一郎
CV:高木渉
不動高校2年。照明兼役者。
月島冬子の写真を隠し持っており、それを複雑そうに見ているが…。
アニメでは無愛想なキャラ付けがされていて、美雪曰く「無口な人間嫌い」
アニメでは彼のイニシャルS・Kが出てくるシーンがあるが遠野先輩は関係ない。もしオリエンタル号に乗っていたのであれば乗客リストに名前があるはずだし、悲恋湖に呼び出されているはずである

横浜で開業医をしているオペラ座館の宿泊客。
手術用のメスと鉗子で食事をしたりと、どこか常軌を逸した雰囲気を漂わせる。
後の準レギュラー。
今回の事件でオペラ座館が気に入ったらしく、後のオペラ座館・新たなる殺人でも再び宿泊。そのほか、タロット山荘殺人事件にも登場。
しかしドラマとアニメ共に出てこない。

  • 不動高校の数学教師
名前は正確には不明で、「ノモッツァン」だというあだ名があることが後の事件で判明する。
そしてそのさらに後の事件になるまで、金田一がIQ180であることを知らなかった(今回登場した緒方先生ですら知っていたことなのに)。
この事件の後もたびたび登場するため勘違いされがちだが、彼は一の担任ではない。

  • 月島亮二
CV:堀川亮(現:堀川りょう
アニメ版のみ登場の人物。月島冬子の兄で、演劇部顧問。
「妹のことが心配で恋人ができない」という重度のシスコンであり、死後も妹の日記を常に持ち歩いていた。
有森と同じ顔で、アニメに登場しない彼の代役的ポジション。

  • 歌月
不動高校演劇部が来る前日にオペラ座館に現れた顔を包帯でグルグル巻きにしている謎の人物。
事件発生と同時に部屋に地獄の業火に焼かれよというメッセージを残して行方をくらませる。
日高、桐生、緒方の3人が殺害された後早乙女を襲うが失敗、追い詰められた末に窓から海に落ちたと思われたが…
余談だが桐生が殺害される時に彼が眠っている美雪の部屋を覗くシーンはかなり怖い。

原作では何の説明もなく包帯男と呼ばれていたがノベライズ版では男と明言されている。

  • 従業員
演:モロ師岡、楠美津香
オペラ座館従業員。
原作ではセリフのない背景キャラ。コックのおっさんと雑用の青年。

ドラマ版では大体2人1セットで登場し、息が合っているのか合ってないかのような行動をとっていた。
性別や年齢が変更されているので実質別人。
モロ師岡氏はのちにアニメ版にも登場する。

【レギュラー陣】
今回が初めての事件となる主人公。
美雪に頼まれて演劇部の合宿に音響係として参加することになる。
緒方により、IQ180の天才であること、入学時の試験では秀才の美雪をもしのぐ学校始まって以来の好成績を叩き出したことが明らかとなる(美雪も知らなかったらしい)

今回の事件において、一は「時計とボーガンが行方不明になっている」ということなどから犯人が食堂に時限式トラップを仕掛けたことに気付き、それを逆手にとって犯人の正体を暴く。
だが、初めての事件でそこまで気が回らなかったor犯人の方に細工すれば問題ないと甘く見ていたためか、肝心のトラップ本体を探さずに放置するというミスをしでかした。(謎解きの際に問題のトラップについて「多分こんな仕掛けだろう」と想像で語っている台詞があるため、実は探していなかったことが分かる)
狭い食堂の中、しかも殺害対象となる人物だけを狙える位置となるとかなり限られてくるので、探せばすぐに見つかったはずなのだが…。
さすがにまずかったのか、ドラマとアニメではきちんとトラップを発見して解除している。

幼い頃から、美雪に何かあると、優しく慰めてやる性格だったらしい。

アニメ版では歌月に実際に襲われ、(歌月の演技だったとはいえ)ナイフで刺されそうになっている。

ヒロイン。
場馴れしていないためか、日高の死体を見つけた際に気絶するという今では考えられない姿を見せた(死体が親しい同級生だったことも影響しているかもしれないが)
一がIQ180であることは知らなかったらしい。
ちなみに今回の合宿を計画したのは彼女であり、そのせいでこんなことになってしまったと、自分を責めたりもしたが、一に「お前は悪くない、俺が保証するぜ」と慰められ、感謝しながら抱きついた。
ある意味、彼女も犯人の犯行により精神的被害の犠牲になった一人であろう。
桐生の死体が発見される前、部屋に侵入した歌月に首を絞められて殺されかかる。…が、実は夢だった。
また、オペラ座の怪人のマスクをかぶった人物が、部屋の窓の外から覗き込んでいるところを目撃。…これは現実だった。しかし、上記の悪夢から目覚めた直後で、夢と現実がごっちゃになっていたため、そのことをすぐには一達に伝えなかった。
終盤では、犯人からの脅迫状に怯える早乙女とともに部屋(一か美雪の部屋と思われるが、具体的には不明(ノベライズ版では美雪の部屋))にいるところを歌月に襲撃されるが、一と剣持が駆けつけたおかげで歌月が逃亡したことと、元々犯人には美雪や(あの時点での)早乙女に危害を加える気が無かったと思われることから無傷だった。
事件後、一とともに、生まれて初めてだというあることをした。

演劇部員で1人だけ劇の役割について一切触れられていない。

冒頭で転落しそうになった一を助ける際に風でスカートが捲れて薄紫色のパンティをクラスの男子たちに晒すことになったほか、着替え中で下着姿の状態で一に脱衣所に入られるという鉄板なラッキースケベが早くも描かれた。
なお、この手のエロハプニングのほとんどをカットしたアニメ版でも、後者のシーンはしっかり再現していた。スタッフGJ
一曰く、ピンクのクマさん柄のパンツを履いていたとのことだが、本人はもう取り替えたと語っている。

警視庁捜査一課のポンコツ警部。
休暇で偶然オペラ座館に宿泊しに来ていた。
無愛想かつ高圧的な態度が顕著で、一を何回もガキ呼ばわりしている。彼が不愛想で高圧的だったのは実は本編から3年前の事件が原因だったりする。
ワイヤーをロクに見もせず「老朽化による事故」と判断し、一に指摘されるなどかなりいい加減。
(ちなみに、ドラマ版では剣持自身がワイヤーが何者かに切断されたものと確認している)
事件を解決した一の推理力を見たことで「大した男だ」と認識や態度を改め、金田一少年シリーズに欠かせないレギュラーになる。

ミス研部長で自称一のライバル。ドラマ版のみ登場。
演劇部の手伝いのため一行に同行していたが、殆ど友代の付き人のような仕事をしていた。
まだ天才高校生推理作家を自称しており、一よりも先に事件を解決しようとする。
捜査中に、柱時計の裏に隠し通路があるのを見つけ、剣持に知らせる。

ミス研部員。ドラマ版のみ登場。
演劇部の手伝いのため一行に同行。捜査中は真壁と行動を共にしていたが、未だに天才高校生推理作家を自称する彼に呆れていた。

  • 鷹島友代
ミス研部員。ドラマ版で早乙女涼子の代役として登場。
前回登場した『学園七不思議殺人事件』の時とは容姿と性格がガラリと変わっている。演劇部にも入っていたらしい。
原作の涼子と同じく、歌月に命を狙われる。

  • 向井猛夫
剣持の部下。ドラマ版オリジナルキャラクター。
休暇を利用してオペラ座館に来ていた。
剣持とはたまたま休暇が合ったようで、剣持の分までホテル予約等の手配をしたらしい。
事件の捜査中は、原作の剣持のような高圧的な態度が目立っていた。





【以下事件の核心】




















俺たちは…冬子と俺は愛しあってたんだ
お前らの知らない所でひっそりと―

  • 有森裕二
この事件の真犯人「ファントム(歌月)」
月島冬子の恋人であった彼は、月島がなぜ硫酸を被ってしまったのか知っていた。
華やかな舞台で輝く月島に嫉妬した早乙女、桐生、日高の3人が服を焦がす程度のイタズラをしようとした末の事故であるという真実を。
しかし3人のことを誰にも言わず許そうとしていた月島の意を汲み、有森も3人を憎もうとはしなかったのだが…。
ある日、外の風に当たろうとしていた有森と月島の耳に聞こえてきた早乙女達の会話が全てを狂わせてしまったのである。

日高「よかったぁ!月島さん、あたしたちのこと誰にも言ってないのね!?」
桐生「ラッキーだったじゃないの」
早乙女「ほら、あたしの言った通りでしょ?

あの子、あくまでいい子ぶる気なんだから
おかげでこっちは助かっちゃったけど~~!!

反省するどころか悪びれもせず月島が入院している病院でこんな会話を交わしていた3人。
それを聞いて3人に怒りをぶつけようとした有森は、その時は月島に止められる形でその怒りを飲み込んだ。
しかしその翌日に月島が自殺し、その時に語られた冒頭の言葉を聞いた有森は決心する。

復讐しかないと…

歌月という異常な殺人鬼の存在を演出しながら日高、桐生、トリックの種を見つけてしまった緒方を殺害。
さらに歌月を死んだように見せかけた後、オペラ座館の食堂では座る位置が決まっていることを利用し、
ボーガンと時計を使った時限式の装置で早乙女を殺そうとする。
が、既にトリックを見破っていた一の細工で自分が早乙女の席に座らされ、更に自分の腕時計の時間をこっそりずらされていたため、
装置が起動するはずの時刻にボーガンを避けるために動いてしまい、犯人が自分であると証明してしまった。
犯行の露見後早乙女をナイフで殺害しようとするが、一の言葉で月島が復讐を望んでいなかったことを悟る。
しかし関係のない緒方まで殺してしまった以上、今更同情の余地など無く自身も早乙女達と同じ穴の狢であると言う現実を悟っていた彼は、ボーガンの射線上に自ら入ってその胸に矢を受けた。
最後はファントムのクリスティーヌへの愛は本物だったと言う一に「お前とはもっと違う形で会いたかった」と呟きながら死亡、その死は一に涙を流させた。
実は両親が離婚していた上に双方とも疎遠な一人暮らしを送っており、ほとんど身寄りのない状態であったことがラストで判明。
それを知った一と美雪はせめて自分たちだけでも、と有森と月島の墓参りをしている。
ちなみに、美雪が生まれて初めてした「あること」とは、一とともに有森の墓参りに行くために「学校をサボること」だった。


原作において、歌月に扮して早乙女を襲撃した際、彼女は美雪と一緒にいた。ここで逃亡して歌月が死んだように見せかけ、最後の朝に殺すつもりでボーガンを仕掛けて「死んだ歌月の罠だった」ということにする計画だったことから、襲撃した時点では早乙女を殺す気は無かったようである。
襲撃の際、その場に美雪が一緒にいたことについては、多分予想外だったと思われる。そこまで計算できるとは思えないし、だいいち、そこで早乙女を殺す気が無かったのであれば、他に誰かがいたとしても結果は同じだから、計算する必要自体が無い。また、誰かと一緒にいたとしても、どっちみち無関係の人間を傷つける理由も意味も無いので、関係無い。
そもそも、場所は一か美雪の部屋(どっちか不明)なのだが、脅迫状を見た早乙女がそこに行くこと自体、予測不能と思われる。早乙女を尾行でもして、どこに行くか確かめてから襲撃したのかもしれない。

なお、オペラ座の怪人のマスクをかぶって窓から美雪の部屋の中を覗き込んだのは、「オペラ座の怪人」になぞらえた殺人であることを暗示するため。美雪の部屋を選んだ理由は不明だが、桐生の部屋の隣で、一番近かったから、という可能性がある。


嘘だ…月島さんが僕なんか…
でたらめを言うな!!


また、ドラマ版では恋人同士の間柄ではなく、有森は月島に一方的に片思いをしていた部員という扱いになっており、原作よりも少々卑屈な性格でもある。
ただし、全ての犯行を暴かれた後に、月島と両想いであった事を月島の遺書で知り、涙を流して自殺する。
自殺の方法も改変されており、ボーガンの罠は一に解除されていたため、歌月の偽装自殺をなぞるような形で食堂の窓を突き破って崖下の海へ飛び降り自殺という形になっている。

オペラ座館で起きた3つの殺人事件の内、無関係の人間を殺害し、ターゲット全員を殺せなかったのは有森だけである。
更に余談だが、アニメではなぜか設定が変更されて有森自体がいないため、犯人は別の人物に変更されている。


…クリスティーヌ、君を見つめるたびに僕の胸は苦しくなる…
…あぁラウル、ラウル……私を呼んでくれるの? クリスティーヌと…

  • 神矢修一郎
アニメ版における真犯人。冬子の恋人である点など基本的な設定は有森と同じである。
アニメオリジナルで冬子とのなれ初めが描かれており、喧嘩相手に重傷を負わせてしまったことから「二度と暴力は振るわない」と誓ったものの、
不良少年であった過去から喧嘩を売られ続け、心身ともにボロボロになったところを冬子に慰められたことから彼女との交際がはじまった。
こちらもボーガンの罠が解除されていたため、最期は食堂から逃亡しオペラ座館の屋根から飛び降り自殺している。
(こちらは屋上から飛び降りた冬子の自殺をなぞる形になっているが、直接の死因は飛び降りた際に持っていたナイフが腹部に刺さったこと)

  • 月島冬子
その類稀なる才能から早乙女たちの嫉妬を受け、スカートに硫酸を垂らすという過激なイタズラのターゲットにされる。
早乙女たちからすれば突然焦げたスカートに慌てふためく月島を笑ってやろうという程度の軽い気持ちだったようだが、驚いた拍子に薬品棚にぶつかった彼女は不運にも棚から転がり落ちた硫酸の瓶の直撃を受けてしまった。
それでも早乙女たちの行為を誰にも言わず許そうとしていた彼女だが、3人の心無い言葉は彼女を自殺という結末へ追い込むこととなる。

有森の死後、警察が有森の住んでいたアパートを捜索した際、溜まった郵便物に埋もれ、封も切られずに放置されていた一通の手紙が発見された。
それは月島が有森に宛てて書いた遺書…中に書かれていたのは、ほんの少しでも天国に近い場所に行くため、早乙女達3人への憎しみに心を焼き尽くされる前に死を選ぶこと、
そして有森にも3人を憎まないでほしいという内容。


「有森君もどうかあの三人を憎まないで
いつかまた同じ天国(くに)で暮らせるように……」

一の言う通り、月島冬子は復讐を望んでなどいなかったのだ。

しかしその手紙は、月島の死によって復讐という地獄の炎に身を焼かれ、アパートにも帰らずに彷徨う日々を送っていた有森に届くことはなく…
そういう意味では、この事件は悲しいすれ違いが起こしたものと言えるのかもしれない。

  • 日高織絵
事件後、一は日高、桐生、早乙女の3人は月島に対する罪悪感に怯えていたと推理した。
だが、実際にその様な態度を事件前から見せていたのは日高織絵だけである(早乙女の怯えは罪悪感ではなく自分が殺されるかもしれないという恐怖感からくるものだった可能性がある)。
もし、有森が月島の恋人だったことを彼女が知っていれば、結末は変わっていたかもしれない。

  • 桐生春美
第一の事件が起き一達と自分の部屋に戻る際「まるで月島さんの亡霊が私たちに復讐してるみたい」と意味深な発言をしている。
日高や早乙女のような怯えを見せなかったとはいえ、桐生も心の奥底では月島に対する罪悪感に怯えていたのだろうか。

アニメ版では殺される前夜の一たちとのやり取りに台詞が追加され、
彼女の月島冬子に対する嫉妬の深さを窺い知ることができるようになっている。
「あたしね、心から冬子の亡霊に会いたいわ。会って言ってやるのよ!
『あなたの隣にいると、死ぬほどみじめだった! この哀しみがあなたに分かる…?』ってね」

月島に危険な悪戯を仕掛け、挙句の果てに死に追いやってもなお、彼女への嫉妬を抱き続けた桐生。
それは罪悪感から逃れるためのものだったのかもしれないが、
その心は憎悪という炎に焼かれた「歌月」の心と同じように、嫉妬という名の地獄の業火に焼かれ、醜く変わり果てていたのかもしれない…。

  • 早乙女涼子
有森のターゲットの3人の中で唯一生き残った。
だが3人の中で月島冬子の自殺に対する責任が一番重いのは間違いなく彼女である。
月島に危険な悪戯を仕掛け、顔に大火傷を負わせた上、月島が入院している病院の屋上で心無い一言を言い放ち彼女を自殺に追い込んだ。
更に月島が自殺した後も周囲の人間を罵倒するなどきつい性格に改善は見られず焦りの色を見せ始めたのは桐生が殺されてからで、犯人からの脅迫状を受け取った時は、一と美雪に相談を持ち掛けた。
公式ガイドブックによると、今回の事件での自責の念から学校を自主退学し、各地の老人ホームを訪問するボランティア活動をしているとのこと。
有森と月島の命日にはいつも墓参りに訪れているらしい。
また剣持警部曰く「月島が硫酸を被ってしまったこと自体はやはり事故だから」と言うことでお咎めは事情聴取のみとなったとのこと。生き残ったターゲットの中で数少ない良心が残っている人物である。
原作では、事件後、美雪は早乙女が特に罪に問われないことに対して安堵の意思を示しており、有森が自殺して号泣する早乙女に同情する気持ちもあったようだ。

  • 緒方夏代
犯人にとって都合の悪い物を発見してしまい、口封じ目的で殺害された。
この時点で犯人は既にターゲットの3人の内2人は殺し終えており、残るは早乙女のみという状況だった。
つまり先生が殺されたのは早乙女を殺すまでの時間稼ぎの為である。
だが最終的に犯人は早乙女の殺害を断念した。
(犯行時に服に血がついたため)服を脱がされて全裸にされ、バスタブに放り込まれた。が、後頭部を割られた死体を溺死に見せかけることはどう考えても不可能のため、バスタブに放り込んだのは、予定外の殺人を「オペラ座の怪人」に無理矢理こじつけるためと、犯行現場を浴室に見せかけるためだろう。ただ、付け爪を取らなかったことで入浴中の殺人でないことが露見、さらに1つだけ殺害時に落ちた付け爪が犯行現場にそのまま残っていたことで、本当の犯行現場もあっさりバレた。
罪も無いのに教え子に殺された時点でとてつもなく不幸なのに、死後、男に全裸にされ、そのうえ複数の人間に裸を見られるという辱めまで受けるという、泣きっ面に蜂どころじゃない、この事件最大の被害者である。

  • 剣持勇
この後、準レギュラー第1号として、一や美雪の良き理解者、協力者となる。
ちなみに、月島の事故の話を聞いた時、「犯人「歌月」は月島の縁者か親しい知人で、彼女の自殺の理由を何かで知り、復讐のチャンスを狙っていて、合宿のことをかぎつけ、前日にホテルにチェックイン。「オペラ座の怪人」になぞらえて月島の無念を晴らそうとしている」と推理。実際のところ、この推理は、大部分が当たっていた


【原作との違い】

原作では第一話なのだが、ドラマ・アニメ版ともに、なぜか『学園七不思議殺人事件』にその座を奪われている。

◇ドラマ版
  • 演劇部が月島の自殺によって原作以上に部員不足に陥っており、ミス研に助っ人を頼んだという設定に変更。
  • 冒頭では美雪のナレーションではなく月島の「地獄の業火に焼かれながら」という台詞から始まっている。
    • そのため、鷹島が早乙女、真壁と佐木が神矢及び仙道の代役となっている。だがその鷹島は後の事件にて、金田一少年の事件簿シリーズ史上最もカオスなキャラになってしまうのであった…
  • 緒方夏代、結城先生は登場しない。
  • 稽古中日高に叫び声についてダメ出しする人物を美雪に変更。
  • 一は転校生という設定のため月島の自殺の件については知らない。
  • 日高達3人が月島にした悪戯は、原作では「少量の硫酸をスカートに垂らす」だったが、「お化けに仮装した日高達が理科室に呼び出した月島に糸が出るスプレーを吹きかけた」に変更。
  • 有森が日高達に殺意を抱いた動機が、冬子の騒動後に彼女たちが反省するどころかヒロインのクリスチーヌを争っていたからという理由に変更。
  • 『オペラ座の怪人』のヒロインの名前の発音を、原作で採用されていた「クリスティーヌ」から「クリスチーヌ」に変更。
  • 黒沢が月島冬子の演劇の師匠であった設定が追加され、月島の復讐を行う歌月の罪を被ろうとする。
    • 「近年の台本ではファントムの台詞にある『地獄の業火』が『地獄の炎』に変更されている」という設定になっており、
      黒沢が諳んじて見せた「『地獄の業火』に焼かれながら」という台詞と、歌月が残した「『地獄の炎』に焼かれよ」というメッセージの違いから、
      一が黒沢の無実を見抜く流れとなっている。
      • ただし、一が黒沢が無実であることを証明するシーンがあるのはディレクターズカット版のみであり、テレビ放送版ではカットされている。
        そのため、剣持警部たちと黒沢が一緒にいる間に歌月による鷹島襲撃事件が発生したことで黒沢への疑惑が晴れる流れとなっている。
  • 月島冬子の遺書は黒沢に送られている。
    • 有森については「ある人」と名前をぼかした上で触れられており、
      「鷹島たちについて話してしまったことを後悔している」「いつか天国で結ばれたい」と書かれていた。
  • 有森の月島に対する呼び方を「月島さん」に変更。
  • 日高殺害の捜査の際、観客側にいた美雪が緞帳の向こうの舞台側にいる一に声をかけており、一がその事で日高の殺害トリックに気付く。
  • 歌月が鷹島襲撃の際、彼女を切り付けようとしている。
  • 歌月が逃走の時間稼ぎのために廊下に火を放つ際は、原作では燃料を撒いてから火の点いたライターを投げて引火させていたが、ドラマ版では火炎瓶を用いている。
  • 原作で一が犯人の時計をいじるシーンがカット。代わりにトラップのボウガンを予め探し出し、事前に矢を外している。
  • 桐生殺害の時に、有森は仮面をつけている。その際の動作がやけにシュール。
  • 有森の最期を変更(前述)。

◇アニメ版
  • 前述のように犯人が変更されている。
  • 有森裕二は登場せず、デザインのみを引き継いだオリジナルキャラとして月島亮二が登場する。
  • 桐生春美の学年を3年生に変更。
  • 緒方夏代の設定を演劇部顧問からオペラ座館のシェフに変更。
  • 結城先生・剣持は登場しない。
  • ファントムのデザインが劇場版準拠に。
  • 日高織絵は舞台照明ではなくシャンデリアの下敷きになる。また、半ば脅迫めいた形で劇場に呼び出され許しを請うシーンなどが追加されている。
  • 中盤、一が緒方が持ち出した月島冬子の日記を発見し、そこに恋人の名前が「R」と伏せて書かれていたことから、
    唯一イニシャルに「R」の含まれる月島亮二に疑いの目を向ける。
    • 実際には、「R」は恋人本人ではなくクリスティーヌの恋人である「ラウル(ラウル・シャニュイ子爵)」のイニシャルから取られたものであった。
  • 全裸など肌の露出が激しい被害者の死体シーンは全て服を着せるなどの配慮がされている。
  • 美雪が使っていた部屋の2階は空き部屋になっている(原作では緒方が使っていた)。
  • 一と美雪が舞台の緞帳の実験を行う際、一が美雪の下着の柄を言うシーンはカット。
  • 犯人の最期を変更(前述)。
  • アニメ版では終盤「さりな」と呼ばれる金髪の女子高生が登場している(美雪が「さりなちゃん」と呼んでいるため)。始業間際に自転車で校門を通る際、そばにいた美雪に「遅れるよ」と言っている辺り、彼女と親しい関係と思われる。このさりなに関しては後姿しか登場しなかったが、当時のエンディングテーマを担当していた鈴木紗理奈がゲスト出演で担当している。さらに、校門で「さりな」に対し『早くしろよ』と急かす男性教師が登場しているが、これは実写版で黒沢役を演じた夏八木勲が担当した。

◇ノベライズ版
  • 冒頭に不動高校演劇部「オペラ座の怪人」のあらすじを追加。
  • 美雪と教師が教室で金田一を助けるシーンのパンチラ、スカートを押さえるシーンをカット。
  • 消費税率変更に合わせて布施のトランプの値段が税込み価格のみになった。
    • レシートや消印に1992年と記載されている原作と違い、西暦は不明。
  • 金田一が布施にトランプを返すシーンをカット。
  • 稽古中の日高の悲鳴に対する緒方のダメ出しがチカンにあったからネズミを見たに変更。
  • 有森の美術部員設定をカット。
  • 演劇部員で日高の部屋だけ2階にあることに金田一が疑問を持つシーンを追加。
  • 初日の夕食時、緒方が名札の席に座るように指示する代わりに結城に挨拶する。
  • 日高殺しの事情聴取時に黒沢がスタッフ2名を紹介する。

◇余談
事件の発端となった、月島冬子に対する「悪戯」には硫酸が用いられたが、硫酸は当然のごとくきちんと管理をしなければならない毒劇物に指定されている。
早乙女ら一般生徒が持ち出せるのも論外だが、月島が浴びた硫酸の瓶のように「鍵の開いたガラス戸の棚の上段」に配置する不動高校も管理責任を問われるべきである(ある意味、真の事件の発端は不動高校と言えるかもしれない)。
しかもドラマ版に至ってはただ棚の上に置いているだけで誰でも簡単に持ち出せる状態になっていた(日高達から悪戯で糸が出るスプレーを掛けられた際に体制を崩した冬子が棚にあたり、その拍子においてあった硫酸を浴びてしまったのだからもっと酷い)。

普通は鍵のかかる暗室の倉庫に、それも地震等で転倒した際に割れないようにするために、なるべく床に直置きにするものである。
また納める瓶も小瓶ではなく、『かなり分厚く、両腕で抱えなければ持てないような底が広く大きな瓶』に入れておくのが普通であり(実験の際などに使う場合は、小さな容器も持って行って、必要量だけ移し替える形をとる)、その上で周辺も災害時に備えた二重三重の転倒予防や管理が取られるものである。
アニメ版ではさすがに劇薬管理の杜撰さが酷すぎると判断されたためか「早乙女たちが硫酸の瓶を持ち出したあと、それを机の上に置きっぱなしにしており、月島が転んで机にぶつかった拍子に瓶が転がり落ちた」という流れに変更されている。
(前述のように一般生徒が教師の監督なしに劇薬の瓶を持ち出せたこと自体も問題だが、そこは話の流れ的に仕方ないだろうし、もしかしたら何らかの方法で盗み出した可能性もある)。

有森は歌月名義でオペラ座館にチェックイン後にモーター付きゴムボートで島を出たのだがエンジン付きゴムボートを動かすには…
  • ゴムボート本体*3
  • ゴムボートを膨らます為のポンプ
  • 船外機(モーター部分に相当)
  • 船外機の動力源(ガソリン式の場合燃料となるガソリンや混合用オイル、充電式の場合はバッテリー)
    • 消防法で特定容器が無いと販売してくれないので、ガソリン等の場合は携行缶で持ち歩いたと思われ当然これだけでも容量を圧迫、後述の航海可能距離から予備分も用意した場合は更に圧迫したと思われる。
ざっと考えてもこれらの物が必要で、スーツケースに収めるのは相当大変だったと思われる。
また、有森は船舶免許など持っていなかったので船外機は免許不要の2馬力の船外機を使ったと思われる。このレベルの船外機だと精々1キロレベル航海できればいい方である。
次の日が嵐になる様な天候を考慮すると海のど真ん中で燃料切れで漂流する危険性もあり、初っ端から結構綱渡りだった事が伺える。

なお、犯人が仕掛けたボウガンを使った時限式殺人トラップであるが、原作で一が推理したトラップの仕組みは
  • 毒を塗った矢をセットした状態で引いた弦を糸で固定
  • その糸をカミソリの刃を付けた時計の針で切断して発射
となっているが、弓矢、特にボウガンは弦を引く際には相当な力(張力)が必要であり、一部では鐙(あぶみ)という先端に取り付けられた金具に足をかけねばならないほど。
そんなものを時計の針に取り付けたカミソリの刃で切れるような糸で固定するなど、現実では到底不可能である。

そのため、ドラマ版やアニメ版では仕掛けに関する予想や詳細は描かれなかったが、引き金の方に何らかの細工したものと思われる。(後者では一瞬だけ描写されており、電池ボックスなどの電機部品が見られた)

なお、有森が掛け持ちで所属していた美術部は後に別の事件で舞台になる

アニメ版の第23話では、生徒たちのガヤでお笑いコンビ『ジャリズム』がゲスト出演している。これは、のちに起こる事件でボケの渡邉鐘(後の世界のナベアツこと桂三度)をモデルとする人物が登場する事からその縁による。



◇更に余談
劇中何度も『オペラ座の怪人』のあらすじで「歌姫カルロッタがシャンデリアの下敷き→道具係ジョセフが首を絞められ吊るされる→フィリップ伯爵が水に引きずり込まれる」だと説明があるが、
ガストン・ルルーの原作小説にはこのような展開はない。
まず最初の死者はジョセフで、冒頭でいきなり死んでいたという話がされ、後の方で使われていた特殊なロープから投げ縄の名人のファントムが犯人だと断言される。
そして重要なのがカルロッタは死んでいない、シャンデリアの下敷きになったのは上演中の彼女を見ていた観客である。また、シャンデリア落下がファントムの仕業なのかもはっきりしていない。
最後にフィリップ伯爵は確かに溺死している(ラウルたちを探して地下に向かい後日溺死体で発見)が、これもファントムの仕業なのかはっきりしていない。*4
原作小説ではない他のバージョン準拠と言いたいところだが、『オペラ座館殺人事件』の描かれたころまでの著名な映画版は25年度版は原作通りの順番*5で歌姫は死んでおらず、43年度版はキャラの名前が大きく違うし、89年度版はファントムのデザインも殺害方法も異なる。
舞台劇なので細かいところは(トリックの都合などで)アレンジされているだけならいいのだが、この後のオペラ座館の事件でも全部の劇がこのあらすじである…う~む。
ノベライズ版では不動高校演劇部のアレンジ台本(脚本家は不明)と明言されている。
ちなみに作画担当のさとうふみや女史はこの話を描いた時点では『オペラ座の怪人』の詳しい内容を知らず原作者から渡されたプロット通りに描いただけだったため、後に舞台版を観劇した際に「カルロッタ死んでないんかい!」とツッコミを入れたそうな。

また、歌月が海に飛び込んだと見せかけるために使われたトリックは、実はミステリーの古典名作『黄色い部屋の謎』で使われたトリックと全く同じものである。
後の作品と違って騒ぎにならなかったのは、本作発表時点で著作権が切れていたことと、作者が『オペラ座の怪人』と同じガストン・ルルーなのでオマージュだと好意的に受け取られたことが理由と思われる。
ちなみにその後の作品には、実はもう一つ海外ミステリーからモロパクリしたトリックが使われているのだが、やはり著作権が切れていたこともあって全く問題にはならなかった。
ただし、あの十戒の提唱者の代表的短編から流用していたため、ミステリーマニアが読めば一発で分かったことだろう。



追記修正は緞帳を下ろした後にお願いします。

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最終更新:2023年05月04日 00:44

*1 最初の事件後のテロップでわかる。

*2 その為、アニメ版で冬子の兄である亮二からは「妹を疫病神みたいに言わないでくれ」と怒鳴られている。

*3 犯人達の事件簿ではオール付きだったので当然オールのスペースも必要になる。

*4 ファントム本人は余裕のある中盤の頃にシャンデリア落下について「カルロッタの歌がひどくて落ちた」と笑いながら答え、負けを認めった後の終盤で「フィリップの溺死は事故だ」と力なく答えている。

*5 この映画ではジョセフ殺害以外の2件もファントムの仕業確定という描写になっている