「今日も平和だねー。そしてボクは暇だよー」
アルキミア王国王女フォルトゥナ・グロリア・トルペ・アルキミアは机に突っ伏しながら平和と暇を噛み締めながらぽつりと呟く。本日も大臣のオグマ・フォルステットと財務官のロレンツォ・トムソンがアルキミア王国の政務を取り仕切る傍ら、フォルトゥナはとある一室にて──────錬金術師のマコトに貸し与えられた研究室──────暇を持て余していた。
「平和なのはいいことじゃないか。今日みたいに何でもないような日は特に」
マコトはコーヒーを飲みながらフォルトゥナの呟きに反応する。フォルトゥナはちらりとマコトの方に──────より正確にはマコトが座っている机の上に置かれた金に視線を向ける。ルミア金山で採掘されたもので純度が高く、またマコトの研究により独特な魔力紋があることが判明している。今はこの魔力紋を有する金についての研究をマコトは行っているのだ。
「気になるかい?」
その視線に気づいたのかマコトは手招きをする。フォルトゥナはマコトの元まで移動する。
「この金って不思議だよね。金自体に魔力紋?って言うのがあるんだから」
「それもただの魔力紋じゃない。他の地域では見られないような独特な紋だ。もしかしたらルミア金山特有のものかもしれないね」
「それってどういうこと?」
「それもただの魔力紋じゃない。他の地域では見られないような独特な紋だ。もしかしたらルミア金山特有のものかもしれないね」
「それってどういうこと?」
マコトの言動にフォルトゥナは疑問を呈する。金に独特な魔力紋があることと金山にどんな関係があるのか不思議に思ったのだ。
「ルミア金山自体に何かあるかもしれないってこと。他の地域で発見されたことのない魔力紋だからね。何かあると見ていいかもしれない」
「へー、例えば?」
「へー、例えば?」
マコトはしばし考えこんでから口を開く。
「もしかしたらルミア金山は自然の物ではなく人工的に、例えば錬金術で作られたが故のものかもしれないってね。錬金術で錬成された山だから他の地域では見られないような紋になっているのかも」
マコトの突拍子のない発言にフォルトゥナはぽかんと口を開ける。
「そんなことできるの?」
「普通に考えたら無理だね。でもカエルムで研究されてたような古代の技術ならできたのかもしれない。もっとも今のところ、それを裏付ける証拠がないから与太話の類でしかないけどね」
「普通に考えたら無理だね。でもカエルムで研究されてたような古代の技術ならできたのかもしれない。もっとも今のところ、それを裏付ける証拠がないから与太話の類でしかないけどね」
更に言うとこれ、金山の付近に住んでいた人たちから聞いた話だと、マコトは付け加える。あまりにも突拍子がなく、そして壮大な話にフォルトゥナの脳内は疑問でいっぱいとなる。そんなフォルトゥナの様子にマコトは苦笑する。
「まあ、事実かどうかさえ疑わしい話だから分からなくてもしょうがないよ。僕も何でそんな話があるのか、どこからそんな話が言い伝えられてきたのか全く分かってないんだから」
「うーん……じゃあ、もしその話が事実だったとして……なんで昔の人はルミア金山を錬成したんだろう?」
「ただの実験だったのかも。僕ら錬金術師って言うのは可能性があればとりあえず実験に移る人種だ。なんでと言われてもそういうものなんだよとしか言えないね」
「なんか味気ない答えだねー」
「ごめんごめん……」
「うーん……あ、 金が取れるようになって嬉しいって現場の人たちから聞いたしもしかしたら大昔の人からのプレゼントだったりして。ボクが大昔の錬金術師だったらマコト君たちへのお返しにそうするかも」
「多分それはないよ。僕ら錬金術師はそんな俗物的な施しは嫌うからね。仮に頼まれたってやらないよ」
「うーん……じゃあ、もしその話が事実だったとして……なんで昔の人はルミア金山を錬成したんだろう?」
「ただの実験だったのかも。僕ら錬金術師って言うのは可能性があればとりあえず実験に移る人種だ。なんでと言われてもそういうものなんだよとしか言えないね」
「なんか味気ない答えだねー」
「ごめんごめん……」
「うーん……あ、 金が取れるようになって嬉しいって現場の人たちから聞いたしもしかしたら大昔の人からのプレゼントだったりして。ボクが大昔の錬金術師だったらマコト君たちへのお返しにそうするかも」
「多分それはないよ。僕ら錬金術師はそんな俗物的な施しは嫌うからね。仮に頼まれたってやらないよ」
フォルトゥナの発言をマコトは苦虫を噛み潰したような表情で否定する。そんな彼の様子を見てフォルトゥナは何か怒らせるようなことを言ってしまったと考え手を当てて口を閉じる。フォルトゥナのその様子を見てマコトは再び苦笑する。
「怒ってるわけじゃないよ。ただ、錬金術師はそういうことはしないってだけ。それに……」
フォルトゥナは安堵しつつマコトの発言を待つ。マコトはしばらく考え込み逡巡しつつ、最終的には口を開き、発言を続けた。
「仮に君が大昔の錬金術師だったとして、君から金をもらっても僕は嬉しく思わない。そう思っただけだよ」