レプテ村。共和国同盟南部にあった小さな農村、トルーヴ姉弟と呼ばれる私たちの故郷だった場所。物心ついた頃は明日の食事にも困るような貧しい村だった。お父さんもお母さんもみんな必死に働いていたけど得られる対価は雀の涙程度のお金だけ。食べるのに困ってそのまま死んでしまったり、村から逃げ出したりする人も多かった。お父さんとお母さんは自分が食べる分を減らして私とシグルのご飯を増やしてくれた。今考えてみるとそれだけ大切にされていたのだということがとても分かる。――――――感謝の念を伝えたくてももう伝えることはできないけど。
ある日のことだ。共和国同盟全国農業ギルドという公的な機関からレプテ村へ支援が決まったってお父さんから聞いた。お母さんも村の人たちも泣いて喜んでいた。これで食うに困ることはなくなるって。それがどういうことなのか私もシグルもよく分からなかったけどみんな喜んでたから、それにつられて私たちも喜んだのを覚えている。
ギルドからの支援が始まってから少しずつ生活が豊かになっていった。今まで明日のご飯さえありつけるかどうかといった生活からみんながご飯を食べられるような生活に変わっていった。支援を受けてから餓死する人がいなくなったと幼いながらに聞いたことがある。固いパンと野菜くずを入れただけのお湯で済ませていたご飯も数日に一回は柔らかいパンを食べられるようになっていったし塩味を聞かせた野菜くずのスープが飲めるようになった。時折畑に出没した獣を狩って食べられるようにもなった。前は獣を狩っても商人に売っていたから食べられなかったけど。少しずつ、少しずつ村の生活が豊かになっていくのが分かった。お父さんたちももっと畑を広げれば収入が増えると毎晩嬉しそうにお母さんに話していた。お母さんはそれに賛成していた。私も同じく賛成していたと思う。シグルに空腹を我慢させなくてよくなったから、それが嬉しくてたまらなかった。このまま生活が豊かになっていくと信じていた。でもそんなことにはならなかった。
ギルドからの支援が始まってから少しずつ生活が豊かになっていった。今まで明日のご飯さえありつけるかどうかといった生活からみんながご飯を食べられるような生活に変わっていった。支援を受けてから餓死する人がいなくなったと幼いながらに聞いたことがある。固いパンと野菜くずを入れただけのお湯で済ませていたご飯も数日に一回は柔らかいパンを食べられるようになっていったし塩味を聞かせた野菜くずのスープが飲めるようになった。時折畑に出没した獣を狩って食べられるようにもなった。前は獣を狩っても商人に売っていたから食べられなかったけど。少しずつ、少しずつ村の生活が豊かになっていくのが分かった。お父さんたちももっと畑を広げれば収入が増えると毎晩嬉しそうにお母さんに話していた。お母さんはそれに賛成していた。私も同じく賛成していたと思う。シグルに空腹を我慢させなくてよくなったから、それが嬉しくてたまらなかった。このまま生活が豊かになっていくと信じていた。でもそんなことにはならなかった。
村をダークエルフの子供に燃やされたから。
「ここっすか?! 自分の母と姉を殺した奴らの村は!! ここに違いないっす!! だってみんな笑って生きているんだからそうに違いない!!!」
傍から聞いていてもひどく理不尽な理由だった。だってギルドから支援を受けるまでみんなひもじい思いをしながら生活していたから。他人の家族に手をかける時間も悪意も武器も、そんなものを持つ余裕さえなかったのだから。畑の手伝いで水汲みをしに川まで出かけていたから私とシグルは無事だった。私はシグルを庇うのに、ダークエルフの子供に見つからないようするのに必死で、何もすることなんてできなかった。だから、お父さんもお母さんも、村の人たちも見殺しにする以外の選択ができなかった。その間、村も畑も、生きていた人たちもみんな、燃やされ続けた。ダークエルフの子供が飽きるまでずっと、ずっと。
「ここっすか?! 自分の母と姉を殺した奴らの村は!! ここに違いないっす!! だってみんな笑って生きているんだからそうに違いない!!!」
傍から聞いていてもひどく理不尽な理由だった。だってギルドから支援を受けるまでみんなひもじい思いをしながら生活していたから。他人の家族に手をかける時間も悪意も武器も、そんなものを持つ余裕さえなかったのだから。畑の手伝いで水汲みをしに川まで出かけていたから私とシグルは無事だった。私はシグルを庇うのに、ダークエルフの子供に見つからないようするのに必死で、何もすることなんてできなかった。だから、お父さんもお母さんも、村の人たちも見殺しにする以外の選択ができなかった。その間、村も畑も、生きていた人たちもみんな、燃やされ続けた。ダークエルフの子供が飽きるまでずっと、ずっと。
その後の事はよく覚えていない。気が付いたら村を離れていた。シグルはずっと泣いていた。私も同じように泣いていたと思う。泣いて、泣いて、泣き続けて、泣きながらどこかへ歩き続けた。
そして紆余曲折あって私とシグルは冒険者になっていた。生きるためにはそれ以外の選択肢なんてなかったから。ただ、故郷を焼き尽くされた光景だけはずっと忘れられないでいた。きっとシグルも同じだと思う。もし、故郷を焼いた奴に出会ったらその時は、そいつを死体も残さないよう焼き尽くそうと思う――――――あの日焼かれた両親と村の人たちが味わった分まで必ず。
そして紆余曲折あって私とシグルは冒険者になっていた。生きるためにはそれ以外の選択肢なんてなかったから。ただ、故郷を焼き尽くされた光景だけはずっと忘れられないでいた。きっとシグルも同じだと思う。もし、故郷を焼いた奴に出会ったらその時は、そいつを死体も残さないよう焼き尽くそうと思う――――――あの日焼かれた両親と村の人たちが味わった分まで必ず。