エスヴィア冒険者街は今日も賑わいを見せる中、レクトとコトネはともに街を出歩いていた。魔晶柱の平原でコトネを助けてからすったもんだの末、レクトが世話になっている鍛冶屋にコトネも住むことになったのだ。とはいえ着の身着のまま旅を続けていたと思われる彼女は私物と言えるものはほとんど持っていない。
「コトネちゃんのためにいろいろ用意してあげないとね。レクト、今日一日コトネちゃんをエスコートして差し上げなさい」
とコトネの師匠となったメルカ直々の指名によりレクトはコトネの生活に必要な物を買いそろえるべくエスヴィアの商業区域を散策していた。だがコトネは記憶がないらしいため何を買えばいいのか分かっていない。レクトもコトネのことを全く知らないため何が必要なのか知らない。メルカからのメモを参考に必要な物をそろえることにしている。そんな時であった。
「レクト、あれ何?」
コトネがある場所を指さして尋ねてくる。レクトがそこに目を向けると小さな料理屋台が開かれている。エスヴィア冒険者街では店を持たない者たちが商売をするために屋台を開いたりするのは珍しい光景ではない。あの小さな料理屋体もそのうちの一例である。しかし、何も知らないコトネからすれば初めての発見なのだろう。目を輝かせて興味深そうにしている。
「……とりあえず行ってみるか?」
そうレクトが尋ねるとさらに目を輝かせて大きく頷き小走りで屋台の方に向かう。その様子に子供みたいだなと内心呟きながらその後を追った。
「コトネちゃんのためにいろいろ用意してあげないとね。レクト、今日一日コトネちゃんをエスコートして差し上げなさい」
とコトネの師匠となったメルカ直々の指名によりレクトはコトネの生活に必要な物を買いそろえるべくエスヴィアの商業区域を散策していた。だがコトネは記憶がないらしいため何を買えばいいのか分かっていない。レクトもコトネのことを全く知らないため何が必要なのか知らない。メルカからのメモを参考に必要な物をそろえることにしている。そんな時であった。
「レクト、あれ何?」
コトネがある場所を指さして尋ねてくる。レクトがそこに目を向けると小さな料理屋台が開かれている。エスヴィア冒険者街では店を持たない者たちが商売をするために屋台を開いたりするのは珍しい光景ではない。あの小さな料理屋体もそのうちの一例である。しかし、何も知らないコトネからすれば初めての発見なのだろう。目を輝かせて興味深そうにしている。
「……とりあえず行ってみるか?」
そうレクトが尋ねるとさらに目を輝かせて大きく頷き小走りで屋台の方に向かう。その様子に子供みたいだなと内心呟きながらその後を追った。
「そんなに楽しみなのか」
「初めて食べるものだもん。どんなのかなー?」
ガルピチャと呼ばれる豆をペースト状にし薄く広げて揚げたパネクロケを二つ頼み揚げあがるのをコトネは楽しげに待っている。
「昔のこと何も覚えてないから何を食べていて何が好きだったのか分からないし、ここに来るまであちこちに生えてる草とかを食べてたからこういうのを食べるのすごく新鮮なの」
それを聞いてレクトはなんとなく昔のことを思い返した。レクト自身も昔そうやって食いつないだ経験があるからだ。生き延びるために食べられるものは何でも食べてきた。
「オレも同じだ」
思わず言葉にしていた。彼女に対する共感の念を。
「オレも昔はその辺の草を食べていたことがある。だから分かるよ」
同じ経験をしたから昔の自分の姿を彼女に重ね合わせたのだ。レクトにはコトネが同士のように感じられた。きっと珍しくもない事であるはずなのに。そのことにレクトは自分勝手だと内心で断じる。昔のコトネのことなど何も知らないのに勝手に共感し、勝手に昔の自分と重ね合わせ同士のように感じる自分に自己嫌悪を覚えなんとなく気まずくなった。
レクトの言葉を聞いたコトネが先ほどよりも嬉しそうにしていることに気づかずにいた。
その後、屋台の店主に代金を払い揚げあがったパネクロケを受け取った。そして歩きながら二人でパネクロケを食べた。コトネはとても美味しそうに頬張っている。そんな彼女の姿を見たからかレクト自身もいつもよりパネクロケが美味しく感じられた。何故そう感じたのか理由が分からず内心不思議に思ったのだった。
「初めて食べるものだもん。どんなのかなー?」
ガルピチャと呼ばれる豆をペースト状にし薄く広げて揚げたパネクロケを二つ頼み揚げあがるのをコトネは楽しげに待っている。
「昔のこと何も覚えてないから何を食べていて何が好きだったのか分からないし、ここに来るまであちこちに生えてる草とかを食べてたからこういうのを食べるのすごく新鮮なの」
それを聞いてレクトはなんとなく昔のことを思い返した。レクト自身も昔そうやって食いつないだ経験があるからだ。生き延びるために食べられるものは何でも食べてきた。
「オレも同じだ」
思わず言葉にしていた。彼女に対する共感の念を。
「オレも昔はその辺の草を食べていたことがある。だから分かるよ」
同じ経験をしたから昔の自分の姿を彼女に重ね合わせたのだ。レクトにはコトネが同士のように感じられた。きっと珍しくもない事であるはずなのに。そのことにレクトは自分勝手だと内心で断じる。昔のコトネのことなど何も知らないのに勝手に共感し、勝手に昔の自分と重ね合わせ同士のように感じる自分に自己嫌悪を覚えなんとなく気まずくなった。
レクトの言葉を聞いたコトネが先ほどよりも嬉しそうにしていることに気づかずにいた。
その後、屋台の店主に代金を払い揚げあがったパネクロケを受け取った。そして歩きながら二人でパネクロケを食べた。コトネはとても美味しそうに頬張っている。そんな彼女の姿を見たからかレクト自身もいつもよりパネクロケが美味しく感じられた。何故そう感じたのか理由が分からず内心不思議に思ったのだった。