「ぶべらっ!?」
「あ、兄貴ぃ!?」
「あ、兄貴ぃ!?」
いかにも治安の悪そうな、ドブとゲロの臭いのする田舎町の路地裏。凶悪な面構えの筋肉ムキムキのモヒカン野郎の集団の頭目らしき男が奇妙な悲鳴を上げて宙を舞う。
「あなたたちどういうつもり?こんな小さい女の子を大勢で囲んで。おままごとって歳でもないでしょ?…キミたちケガはない?」
「う、うん。ありがとう。お、お姉ちゃん…ドラゴン…さん?えっと…誰?」
「……ふふ。お姉ちゃんは…そうだね。正義の味方かな。すぐにこいつらぶっ飛ばしてお家まで送ってあげるからちょっと待っていてね」
「う、うん。ありがとう。お、お姉ちゃん…ドラゴン…さん?えっと…誰?」
「……ふふ。お姉ちゃんは…そうだね。正義の味方かな。すぐにこいつらぶっ飛ばしてお家まで送ってあげるからちょっと待っていてね」
姉妹だろうか。よく似た顔立ちの可愛らしい女の子たちを悪漢どもから守るように立ちはだかって背にかばう…“ドラゴン”と呼ばれた自称正義の味方は、ドラゴンの着ぐるみから覗かせた顔に微妙な苦笑いを浮かべてそれでも力強く宣言した。何も心配いらないと、ぐっとサムズアップして。
「クソが…!メスガキの姉妹なんて売っぱらったら良い稼ぎになるってのに邪魔しやがって…」
「つかなんだそのフザケた格好は?頭お花畑か?それとも変なもんキメてんのかごらぁ!」
「…おいおい?ちょっと待て…この着ぐるみねーちゃん…格好は頭おかしいけどツラはよく見たら悪くねーぞ。へへへ」
「こりゃいい。売っぱらう商品が増えたな。さすがにその着ぐるみのままプレイしようって物好きはいねーだろうが」
「ふへへへ、それじゃそのヘンテコな着ぐるみもヌギヌギしましょうね~」
「つかなんだそのフザケた格好は?頭お花畑か?それとも変なもんキメてんのかごらぁ!」
「…おいおい?ちょっと待て…この着ぐるみねーちゃん…格好は頭おかしいけどツラはよく見たら悪くねーぞ。へへへ」
「こりゃいい。売っぱらう商品が増えたな。さすがにその着ぐるみのままプレイしようって物好きはいねーだろうが」
「ふへへへ、それじゃそのヘンテコな着ぐるみもヌギヌギしましょうね~」
ブチッ…!なにか、切れる音が聞こえた。竜の逆鱗に触れるとはまさにこのことだろうという惨劇が繰り広げられる。見た目の緩いもこふわ具合に反して残像が見えるほどの高速で縦横無尽に駆け、拳と蹴りを叩き込んでいくドラゴンの着ぐるみ。えげつない殴打音と断末魔が地獄のシンフォニーを奏で、血反吐がぶち撒けられる。
「ふー…っ!ふー…っ!ふー…っ!」
怒りか羞恥か…顔を真赤にしてプルプルと震え荒い呼吸を吐き出しながら、ノックアウトされたモヒカンたちの群れの中、仁王立ちに立ち尽くす着ぐるみドラゴン。
「う、うわぁぁ…っ♡」
「す、すごいっ!ドラゴンのお姉ちゃんかっこいい!強い強ーい!」
「……え?あ、ああ…そ、そお?ふふっ…言ったでしょ?任せておきなさいって」
「お姉ちゃん、お家で一緒に晩ごはん食べていってー。ママもきっと喜んでくれるから」
「そのドラゴンの着ぐるみどこで売ってるのー?私もほしーい♪」
「え、ええと…参っちゃったな…あはは」
「す、すごいっ!ドラゴンのお姉ちゃんかっこいい!強い強ーい!」
「……え?あ、ああ…そ、そお?ふふっ…言ったでしょ?任せておきなさいって」
「お姉ちゃん、お家で一緒に晩ごはん食べていってー。ママもきっと喜んでくれるから」
「そのドラゴンの着ぐるみどこで売ってるのー?私もほしーい♪」
「え、ええと…参っちゃったな…あはは」
左右の手を姉妹に繋がれて無邪気に笑い合う着ぐるみドラゴンが夕焼けの田舎町を征く。
これは、リンが故郷を出てすぐの話。彼女がギルドでも高ランク冒険者として名を馳せて、特にその愛嬌のある姿で子どもたちから絶大な人気を集めるのはもう少し先のことになる。