ブリーズと空をひとっ走りした帰り道、通りがかった部屋から陛下とドゥローが話してる声が聞こえた。
「……ヴァンでありますか?しかし彼……彼女……?とにかくヴァン向きの仕事では……」
あっ、ボクの話してる。……せっかくだから聞いちゃおっと。ボクってけっこー耳いいんだよね。やっぱりダークエルフだからかな?でもボクはそのダークエルフの中でもとびきり耳がいい自信があるよ。
風の音で天気がどうなるかとか、敵の数とか位置とかそういうのわかるし、すっごい遠くにいるヴァルカイックの唸り声だって聞き漏らさない。すごいでしょ!
「……ヴァンが知ったら厄介なことになりそうだな」
なんてこと考えてたら少し聞き逃しちゃった。結局ボクでなんの話してるの?仕事の話なのはわかるけどさ。学校???吹き飛ばせってこと?
「カエルムの存在はヴァンには秘密にしておきましょう!」
……なに?蛙?蛙のことぐらいボク知ってるけど……
あー、でも陛下が学校とか言ってたな……蛙みたいな名前の学校があるのかな?
ドゥローと陛下が教えてくれるわけないし、テールは話しかけても意味ないし……うん、ここはアリュマージュに聞こう。バカなりになんだかんだ知ってるでしょ。
*
彼が単純なヒトだってのもあるけど、なんだかんだブリーズ以外でいちばん仲がいいのは彼だから、アリュマージュを見つけるのは簡単だった。外に出て人間のおうちとかそういうのを燃やしてるでもなければ、あいつはだいたいひとりで鍛錬してる。よくも飽きないもんだなぁと思うよ。さすがにそういう時にはイタズラしないであげてる。ボクって優しいな。
「やっほー」
「あ、ヴァンさん!お疲れ様っす!!!」
ちょうど休憩を取っていたみたいで、アリュマージュはボクに気がつくとすぐに立ち上がって挨拶してきた。……別にそこまでしなくてもいいのに。てかちょっと汗臭いな……当たり前なんだけどさ。
「うるさ……まぁいっか。ボクね、キミに聞きたいことがあるんだ〜」
「自分に!?!?なんすか!?!?!?」
「蛙みたいな名前の学校知ってる?」
「かえるっすか……!?」
「そ。なんか知らない?」
「ん〜……そうっすね……!」
アリュマージュは額の汗を手で拭いながら考えてる。そもそも学校を知らなかったりしないよね……?いや、そこまでバカじゃないはず。
「なんか……自分もよく分からないんすけど……」
「うん、なになに!?」
「古代エルフの技術で空を飛んでる学校があるらしくて……たしかそれの名前がかえる……かえるむ?だったような……気が……するっす!」
「空を飛んでる学校!?」
「ハイ!確か!!」
なにそれ!すっごく面白そう!気になるなぁ。行きたいなぁ。今すぐブリーズと飛んで行って超絶激カワ転入生として話題になりたいなぁ。
よし、行っちゃおう。
「なるほどねぇ〜」
「で、そのかえるがどうかしたんすか?」
「ちょっとねー」
「???そうっすか!!!」
アリュマージュはバカだけどその分素直だから、ここから陛下やドゥローにバレるかもしれない。というわけでここは黙っておく。ボクはカワイイだけじゃなく賢いのだ。
「じゃあ自分、そろそろ鍛錬の続きするんで!!!」
「ん、火力に気をつけてねー」
ブンブン手を振るアリュマージュに手を振り返してボクは戻ることにした。
……さてと、じゃあ早速準備しなきゃ。
*
楽しい学園生活に必要なものと言えば、世界一カワイイボクとブリーズ。あとは引き立て役と下僕役の人間など。
「……ヴァンでありますか?しかし彼……彼女……?とにかくヴァン向きの仕事では……」
あっ、ボクの話してる。……せっかくだから聞いちゃおっと。ボクってけっこー耳いいんだよね。やっぱりダークエルフだからかな?でもボクはそのダークエルフの中でもとびきり耳がいい自信があるよ。
風の音で天気がどうなるかとか、敵の数とか位置とかそういうのわかるし、すっごい遠くにいるヴァルカイックの唸り声だって聞き漏らさない。すごいでしょ!
「……ヴァンが知ったら厄介なことになりそうだな」
なんてこと考えてたら少し聞き逃しちゃった。結局ボクでなんの話してるの?仕事の話なのはわかるけどさ。学校???吹き飛ばせってこと?
「カエルムの存在はヴァンには秘密にしておきましょう!」
……なに?蛙?蛙のことぐらいボク知ってるけど……
あー、でも陛下が学校とか言ってたな……蛙みたいな名前の学校があるのかな?
ドゥローと陛下が教えてくれるわけないし、テールは話しかけても意味ないし……うん、ここはアリュマージュに聞こう。バカなりになんだかんだ知ってるでしょ。
*
彼が単純なヒトだってのもあるけど、なんだかんだブリーズ以外でいちばん仲がいいのは彼だから、アリュマージュを見つけるのは簡単だった。外に出て人間のおうちとかそういうのを燃やしてるでもなければ、あいつはだいたいひとりで鍛錬してる。よくも飽きないもんだなぁと思うよ。さすがにそういう時にはイタズラしないであげてる。ボクって優しいな。
「やっほー」
「あ、ヴァンさん!お疲れ様っす!!!」
ちょうど休憩を取っていたみたいで、アリュマージュはボクに気がつくとすぐに立ち上がって挨拶してきた。……別にそこまでしなくてもいいのに。てかちょっと汗臭いな……当たり前なんだけどさ。
「うるさ……まぁいっか。ボクね、キミに聞きたいことがあるんだ〜」
「自分に!?!?なんすか!?!?!?」
「蛙みたいな名前の学校知ってる?」
「かえるっすか……!?」
「そ。なんか知らない?」
「ん〜……そうっすね……!」
アリュマージュは額の汗を手で拭いながら考えてる。そもそも学校を知らなかったりしないよね……?いや、そこまでバカじゃないはず。
「なんか……自分もよく分からないんすけど……」
「うん、なになに!?」
「古代エルフの技術で空を飛んでる学校があるらしくて……たしかそれの名前がかえる……かえるむ?だったような……気が……するっす!」
「空を飛んでる学校!?」
「ハイ!確か!!」
なにそれ!すっごく面白そう!気になるなぁ。行きたいなぁ。今すぐブリーズと飛んで行って超絶激カワ転入生として話題になりたいなぁ。
よし、行っちゃおう。
「なるほどねぇ〜」
「で、そのかえるがどうかしたんすか?」
「ちょっとねー」
「???そうっすか!!!」
アリュマージュはバカだけどその分素直だから、ここから陛下やドゥローにバレるかもしれない。というわけでここは黙っておく。ボクはカワイイだけじゃなく賢いのだ。
「じゃあ自分、そろそろ鍛錬の続きするんで!!!」
「ん、火力に気をつけてねー」
ブンブン手を振るアリュマージュに手を振り返してボクは戻ることにした。
……さてと、じゃあ早速準備しなきゃ。
*
楽しい学園生活に必要なものと言えば、世界一カワイイボクとブリーズ。あとは引き立て役と下僕役の人間など。
うん、何も用意する必要無いね?だってボクとブリーズは既に世界一カワイイし、人間ってそもそもボクたちに従うのが当たり前でしょ?
どうやら始まる前からボクの学園生活は完璧みたい。制服とかあるのかな?楽しみだな〜
そんなわけでスキップしていると、テールが虚空を見つめているのを見つけた。ボクたち全員が国内にいるのは珍しいな。ドゥローとアリュマージュとボクがいるから、せめてテールぐらいは何かしに行ってると思ってたけど。
ちなみに、命令されたことが終わって何もやることがない時のテールはいつもあんな感じだよ。イタズラしてもなんの反応もないからつまんない子。ずっと何も無いところを見てる。おばけでも見えるのかな?
「テールはカエルムって知ってる?」
ボクに話しかけられ、テールは少しだけボクの方に目を向けた。
いつもなら絶対に話しかけたりなんてしないんだけど、今日のボクはいつも以上にご機嫌だからつい話しかけちゃった。
さて、お話してくれるかな?テールは陛下に言われたことしかしない困ったちゃんだから、こんなにカワイイボクに話しかけられても普通に無視するんだよね。単に生命としての反射で話しかけられたら反応するぐらいはあるけど、ちゃんと会話してくれるかどうかはその日の運って感じ。
「……知ってはいますが興味はありません。陛下に行けと言われれば行きます」
「ふーん、そお」
珍しい。誰かに話しかけられたらしっかり会話しろって陛下に言われたのかな。まぁこういう命令ならいいんじゃない?
自由がないヒトって、ボク見ててイライラするんだよね。だから命令に縛られることを望んでいるテールのことはあんまり好きじゃない。そんなテールを尊重して命令を与え続ける陛下のことも、その瞬間だけは、あんまり。
「…………カエルムのことで、何か」
「べつに?お話してくれてありがと。たまにはキミと話すのも悪くないね♪」
「…………そうですか」
それだけ言ってテールはまた虚空を見つめ始めた。
うわー、本当に珍しい。テールとこんなに会話が続いたの初めてだよ。まぁ陛下の命令なんだろうけどさ。明日は雪どころかスライムでも降ってくるんじゃないかな?ちょっと面白そう……?いや、やっぱり気持ち悪い。想像しないでおこっと。
話すこともないし、ボクはテールを放置することにした。
これからやることはもう決まっているもの。お人形さんにいつまでも構っていられないよ。
*
自分の部屋に帰るとすぐにブリーズを探す。
もうボクとの生活に慣れきっているブリーズはボクが用意したカワイイ毛布にくるまっていた。
「ブリーズ、ただいま」
しゃがんで相棒に声を掛ける。ブリーズはべつに眠っているわけではないようだった。でも、ちょっと眠たげに見える。
「休んでる最中ごめんね?でも、いいこと思いついちゃったから……」
ブリーズはそれが何か尋ねるようにボクに頭を近づけてきた。
いくらボクたちの学校生活の成功が約束されていたとしても、場所もよく分からないままただ無計画に相棒を走らせるバカはいない。
そう、まずは情報収集だよ。人間の通う学校には人間の方が詳しいもん。
ずっと前に地面についてる普通の学校の近くを通った時、人間の子供が「授業がつまんない」とか「早く帰りたい」とか、そんなこと言っていたのを聞いたことがある。それの真意を確かめたいし。
ボクは国のみんなが思ってるほど子供じゃないんだよ。こんな大人みたいなことだって出来るんだから。
「学校に行こう!そこで、たくさん人間の子と遊ぶの!」
どうやら始まる前からボクの学園生活は完璧みたい。制服とかあるのかな?楽しみだな〜
そんなわけでスキップしていると、テールが虚空を見つめているのを見つけた。ボクたち全員が国内にいるのは珍しいな。ドゥローとアリュマージュとボクがいるから、せめてテールぐらいは何かしに行ってると思ってたけど。
ちなみに、命令されたことが終わって何もやることがない時のテールはいつもあんな感じだよ。イタズラしてもなんの反応もないからつまんない子。ずっと何も無いところを見てる。おばけでも見えるのかな?
「テールはカエルムって知ってる?」
ボクに話しかけられ、テールは少しだけボクの方に目を向けた。
いつもなら絶対に話しかけたりなんてしないんだけど、今日のボクはいつも以上にご機嫌だからつい話しかけちゃった。
さて、お話してくれるかな?テールは陛下に言われたことしかしない困ったちゃんだから、こんなにカワイイボクに話しかけられても普通に無視するんだよね。単に生命としての反射で話しかけられたら反応するぐらいはあるけど、ちゃんと会話してくれるかどうかはその日の運って感じ。
「……知ってはいますが興味はありません。陛下に行けと言われれば行きます」
「ふーん、そお」
珍しい。誰かに話しかけられたらしっかり会話しろって陛下に言われたのかな。まぁこういう命令ならいいんじゃない?
自由がないヒトって、ボク見ててイライラするんだよね。だから命令に縛られることを望んでいるテールのことはあんまり好きじゃない。そんなテールを尊重して命令を与え続ける陛下のことも、その瞬間だけは、あんまり。
「…………カエルムのことで、何か」
「べつに?お話してくれてありがと。たまにはキミと話すのも悪くないね♪」
「…………そうですか」
それだけ言ってテールはまた虚空を見つめ始めた。
うわー、本当に珍しい。テールとこんなに会話が続いたの初めてだよ。まぁ陛下の命令なんだろうけどさ。明日は雪どころかスライムでも降ってくるんじゃないかな?ちょっと面白そう……?いや、やっぱり気持ち悪い。想像しないでおこっと。
話すこともないし、ボクはテールを放置することにした。
これからやることはもう決まっているもの。お人形さんにいつまでも構っていられないよ。
*
自分の部屋に帰るとすぐにブリーズを探す。
もうボクとの生活に慣れきっているブリーズはボクが用意したカワイイ毛布にくるまっていた。
「ブリーズ、ただいま」
しゃがんで相棒に声を掛ける。ブリーズはべつに眠っているわけではないようだった。でも、ちょっと眠たげに見える。
「休んでる最中ごめんね?でも、いいこと思いついちゃったから……」
ブリーズはそれが何か尋ねるようにボクに頭を近づけてきた。
いくらボクたちの学校生活の成功が約束されていたとしても、場所もよく分からないままただ無計画に相棒を走らせるバカはいない。
そう、まずは情報収集だよ。人間の通う学校には人間の方が詳しいもん。
ずっと前に地面についてる普通の学校の近くを通った時、人間の子供が「授業がつまんない」とか「早く帰りたい」とか、そんなこと言っていたのを聞いたことがある。それの真意を確かめたいし。
ボクは国のみんなが思ってるほど子供じゃないんだよ。こんな大人みたいなことだって出来るんだから。
「学校に行こう!そこで、たくさん人間の子と遊ぶの!」
学校がつまんないなら、ボクとブリーズがおもしろくしてあげる。
おわり
最初の方にあるドゥローとテルミの会話はこんな感じ
どっちもヴァンのことまだ子供だと思ってる
どっちもヴァンのことまだ子供だと思ってる
「それで陛下、カエルムまで向かわせる者についての話でありますが……」
「ふむ……ヴァンはどうだ?ヴァンはヴァルカイックでの飛行技術にも一際長けている。奴を鍛えるのにも丁度よいと思うが」
「ヴァンでありますか?しかし彼……彼女……?とにかく、ヴァン向きの仕事ではないと思いますね。まだ偵察の段階でありますから」
「……うむ、言い出したのは余だが、やはりヴァンはやめておこう」
「学生として潜入させるにも、ダークエルフは入学お断りでありますしなぁ。……日焼けしたエルフということで通せたりしないものでしょうか?」
「ははっ、疲れているのか?お前が冗談を言うとは珍しい。……しかしそうだな。カエルムは天空に浮かぶ学園都市……ヴァンが知ったら厄介なことになりそうだな」
「…………行きたい行きたいと駄々を捏ねそうであります」
「ああ……勝手にブリーズに乗って向かってしまうかもしれぬ」
「………………。」
「………………。」
「カエルムの存在はヴァンには秘密にしておきましょう!」
「うむ、あの子にはまだ早かったな。そうしよう」
「ふむ……ヴァンはどうだ?ヴァンはヴァルカイックでの飛行技術にも一際長けている。奴を鍛えるのにも丁度よいと思うが」
「ヴァンでありますか?しかし彼……彼女……?とにかく、ヴァン向きの仕事ではないと思いますね。まだ偵察の段階でありますから」
「……うむ、言い出したのは余だが、やはりヴァンはやめておこう」
「学生として潜入させるにも、ダークエルフは入学お断りでありますしなぁ。……日焼けしたエルフということで通せたりしないものでしょうか?」
「ははっ、疲れているのか?お前が冗談を言うとは珍しい。……しかしそうだな。カエルムは天空に浮かぶ学園都市……ヴァンが知ったら厄介なことになりそうだな」
「…………行きたい行きたいと駄々を捏ねそうであります」
「ああ……勝手にブリーズに乗って向かってしまうかもしれぬ」
「………………。」
「………………。」
「カエルムの存在はヴァンには秘密にしておきましょう!」
「うむ、あの子にはまだ早かったな。そうしよう」