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概要
神聖イルニクス帝国を構成する領邦の一つ。危険な森林を突っ切る街道とそれに沿う宿場町、関所兼領主の居城から成る交通の要衝であり、過去には帝国直轄領の一つとして皇帝の代官により治められていた。
ニコラス三世の治世初頭、代官が反乱を画策して失脚し、これを好機と見た土地無し貴族ズンブルト(当時)が「権力の空白を避けるため」に冒険者の一団を率いて関所を占拠するという事件が発生。実権を確立できていなかった上にお人好しである皇帝は追認を余儀なくされ、かくしてカルツェン森林伯領は成立した。
即位して間もない君主が避けては通れない、ありがちな一歩後退、それがカルツェン森林伯領成立への一般的な評価だが…?
カルツェン猟兵隊
カルツェンを通る街道は危険な森林を突っ切るという性質上常に魔物や猛獣に脅かされているため、地元猟師達は組織化の道を選んだ。やがて猟師組合は民兵隊に発展して猟兵隊と名を改め、カルツェン代官区(当時)の事実上の正規戦力となる。
ある時、皇太子ニコラス(当時)が鍛錬代わりの狩猟のためとして何度も代官区を訪れ、民兵隊をお供に多いに楽しんだ。彼は猟兵達と歓談し、猟兵隊の将来のあり方について助言を与えたという。武勇に優れる皇太子は森林の奥深くでの危険な狩猟を好んだため、今となっては詳しい内容を知るのは彼と古参猟兵のみ。
カルツェン森林伯領が成立して以降も猟兵隊は魔物や猛獣と戦い、鍛え上げた射撃と隠密と追跡の技を示し続けている。しかし一部の兵員が訓練や狩りにしては長い期間、森から帰らないことが時折りあるようだが…?
初代カルツェン森林伯ズンブルト1世
カルツェン森林伯領を治める老貴族。神聖イルニクス帝国諸侯の一員。もとはゼルトマルク家の出身だが、後にズンブルト・フォン・カルツェンを名乗りカルツェン家を立てた。
男子の多いゼルトマルク家に生まれたために土地を継承できる見込みが無かったことでヤケになり、ごろつき紛いの底辺冒険者を食客と称して連れ回す荒れた少年期を過ごした。「食客」の食い扶持は父にせびった金銭で賄ったという。
青年期、ニコラス3世が帝位につくと自堕落な生活を反省し、新帝即位のどさくさに紛れ自力で領地を切り取ることを決意。代官失脚により一時的に支配者不在状態にあったカルツェン地方に目をつけ、長い付き合いで忠誠心らしきものが芽生えていた「食客」達を率いて同地を占拠、首尾よく森林伯の位を手に入れた。父はこれ幸いとズンブルトに自立を強く薦めて新家門を立ち上げさせ、事実上の勘当を成し遂げることとなる。
その後は「食客」達にカルツェン猟兵隊の下での雑用という定職を与えてやりつつ大過無く自領を治め、一粒種の息子との共同統治で余生を過ごしている。加齢と若き日の不摂生が祟って体調を崩しがちなようで、猟兵隊を閲兵する時など特に顔色が悪いそうだが…?
グラーフ・ズンブルト寄進学校の寄進者。
真相
カルツェン猟兵隊とはカルツェン地方を守る部隊で、同時に皇帝ニコラス三世が皇太子時代に地盤固めの布石として仕立てた暗殺部隊でもある。森林伯への忠誠心は皆無で、愛郷心と皇帝への忠誠心に基づいて行動する。
地方の性質上、隊員は多言語を習得しているので各地に潜入しやすい。猟師としてのスキルも暗殺の役に立つ。
カルツェン森林伯領成立は代官失脚に伴う皇帝のアドリブであり、暗殺部隊設立の隠れ蓑に過ぎない。統治の中で薄々それを理解したので、ズンブルトは猟兵隊を恐れている。