崩壊─ゲームオーバー─(12) ◆gry038wOvE




 ────ダークザギは、ウルトラマンノアの攻撃によって、消滅した。
 空では炎があがり、ダークザギの身体が宇宙で大爆発を起こしているのを映している。
 真上から、だんだんと太陽の光がノアを照らし始めている。

 ウルトラマンノアとしてここにいる孤門一輝を除く全ての参加者は、全員ブラックホールに飲み込まれて、異世界に転送されたらしい。
 そして、今……ブラックホールがゆっくりと閉じた。
 この世界にいるのは、既に孤門一輝とウルトラマンだけだ。

(リコ……、僕は、君に会えてよかった……。どんな悲しみが僕を襲ったとしても────)

 最後には、きっと──リコも、力を貸してくれたのだろう。
 彼女の笑顔が、ウルトラマンノアの中に湧きあがる。

 世界中の人が、その瞳にウルトラマンノアの雄姿を焼きつけていた。
 ある者には、プリキュアの姿。
 ある者には、仮面ライダーの姿。
 ある者には、魔法少女の姿。
 それらが、きっと、映っていた。──絶望しかけていた子供たちの瞳が、戦いを乗り越えた英雄の姿を、どこか憧れるように見つめていたのだろう。

(この戦いは終わった……僕たちは生き残った……)

 ノアは思った。
 だが、だからといって、全部が終わった気はしなかった。
 殺し合いの真の主催者の正体もまだ謎に包まれている。沖一也が見た何者かの姿も、まだ解明されていない。
 外の世界が──帰るべき世界がどうなっているのかもわからないし、結局主催者たちとの戦いはないままだった。

 ノアが、周囲を見た。
 彼の目からは、島の隅から隅までが見下ろした。
 ここで、たくさんの戦いが繰り広げられ、孤門たちは本来出会うはずのない人たちと出会ってきた。
 そして、同時に、本来別れるはずのない人たちとの別れも経験した。

(……僕たちの長い二日間も、終わりを告げようとしている)

 帰ろう……。
 今度こそ、全てを終えよう……。

 ウルトラマンノアは、あのブラックホールがなくとも、時空を超える事も出来る。
 まずは、孤門が帰るべき世界に帰り、姫矢准や、溝呂木眞也や、石堀光彦や、西条凪が死亡した事を報告しなければならない。
 それから、美希や、生き残った他の仲間たちが帰るべき世界にも行って──。



 ──と、その時。

「────ッッッッ!?!?!?!?」

 ウルトラマンノアの背中を、“何者か”が攻撃した。
 謎の光線が、ノアの背中に命中し、そこから煙をあげさせる。
 動揺するノアが振り返ると、そこにはダークザギにも酷似した黒いウルトラマンが立っていた。
 しかし、その姿は一層凶悪で、人というよりも獣のように曲げた背で、長い爪を誇らしげに構えている。

「ウルトラマンノア……、光の国が生まれる前からいた不死身のウルトラマン、か」

 それがダークザギではない事はすぐにわかった。
 しかし、ウルトラマンノアもその時はまだ知らぬ戦士であった。

「──誰だ、お前は!」

 言いながらも、孤門は思い出していた。
 この殺し合いの主催者の存在だ。──バットショットで確認された、謎の黒い影。
 それは、確かにこの島へと接近していたのだ。
 では、彼こそが──



「てめえが会いたがっていたこの殺し合いの本当の主催者──カイザーベリアル様さ!!」



 ──彼こそが、全ての元凶なのだ。
 やっと会う事が出来た。

 ここであらゆる悲しみを作り、あらゆる思いを踏みにじった諸悪の根源。
 あるいは、石堀光彦も──ダークザギも、この殺し合いに巻き込まれた一人の犠牲者なのかもしれない、と思う。
 そして、ベリアルがいなければ、まだこの世界に在り続けたはずの笑顔がある……。

「そうか……お前がみんなを……!」

 ノアが構えた。
 まだ戦いは終わっていない。
 だが、ここで全てを終わらせようと……。
 孤門は──ウルトラマンノアは、仲間たちが帰っていったこの場所で、ただ一人、真の主催者と戦おうとしていた。
 ノアが、前に駈け出そうとした時だった。

「──おっと、動かない方がいいぜ」

 カイザーベリアルの忠告の言葉が聞こえた。
 しかし、既に手遅れだった。──ノアは、カイザーベリアルの前に拳を叩きつけようとしていた。
 肉薄するノアを前に、ベリアルは妙に冷静に構えている。


「────!?」


 そう、彼はただ余裕なのではない。
 ノアの力を知り、それに対策する術を持っているから、こうして一人のうのうと経って至れるのだ。
 地面から、光線が発された。

「これは、一体……!!!」

 それは、主催側が用意したシステムであった。
 ウルトラマンノアやダークザギが、圧倒的なパワーによって主催に歯向かおうとした時、この地下に仕掛けられた光線が敵を包む事になる。
 たった一回きりには違いないが、この場所に仕掛けられた“確実に敵を無効化する有効打”──その黒の光線が、ノアに発されたのである。

「……ナッ……シュゥッ……!」

 命あるものの時間を止める「ダークスパーク」のエネルギーである。
 主催陣営は、「ウルトラマンギンガの世界」に存在していた闇の力・ダークスパークを確保し、この殺し合いの基地に防御壁としてそのエネルギーを利用した。ダークスパークは、その世界でウルトラマンたちを人形の中に封印した悪魔の道具である。
 これは、この場においては──主催基地、あるいは、カイザーベリアルを攻撃しようとした際に発動し、強敵をダークスパークに封じてしまう最後の切札であった。

 ノアの身体が、次の瞬間には、物言わぬ小さな人形──スパークドールズへと変わった。
 もはや、伝説のウルトラマンといえども、こうなってしまえば戦う牙はない。



「────ハッハッハッ!! これで、ウルトラマンノアはいなくなった!! ダークザギも消滅した!! 俺に歯向かう者はいない!! 貴様らの希望は潰えたんだ!!」



 そして、スパークドールズにされた者は、自力では元に戻る事が出来ない。
 ウルトラマンノアの姿は、人間が掌で握る事が出来てしまうほどの大きさに早変わりした。
 カイザーベリアルは、それを爪の先で捕まえると、空に向けて放り投げた。──そして、カイザーベリアルの力により、大気圏も超え、宇宙の果てまで飛んでいく。

「宇宙の果てに消えろ……ッ」

 この世界の宇宙は広いが、果てまで探してもカイザーベリアル以外、誰もいない。
 孤門一輝とウルトラマンノアは、このスパークドールズの中に封じ込められ、無限の宇宙を彷徨う事になる。
 先ほどの忘却の海レーテのように、侵入してくる者もいない。

 この世界に入る事が出来るのは、“それ以前にこの世界に入った事がある者”と、“カイザーベリアルが呼んだ者”だけである。
 ゆえに、“円環の理”もこちらの世界に姿を現す事が出来なかった。
 ここは、ベリアルだけの世界なのである。


 ──全ての世界を支配した彼にも侵されず存在できる世界、それがこの場所なのだ。


 ……とはいえ、この殺し合いで生きて帰った者たちは例外である。
 彼らがカイザーベリアルに立ち向かう術は既にないが、いずれにせよ、全員、ベリアルの部下が始末する手筈になっていた。
 もし、部下たちが彼らを始末できなくとも、ベリアルはこの世界で彼らを迎え撃ってみせる。



 ────ここに、ゲームの破綻と、ベリアルの目的の達成が祝された。



【孤門一輝@ウルトラマンネクサス 封印】






 全パラレルワールドに、ここまでの映像は発信されると、 “再生終了”された。
 あらゆる世界に設置された街頭モニターや放送が、一斉に終了し、画面は真っ黒に塗り替えられる。
 一日と十二時間、常に流れていた殺し合いの実況中継は、今ようやく終わりを告げた。

 そして、殺し合いを生き残ったヒーローたちの全てが終わっていく。

 彼らは、あのブラックホールを通じて、それぞれの世界に帰っていた。
 または、彼らに縁のない世界に誤って送還される事もあるようだが、それも全て、管理されている範囲の世界である。管理の手がまだ行き届いていない世界には転送されない。
 ──いずれにせよ、多くは世界のどこかに転送され、その世界を管理する主催陣営の人間たちに狙われる事になる。





 レイジングハート・エクセリオンもまた、ある世界に転送され、逃げ惑っていた。
 彼女も全く知らない世界であったが、少なくとも、そこで、外の世界が管理されている事実を知る事になった。
 殺し合いは終わったが、その間に、主催陣営は別の目的を達していたのである。
 ──たとえ、殺し合いが
 弱り切ったレイジングハートに、彼らの魔手に立ち向かう術はもうなかった。
 彼女は、人間の姿になり、追い詰められながらも、そこで一人の少女の助けを受ける事になった──。

「一閃必中! アクセルスマッシュ──!!」

 意外な人物の生存に驚きながらも、彼女は、その人物に救われ、窮地を脱する事になる。
 そして、この危機に立ち向かおうとする──心強い船団に、無事合流する事ができた。



 それは、高町ヴィヴィオ、吉良沢優、美国織莉子、アリシア・テスタロッサらが保護されている時空管理局の船──アースラであった。
 アースラは、残りの参加者を全員、保護しようとしているのである。



 戦いは、まだ──、終わっていない。
 本当の最後の戦いが、まだ彼女たちを待っていた。



【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ 生存】
【吉良沢優@ウルトラマンネクサス 生存】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ 生存】
【アリシア・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのはシリーズ 生存】



【左翔太郎@仮面ライダーW 送還】
【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー 送還】
【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア! 送還】
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 送還】
【響良牙@らんま1/2 送還】
【蒼乃美希@フレッシュプリキュア! 送還】
【涼邑零@牙狼 送還】
【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン 送還】
【レイジングハート・エクセリオン 送還】
【外道シンケンレッド 送還】



【ニードル@仮面ライダーSPIRTIS 送還】
【ドブライ@宇宙の騎士テッカマン 送還】
【脂目マンプク@侍戦隊シンケンジャー 送還】
【ガルム@牙狼 送還】
【コダマ@牙狼 送還】



【加頭順@仮面ライダーW 生存】
【主催・カイザーベリアル 生存】



【変身ロワイアル GAME OVER】






「……っ痛ぇ……、ここは……」

 左翔太郎が、瞼を開ける。
 どうやら、あのブラックホールに飲み込まれた衝撃で意識を失っていたらしい。
 意識を失ってからどれほど経過しているのだろうか。
 上半身を起こして、すぐに周囲を見回した。

「動くな、まだ完全には回復してない」

 ここは──小さく薄暗い一室だった。
 その中のベッドの上で、翔太郎は眠らされていたらしい。傷だらけの身体は、包帯を巻かれており、自分は手厚い看病を受けているようだった。
 空気は重たく、不穏であった。

「あんたは……あんたが、どうして……」

 そして、目の前で翔太郎を迎えた男は、翔太郎の前にいるはずのない男であった。
 何故、彼がここにいる?
 何故、彼が翔太郎をこうして看病しているのだ?

「おやっさん……」

 ──鳴海壮吉であった。
 何故、彼がここにいるのか。
 一度、自分はあの後で死んだのかと思った。フィリップが、かつて、死の世界で壮吉に出会ったと言っている。
 しかし、すぐに違うとわかった。死んでいる人間が、こんな手厚い看病を受けるものだろうか。

「残念だが、俺はその“おやっさん”じゃない。──だが、また会ったな、異世界の仮面ライダー……、仮面ライダーダブル」

 異世界の仮面ライダーと、彼は言った。
 鳴海壮吉と瓜二つであり、翔太郎をそんな風に呼ぶ男を彼は知っていた。

「お前の戦い、しかと見届けさせてもらった……。流石は異世界の俺の弟子、ってとこか……帽子の似合う男に相応しい活躍だったぜ」

 ────左翔太郎がやって来たのは、仮面ライダースカルの世界。
 かつて、仮面ライダーディケイドとともに戦ったダブルが出会ったあの男が、こうして翔太郎を助けていたのである。

 戦っているのは、殺し合いの中にいる者たちだけではなかった。
 仮面ライダーは、世界を超えて、どんな時も、世界の脅威と戦い続けていた。





To be continued……





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最終更新:2016年01月06日 17:03