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408 :名無し募集中。。。:2012/05/31(木) 01:18:54.17 0


「いった…っ」

目の前の新垣さんが頭の左側を抑えて眉根を寄せた。
倒れた拍子にぶつけたようだったけれど、今のえりなにはそれを気遣う余裕はなかった。

床に突いた自分の腕の中にいる、大好きで大好きでたまらない人。
その大好きは敬愛だなんてラインはとおに超えた想いだった。
会えなければ声が聞きたくなって、会えば触れたくなって、いつの間にか自分が好きだと言うだけでは満足できなくなってしまっていた。
新垣さんにも同じように思っていて欲しい。
えりなの声が聞きたいと触れたいと思っていて欲しい。
そうして、抱きしめて、キスをして、……もっともっと奥深くまで触れてみたい。

振り切れた想いはもうどこにも逃げ場などなくなっていて、えりなは半ば衝動的に新垣さんを押し倒していた。

倒れた新垣さんの髪の毛が床に乱雑に広がって、えりなの指に少しだけ触れていた。
上から見下ろす新垣さんは華奢で小さくて、“先輩”という感じがしない。
ただの、女の人に見えて、どきどきと鼓動が逸る。

「にいがきさん……」

掠れた声でやっと呟くと、自分の頭を抑えていた新垣さんの視線がえりなへ向いた。
眉間の皺はそのままに、唇を歪めた新垣さんは「なにすんのよ」とむっつり言った。
だけど、新垣さんの頬が少しだけ赤くなっていて、その事実に泣きそうになる。


409 :名無し募集中。。。:2012/05/31(木) 01:19:12.22 0


「あのっ、え、えりな、新垣さんの事が大好きなんです」
「知ってるけど、なんで私が押し倒されなくちゃなんないのよ」
「え、えりっ、えりなは…っ」

声が上擦る。言葉が上手く出てこない。
好きなのだと、本気なのだと伝えたいのに。

もう我慢の限界だった。
一緒にいられる時間は日に日に短くなっていく。
新垣さんが卒業して、ここからいなくなってしまう前に、どうしても伝えたかった。

衝動的に押し倒したとはいえ、新垣さんが許してくれるならその先だって覚悟はできていたのに、今更になって手が震え出す。
引き攣る喉は何度唾を飲み込んでも治りそうになくて、情けなくて泣きたくなった。
ここまできて、こんな所で動けなくなるだなんて、えりなはやっぱり本当にダメだ。

鼻の奥がツンとして、見る見るうちに視界が揺れ出した。
泣きたくないのに涙が零れそうで、我慢しようとすればするほど更に涙腺が刺激される悪循環。
声が嗚咽に変わりそうになったその時、涙で歪んだ新垣さんの顔がふと困ったように微笑んだ。

「どーしてこの状況で生田が泣くのよ」

新垣さんが、しょうがないなあと苦笑いした時によく聞く優しい声音が鼓膜を打つ。
ふふふ、と小さな笑い声と共に、新垣さんの掌がえりなの頬にそっと触れた。


410 :名無し募集中。。。:2012/05/31(木) 01:19:43.76 0


「ここまでしたんだからちゃんと責任取りなさいよ」

頬を滑った新垣さんの掌がえりなの前髪をさらりと梳いて、横髪を耳に引っ掛けた。
掌はそのままえりなの首の後ろに回って、ぐっと力が入る。

「ほら、おいで」

今まで聞いた事もないような優しくてだけど少しだけ掠れた声と掌が、えりなを引き寄せる。
その拍子に睫毛の手前で留まっていた涙が一粒零れて、新垣さんの頬にぽたりと落ちた。
晴れた視界が照れたように微笑む新垣さんを映し出して、一瞬呼吸が止まる。
桜色に染まった頬がえりなの涙で濡れていて、無意識のうちに小さく喉が鳴った。

どんどん縮まる距離。
鼓動が、痛いくらいに脈を打つ。

鼻先が触れ合って、新垣さん擽ったそうに小さく笑んで、泣いてもいないのに濡れたような瞳がじっとえりなを見つめてきて、そうして。

そうして、えりなは、新垣さんの唇の柔らかさと温度を初めて知った。

おわり

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最終更新:2012年07月23日 18:42