アットウィキロゴ
265 :名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 02:21:07.74 0

全く生田はホント前代未聞のかたまりみたいな子だよ。
生田USTのゲスト出演が終わってまず思ったことだ。
モーニングの記念すべき50枚目のシングル発売日に、ろくに宣伝もせずに。
本番中にも苦言を呈したけど、それは本気のダメ出しだけど、少しだけ満更でもない自分がいたのも事実だった。

「お疲れさまでした~」
スタッフさんに挨拶を済ませてドアから出ようとしたその時。
トン…と背中に何かが当たった。
それが生田の頭だと分かったのは、脇腹からにゅっと伸びてきた紫の手に体をホールドされたから。
「わぁ!ちょっと生田、アナタねーびっくりするでしょうが。無言で抱きつくんじゃないの!」
「……さん」
グズっと鼻をすする音に混じって生田に呼ばれた。
名前の部分はほとんど聞こえなかったけど、この状態の生田から出る名前があたし以外であるはずがない。
こんなこと考えてしまう自分が生田以上にキモく思えるけど絶対にそうだ。
この子はただ純粋に“新垣里沙”というあたしを好きでいてくれる。
それは、とてもとーっても嬉しくもあり、こそばゆくもあり……。
嬉しいんだけど、なんだろ?何だか言い表しにくい感情でもある。


266 :名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 02:22:16.90 0


「なーによ?もう」
「新…が…さん」
「何ってば。頑張ったじゃない?何を泣くことがあるの?」
ほら、大丈夫だよ。生田らしくやってたよ。
そんな気持ちを込めて腰に回された手を包むように握ってみた。
「えり…っ、えりな!」
ビクンと体が跳ねて、驚いたように声を出す生田が可愛らしい。
「はい、続けて?」
生田はちょっとくらい調子に乗って、ンフンフ幸せそうに笑ってるのが似合うんだからね。
「にーがきさん。えりな、で…いいんですか?」
「何が?あたしはモーニングのみんなを応援してるんだからね。もちろん生田も応援しまくるけどさ」
「違います!あの…色の……、黄緑、えりながもらっていいとですか?」
何を今さら。
もう事務所も承諾していることに何言ってるんだか。
生田の気持ちはこないだの手紙や電話で散々聞いたじゃないの。
良かったねって、あたしも嬉しいよって、何度も言ったじゃない。

「あーそれね。ん~やっぱダメかな?」
「えぇっ?!」
「バカ、嘘よ。んなわけないじゃない?」
軽口を叩くと、生田は全身から出たのかと思うほど深い安堵のためいきを吐いた。
耳や首筋をかすめるその空気の流れが、少しだけあたしの鼓動を速める。
いや!何でよ。関係ないから!
「言った…じゃない……」
突然沸き上がって来た感情を消すように話を続けた。


267 :名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 02:23:23.85 0

「“黄緑継承するのは生田しかいない”って」
「は…い」
生田がまたギュッと手に力を込めてあたしを引き寄せる。
少し背の高くなった生田が顔を肩から首に埋めて来る。
もう自分でも分からないくらいに心臓が踊り出した。

なんで、なんでよ?
あたしどうかしちゃったんじゃないの?
上がり出す体温に、強さを増す鼓動に、戸惑いを隠せないあたしに、生田がとどめをさしてくる。
「好き、です、にーがきさん」
「…………っ」
うん、でも、ありがと、でも何でもよかったのに。
答えに詰まったら逆に誤魔化せなくなるじゃない。
生田の気持ちも、自分の気持ちも。
「…、…、…、…、“る”」
「る?」
「“る”のトコ!よかったから!もっともっと頑張んなさい」
ドキドキが止まらない。
背中に感じる生田の鼓動がこれだけ分かるんだから、きっとあたしのドキドキも伝わってるんだろう。
バレバレでもまだ言えない。
てゆーか、ここ会議室だし!まだスタッフさん達もいるのに言えるかってーの。
「……はい」
生田は短く返事して、後の気持ちはハグに込めるかのように強く、でも優しくあたしを抱き締めた。
今は誰にも顔を見られたくない。きっとすごく赤くなっているはず。

「新垣さん暑いっちゃ」
「っ!…なら、離れなさいよ!」


268 :名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 02:25:09.63 0


「イヤです~。にーがきさん補充してるんですからぁ~」
「あたしはガンガン身を削られてる気分だよっ!」
「じゃあ、えりなからも補充しますか?んふふふ~、はい」
振り返ると、キモ笑顔のまま両手を広げて“待ち”ポーズでおどける生田がいた。
「バカ!」
「イッターイ!!」
ペシコンくらいに軽く叩いただけだけど、生田は大袈裟に痛がって空気を冗談に変えた。

感謝の気持ちを声にするのは躊躇われて、いつの間にかあたしより背が高くなっていた生田を見つめて唇を動かした。

“あ、り、が、と、う”

一瞬目を見開いて驚いた生田が、すぐ「あ…」と呟いて今度はガックリと項垂れた。
「なーによー」
「何でも、ないです」
「もうワケ分からないこと言ってるんじゃないの」
いつもどおりのやり取り。
「にーがきさん大好きです!」
「はいはい。ありがとね」

いつもどおり。
もうちょっとだけこのまま。
大切な大切な、可愛い後輩でいてね。

大好きだよ、生田。


おわり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年08月04日 14:23