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489 :名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 20:06:25.12 0

「新垣さん」
「んー?」

えりなの隣でころんと横になっていた新垣さんは、えりなの声にシーツの中から視線だけをひょいと上げた。

「にーがきさん」
「うん?」
「新垣さん」
「だーから、何よ」

飽きずに呼び続けていたら、新垣さんは呆れた声と共に被っていたシーツを跳ね除けた。
シーツの間から覗いた裸の肩の華奢なラインに、何度も何度も見ているのに、鼓動が小さく弾む。
さっきまでの行為のせいかちょっとだけ気だるげに潤んだ目元と、子供みたいにとんがった唇が可愛らしい。
いくつも年上とは思えない幼い表情に緩む頬をそのままにして、えりなはそっと新垣さんに手を伸ばした。

寝転んだ事で少し乱れた新垣さんの前髪にそっと触れる。
撫でつけるように耳の後ろの髪まで指を滑らせて、短くなった襟足を小さく引っ張った。
唇を尖らせたままえりなの手を振り払おうと動いた新垣さんの手を、逆に捕まえる。
そっと指を絡ませて、そのままシーツの上に縫い付けたら、これまた不満げにえりなを見つめる新垣さん。
睨むと言うにはあまりにも可愛いその表情に、知らず、んふふふ、と笑い声が漏れ出ていた。
新垣さんの眉間に皺が一つ刻まれる。

「キモい」
「だって新垣さん、可愛いんだもん」

正直な気持ちを言っただけなのに、新垣さんの視線はキツくなるばかり。
だけど、それすらも可愛くて愛しくて仕方がなくて、胸の奥がきゅんと甘く鳴く。

凛々しい新垣さんの表情が好きだ。
舞台の上で自信に満ち溢れた顔で笑う新垣さんが好きだ。
だけど、付き合い出してから少しずつ少しずつ知った、えりなの前でだけで見せる新垣さんの幼い表情は、それ以上にえりなにとって特別なモノだった。
だって、それはえりなしか知らない、えりなだけの新垣さんだから。

490 :名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 20:07:30.22 0


目を細めて熱い息を吐き出す。
けれど、少しも鼓動は収まらなくて、それどころか加速していくばかり。
抑えきれな愛おしさのままに、えりなは新垣さんに覆い被さるようにして小さな額に唇を押し付けた。

繋がった手の力が少しだけ強くなったけれど、構わずに今度は眉間に口づけて、そのまま瞼へ唇を滑らせる。
柔らかな頬にもこめかみにも細い顎にも、思いつく限りの所に触れるだけのキスをした。
最初は黙っていた新垣さんも、いつの間にか繋がってない方の手をえりなの背中に回して、小さな笑い声を上げていた。

くすぐったいと笑いながら、でも顔を逸らさない新垣さんに、温かな幸福感がじんわりとえりなを包んでいく。
同時に、大好きでたまらない人が自分を受け入れてくれているという事実を改めて実感する。
新垣さんもえりなと同じ気持ちをえりなに持ってくれてるのだ、と。
えりなが新垣さんを好きなように、新垣さんも、切なくて、だけどその何倍も甘い気持ちを感じてくれているのだ。

胸の奥がぎゅっと甘く締付けられる。

こんな事を口にしたら、好きだと言って好きだと返されて、抱きしめ合って、キスもその先だってしているのだから、
そんなの当たり前の事じゃないかと新垣さんはきっと笑うだろうけれど、えりなにとってそれは何度実感しても泣きたくなるくらいに幸せで、何よりも大切な事だった。

裸の背中を新垣さんの少しだけ温度の低い手のひらがゆっくりと滑る。
宥めるようなその動きは、だけど、えりなの気持ちを煽るばかりで、高ぶる鼓動のままに新垣さんの鼻の頭の可愛いほくろにそっと唇を押し付けたら、生田、と甘い甘い声がえりなの鼓膜を打った。
鼻先がくっ付きそうな距離まで顔を離して、色素の薄い茶色の瞳を覗き込む。

どきどき、どきどき、鼓動が跳ねて。

「りさ、さん」

ほとんど呼んだことがない下の名前を呼んでみた。
覗き込んでいた新垣さんの瞳が一瞬驚いたように見開かれて、そうしてすぐに柔らかく細められた。


492 :名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 20:08:12.21 0


「何よ、急に」
「なんとなくです」
「ふーん?」

笑みを含んだ声に、きゅ、と唇を結ぶと、背中を撫でていた新垣さんの手のひらがゆっくり動き出した。
それは背中から脇の下をさらりと撫でながら頬まで辿り着いて、顎から耳の下まで形を確かめるみたいにそっと動いた。
ひんやりとした手のひらの感触に目を細めると、ぽってりとした新垣さんの唇が愉快そうに孤を描くのが視界に入る。
その間からちらりと覗いた真っ赤な舌が誘うように揺れて、知らず小さく喉が鳴った。

頬に置かれた手のひらが首の後ろに回されて、顔をぐっと引き寄せられて。


「好きだよ、……衣梨奈」


鼻先が触れて通り過ぎて、その先にあった柔らかな新垣さんの唇に自分のそれが重なった。
何度触れても泣きそうになるくらい幸せな感触と、大好きな人の声で聞く自分の名前の何とも言えない甘い響きに、えりなは、うっとりと瞼を閉じた。


おわり

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最終更新:2012年07月24日 22:47