188 :名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 14:20:39.57 0
147 :名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 23:08:13.08 0
そんな猛獣使いのガキさんがナマタという飼い犬に手を噛まれるのか
この辺から妄想
飼い犬に手を噛まれる?ガキさん
ちょっとお借りします
189 :名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 14:21:43.52 0
肩と後頭部に感じた強い衝撃に、一瞬くらりと目が回った。
すぐに回復した視界に写ったのは、今にも泣き出しそうに顔を歪めた生田の姿。
見慣れた泣き顔なのに、いつもは情けない光を放つ瞳が今日は怖いくらいに真剣で、私は思わず小さく息を呑んだ。
どうしてこんな事になってしまったのか、頭の片隅で考える。
今日のコンサートでの生田の立ち振る舞いについて伝えたい事があったから、ホテルの私の部屋へ来るようにと生田へ告げたのが会場からホテルへ向かう車の中。
生田が緊張した面持ちで部屋をノックしたのが、つい30分前の事だった。
そうして、その本番での事をあれやこれや話しているうちに、何故か私は生田によって壁に押し付けられていた。
何がどう生田のスイッチを入れてしまったのか分からない。
本人に問い質すにもそんな雰囲気ではないし、手を動かそうにもがっちりと生田の両手に捕らえられていて身動きがとれない。
年齢は9つも離れているくせに、私よりも身長が高く育ち盛りの生田の腕力は見た目以上に強力で、それを無理やり跳ね除ける体力は、情けないかな私にはなかった。
この状況に最初は戸惑っていたけれど、この歴然とした体力の差に、段々と腹が立ってきて、少しだけ高い位置にある生田の顔をキッと睨みつけた。
「ちょっと…、」
「なんで!」
文句を言おうと口を開いたら、私の言葉を生田の声が遮った。
そのあまりにも悲痛な響きと有無を言わせない迫力に気圧されて、続けようとした文句が喉の奥に引っ込んだ。
生田の瞳がギラリと光る。
いつもの子犬のような光とは違う、まるで私を捕食するかのような獰猛な光に、胸の奥がぎゅっと鷲掴みされたような痛みが走った。
「なんで分かってくれんとですか…!」
苦しくて悔しくてやっと吐き出せたような掠れた声に、全身に緊張が走る。
ギラギラと光る瞳の奥に、全てを焼き尽くしてしまいそうな炎が見えた気がして、身動きがとれない。
190 :名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 14:22:37.97 0
「えりなは、新垣さんが好きなんです…!」
何度も何度も聞いた言葉が、一度も聞いた事のないような声音に乗って、私の鼓膜と心を揺さぶった。
ただ、慕ってくれているだけだと思っていた。
推しだなんだと毎晩メールをくれるのも、バスツアーに参加してしまうのも、嬉しそうに恥ずかしそうに私の名前を呼ぶのも、名前を呼んだだけで蕩けそうな顔をして笑うのも、ただ、慕ってくれているからの行動だと思っていた。
なのに、それなのに。
この声は、この視線は、“慕う”なんて生易しい言葉じゃ足りない程の何かを含んでいるような気がして。
「えりなは…!」
黒目がちな瞳の奥に燻るその熱は。
「新垣さんが、好きなんです」
生田の瞳から、一粒涙が零れ落ちた。
頬を通り顎まで辿り着いたその雫を目で追って、それが床に向かって消えたのを見届けてから、そっと視線を戻す。
涙の膜が張っててらてらと光る怖いくらいに真剣な生田の瞳。
その奥で燃える炎が確かに見えた気がして、生田の言う“好き”が後輩が先輩を慕う時に使うそれとは別物である事を悟った。
一文字に結ばれた形の良い生田の唇が小刻みに震えている。
私の手首を握るその手も同じように小さく震えていて、強く握られすぎて痛みを感じるのに、それなのに。
それなのに、私は、胸の中にゆっくりと温かな何かが満ちていくような感覚にとらわれていた。
191 :名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 14:23:10.21 0
それは不快な変化ではなくて、むしろ心地良い感覚だった。
頬の温度が上がっていって、鼓動が柔らかく優しく飛び跳ねる。
生田の頬を伝った涙の跡を拭ってやりたい衝動に駆られて、上がっていく熱を逃がすように細く息を吐き出した。
「生田、手、離して」
裏返らないように慎重に紡いだ言葉を受けた生田は、何を思ったのか強めていた視線を途端に情けなく歪めて、きりりと引き上げていた眉尻もしゅんと下げた。
何をどう受け取ったのか手に取るように分かるその表情の変わり様に、そうではないと早く伝えたくて、喉がつかえるのも構わずに私は知らず、生田、と名前を呼んでいた。
子犬のような黒目がちな瞳が所在なさげに揺蕩うて、弱々しく私を捉えた。
唇の端を舐める。生田、生田。早く。
「離してくれないと、……生田に触れない」
生田の目が大きく見開かれて、そうしてすぐにくしゃくしゃと顔が崩れた。
本格的に泣き出す一歩手前のその表情に、だけど、さっきとは全く違う理由で溢れているであろう涙に、胸の奥が甘く疼いた。
手首を掴んでいた生田の手の力が緩んで、私を窺うようにそうっと離れていく。
中途半端に話された生田の手のひらを押しのけるようにして、私は、生田に向かって両手を伸ばした。
おわり
最終更新:2012年07月24日 22:22