百詩篇第6巻97番

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*原文 Cinq & quarante degrés ciel bruslera, Feu&sup(){1} approucher&sup(){2} de la grand&sup(){3} cité&sup(){4} neufue, Instant grand flamme esparse saultera, Quant&sup(){5} on vouldra des Normans&sup(){6} faire preuue: **異文 (1) Feu : Peu 1627 1644 1653 1665 (2) approucher 1557U 1557B : approcher &italic(){T.A.Eds.} (3) grand : grand' 1597 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1660 (4) cité : Cité 1672 (5) Quant 1557U 1557B 1568A 1568B 1568C 1772Ri : Quand &italic(){T.A.Eds.} (6) Normans : normans 1557B, Normands 1665 *日本語訳 五と四十度で空は燃えるだろう、 火が大きな新しい都市に近づくために。 瞬時に撒き散らされた大きな炎が爆ぜるだろう。 人々がノルマン人たちを試したいであろう時に。 **訳について  3行目 instant は名詞だが、à l'instant(瞬時に)という副詞句とほぼ同じ意味に訳されることがしばしばなので((Leoni [1982], Smoley [2006]))、ここでもそれに従った。  4行目の faire preuve de は現代フランス語のéprouver (~を試す、試練に遭わせる)と同じ((Clébert [2003]))。この成句は DMF にはないが、preuve が épreuve (試験、試練)と同じ意味を持っていたことは指摘されている。  大乗訳1行目「天は五四〇回も焼かれ」((大乗 [1975] p.199))は五島勉の訳に引きずられた誤訳。degré は度数をあらわす単語であって回数を表す単語ではない。  同2行目「火は新しい町に近づき」は、grand が訳に反映されていない。  同3行目「一瞬にして炎は燃えつき」は誤訳。sauter (飛び跳ねる、爆ぜる)の意味合いが全く含まれていない。  山根訳は特に問題はない。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、フランス南部で尋常でない落雷があることとし、「新しい大都市」はヴィッラ・ノーヴァ(Villa Nova)でないのだとしたら特定が難しいとしていた((Garencieres [1672]))。ヴィッラ・ノーヴァはおそらくヴィッラノーヴァ・ダスティ(後述)のことだろう。  [[アナトール・ル・ペルチエ]](1867年)は、未来の情景として、北緯45度にあるリヨンが天の怒りの炎で燃え上がった後、ナポレオン3世によって再建され新しくなった大都市パリにも大火災が達することになると解釈した((Le Pelletier [1867a] p.337))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1939年)は近未来にジュネーヴにある国際連盟の本部が爆撃される予言としていた((Fontbrune [1939] p.179))。のちに出された改訂版では未来の戦争の情景とされたが、「新しい大都市」がどこかは特定されなかった((Fontbrune [1975] p.190))。  [[ロルフ・ボズウェル]](1943年)は、北緯45度線上にあるハリファクス(カナダ)で1917年12月6日に起きた、フランスの軍用船モン・ブラン号とノルウェーの穀物運搬船イモ号(Imo)の衝突事故とした。この衝突事故は火薬による爆発事故としては史上最大級のものとなった。モン・ブラン号の船員は、大半がノルマンディー地方とブルターニュ地方の出身者だったという((Boswell [1943] pp.158-160))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)はナチス・ドイツが北緯45度線上を含むユーゴスラビア北部を空爆し、その炎がベオグラードにも達したこととした((Lamont [1943] p.192))。  [[エリカ・チータム]](1973年)はニューヨーク州が北緯40度から45度にあるとし、疑問符つきでニューヨークが爆撃される予言ではないかとした((Cheetham [1973/1990]))。  [[セルジュ・ユタン]](1978年)は広島の原爆投下の予言とした((Hutin [1978]))。広島はもちろん北緯45度線上にはないが、その点の説明はなかった。  [[クルト・アルガイヤー]](1982年)は、未来においてニューヨーク州で原爆が投下され、そのキノコ雲がニューヨーク市でも観測されることの予言とした((アルガイヤー『1987年悪魔のシナリオ』pp.112-116))。  [[五島勉]]は当初「45度」を「540回」とする読み方をもとに、ムーアやクラウスといった実在の確認できない解釈者たちの説の紹介として、1999年の直前に多くの爆発があり、ヨーロッパの大都市が破滅する予言とした((五島『ノストラダムスの大予言』pp.169-171))。  その後、チェルノブイリ原発事故(1986年)が起こると、チェルノブイリは北緯45度にあるとして、これはその事故の予言だと解釈した((五島『ノストラダムスの大予言・日本編』p.23))。チェルノブイリの実際の緯度は北緯52度であるが、[[藤島啓章]]はそれを織りこんで解釈を修正し、やはりチェルノブイリのことだとした((藤島『ノストラダムスの大警告』))。平川陽一は訳語から「45度」を取り除いた上でチェルノブイリとした((平川『恐怖の世界終末大予言』pp.114-118))。  英語圏では、前出のチータムのように「大きな新しい都市」をニューヨークと捉え、そこに攻撃が加えられる予言だと解釈する者たちがいた。  そのため、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロでニューヨークの世界貿易センタービルが標的になると、間違いなくそれを予言していたのだと主張する者たちが次々に現れた。例えば、[[ボードワン・ボンセルジャン]]、ヴィジャヤ・クマー、G.B.ノストラダムス研究班などである((Hutin/Bonsergent [2002], Kumar [2002] p.50, G.B.ノストラダムス研究班 [2001]etc.))。 *同時代的な視点  [[ピエール・ブランダムール]]は北緯45度にある新しい都市を、ピエモンテ地方のヴィッラノーヴァ・ダスティ(Villanova d'Asti)のことだろうとしていた(ヴィッラノーヴァは「新しい都市」の意味)((Brind’Amour [1996] p.83))。ただし、詳細な解釈はつけていなかった。  [[ピーター・ラメジャラー]]は、『[[ミラビリス・リベル]]』の予言を投影したもので、北緯45度線上にある新しい大都市はヴィッラノーヴァ・ダスティか南フランスのヴィルヌーヴ=シュル=ロット(Villeneuve-sur-Lot)だろうとした。  もうひとつの解釈として、新しい都市はギリシャ語のネアポリス(新しい都市)を語源とする都市[[ナポリ]]であろうとし、「撒き散らされた大きな炎」はベズービオ山の噴火の可能性を示していた。ナポリは45度上にはないが、「5と40」という回りくどい表現が40度50分を示している可能性も指摘し、4行目については11世紀におけるノルマン人の南イタリア侵攻と関連付けた((Lemesurier [2003b]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]もナポリとベズービオ山に関する予言とした。緯度については、ノストラダムスが『[[1566年向けの暦>ALMANACH POVR L'AN M. D. LXVI.]]』の中で「シチリア島とナポリの諸地方」(les pays de Sicile & de Naples)の緯度を「40、42、43、44度」としていることを引き合いに出し、現代ほど厳密なものではないだろうとした((Clébert [2003]))。  下の地図から明らかなように、シチリア島を北緯40度とするのは無理があり、確かにクレベールの主張には一定の説得力がある。 #ref(45.PNG) 【画像】ナポリ周辺地図(緯線は2度間隔で引いてあり、ナポリのすぐ下の緯線が北緯40度である) ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。 - スリーマイルとチェルノブイリ原発事故を予言。40度→北緯40度。新しい大都市はフィラデルフィア。(北緯39度59分53秒)。5度→チェルノブイリ原発事故発生の1986年4月26日は太陽はおうし座の5度25分。切捨てで5度 -- とある信奉者 (2010-03-28 23:24:59) #comment
*原文 Cinq & quarante degrés ciel bruslera, Feu&sup(){1} approucher&sup(){2} de la grand&sup(){3} cité&sup(){4} neufue, Instant grand flamme esparse saultera, Quant&sup(){5} on vouldra des Normans&sup(){6} faire preuue: **異文 (1) Feu : Peu 1627 1644 1653 1665 (2) approucher 1557U 1557B : approcher &italic(){T.A.Eds.} (3) grand : grand' 1597 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1660 (4) cité : Cité 1672 (5) Quant 1557U 1557B 1568A 1568B 1568C 1772Ri : Quand &italic(){T.A.Eds.} (6) Normans : normans 1557B, Normands 1665 *日本語訳 五と四十度で空は燃えるだろう、 火が大きな新しい都市に近づくために。 瞬時に撒き散らされた大きな炎が爆ぜるだろう。 人々がノルマン人たちを試したいであろう時に。 **訳について  3行目 instant は名詞だが、à l'instant(瞬時に)という副詞句とほぼ同じ意味に訳されることがしばしばなので((Leoni [1982], Smoley [2006]))、ここでもそれに従った。  4行目の faire preuve de は現代フランス語のéprouver (~を試す、試練に遭わせる)と同じ((Clébert [2003]))。この成句は DMF にはないが、preuve が épreuve (試験、試練)と同じ意味を持っていたことは指摘されている。  大乗訳1行目「天は五四〇回も焼かれ」((大乗 [1975] p.199))は五島勉の訳に引きずられた誤訳。degré は度数をあらわす単語であって回数を表す単語ではない。  同2行目「火は新しい町に近づき」は、grand が訳に反映されていない。  同3行目「一瞬にして炎は燃えつき」は誤訳。sauter (飛び跳ねる、爆ぜる)の意味合いが全く含まれていない。  山根訳は特に問題はない。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、フランス南部で尋常でない落雷があることとし、「新しい大都市」はヴィッラ・ノーヴァ(Villa Nova)でないのだとしたら特定が難しいとしていた((Garencieres [1672]))。ヴィッラ・ノーヴァはおそらくヴィッラノーヴァ・ダスティ(後述)のことだろう。  [[アナトール・ル・ペルチエ]](1867年)は、未来の情景として、北緯45度にあるリヨンが天の怒りの炎で燃え上がった後、ナポレオン3世によって再建され新しくなった大都市パリにも大火災が達することになると解釈した((Le Pelletier [1867a] p.337))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1939年)は近未来にジュネーヴにある国際連盟の本部が爆撃される予言としていた((Fontbrune [1939] p.179))。のちに出された改訂版では未来の戦争の情景とされたが、「新しい大都市」がどこかは特定されなかった((Fontbrune [1975] p.190))。  [[ロルフ・ボズウェル]](1943年)は、北緯45度線上にあるハリファクス(カナダ)で1917年12月6日に起きた、フランスの軍用船モン・ブラン号とノルウェーの穀物運搬船イモ号(Imo)の衝突事故とした。この衝突事故は火薬による爆発事故としては史上最大級のものとなった。モン・ブラン号の船員は、大半がノルマンディー地方とブルターニュ地方の出身者だったという((Boswell [1943] pp.158-160))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)はナチス・ドイツが北緯45度線上を含むユーゴスラビア北部を空爆し、その炎がベオグラードにも達したこととした((Lamont [1943] p.192))。  [[エリカ・チータム]](1973年)はニューヨーク州が北緯40度から45度にあるとし、疑問符つきでニューヨークが爆撃される予言ではないかとした((Cheetham [1973/1990]))。  [[セルジュ・ユタン]](1978年)は広島の原爆投下の予言とした((Hutin [1978]))。広島はもちろん北緯45度線上にはないが、その点の説明はなかった。  [[クルト・アルガイヤー]](1982年)は、未来においてニューヨーク州で原爆が投下され、そのキノコ雲がニューヨーク市でも観測されることの予言とした((アルガイヤー『1987年悪魔のシナリオ』pp.112-116))。  [[五島勉]]は当初「45度」を「540回」とする読み方をもとに、ムーアやクラウスといった実在の確認できない解釈者たちの説の紹介として、1999年の直前に多くの爆発があり、ヨーロッパの大都市が破滅する予言とした((五島『ノストラダムスの大予言』pp.169-171))。  その後、チェルノブイリ原発事故(1986年)が起こると、チェルノブイリは北緯45度にあるとして、これはその事故の予言だと解釈した((五島『ノストラダムスの大予言・日本編』p.23))。チェルノブイリの実際の緯度は北緯52度であるが、[[藤島啓章]]はそれを織りこんで解釈を修正し、やはりチェルノブイリのことだとした((藤島『ノストラダムスの大警告』))。平川陽一は訳語から「45度」を取り除いた上でチェルノブイリとした((平川『恐怖の世界終末大予言』pp.114-118))。  英語圏では、前出のチータムのように「大きな新しい都市」をニューヨークと捉え、そこに攻撃が加えられる予言だと解釈する者たちがいた。  そのため、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロでニューヨークの世界貿易センタービルが標的になると、間違いなくそれを予言していたのだと主張する者たちが次々に現れた。例えば、[[ボードワン・ボンセルジャン]]、ヴィジャヤ・クマー、G.B.ノストラダムス研究班などである((Hutin/Bonsergent [2002], Kumar [2002] p.50, G.B.ノストラダムス研究班 [2001]etc.))。 *同時代的な視点  [[ピエール・ブランダムール]]は北緯45度にある新しい都市を、ピエモンテ地方のヴィッラノーヴァ・ダスティ(Villanova d'Asti)のことだろうとしていた(ヴィッラノーヴァは「新しい都市」の意味)((Brind’Amour [1996] p.83))。ただし、詳細な解釈はつけていなかった。  [[ピーター・ラメジャラー]]は、『[[ミラビリス・リベル]]』の予言を投影したもので、北緯45度線上にある新しい大都市はヴィッラノーヴァ・ダスティか南フランスのヴィルヌーヴ=シュル=ロット(Villeneuve-sur-Lot)だろうとした。  もうひとつの解釈として、新しい都市はギリシャ語のネアポリス(新しい都市)を語源とする都市[[ナポリ]]であろうとし、「撒き散らされた大きな炎」はベズービオ山の噴火の可能性を示していた。ナポリは45度上にはないが、「5と40」という回りくどい表現が40度50分を示している可能性も指摘し、4行目については11世紀におけるノルマン人の南イタリア侵攻と関連付けた((Lemesurier [2003b]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]もナポリとベズービオ山に関する予言とした。緯度については、ノストラダムスが『[[1566年向けの暦>ALMANACH POVR L'AN M. D. LXVI.]]』の中で「シチリア島とナポリの諸地方」(les pays de Sicile & de Naples)の緯度を「40、42、43、44度」としていることを引き合いに出し、現代ほど厳密なものではないだろうとした((Clébert [2003]))。  下の地図から明らかなように、シチリア島を北緯40度とするのは無理があり、確かにクレベールの主張には一定の説得力がある。 #ref(45.PNG) 【画像】ナポリ周辺地図(緯線は2度間隔で引いてあり、ナポリのすぐ下の緯線が北緯40度である) ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - スリーマイルとチェルノブイリ原発事故を予言。40度→北緯40度。新しい大都市はフィラデルフィア。(北緯39度59分53秒)。5度→チェルノブイリ原発事故発生の1986年4月26日は太陽はおうし座の5度25分。切捨てで5度 -- とある信奉者 (2010-03-28 23:24:59)

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