ノストラダムスの2021年予言

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この項目ではノストラダムスの2021年予言について扱う。

 毎年のことではあるが、ノストラダムスの『予言集』には、2021年と明記された予言はない

目次


【画像】NOSTRADAMUS CALENDAR 2021

旧来の解釈の「2021年」

 かつてのノストラダムス解釈書の場合、1999年に何かが起こるとするものが多かった。変形として、1999年から何かが始まるとする解釈もいくらかあったが、そういう説でも、


など、2020年代初頭の2021年や2022年は通過点扱いされている感はあった。
 なお、イオネスク説やフォンブリュヌ説の場合、そこに至るプロセスがまったく当たっていないので、重視するには当たらないだろう。

【画像】フォンブリュヌの『ノストラダムスの470年史』表紙


 2021年に触れた説としては、
などがあった。

 シャトランやホーグは星位から判断しているものの、もちろん彼らの星位の読み方が唯一の読み方ではない。
 レディングの場合、詩番号(21番)が「21年」に揃っているだけで、詩の内容に時期が明記されているわけではない。


【画像】レディング『ノストラダムス:福音』のカバー

2020年以降に出てきた説

 『エル・エラルド・デ・メヒコ』が2020年11月に報じたところによると、ノストラダムス予言では、2021年に以下のことが起こるという*5
 一段下げているのは当「大事典」のコメント。

  • ハリケーンの威力が2020年よりも強くなる。
    • ノストラダムスの予言には、「ハリケーン」は一度も登場しない(「嵐」などの、より一般的な単語をこじつける必要がある。「嵐」の登場する詩は主題別索引:悪天候参照)。
    • アメリカやメキシコなど、ハリケーンに毎年悩まされる地域の人々にとっては印象的な予言であろうが、ノストラダムスがハリケーンに特段の関心を寄せていた証拠はない。
    • なお、「台風」と訳せる単語が登場する詩はあるが、1562年6月についてなので、未来に理解するのは無理がある。

  • ヨーロッパ都市に洪水が起こる。
    • ヨーロッパ諸都市の洪水の予言ならば、いくらかは存在する(詩百篇第3巻12番など)。だが、それらの詩には年代は記されていない
    • 実際、似たようなことを言うオカルト関係者は2019年にもいた

  • 経済危機が起こり、アメリカ経済が停滞する。

  • 第三次世界大戦か明言されていないが、世界的な紛争が起こる。
    • 紛争の予言は多いが、曖昧過ぎて、特定のしようがない。

  • 人工知能が進歩する。
    • 当たり前だが、ノストラダムスの予言には「人工知能」など登場しない。かつて川尻徹がやったような、詩の中から任意の文字を抜き出す解釈なら、「A」「I」はいくらでも抜き出せるだろうが、不毛だろう。
    • 五島勉が「新しい脳の人」などと紹介した思わせぶりな詩もあるが*6、五島はAIと結び付けていなかったし、そもそも五島の紹介自体が強引なものであった。

  • 新型コロナウイルスを抑制できる可能性がある。
    • 2020年初頭までに新型コロナウイルス流行の予言なるものを出してきた論者が確認できなかった事実を考えれば、信頼できるものではない。
    • むろん、コロナ禍が終息することは望ましいことではあるが、その見通しを得るためにノストラダムス予言を頼るというのは、まったくの筋違いである。


【画像】Biden-Harris: Prophecies & Destruction: Can America survive the next two presidential terms?

ゾンビ予言を含むYEARLY-HOROSCOPEの予言

 『エル・エラルド・デ・メヒコ』の予言以上に、2020年12月以降、急速に拡散しているのが、Yearly-Horoscope(以下、便宜上YHと略記)で発信された予言である。
 これは、ニューズウィーク、ニューヨーク・ポスト、USサン、ルドフィガボン、TOCANA、東京スポーツなどでも紹介された(一番下の外部リンク参照)。
 YHの予言も簡略に要約しつつ、当「大事典」によるコメントを添えておこう。

  • ロシアの科学者たちが発明する生物兵器により、ゾンビ化する人々が現れる。
    • ノストラダムスの予言には「ゾンビ」は登場しない。「被葬者が墓から出てくる」というモチーフの詩はあるが(詩百篇第10巻74番)、もちろん時期は書かれていない。
    • YHには Few young people: half−dead to give a start. で始まる八行詩が引用されているが、ノストラダムスの予言に八行詩はない
    • そのゾンビと結び付けられている1行目は、おそらく予兆詩第100番の4行目の借用である。たしかに、そこには半死人の若者の話は出てくるが、実際に半分死んでいるという話ではなく、半ば死んだようなという比喩と理解すべきものだろう。そもそも予兆詩第100番は1563年11月向けの予言であった。
    • 八行詩の2行目から5行目は、ほぼ間違いなく予兆詩第101番の借用だが、これは1563年12月向けの予言であった。
    • 最後の6行目から8行目は、予兆詩第92番の1行目から3行目までの借用であろう。YHでは、all the world to end.をわざわざ太字にしているが、そもそも予兆詩第92番は1563年3月向けの予言なので、その時に世界が終わっていたのだとしたら、今この世界で生きる我々すべてがゾンビだったというバカげた結論になってしまう。
    • 以上を踏まえて、人目を引きやすいゾンビ予言の8行詩が、単に1563年向けの予言をつぎはぎしたものすぎず、2021年などとはどこにも書かれていないことを確認しておきたい。
    • なお、東京スポーツの報道を踏まえて、この記事の一番下に補論を加えた。

  • 新しい疫病とともに、世界的な飢饉が起こる。
    • YHは詩百篇第2巻46番を挙げているが、この詩には時期は書かれていない。
    • 詩百篇第1巻67番のような世界的な飢饉の詩は他にもあるが、それらにも時期は書かれていない。
    • そもそも戦争、疫病、飢餓は古来よく知られた災厄の三要素であり、時期の明記されていない疫病や飢餓を組み合わせた予言など、旧約聖書や新約聖書など、ほかの予言(預言)でもなんら珍しいものではなかった。

  • ヨーロッパをイスラーム信徒が席巻する。
    • YHが挙げているのは詩百篇第1巻18番詩百篇第5巻68番である。確かに、イスラーム勢力のヨーロッパ侵攻が描かれている可能性は指摘されているが、例によって時期は書かれていない。
    • ノストラダムス予言には、イスラーム勢力のヨーロッパ侵攻をモチーフとしたものが頻出する。だが、時期の明記されたものはない。
    • そもそも7世紀の偽メトディウス以来、中世の予言書ではイスラーム侵攻のモチーフはよく見られたものであり、ノストラダムスに固有のものではない。

  • 太陽嵐が発生し、気候変動にも影響する。
    • 現代の天文学的な意味での太陽の活動は、ノストラダムス予言に直接的な形では登場しない。当然、「太陽嵐」も出てこない。
    • 日本人なら「巨大な光の反対のもの」という詩(詩百篇第9巻44番)を思い浮かべる向きもあるかもしれないが、このような訳は海外で広く支持されているわけではないので、おそらく別の詩に触発されたか、単なる捏造かのどちらかではないかと思われる。
    • YHは太陽嵐と解釈できる詩を挙げていない。太陽嵐の影響として、„We shall see the water rising and the earth falling under it”という詩句(?)を引用しているが、漠然としていてどれのことかわからない。セザールへの手紙に登場する「世界的な大変動に先立って大洪水や高水位の大浸水が起こり、水で覆われない土地がほとんどなくなるであろうこと」あたりに触発されたのだろうか(もちろん、セザールへの手紙では時期は書かれていない)。

  • 彗星が地球に衝突するか、ニアミスを起こす。
    • YHが引用しているのは詩百篇第2巻46番の4行目らしき詩句である(ただし、前出の節とは英訳が微妙に異なっている)。時期が書かれていないことは、上で述べたとおりである。
    • そもそも「空で目にされるのは火と、駆け巡る長い火花」という詩句をどう読んだら、それが地上に激突するという解釈になるのだろうか。第2巻92番の「天の金色の火が地上で目撃される。高みから打たれる。」あたりのほうが、まだそれらしく解釈できるのではないだろうか。

  • カリフォルニアで大地震が起こる。
    • YHが挙げているのは、第2巻65番である。ヘスペリア(西方の国)をアメリカとする、信奉者によくある解釈を踏まえたもので、4行目の星位が2021年11月25日を指すとしている。だが、YHも引用するように、この詩の4行目に登場するのは水星と土星だというのに、YHはなぜか火星と土星の星位からその日を導いている。単なる誤植かもしれないが、やっつけ仕事な印象がぬぐえない。
    • カリフォルニア大地震の予言はクロケットの四行詩にも登場していたように、アメリカ人の予言解釈や偽予言にしばしば登場する。カリフォルニアにはサンアンドレアス断層があり、歴史上たびたび大地震が起こってきたことから、アメリカ人の耳目を引きやすいのだろうと思われる。

  • 脳にチップを埋め込まれたアメリカ兵が登場する。
    • YHが挙げるのは詩百篇第9巻95番である。だが、「新任の者が軍隊を率いるだろう、/アパメア付近の川岸辺りまで。/ミラノの精鋭による救援が展開しつつ。/双眼を奪われた公爵はミラノで鉄の檻に。」という、アパメア(トルコやシリアに同名の都市がいくつかあった)やミラノが登場するその詩から、脳内チップやアメリカ兵を導くのは強引すぎないだろうか。

  • ローマ教皇フランシスコが人々を教会に導く。
    • フランシスコのもとで教会は多くの人々の「救命ボート」になるというが、対応する予言詩は挙げられていない
    • カトリック信徒を標榜していたノストラダムスがローマ教皇に好意的だったとしても、それは驚くような話ではないが、漠然としすぎていてそれ以上論評しようがない。

【画像】『すべてのいのちを守るため――教皇フランシスコ訪日講話集』


 以上、いくつかのメディアで2020年後半から2021年初頭に報じられたノストラダムス予言を検証してきたが、2021年という時期の明記されたものではなく、一部の詩篇から勝手に拡大解釈したか、単に捏造したかのいずれかの事例ばかりだったといって差し支えないだろう。

補論

ゾンビ予言に関する比較表

 東京スポーツの紹介では、八行詩が散文的に訳されてしまって分かりづらいものであった。
 また、当「大事典」の予兆詩の訳とは少々異なっていて、本当にそれがモデルか分からないと思う方もいるかもしれないため、YHの8行詩と、英語圏の予兆詩の訳の例として、エドガー・レオニ(1961年)、ジョン・ホーグ(1997年)の英訳(1563年11月向けの4行目、12月向けの1~4行目、3月向けの1~3行目)を並べてみる*7
 なお、便宜上、YH、ホーグ、レオニの順に並べる。

Yearly-Horoscope ホーグ レオニ
Few young people: half−dead to give a start. Few young people: half−dead to give a start. Few young people: half−dead to give a start.
Dead through spite, he will cause the others to shine, Dead through spite he will cause the others to shine, Dead through spite he will cause the others to shine,
And in an exalted place some great evils to occur: And in an exalted place some great evils to occur: And in a high place some great evils to occur:
Sad concepts will come to harm each one, Sad concepts will come to harm each one, Sad conceptions will come to harm each one,
Temporal dignified, the Mass to succeed. Temporal dignified [one?], the Mass to succeed. Temporal worthy, the Mass to succeed.
Fathers and mothers dead of infinite sorrows, Fathers and mothers dead of infinite sorrows, Fathers and mothers dead of infinite sorrows,
Women in mourning, the pestilent she−monster: Women in mourning, the pestilent she−monster: Women in mourning, the pestilent monster:
The Great One to be no more, all the world to end. The Great One to be no more, all the world to end, The Great One to be no more, all the word to end,

 以上明らかなように、YHはホーグの英訳をほとんど引き写しており、予兆詩のツギハギに過ぎない事実は疑う余地がない。
 なお、レオニの最後の部分の word は明らかに誤植であろう。草稿と思われるLeoni [1950]の時点ではきちんと world と訳されている。

外部リンク

 以下のリンクは、あくまでもこの記事をまとめる際に確認したサイトであって、網羅的なものではない。
 そもそもこの記事の冒頭に明記したように、2021年と明記したノストラダムス予言は捏造ないし曲解に過ぎないので、この種のサイトを網羅する必要性自体が乏しいのである。



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最終更新:2021年01月11日 10:28

*1 シャトラン『ノストラダムスの極秘暗号』

*2 シャトラン、前掲書

*3 Hogue (1997)[1999]

*4 Reading, Nostradamus : The Good News, 2007

*5 後掲のEl Heraldo de Mexicoのサイトなどによる。

*6ノストラダムスの大予言スペシャル・日本編』、『ノストラダムスの大予言』電子書籍版

*7 Leoni [1961], Hogue (1997)[1999]