この項目ではノストラダムスの2022年予言について扱う。
ちなみに、週刊誌などが採り上げた
「闇の3日間」というモチーフも『予言集』には出てこない。ノストラダムスと全く関係のない説であり、(少なくともノストラダムスの予言としては)根も葉もないデタラメである。
【画像】『来るべき闇の3日間 覚悟はできているか?』(2015年)
目次
旧来の解釈の「2022年」
2021年予言の項目でも書いたことだが、
などでは、2020年代初頭の2021年や2022年は通過点扱いされている感があり、あまり解釈は見られなかった。
なお、イオネスク説やフォンブリュヌ説の場合、そこに至るプロセスがまったく当たっていないので、重視するには当たらないだろう。
【画像】Fontbrune, Nostradamus Nouvelles Prophéties 1995-2025
特に2022年は、
- 2022年3月5日にフランスで「大連合」が結成される(六行詩49番)(モーリス・シャトラン)
などの解釈も見られるけれども、2021年以上にスルーされている感があった。
なお、シャトランは星位から判断しているものの、そもそも六行詩49番は
- 金星と太陽、木星と水星が、性質の部門を増大させるだろう。
という形で、星は出てきても星座の言及はなく、彼がかなり言葉を補って読んでいるだけである。
過去の解釈が外れたのと同様、この解釈も外れた。
2021年以降に出てきた説
インターネット上での解釈
2022年が近づくと、いくつかのネットメディアで取りざたされるようになった。
- Nostradamus predictions for 2022 - grim prophecies from hunger to war(Birmingham Live, 2021年12月23日)
- Nostradamus predictions for 2022: cannibals, robots and the rise of cryptocurrency(New York Post, 2021年12月27日)
- What's in store for 2022? With the New Year around the corner, here are some of 16th century astrologer Nostradamus's predictions for what lies ahead(Daily Mail / Mail Online, 2021年12月27日)
- BAD NEW YEAR Nostradamus’ SEVEN chilling 2022 predictions: From death of Kim Jong-un to war in Europe and collapse of EU(The SUN, 2021年12月27日)
- Nostradamus 'predicted' France will go to war with 'Eastern power' in 2022(Express, 2022年12月29日)
- 2022年「ノストラダムスの大予言4つ」徹底解説! “闇の3日間”に人類の3分の2消滅…(TOCANA, 2021年10月20日)
- ノストラダムスの2022年の大予言、決定版! 第三次世界大戦&核戦争…●●の上昇(TOCANA, 2022年1月2日)
- ノストラダムス「2022年にフランスが東洋の大国と戦争」仏中戦争か!? 第三次世界大戦の勃発も…(TOCANA, 2022年1月8日)
これらの記事で扱われている詩篇は、詩番号が省かれている場合がほとんどだが、英訳・和訳などから推察すると、扱われている詩篇は以下のとおりである(カッコ内は解釈の概要)。
- 詩百篇第1巻17番「・・・旱魃の大地はますます乾燥していき、そして(イリスが)目撃されるときには大洪水が」(旱魃や大洪水)
- 詩百篇第1巻46番「オーシュ、レクトゥール、ミランドの至近で、三夜に渡って天から大火が降るだろう・・・」(隕石や小惑星の落下)
- 詩百篇第1巻55番「バビロンの風土の反対側で、血の流出が甚だしいだろう・・・」(気候変動の悪化)
- 詩百篇第2巻2番「青い頭が白い頭になすだろう、害悪を・・・」(欧州とアジアの戦争)
- 詩百篇第2巻8番「聖なる殿堂はローマの当初のやり方で、粗雑な土台を拒絶するだろう・・・」(EUの瓦解)
- 詩百篇第2巻18番「・・・石と空と火が石だらけの海を作り出す・・・」(小惑星の落下)
- 詩百篇第2巻75番「・・・小麦の入ったボワソー枡が余りに高くなるので、人が人を食べるようになるだろう」(食糧難)
- 詩百篇第3巻3番「・・・アジアの奥地で大地が震えると噂されるだろう・・・」(日本での大地震)
- 詩百篇第3巻10番「血と飢えのより大きな破局が七度、海岸で準備される・・・」(戦争が引き起こす飢餓と難民急増)
- 詩百篇第4巻14番「第一位の人物の突然の死が王国を変え、別の者を(王位に)置くだろう・・・」(金正恩の死)
- 詩百篇第4巻31番「・・・その弟子たちによって不死の状態たることを叱咤される・・・」(人工知能の進歩)
- 詩百篇第5巻30番「大いなる都市の辺り一面で、兵士たちが野に町に駐留するだろう・・・」(ヨーロッパでの戦争)
- 詩百篇第6巻97番「五と四十度で空は燃えるだろう・・・」(第三次世界大戦)
- 詩百篇第8巻2番「・・・私はそれらを取り囲む天からの火を見る・・・」(小惑星の落下)
- 詩百篇第8巻28番「金と銀で膨んだ偶像が、盗まれた後で湖に投げ込まれたのだ・・・」(暗号資産(仮想通貨)の伸長や米ドルの価値崩壊)
この手の記事は安直なものが多いので、ひとつの記事で扱われた詩篇が、別の記事でも使い回されていることも多い。
だが、冒頭の繰り返しになるが、2022年と明記された詩篇はなく、単に人目を引きそうな解釈を2022年の予言ということにしているに過ぎない。
複数の論者の記事が、同じ詩篇を2022年のことだ、と決めつけていたからと言って説得力が増すわけではない。
単に安易なネタの使い回しが横行しているだけの話である。
なお、この件については
ASIOSブログのほうにも検証記事を書いた。
あわせてご参照いただければ幸いである。
出版物での言及
公刊された例としては、以下のものがある。
実話ナックルズ
- 『実話ナックルズGOLDミステリー vol.5』(奥付上は2022年2月1日発行。アマゾンでは2021年12月16日発売扱い)
【画像】『実話ナックルズGOLDミステリー vol.5』
この実話ナックルズの記事では、明代の予言者・劉基とノストラダムスとが採り上げられている。
ただ、この記事のうち、ノストラダムスのほうは、
詩百篇第10巻72番のみを扱い、1999年7月の法輪功(中国の宗教団体)の規制と結び付けているだけで、
詩そのものに2022年(以降)という時期が明記されているわけではない。
アンゴルモワの大王がモンゴルの
アナグラムとする説は信奉者の間で根強いのは事実だが、その時期を1999年から20年以上後に持ってくるのは、あまりにもこじつけがひどいと言わざるを得ない。
FRIDAY
- 『FRIDAY(フライデー)』2022年2月25日号(2022年2月10日発売)
- 続!ノストラダムスの大予言 2022年「闇の3日間」で人類の3分の2が滅亡する
【画像】『FRIDAY(フライデー)』2022年2月25日号
この記事はたった1ページしかない上に、文字情報はページの下半分にしかないため、非常にうすい内容になっている。
白神じゅりこのコメントも載っているが、上でリンクを貼ったTOCANAの2021年10月20日の記事(著者は白神じゅりこ)の劣化コピーのような内容になっており、ノストラダムスの具体的な予言詩などとの結び付けが一切ないまま、「ノストラダムスはあれを予言している、これを予言している」と無責任に煽るだけのものになっている。
「闇の3日間」そのものは、ここでは詳しく検証しないが、かわりに当「大事典」管理者による検証記事
が
ASIOSブログにあるので、そちらを参照いただきたい。
週刊プレイボーイ
- 『週刊プレイボーイ』no.11(2022年3月14日号)
【画像】『週刊プレイボーイ』 2022年3月14日号
ノストラダムス解釈部分でコメントをしているのは白神じゅりこ。
2022年の予言として取り上げているものは
の4篇で、過去のTOCANAの記事の焼き直しに過ぎない。
しかも、予言詩の引用(ただし引用元の表記はないので、厳密には
無断転載、つまり盗用)は明らかに『
ノストラダムス大予言原典・諸世紀』からであって、「オーホ」とか「540回」といったあからさまな誤訳や誤表記をそのまま踏襲している。
白神の責任なのか、記事を取りまとめたライターの責任なのかはともかくとして、かなりのやっつけ仕事であることを窺わせる。
もちろん、その詩のどこを解釈したら2022年と特定できるのかの説明は一切ない。
現代怪異マニアックス
- 『芸能エンタメDASH!!4月号増刊 現代怪異マニアックス』(奥付上は2022年4月1日発行)
- 「第三次世界大戦勃発はメシア降臨の『序章』となるか?」(文・取材 八尾麗人)
以上は目次での題名だが、表紙での見出しは「ノストラダムスが残した2022年世界を壊す4つの予言 第三次世界大戦勃発とメシア降臨」
扱われているのは詩百篇第1巻46番、第2巻2番、第6巻97番の3篇で、表紙の「4つ」に対応していない(2022年と無関係な形で第10巻72番への言及はある)。
解釈は上の他の記事類と同工異曲で、さほど目新しい点はない。
なお、第2巻2番と第6巻97番の訳は当「大事典」からの盗用であり、第2巻2番は多少のアレンジを加えているものの、第6巻97番の方は2行目から4行目までほぼ丸写しである。
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最終更新:2022年05月19日 00:18