ノストラダムスの2016年予言

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 一部メディアにはノストラダムスが2016年について予言しているかのような主張が見られる。だが、それは事実ではない。

ノストラダムス本人の作品には、2016年と明記された予言など存在しない。

『ノストラダムスの予言は的中していた! 2016年「人類40億人滅亡」恐るべき証拠』

 並木伸一郎の著書『ノストラダムスの予言は的中していた! 2016年「人類40億人滅亡」恐るべき証拠』(竹書房、2015年)は、題名に反して、ノストラダムス予言から2016年の破局を導くものではない。
 ノストラダムス予言で直接解釈されているのは百詩篇第10巻72番のみで、「2016年」という年号はその解釈にすら出ていない。

『2016年向けのノストラダムス予言トップ10』

 Alex Noudelmanが「2016年向けのノストラダムス予言トップ10」を公表し、日本ではTOCANAがこれを元にした記事を公表した。しかし、その予言というのは、たとえば
  • 「最後の大統領・オバマ」
  • 「ホワイトハウスで戦争ゲームが行われる」
など、検討する価値のないものばかりである。
 「アメリカ」はノストラダムスの予言にはたった一度「アメリク」(L'Americh)という形で登場するに過ぎない(百詩篇第10巻66番)。当「大事典」では、それはアイルランドの都市リムリック(Limerick)の誤植の可能性を疑っているが、いずれにせよ、信奉者側の解釈でアメリカが頻出するのはヘスペリアなどをアメリカの隠喩と解釈した結果であって、直接的に導かれるものではない。
 ましてや、オバマの運命だの何だのが書かれているはずはもちろんなく、相当に強引なこじ付けをしているか、根本的な捏造であるかのどちらかであろう。

 ただし、
  • 「中東が火の海に」
  • 「中東地域での暴動」
などは、既存のノストラダムス予言詩からこじつければ導けないわけではないだろう。しかし、イスラームを邪悪な侵略者と見なす言説は、偽メトディウスティブルのシビュラなど、中世以来の予言によく見られたモチーフであって、2016年と明記されているわけでもない。
 また、ISIL(いわゆる「イスラム国」)の動きなどを考えれば、当てずっぽうでもこの程度は予言できるだろうし、何らかの形で当たったとしても驚くに当たらない。

 ノストラダムスの2015年予言にも書いたことだが、かつてはノストラダムスの墓から見つかったというような触れ込みで、偽予言が頻繁に出されていた。たとえば、Googleブックスで見られるものとしては
  • 『ミシェル・ノストラダムスの新たなる興味深い7年間の予言。1768年から1774年まで』*1(1768年刊行)
  • 『ミシェル・ノストラダムスの新たなる興味深い7年間の予言。1839年から1845年まで』*2(1838年刊行)
がある。これらは特殊なケースでなく、たとえば、前者のあとには1770年ごろ、1773年、1774年、1778年、1781年ごろ、1783年、1784年ごろ、1787年、1790年、1791年・・・に同じようなものが出されていた*3
 要するに、ノストラダムスの予言が新たに見つかり、それはたまたま発表された年以降を予言したものだったというストーリーは、過去数百年にわたり、使い古されてきたパターンだったといえるのである。

 2016年はババ・ヴァンガの戦争予言もあって、それとの関連でノストラダムスの予言も持ち出されるかもしれない。しかし、ノストラダムスは2016年と明記された予言など1つも残していない、という事実は改めて強調しておきたい。
 なお、ヴァンガは当「大事典」の対象外なので詳述しないが、日本では羽仁礼による懐疑的分析があり、PSIウィキや『「新」怪奇現象41の真相』(彩図社)で展開されているので、それらを参照されたい。


【画像】『「新」怪奇現象41の真相』

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最終更新:2016年01月01日 19:01