scene19~遺志を果たして~
シーンプレイヤー:PC2「聖 あかり」
事件から数日後、N市某所の墓地
GM:PC2と昴は墓地の片隅にある、小さな墓石の前に立っていた。
GM:PC2の恩師であり、昴の父親とも生みの親とも言える男がその墓石の下には眠っている。
あかり:「…。」
昴:「…。」
GM:長い沈黙から、それぞれの深い想いが窺い知れる。
GM:そんな中、先に沈黙を破ったのはPC2の方だった。
あかり:「…ねぇ、昴。孝三先生の事、どう思ってる?」
昴:「私にとっては、かけがえのないお父さんだよ。」
昴:迷う素振りも見せず即答する。
昴:再び手を合わせ目を閉じ、墓石に向かう。
昴:「お父さん、私に命をくれてありがとう。」
昴:「…敵は取ったよ。」
昴:「…。」
昴:「…お父さんが私に永見 昴を求めていたことはずっとわかってた。」
昴:「けど、私は…。」
あかり:「…ねぇ、昴。」
昴:「…なに?」
あかり:「…『あなた』は最初、『永見 昴』のコピーとして生まれた。」
あかり:「だけど、『あなた』はコピーなんかじゃなくて、一人の『人間』として生きていくことを決めたじゃない?」
昴:「そうね。」
あかり:「じゃあ、そんな『あなた』を私は何て呼べばいいのかな?」
あかり:「『昴』って今まで通り呼べばいいのか、それとも、別の呼び名が必要なのか。」
昴:「『永見 昴』でいいよ。」
昴:「確かに私は…『永見 昴』とは違う。」
昴:「けど、『永見 昴』も背負って生きていく。」
PL1:まるで永見が殺ったみたい。
PL3:ちなみにもし勝手に名前をつけるなら、考えてた名前は『ひばり』(東北の方言での『昴』の呼び名)でした。
PL4:名付け親をめぐって熾烈な争いが…。
PL3:さすがに名付け親の争いなんてしてたら過労死しそう。
PL1:名前なんになってもPC1はたぶん永見って呼ぶわ。
昴:「だって、『永見 昴』を捨てたら、きっとお父さんは悲しむから。」
昴:「あの時…、『バンダースナッチ』を倒したとき、あかりが最後に言ってた『カルマ』…。」
昴:「思ったんだ、きっとお父さんの『カルマ』が私なんだって。」
昴:「本来、死んだ人を生き返らせる事は禁忌…。」
昴:「でも、その禁忌を破って生まれてしまったのが私。」
昴:「だからこそ、私はお父さん、そして永見 昴の思いも背負って生きていくって決めたの。」
昴:「ま、私の存在が禁忌だったら、いずれは地獄の業火に焼き尽くされちゃうかも、なんてね!」
昴:墓の前から立ち上がり悪戯っぽく笑みを浮かべる。
あかり:「そう、あなたは孝三先生の『カルマ』を背負うんだ…。」
あかり:「知ってる?昴。」
あかり:「『因果応報』って言葉があるの。」
あかり:「『カルマ』と同じような意味で、こっちの方が世間一般では使われている言葉ね。」
あかり:「いいことをし続ければ、いい方向に報われ、悪いことをすればどんどん悪い方向に堕ちてゆく。」
あかり:「日常を捨て、裏切り、罪の無い人を殺め、遂には自分自身も滅びた『バンダースナッチ』がその悪い方。」
あかり:「あなたはこれから自分自身の人生を送って、その中で色んな人と出会うはず。」
あかり:「その中にはあなたに良くしてくれる人達も必ずいるわ。」
あかり:「そんな人達にちゃんと報いてあげれば、きっともっといい事が帰ってくる。」
あかり:「そして、その人たちのためにも、『バンダースナッチ』の様にならないためにも『人間性』を保ち続けるのよ?いいわね?」
あかり:「人間は、一人じゃない。」
あかり:「世の中、思ってるほど優しくもないけど、冷たくもないから。」
昴:「ありがと。」
昴:「でも私だけじゃ不安だから、あかりが見ててくれたら、嬉しいかな。」
あかり:「ふふっ、もちろんいいよ。」
あかり:安心したように微笑む。
あかり:再び墓前に手を合わせる。
あかり:「孝三先生、昴から聞いたと思うけど、敵はちゃんと討ち取りました。」
あかり:「それから『昴』の事も、私と『味方となってくれる人物』の2人で見守っていきます。」
あかり:「彼はいろんな意味で不安なので、私がちゃんと守りますから。」
あかり:「どうか……安らかに…眠ってね…。」
あかり:目から一筋の涙を流す。
昴:墓前に向き直り、再び手を合わせる。
GM:その時吹いた一陣の風は、日常に戻れた事を祝福するように穏やかだった…。
GM:次、最後!PC1!
最終更新:2020年11月14日 17:33