アド・ホミネム

アド・ホミネム(ad hominem)

アド・ホミネム(ad hominem)はラテン語で「人に対して」という意味で、議論の対象(主張や論理)ではなく、発言者本人の人格・属性・立場を攻撃することで論破したように見せかける詭弁です。
つまり、論理や証拠を扱うのではなく、相手そのものを攻撃する手法です。


概要

アド・ホミネムは 「主張ではなく発言者を攻撃することで相手を論破したように装う詭弁」 です。
典型的な例
・1. 人格攻撃型 (アビューシブ、トゥ・クオクエ)
  • A「この薬は副作用が強い可能性がある」
  • B「君は以前から間違ったことばかり言ってるから信用できない」
→ 薬の副作用についての議論をせず、Aの信頼性を攻撃している。
・2. 境遇・立場への攻撃 (サーカムスタンシャル)
  • A「増税は景気を悪化させる」
  • B「どうせ君は金持ちじゃないからそんなこと言うんだ」
→ 発言者の立場にすり替え、本題を無視している。
・3. 連想攻撃(罪で連想させる)
  • 「その考えは昔の独裁者も言っていたぞ」
→ 論理の正しさではなく、嫌われる人物と結びつけて否定している。
問題点
  • 議論の本質から逸れてしまい、建設的な結論に到達できない
  • 論理ではなく印象操作に依存するため、不公平になりやすい
  • 政治討論やSNSで非常に多用される
対処法
  • 「私はどういう人間かではなく、この主張が正しいかどうかを議論しよう」と論点を戻す
  • 相手の攻撃にのらず、証拠や根拠を中心に据え直す
関連

アド・ホミネムの分類表
アド・ホミネムにはいくつかバリエーションがあり、哲学や論理学では分類されています。
種類 英語表記 内容
アビューシブ
(罵倒型)
Ad Hominem Abusive 論理や主張ではなく、相手の人格や能力を
直接罵倒して攻撃する
「君は馬鹿だからその意見は間違っている」
サーカムスタンシャル
(状況攻撃型)
Ad Hominem Circumstantial 発言者の立場・利害関係・境遇を理由に
主張を否定する。
「君は経営者だから、増税反対って言うのは自分のためだろう」
トゥ・クオクエ
(偽善指摘型)
Ad Hominem Tu Quoque 相手の過去の行動や矛盾を持ち出して、
主張を否定する
「喫煙は体に悪い」と言った人に
「でも君も昔は吸ってたじゃないか」と返す
連想攻撃
(罪による連座)
Guilt by Association 相手の意見を好ましくない人物・団体と
結びつけて否定する
「その考えは独裁者Xと同じだから間違っている」
先行攻撃型
(毒薬注入の術)
Poisoning the Well 相手が発言する前に、その人物を貶めることで
発言を信用できないと印象づける
「彼の言うことは全部嘘だから、これから聞く必要はない」
  • アビューシブ → 罵倒で否定
  • サーカムスタンシャル → 立場・境遇で否定
  • トゥ・クオクエ → 偽善や矛盾で否定
  • 連想攻撃 → 嫌われ者との関係で否定
  • 毒薬注入 → 事前に信用を潰して否定

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最終更新:2025年09月21日 10:06