無名祭祀書
無名祭祀書(むめいさいししょ、英: Nameless Cults、独: Unaussprechlichen Kulten)は、
クトゥルフ神話に登場する架空の
魔導書で、ロバート・E・ハワードによって創造されました。
この書物は、禁断の知識や邪神崇拝に関する記述が含まれており、クトゥルフ神話における重要な
魔導書の一つとされています。
概要
背景と特徴
- 著者
- フリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ユンツト(Friedrich Wilhelm von Junzt)という架空の人物
- 彼は19世紀前半のドイツ人オカルティストであり、生涯を通じて世界中を巡り、奇怪な伝承やオカルト的知識を集め、それをこの書物にまとめたとされています
- 初出
- ロバート・E・ハワードの短編小説『夜の末裔』で初めて言及されました
- その後、H.P.ラヴクラフトやオーガスト・ダーレスらによってクトゥルフ神話の設定に組み込まれました
- 名称の由来
- 当初は英語題名 Nameless Cults のみでしたが、ラヴクラフトがドイツ語版タイトルとして Unaussprechlichen Kulten を提案しました
- しかし、このドイツ語表現には文法的な誤りがあり、後に正しい形で Unaussprechliche Kulte に修正されています
- 内容
- 無名祭祀書には、以下のような内容が記されているとされています:
- 世界中の秘密宗教や邪神崇拝に関する記述
- 古代文明や失われた大陸(例:ムー大陸)についての情報
- 特定の邪神(例:ガタノトーア)や秘儀に関する詳細な説明
- ハワード作品では「黒の碑」や「蟇蛙の神殿」など、異常な遺跡や儀式についても触れられています
- この書物は非常に危険な内容を含んでおり、それを読んだ者は狂気に陥る可能性があるとされています。
版と特徴
無名祭祀書には3つの主要な版が存在します:
- 1. 1839年初版(ドイツ語版)
- 「黒革装丁」と「鉄の留め金」を持つため「黒の書」とも呼ばれる
- 初版はデュッセルドルフで刊行されましたが、発禁処分となり、多くが破棄されたため現存数は非常に少ないです
- フォン・ユンツトは出版直後に旅立ち、その後帰国した直後に密室で謎の死を遂げています
- 2. 1845年ロンドン版(英訳海賊版)
- 翻訳者不明で誤訳が多いものの、多くのグロテスクな木版画が含まれています
- 初版よりも現存数は多いものの、これも発禁処分となりました
- 3. 1909年ニューヨーク版(削除版)
- ゴールデン・ゴブリン・プレス社によって出版された英訳版
- 内容が削除されており、一般向けに改訂されています。装丁は豪華ですが、学術的価値は低いとされています
関連性と影響
- 無名祭祀書はクトゥルフ神話内で他の魔導書とも関連しています
- 例えば「エイボンの書」や「ネクロノミコン」といった禁断の書物との間で知識が影響し合っているとされています
- また、この書物はゾス三神(クトゥルフ神話に登場するムー大陸由来の邪神)の情報源としても重要です
文化的意義
無名祭祀書はクトゥルフ神話TRPGなどでも頻繁に登場し、その危険性や謎めいた背景からプレイヤーや読者を魅了しています。また、「黒革装丁」や「発禁処分」という設定が、禁断の知識を象徴するアイテムとして非常に印象的です。
無名祭祀書は、クトゥルフ神話内で最も有名な禁断の
魔導書の一つです。その内容は邪悪で危険ですが、それゆえに多くの研究者や冒険者を惹きつける存在でもあります。その背後には著者フォン・ユンツト自身の謎めいた死や発禁処分など、多くのドラマが秘められており、それがこの
魔導書をさらに魅力的なものにしています。
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最終更新:2025年01月12日 18:48