アムリタ
アムリタ(サンスクリット語: अमृत, amṛta)は、
インド神話に登場する神秘的な飲料で、「不死の甘露」として知られています。
その名は「死を超越するもの」を意味し、飲む者に
不老不死をもたらすとされています。
概要
アムリタは
インド神話における象徴的な存在であり、
不老不死だけでなく宇宙的調和や精神的成長を示すものです。
その誕生には壮大な神話が伴い、多くの文化や宗教にも影響を与えています。この甘露の物語は、人間が永遠性や超越性を求める普遍的な願望とも結びついていると言えるでしょう。
アムリタの起源と乳海攪拌
アムリタは、
ヒンドゥー教の
天地創造神話「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」において生まれました。この神話では、神々(デーヴァ)と悪魔(アスラ)が協力して「乳海」と呼ばれる海を攪拌し、不死の甘露であるアムリタを得ようとします。以下がその概要です:
- 1. 背景
- 神々はアスラとの戦いで疲弊し、不死の力を取り戻すためにヴィシュヌ神に助けを求めました
- 2. 攪拌の準備
- マンダラ山を攪拌棒、大蛇ヴァースキを綱として使用
- ヴィシュヌは亀の化身クールマとなり、マンダラ山が沈まないよう支えました
- 3. 過程
- 1000年にわたる攪拌の末、海からさまざまな宝物が現れ、その中に医神ダヌヴァンタリがアムリタの壺を携えて登場しました
アムリタを巡る争い
アムリタは神々と悪魔の間で激しい争奪戦を引き起こしました。重要なエピソードとして以下があります:
- ヴィシュヌの機転
- ヴィシュヌは美しい女性モーヒニーに変身し、悪魔たちを欺いてアムリタを神々に渡しました
- ラーフとケートゥの誕生
- 悪魔ラーフがアムリタを盗み飲みしましたが、ヴィシュヌによって首を切り落とされました
- その結果、ラーフとケートゥという遊星となり、日食や月食を引き起こす存在となったとされています
- 象徴的な意味
- アムリタは単なる不老不死の飲料としてだけでなく、宇宙的な調和や精神的な解放を象徴しています
- また、「生命力」や「再生」の象徴としても捉えられます。この甘露は古代インドの宗教儀式や哲学思想とも深く結びついています
古代ヴェーダ時代には、「
ソーマ」という植物由来の飲料が
不老不死や霊的高揚をもたらすものとして崇拝されており、アムリタと同一視されることがあります。『リグ・ヴェーダ』には「我らは
ソーマを飲み、不死となれり」という賛歌が記されています。
仏教や他文化への影響
仏教ではアムリタは「甘露(かんろ)」として知られ、苦悩を癒し長寿をもたらす霊薬として描かれています。ただし
仏教では現世での不死よりも、生死の輪廻から解脱すること(涅槃)が重要視されます。中国や日本にもこの概念が伝わり、日本では「甘露門」や「甘露煮」などの言葉にも影響を与えています。
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最終更新:2025年01月03日 11:59