ヴィシュヌ
ヴィシュヌは
ヒンドゥー教における三大神(トリムルティ)の一柱であり、宇宙の維持と保護を司る重要な神格です。
概要
ヴィシュヌは宇宙全体の秩序と調和を守る
慈悲深い神です。
その多様な化身や壮大な物語はヒンドゥー教文化だけでなく、世界中で影響力を持っています。彼への信仰は、正義や救済への希望として多くの人々に支持されています。
ヴィシュヌの役割と象徴
ヴィシュヌは宇宙の秩序を維持し、調和を保つ「維持者」として崇拝されています。彼は世界が悪や混沌に脅かされた際に地上へ降臨し、正義を守り悪を討つ存在です。その名はサンスクリット語で「浸透する者」や「全てを充満する者」を意味し、宇宙全体を包み込む存在として描かれます。
ヴィシュヌは慈悲深く、公正であり、愛と調和の象徴でもあります。また、彼の行動は常にバランスと秩序を重んじ、人々に救済と保護をもたらすことが特徴です。
外見と持ち物
ヴィシュヌは通常、青い肌と4本の腕を持つ姿で描かれます。これは神聖さと超越的な存在を象徴しています。彼が持つ4つのアイテムにはそれぞれ特別な意味があります。
- スダルシャナ・チャクラ(円盤状の武器):悪を討ち滅ぼす力
- シャンク(法螺貝):神聖な音で勝利を告げる
- ガダ(棍棒):力と権威の象徴
- パドマ(蓮):純粋さと神聖さの象徴
また、とぐろを巻いた大蛇アナンタ(シェーシャ)の上で横たわり、夢を見る姿もよく描かれます。この夢が現実世界そのものであるという神話もあります。
化身(アヴァターラ)
ヴィシュヌ信仰の最大の特徴は「化身思想」です。彼は地上が危機に陥った際に様々な形で現れ、人々を救済します。これらの化身は「ダシャーヴァターラ(10化身)」として知られています。
- マツヤ(魚):大洪水から生命を救う
- クールマ(亀):宇宙創造に必要なアムリタ(不死の霊薬)を得るため山を支えた
- ヴァラーハ(猪):地球を悪魔から救出
- ナラシンハ(人獅子):信者プラフラーダを守るため悪王ヒラニャカシプを討つ
- ヴァーマナ(小人):三歩で宇宙を取り戻す
- パラシュラーマ(斧を持つラーマ):暴君たちを討伐
- ラーマ:叙事詩『ラーマーヤナ』の英雄
- クリシュナ:叙事詩『マハーバーラタ』の中心人物で哲学書『バガヴァッド・ギーター』で教えを説く
- ブッダ:人々に悟りへの道を示す
- カルキ:未来に現れる救世主
これらの化身には進化論的な要素が見られるとも言われています。
ヴィシュヌ派と信仰
ヴィシュヌ派では、ヴィシュヌは最高神として崇拝されます。この派閥では彼が形而上的なブラフマン(絶対的存在)と同一視されることもあります。信仰者たちはヴィシュヌへの献身的な祈りや儀式によって最終的な解放(モクシャ)に至ると信じています。
ヴィシュヌは妻
ラクシュミ(繁栄と富の女神)や乗り物
ガルーダ(神鳥)とも密接に関連付けられています。また、日本では
ラクシュミが吉祥天として仏教に取り入れられるなど、その影響はインド以外にも広がっています。
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最終更新:2025年01月03日 10:06