バラモン教

バラモン教

バラモン教(婆羅門教)は、古代インドで発展した宗教で、現在のヒンドゥー教の前身とされています。


概要

バラモン教の特徴
宗教的基盤
・聖典
  • バラモン教の中心的な聖典は「ヴェーダ」と呼ばれる文献群で、特に『リグ・ヴェーダ』が最古のものとされています
  • これらは神々への賛歌や儀式の指針を含みます
・多神教
  • 自然崇拝を基盤とする多神教であり、火神アグニや雷神インドラなど、多数の神々を崇めました
  • ただし、必要に応じて主神を選ぶ「交替神教」の性格も持ちます
・祭式中心
  • 祭祀が重要視され、司祭階級であるバラモンが儀式を独占的に執行しました
  • この祭式は現世利益や来世での生天を目的としました
社会的構造
・カースト制度
  • バラモン教は身分制度(ヴァルナ制)と密接に結びついており、バラモン(司祭)、クシャトリヤ(武士)、ヴァイシャ(商人)、シュードラ(奴隷)の4つの階級が定められていました
  • この制度は社会秩序を維持するための基盤となりました

歴史と発展
起源と発展
  • 紀元前1500年頃、アーリヤ人がインドに侵入し、自然崇拝を基盤とした宗教が形成されました
  • これが後にバラモン教として体系化されます
  • 紀元前1000~500年頃には「後期ヴェーダ時代」と呼ばれる時期に入り、『ウパニシャッド』など哲学的文献が編纂されました
  • この時期には宇宙の根本原理ブラフマンや個人の本質アートマンについての思索が深まり、「梵我一如」の思想が生まれました
衰退と変容
  • 紀元前5~6世紀頃、形式化した祭式至上主義への批判から仏教やジャイナ教が興り、バラモン教は挑戦を受けました
  • その後、バラモン教は土着信仰や新しい思想を取り入れて変容し、4世紀頃までにはヒンドゥー教へと発展しました
ウパニシャッド哲学
  • バラモン教後期には『ウパニシャッド』を中心に哲学的思索が進みました
  • この中で「業」「輪廻」「解脱」などの概念が確立され、これらは後の仏教やヒンドゥー教にも影響を与えました
  • 「梵我一如」の思想では、宇宙の根本原理ブラフマンと個人存在アートマンが同一であると説かれています
現代への影響
  • バラモン教はヒンドゥー教へと受け継がれ、その社会的・宗教的な枠組みは現代インドにも影響を与えています
  • 特にカースト制度や輪廻思想などは今なおインド社会に根付いています
  • バラモン教は形式化した祭式から哲学的探求へと発展し、その過程でインド思想全体に大きな影響を与えた重要な宗教です

関連ページ

最終更新:2025年01月12日 13:18