オイディプス王
『オイディプス王』は、古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人であるソフォクレスによって書かれたギリシャ悲劇で、紀元前427年頃に初演されました。
この作品は、テーバイの王オイディプスを主人公とし、彼の運命的な破滅を描いた物語です。ギリシャ悲劇の最高傑作とされ、後世に多大な影響を与えました。
概要
物語のあらすじ
- 背景
- テーバイの王ライオスと妃イオカステには、「生まれた子が父を殺し母と結婚する」という神託が下されます
- 恐れたライオスは、生まれたばかりの息子(オイディプス)の両足を串刺しにし、山中に捨てさせます
- しかし、赤子は助けられ、隣国コリントスの王ポリュボス夫妻に養子として育てられます
- 運命との遭遇
- 成長したオイディプスは、自分が「父を殺し母と結婚する」という神託を受け、その運命を避けるためにコリントスを離れます
- 旅の途中、三叉路で見知らぬ老人(実父ライオス)と口論になり、その老人と従者たちを殺してしまいます
- テーバイでの栄光
- テーバイでは怪物スフィンクスが現れ、人々に謎を出しては答えられない者を殺していました
- オイディプスは「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足」という謎を解き(答えは「人間」)、スフィンクスを退治します
- その功績によりテーバイの英雄となり、亡きライオス王の後継者として王位を継ぎ、未亡人であるイオカステ(実母)と結婚します
- 二人の間には4人の子供が生まれます
- 悲劇的な真実
- テーバイに疫病や不作が続き、神託によって「前王ライオス殺害犯が災厄の原因」と判明します
- オイディプスは犯人捜しを始め、自分がその犯人であり、さらに妻イオカステが実母であることを知ります
- 真実を知ったイオカステは自殺し、オイディプスは自ら目を潰して盲目となり、王位を退きます
- その後、彼はテーバイから追放される運命に従います
テーマと意義
- 1. 運命と自由意志
- 神託という逃れられない運命と、それに抗おうとする人間の努力が描かれています
- 最終的には運命に屈する姿が悲劇として表現されています
- 2. 自己認識
- オイディプスが自分自身の真実(父殺し・母との近親相姦)に気付く過程が物語の核心です
- この「再認」の瞬間がギリシャ悲劇特有の構成美として評価されています
- 3. 罪と責任
- オイディプスは無意識に罪を犯しましたが、それでも責任から逃げず、自ら罰を受け入れる姿勢が描かれています
- 4. 普遍性
- この物語はフロイトによる「エディプスコンプレックス」の概念にも影響を与え、人間心理や家族関係について深い洞察を提供しています
評価と影響
- アリストテレス
- アリストテレスは『詩学』で『オイディプス王』を「悲劇の最高傑作」と評しました
- その理由として、「逆転(物語が正反対になる展開)」や「再認(真実への気付き)」など優れた構成要素が挙げられています
- フロイト
- フロイトはこの物語から「エディプスコンプレックス」を提唱し、人間心理学や精神分析学にも影響を与えました
- 現代
- 現代でも文学や演劇、映画など多くの作品にインスピレーションを与え続けています
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最終更新:2025年01月12日 19:13