さまよえる跛行者(はこうしゃ)
「さまよえる跛行者(はこうしゃ)」は、新城カズマ氏の著書『
物語工学論 キャラクターのつくり方』で定義されているキャラクタータイプの一つです。
このキャラクタータイプは、何らかの欠如や偏りを持ち、それが物語の進行に影響を与えるという特徴があります。
特徴
- 欠如や偏りを持つ: 物理的な障害(片腕や隻眼など)や、精神的・社会的な欠如を抱えることが多いです
- 非対称性: 外見や行動において、他者から見て明らかな非対称性があることが多いです
- 選ばれた存在: 何らかの使命や運命を背負っており、通常の人々とは異なる旅路を歩むことが求められます
さまよえる跛行者における「非対称性」とは
非対称性とは、釣り合っていない天秤のように「不均衡」な状態を表すものです。例えば証券用語として存在する「
情報の非対称性」は、企業と投資家で持っている情報に格差が生まれていることを意味します。
キャラクター創作における「非対称性」とは、例えば孫悟空であれば「石から生まれた卵」という
異常出生譚に始まり斉天大聖として驚異的な身体能力や人知を超えた術などの「偏り (異常性)」を持っています。
最終的には、この「非対称性」の解消されます。
例えば孫悟空であれば「ただのサルの妖怪」に戻ります、
非対称性の例としては以下の特徴が考えられます
- 異常出生譚: 桃から生まれた、処女懐胎により生まれた神の子
- 異常な身体能力: 樹木を持ち上げられるほどの怪力、数十メートルの川を飛び越えられる跳躍力
- 異常な外見: 第三の目、半人半妖、身体の欠損、爪楊枝のサイズの身体
- 特殊能力: 魔法、超能力、忍術、霊的スキルなど人知超えた能力を持っている
さまよう目的の分類
「さまよえる跛行者」のさまよう要素には、以下の3つのタイプがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。
- 1. ジャーニー型
- ジャーニー型は、旅そのものが目的であり、特定の目的地や目標がない旅を指します
- このタイプでは、主人公があてもなくさまよい歩く中で様々な冒険を経験し、思いがけない出会いや発見を通じて成長します
- 旅の過程で得られる宝物や経験が重要な要素となります
- 2. クエスト型
- クエスト型は、明確な目的や目標を持ち、それを達成するために試練や課題に挑むタイプです
- 主人公は探索や探求を通じて目的を追求し、その過程で自己成長や新たな発見をします
- このタイプは、物語における挑戦や達成感が強調されます
- 3. ミッション型
- ミッション型は、特定の任務や使命を遂行することが主な目的です
- タイムリミットや具体的な課題(軍事的任務、危険な輸送、救命活動など)が存在し、主人公はそれに取り組む必要があります
- このタイプでは緊張感やスリルが物語の中心となります。
これらのタイプは、物語の進行に応じて自由に組み合わせたり変更することができます。例えば、ジャーニー型からクエスト型へと変化することで、旅の中で新たな目的が生まれる展開や、ジャーニー型からミッション型へと移行することで緊急性が増す場面など、多様なストーリー展開が可能です。
例
- オイディプス王
- ギリシア神話の登場人物で、予言により父を殺し母を娶る運命を背負い、最終的に自ら両目を潰して放浪します
- ギルガメシュ
- 古代メソポタミアの英雄で、自身の不死性を求める旅を通じて成長します
- ドン=キホーテ
- スペイン文学の主人公で、幻想と現実の狭間で冒険を続けます
このようなキャラクターは、物語において欠如や偏りが克服される過程で成長や変化を遂げることが多く、その過程が物語の中心となります。
関連ページ
最終更新:2025年02月05日 07:32