ヒュプノス
ヒュプノス(Ὕπνος, Hypnos)は、
ギリシア神話に登場する「眠りの神」であり、眠りそのものを神格化した存在です。
その名前はギリシア語で「眠り」を意味し、
ローマ神話では「ソムヌス(Somnus)」として知られています。
概要
起源と家族関係
ヒュプノスは、夜の女神
ニュクス(Nyx)の息子であり、双子の兄弟に死の神
タナトス(Thanatos)がいます。
また、夢を司る神オネイロス(Oneiros)も兄弟の一人です。ニュクスは原初の闇を象徴するエレボスとの間にこれらの子どもたちをもうけました。
- 特徴と役割
- ヒュプノスは穏やかで心優しい性格を持つとされ、人々に安らぎと休息を与える存在です
- 兄タナトスが非情で冷酷な性格であるのに対し、ヒュプノスは癒しと平和を象徴しています
- 彼は「最後の眠り」として死とも関連付けられますが、恐れられるよりも感謝される存在でした
- 一般的には翼のある青年として描かれ、疲れた人々を木の枝で触れたり、角から液体を注ぐことで眠りに誘うとされています
- また、彼の住まいは静寂に包まれた洞窟であり、その周囲には夢を司る三柱の神(モルペウス、イケロス、パンタソス)が漂っているとされています
神話におけるエピソード
ヒュプノスはギリシア神話においていくつか重要な役割を果たしています:
- ゼウスを眠らせる策略
- トロイア戦争中、ヘラがゼウスの注意をそらすためにヒュプノスに協力を求めました
- ヒュプノスはゼウスを眠らせ、その隙にヘラが策略を実行しました
- この功績により、ヒュプノスは美と優雅の女神パーシテアー(Pasithea)を妻とすることを許されました
- ニュクスによる保護
- ヘラの依頼でゼウスを眠らせた際、怒ったゼウスから逃れるために母ニュクスの助けを借りて難を逃れたというエピソードもあります
- 象徴的な意味
- ヒュプノスは単なる眠りの象徴ではなく、人間の心身の回復や癒しをもたらす存在として崇められていました
- また、「小さな死」として死との境界線にも位置づけられています。このため、彼の館が冥界近くにあるという伝承もあります
- 関連する神々
- タナトス: 死そのものを擬人化した神であり、冷酷な性格
- オネイロイ: 夢の神々。モルペウス(人間型)、イケロス(動物型)、パンタソス(物質型)などが含まれる
- ニュクス: 夜そのものを象徴する女神であり、ヒュプノスとその兄弟たちの母
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最終更新:2025年01月13日 23:03