タナトス

タナトス


タナトス(Thanatos)は、ギリシア神話に登場する死そのものを神格化した存在であり、死を司る神です。(→死の神)


タナトスの概要

タナトスはギリシア神話において死そのものを具現化した存在であり、その役割や性格から人々に恐れられる一方で、「避けられない運命」として深い哲学的意味合いも持っています。彼の物語や象徴性は現代でも多方面で取り上げられ、人間性や生命について考える重要なテーマとなっています。
系譜
  • タナトスは夜の女神ニュクスの息子であり、眠りの神ヒュプノス(Hypnos)の双子の兄弟です
  • 一説では、ニュクスと暗黒の神エレボスの間に生まれたともされています
象徴
  • 死、終焉、解放を象徴する存在であり、その持ち物として短剣や逆さに持った松明が挙げられます
  • これらは生命の終わりや消えゆく命を表しています
住処
  • タルタロス(地獄)や冥界に住むとされ、大地の遥か下方に館を構えています
  • または冥界の門付近に住むともいわれます
外見
  • 翼を持つ若い男性として描かれることが多く、黒いローブをまとった姿や蒼白い老人として描かれる場合もあります
役割と性格
  • タナトスは寿命が尽きた者の魂を肉体から切り離し、冥界へ運ぶ役割を担います
  • ただし、英雄の魂はヘルメスが運ぶため、タナトスが担当するのは主に凡人や罪人です
  • 性格は冷静で無情、公正であり、どんな祈りや犠牲も彼の意志を変えることはできません
  • そのため、人間や神々から忌み嫌われる存在でもあります

主な神話とエピソード

1. サルペードーンの遺体運搬
  • ホメロス『イーリアス』では、ゼウスの命令でタナトスとヒュプノスが戦死したサルペードーンの遺体を故郷リュキアまで運びました
  • この場面では彼らが穏やかな死を象徴する存在として描かれています
2. アルケースティスの物語
  • エウリピデス『アルケースティス』では、タナトスがペライ王アドメートスの妻アルケースティスの魂を連れ去ろうとしますが、ヘラクレスによって阻止されます。このエピソードではタナトスが非情な存在として描かれています
3. シーシュポスとの対立
  • コリントス王シーシュポスはタナトスを鎖で縛り付け、一時的に死そのものを封じ込めました
  • このため人々が死ななくなる混乱が起きますが、最終的に軍神アレスによってタナトスは解放されました。この逸話は死という運命から逃れることができないことを示しています
象徴と信仰
  • タナトスはギリシア全土で広く知られていましたが、その冷酷さゆえに祭壇や特別な崇拝対象にはならず、直接的な信仰は少なかったとされています
  • 墓碑や墓地には彼の象徴が刻まれることがあり、死者への祈りや埋葬儀式では重要な存在でした
現代文化への影響
  • タナトスは心理学者ジークムント・フロイトによって「死の欲動(Todestrieb)」という概念として再解釈され、人間の自己破壊的な衝動を表す用語として用いられています
  • また、多くの文学作品や映画、ゲームなどで「死」そのものを象徴するキャラクターとして登場し続けています。例えば、『聖闘士星矢』や『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズなどがあります

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最終更新:2024年12月05日 11:06