情報の非対称性
情報の非対称性とは、登場人物やプレイヤー、読者・観客などの間で持っている情報量や質に差がある状況を指します。
この技法は、物語の展開において意図的に情報を制限または開示することで、感情的な効果や物語の深みを生み出します。
シナリオ技法における「情報の非対称性」は、
劇的アイロニーによる緊張感や
サスペンスによる期待感、さらには
ギャップによるユーモアやドラマティックな展開など、多様な効果を生み出す基盤となります。
これらは物語体験を豊かにし、受け手との強い感情的・知的な関わりを作り出すために欠かせない要素です。
劇的アイロニーは、「観客や読者が登場人物よりも多くの情報を知っている」状況を作り出す技法であり、情報の非対称性を基盤としています。
この手法は以下のような効果を生み出します:
- 緊張感の創出
- 観客が真実を知っている一方で、登場人物がそれに気づかないことで、観客は「その事実が明らかになったときに何が起こるのか」という期待や不安を抱きます
- 例えば、『ロミオとジュリエット』では、観客がジュリエットの「偽りの死」を知っているため、ロミオの行動に対して強い緊張感が生まれます
- 感情的な共鳴
- 登場人物が無知ゆえに悲劇的な選択をする様子を見ることで、観客は共感や同情を感じやすくなります
サスペンスは、「読者や観客が部分的な情報を持ちながらも、完全な真相を知らない」状況から生じる緊張感です。
この場合も情報の非対称性が重要な役割を果たします:
- 不安と期待
- 観客が一部の危険や秘密を知っている場合、その結果がどうなるかについて不安を抱きます
- 例えば、ホラー映画で観客が「モンスターが隠れている場所」を知っている一方で、登場人物はそれに気づかず進むシーンなどがあります
- 謎解き要素
- 観客や読者に断片的な情報を与えることで、彼ら自身が物語の展開を推測する楽しみを提供します
ギャップとは、「登場人物間、または登場人物と読者・観客との間で認識や理解に差異がある」状況です。このズレ自体が物語の展開や感情的な効果を生み出します:
- コメディへの応用
- 例えば、勘違い系コメディでは、登場人物同士の誤解やズレからユーモアが生まれます
- 主人公が無意識に英雄視されるなど、自身の意図とは異なる形で物語が進行する例があります
- ドラマティックな展開
- ギャップによって誤解や衝突が生じ、それが物語全体を動かす原動力となります
4. 情報操作による効果的な構造
シナリオ技法では、情報の非対称性を利用して以下のような構造を作り上げることができます:
- 公開のタイミング
- 重要な情報をいつ明かすかによって、緊張感や驚きを最大化できます
- 視点操作
- 特定のキャラクター視点からのみ物語を描くことで、一部の情報を隠しつつ展開することも可能です。
関連ページ
最終更新:2025年01月28日 11:11