ストーリー構造に不可欠な7段階の道程

ストーリー構造に不可欠な7段階の道程



概要

ストーリー構造とは、物語が時間を経て発展する過程を指し、その核となる成長の道程には以下の7つの段階が必ず含まれます。
1. 弱点と欠陥
  • 主人公が抱える内的・外的な弱点や欠陥が明らかになる
  • これが物語の出発点となる
2. 欲求
  • 主人公が解決したい問題や達成したい目標を持つ
  • この欲求が物語を動かす原動力となる
3. ライバル
  • 主人公の欲求を阻む敵対者や障害が登場し、葛藤や対立が生まれる
4. プラン
  • 主人公が目標を達成するために立てる計画や行動方針
  • この段階でストーリーに具体的な展開が生まれる
5. 決戦
6. 自己発見
  • 決戦を通じて主人公が自分自身について新たな理解や成長を得る
  • この変化が物語の核心となる
7. 新たなバランス状態
  • 主人公が変化した結果、新しい安定した状況に到達する
  • 物語はここで終結する
特徴と意義
  • この7段階は、三幕構成などの外部から当てはめる形式的な枠組みではなく、物語そのものの核(DNA)にあたる自然なプロセスです
  • 人間行動をベースにしており、現実の人生で問題解決に至る過程と一致するため、観客に深い共感とインパクトを与えます
  • プレミス(物語の主題)にも自然に含まれており、ストーリー全体を適切に繋ぎ合わせる基盤として機能します

段階1: 弱点と欠陥


ここで言う「弱点」とは、そのキャラクターに迷いを持たせ、内的に大切な何かが欠けている原因となるものです。
「欠陥」とは、より良い人生を送るために満たす必要があるものを指します。
作品例 弱点 欠陥
『トッツィー』 マイケルは傲慢で嘘つきで女たらし マイケルは女性たちに対する傲慢さを克服し、自分のために
嘘をついて女性を利用するのをやめなければならない
『羊たちの沈黙』 クラリスは新米FBI捜査官で経験が浅い。
幼少期のトラウマがあり、男性社会で生きる女性
クラリスは過去の亡霊を克服し、男性社会の中で
FBI捜査官としての敬意を勝ち取らなければならない
(→ガラスの天井を破る女性)
1. 主人公の「弱点」と「欠陥」の設定
  • ストーリーの冒頭で主人公は、内的に重要な何かが欠けている状態にあり、その「欠陥」が原因で人生がうまくいっていません
  • この欠陥は、主人公が成長し、変化するための課題として機能します
2. 欠陥に関する2つのキーポイント
・a: 「自己発見」の遅延
  • 主人公は物語の開始時点では「自身の欠陥を認識していない」状態にあります
  • 欠陥を早期に理解してしまうとストーリーが成立しなくなるため、自己発見は物語の終盤、困難や葛藤を経た後に訪れるべきです
・b: 「道徳的な欠陥」を持たせる
  • 主人公には心理的な弱さだけでなく道徳的な欠陥も与えることで、他者への影響や傷つける行動が描かれます
  • これによりキャラクターに深みが生まれ「完璧すぎる主人公」や「単なる犠牲者」に見えることを避けられます
  • 「完璧すぎる主人公」はリアルさも説得力も生まれません
  • 「単なる犠牲者」は物語の必然性(因果関係)や主体性を失います
  • また、道徳的な欠陥があることで、道徳的な欠陥のあるライバルが主人公よりも魅力的に見えてしまうことを防げます
3. 困窮状態の設定
  • 優れたストーリーでは冒頭で主人公が具体的な「困窮状態」に直面しています
  • これはシンプルで明確な危機として描かれるべきであり、物語全体の基盤となります

心理的欠陥と道徳的欠陥の違い

心理的な欠陥と道徳的な欠陥は、概念的に異なる領域に属します。端的に言えば「欠陥となる行動」を伴うかどうかです。
物語においては、心理的な欠陥だけでなく「道徳的な欠陥」をしっかり描くことで出来事の因果関係の中心にそのキャラクターが存在することを際立たせます。
項目 心理的な欠陥 道徳的な欠陥
焦点 個人の内面(精神・感情・認知) 社会規範や倫理観との関係
影響範囲 主に個人自身 他者や社会全体に影響し、批判の対象となる
評価基準 心理学的視点で評価 倫理学・道徳哲学の視点で評価
具体例 トラウマ、不安障害、自信喪失
自己否定復讐心
偽善、不正直、無責任、詐欺裏切り
心理的な欠陥
  • 心理的な欠陥とは、主に個人の「精神」や「感情」「認知」に関連する問題や弱点を指します
  • これには、心理的な抵抗感や不安を引き起こす要素が含まれますが、必ずしも倫理や道徳の観点から評価されるものではありません
道徳的な欠陥
  • 道徳的な欠陥は、倫理や価値観に基づいて「行動」や「判断」が不適切であるとされる状態を指します
  • これは社会規範や倫理観との乖離を示し、人間関係や社会全体に悪影響を及ぼす可能性があります

道徳的な欠陥を創作する方法

道徳的な欠陥の基本ルールには以下のものがあります。
ストーリーの冒頭で主人公が他者を傷つけている
  • 道徳的な欠陥を表現する上で重要なルールは「ストーリーの冒頭で主人公が他者を傷つけている」です
  • これにより、主人公の行動が周囲に影響を与えることが明確になり、キャラクターに深みが生まれます
  • 道徳的な欠陥は心理的な欠陥と結びついている場合が多く、心理的な問題が原因で非道徳的な行動が発生します

そして、道徳的な欠陥を創作するには2つの方法があります。
1. 心理的な欠陥から派生させる方法
1. 心理的な欠陥を設定する
  • まずは主人公の内面的な弱さや葛藤を明確にします
2. 非道徳的な行動を考える
  • 次にその心理的な欠陥から自然に発生しそうな他者への悪影響や非道徳的行動を想定します
3. 根本的な道徳的欠陥を特定する
  • その非道徳的行動の背後にある、主人公の価値観や性格上の問題点を掘り下げます
例: 主人公が恐怖心から嘘をつき、その結果他人を危険にさらす。この場合、心理的には「恐怖心」が原因であり、道徳的には「誠実さの欠如」が問題となります。
2. 強みを弱点に転換する方法
1. 主人公の長所を特定する
  • 主人公が持つポジティブな特性(例: 勤勉さ、正義感など)を挙げます
2. 長所を極端化する
  • その長所が過剰に発揮されることで、他者に悪影響を及ぼしたり、非道徳的行動につながる状況を考えます
3. 価値観のネガティブ側面を探る
  • 主人公が信じている価値観や行動原理が、どのようにして他者に害を与える可能性があるか検討します
例: 主人公が正義感ゆえに独断で行動し、無実の人を傷つける。この場合、「正義感」という強みが過剰になり、「独善性」という道徳的欠陥として現れます

道徳的な欠陥を設定する意義としては、以下の理由があります。
  • 道徳的な欠陥は、主人公の成長や変化を描くための重要な要素です
  • 物語後半で主人公がこの欠陥に気づき、それを克服することでストーリーにカタルシスが生まれます
  • また、キャラクターを完璧すぎずリアルに見せる効果があります
  • これによって観客や読者は主人公への共感と感情移入を深めることができます

段階2: 欲求


「欲求」はストーリー構造において主人公が追い求める具体的なゴールを指し、物語を動かす原動力として非常に重要な役割を果たします。
観客や読者は、この欲求を通じて主人公と共に物語の旅路を進むため、欲求は「ストーリーの線路」とも例えられます。
「欲求」によってキャラクターは動き、観客の関心を引き寄せる
  • 欲求は主人公の外部にある目標であり、キャラクターがその達成に向けて行動を起こすことで物語が展開します
  • 例えば、裁判に勝つことや愛する人を救うことなどが典型的な欲求の例です
  • この欲求が明確であればあるほど、観客は主人公の旅路に感情移入しやすくなり、物語への関心も高まります
「弱点と欠陥」=内面的 / 「欲求」=表面的
  • また、欲求はキャラクターの内面的な「弱点と欠陥」と密接に関連しています
  • 欠陥とは主人公の内面にある弱点や克服すべき課題であり、物語全体を通じて解消されるべきものです
  • 一方、欲求は表面的に見える目標であり、観客が主人公と共に追い求めるものです
  • 例えば、主人公が裁判に勝つこと(欲求)を目指す中で、自尊心の回復や正義感の習得(欠陥の克服)を達成する、といった構造が典型的です
「欲求」からストーリーを始めることについて
  • 観客はキャラクターの「欲求」を知ることで、刺激を受け関心を持ち始めます
  • ですが、いきなり「欲求」の段階から始めるとクライマックスを殺してしまいます
  • 終盤でのキャラクターの変化は、序盤に「弱点と欠陥」を見せることでカタルシスを生むからです
  • 最初に「欲求」を見せるのは問題ないですが、「弱点と欠陥」の段階は絶対に飛ばしてはいけません
「欲求」の提示が遅くなってもいけない
  • 「欲求」の提示が遅過ぎると、読者の興味を失ってしまうことがあります
  • 丁寧に「弱点や欠点」の描写を行うのは重要ですが、長くなりすぎてもいけません
「欲求」と「弱点と欠陥」は表裏一体
  • 重要なのは、欠陥と欲求を混同せず、それぞれの役割を明確にすることです
  • 欠陥はキャラクターの内面的な成長や変化を促し、欲求は物語全体を動かす推進力となります
  • このバランスが取れていることで、観客は物語に感情移入し、主人公の旅路を最後まで見届けたいと思うようになります

段階3: ライバル


ライバル」とは、ストーリーにおいて主人公の欲求達成を妨げる存在であり、同時に主人公と同じゴールを目指して争う相手です。
ライバル邪悪なキャラクター?
  • ライバルは単なる邪悪なキャラクターではなく、物語構造の重要な役割として捉えるべきです
  • 彼らの存在は主人公との直接的な対立を生み出し、ストーリー全体に緊張感と推進力を与えます
ライバルは「同じ目標」をめぐって対立する
  • ライバルの本質は、主人公と「同じ目標」を共有しながらも、それをめぐって対立する点にあります
  • たとえば、探偵と殺人犯の関係では、表面的には探偵が犯人を捕まえたい、犯人が逃げたいという異なる目標に見えますが、実際には「どちらの真実が人々に受け入れられるか」というテーマで争っています
  • このように、ライバルはストーリーの中心的な対立軸を形成し、物語の焦点を明確にする役割を果たします。
ライバルを作る手順
  1. 優れたライバルを設定するには、まずは主人公が求める具体的な「ゴール」を明確にします
  2. 次に、その「ゴール」が達成されると不都合のある人物を見出します
優れたライバルを作るには
  • また、主人公とライバルが争う最も深いテーマや価値観を掘り下げることで、対立に説得力が生まれます
  • たとえば「正義とは何か」「成功とはどうあるべきか」といった普遍的な問いが二人の争いに反映される場合、それは観客にとっても強く響くものとなります
主人公自身はライバルになるのか?
一方で、「主人公のライバルは彼自身だ」という設定には注意が必要です。
  • 内面的葛藤や弱点の克服は主人公自身の課題であり、それはライバルの役割ではありません
  • ライバルとは主人公とは異なる価値観や考え方を持つ外的要因であり、主人公の変化や成長を促す存在です

段階4: プラン


「プラン」とは、主人公がゴールにたどり着くために立てる計画や戦略のことであり、ストーリー構造において重要な役割を果たします。
欲求とライバルとのつながり
  • このプランは、主人公の「欲求」と「ライバル」と自然につながっている必要があります
  • 主人公はプランを通じてライバルを乗り越え、目標達成に向けて行動を起こします
「プラン」の目的はゴールへの到達
  • プランの焦点は常に「ライバルを倒し、ゴールに到達すること」にありますが、その具体性は作品によって異なります
  • 時には明確で詳細な計画であり、時には曖昧でおぼろげなものとして描かれることもあります
  • また、ジャンルによっては複雑なプロセスを伴う場合もありますが、最終的な目的は常にゴールへの到達です
プランの役割
  • 物語の推進力: プランは主人公が行動する理由や方向性を示し、ストーリー全体を動かす原動力となります
  • 対立構造の強化: プランがライバルとの直接的な対立を引き起こし、緊張感やドラマ性を高めます
  • 観客への明確さ: プランが明確であることで観客は主人公の行動意図を理解しやすくなり、物語への没入感が増します
注意点
  • プランはあくまで「外部的な行動指針」であり「内面的葛藤」や「欠陥」と混同してはいけません
  • 内面的な変化はキャラクター成長として描かれるべきものであり、プランとは別次元で機能します
  • プランがあまりにも曖昧だと物語全体がぼやけてしまうため、観客にとって理解しやすい形で提示される必要があります

プランの作品ごとの具体例は以下の通りです。
1. 『チャイナタウン』
  • 主人公ジェイクのプランは、殺害されたホリスについて情報を集め、物理的な証拠を追うことです
  • この計画を通じて真相に迫り、事件解決を目指します
2. 『ハムレット』
  • ハムレットのプランは、自分の父を殺したのが現王であることを確信するのものです
  • 彼は、劇中劇を用意し、その反応から真実を暴こうとします
3. 『ゴッドファーザー』
  • マイケルの初期のプランはソロッツォと彼を守る警部を殺害すること
  • 後半では敵対するファミリーのドンたちを一掃するという第二のプランが描かれます

段階5: 決戦


「決戦」とは、ストーリーにおいて主人公とライバルが最終的に直接対峙し、どちらがゴールを勝ち取るかを決定する最後の対立を指します。
  • 「決戦」は物語でのクライマックスで行われ、物語の集大成となり、観客や読者が最も感情移入し、緊張感を味わう場面です
  • 決戦はストーリーの中盤までに繰り広げられてきた主人公とライバルの対立が頂点に達する瞬間です
  • ここで物語のテーマやキャラクターの内面が最大限に表現される重要なシーンです

決戦の特徴は以下の通りです。
1. 主人公とライバルの直接対決
  • 決戦では、主人公とライバルが同じゴールを目指しながらも異なる価値観や方法論で争います
  • この対立は、暴力的な戦闘であったり、言葉による論争であったりと多様ですが、いずれの場合も物語の核心に迫るテーマが描かれます
2. ストーリー全体の集大成
  • 決戦はこれまで積み重ねられてきたストーリー展開とキャラクター成長の結果として描かれます
  • 主人公が直面してきた試練や葛藤が、この場面で解決されるか否かが観客に示されます
3. 感情的なピーク
  • 決戦では、主人公の内面的な変化や成長が最大限に表現されます
  • この瞬間には主人公が自分の限界を超えたり、新たな価値観を獲得したりすることが重要です。観客はこの変化を通じて感動やカタルシスを得ます
物語のテーマを明確化する
  • 決戦では主人公とライバルの対立によって物語全体のテーマが浮き彫りになります
  • たとえば、「正義とは何か」「愛とは何か」など普遍的な問いへの答えが提示されます
キャラクターの成長を示す
  • 主人公はこの場面で自らの欠陥や弱点を克服し、新たな自分へと変化します
  • この成長こそが観客に感動を与える要素となります
物語の結末への道筋をつける
  • 決戦によって勝者が決まり、その結果として物語全体が収束していきます
注意点
  • 決戦は単なる派手なアクションや演出ではなく、物語全体で積み上げてきたキャラクターの内面やテーマとのつながりが重要です
  • 観客や読者に「こうなってほしい」と思わせる感情移入を生むためには、それまでのストーリーで主人公とライバルとの関係性や葛藤を丁寧に描く必要があります

以下、作品ごとの決戦の例です。
オデュッセイア
  • オデュッセウスは、自分の妻を苦しめ領地を荒らした求婚者たちを皆殺しにすることで、自身の正当性と家族を取り戻します
『チャイナタウン』
  • ジェイクはエヴリンを失い、ノアが娘を連れて逃げ去るという悲劇的な結末に直面します
  • この決戦では正義が果たされない結末が描かれ、ノワール特有の無力感を強調します
『評決』
  • フランクは法廷で弁護士として卓越した説得力を発揮し、相手弁護士団を打ち負かします
  • 言葉による決戦で正義を勝ち取る姿が描かれます

段階6: 自己発見


「自己発見」とは、ストーリーのクライマックスである「決戦」を経て、主人公が自分自身について深い洞察を得る瞬間を指します。
この段階は主人公のキャラクターアーク(成長や変化)の最終地点であり、物語全体の質を大きく左右する重要な要素です。「自己発見」は心理的なものと道徳的なものの2つの形で表現され、それぞれが主人公の内面や成長を明確に示します。
心理的自己発見
  • 心理的自己発見とは、主人公がそれまで隠していた真の自分を直視し、殻を脱ぎ捨てる瞬間を指します
  • この行為は、主人公がストーリー全体を通じて取るべき行動の中で最も勇気を要するものであり、観客に強い感動を与える場面です
  • たとえば、主人公が自分の弱さや恐れに向き合い、それを受け入れることで新たな力や自信を得る、といった変化が描かれます
  • ただし、この自己発見は直接的なセリフで説明されるべきではありません
  • 「自分は何々を学んだ」といった言葉ではなく、主人公の行動や選択によって暗示的に提示されることが重要です
  • 観客はその行動を通じて主人公の変化を感じ取り、共感することができます
道徳的自己発見
  • 道徳的自己発見では、主人公が他者への影響や自身の行動の誤りに気づき、それを改めようとする瞬間が描かれます
  • これは単に自分自身について新しい希望や光を見出すだけでなく、他者に対して適切に行動しようという意識の変化を伴います
  • たとえば、主人公がこれまで他者を傷つけていたことに気づき、それを償うための行動を取ることで、自身の成長と変化を証明する、といった展開です
  • この道徳的な変化は、物語全体に深みと普遍性を与える重要な要素です
  • 観客は主人公が過去の過ちに気づき、それを乗り越えてより良い人間になる姿を見ることで感動し、物語への満足感を得ます
「欠陥」との関係
  • 「自己発見」はストーリー構造上、「欠陥」と密接につながっています
  • 欠陥はキャラクターアークの始まりであり、主人公が未熟さや弱点によって押し留められている状態を示します
  • 一方、「自己発見」はそのアークの終着点であり、主人公が成長し、新しい洞察や価値観を得る瞬間です
  • この2つの段階は対照的でありながら補完的であり、物語全体におけるキャラクター成長の軸となります。
注意点
  • 自己発見は自然な形で描かれるべきであり、説教くさくならないよう注意する必要があります
  • 行動や選択によって暗示される形が理想的です
  • 心理的自己発見と道徳的自己発見はストーリーごとに異なるバランスで描かれることがありますが、それぞれが物語全体と調和していることが重要です

段階7: 新たなバランス状態


「新たなバランス状態」とは、物語の結末においてすべてがいったん通常の状態に戻りながらも、以前とは異なる新しい秩序や状況が形成される段階を指します。
この段階は、ストーリー全体を締めくくるものであり、主人公が経験した変化や成長(またはその欠如)が明確に反映される場面です。
1.以前との違い
  • 「新たなバランス状態」は、物語の冒頭で描かれた「元のバランス状態」と対比されます
  • しかし、この新しい状態には、主人公や周囲の世界に根本的な変化が起きている点で大きな違いがあります
  • 物語の旅路を通じて得られた経験や学びが、この段階で明確に示されます
2. 主人公の変化の反映
  • 主人公がポジティブな自己発見を遂げた場合、新たなバランス状態はより高いレベルの人生や価値観を象徴します
  • 例えば、主人公が欠陥を克服し、他者との関係を修復したり、新しい希望を見出したりすることが描かれます
  • 一方で、自己発見がネガティブであったり、それを達成できなかった場合には、主人公が低いレベルに落ちたり、完全に崩壊する姿が描かれることもあります
3. 物語の余韻を残す
  • この段階では、観客や読者に物語全体のテーマやメッセージを余韻として残す役割があります
  • 主人公の変化やその結果として生まれた新しい状況を示すことで、物語全体が意味づけられます。
キャラクターアークの完結
  • 欠陥から始まり、自己発見を経て到達するこの段階は、主人公のキャラクターアーク(成長または崩壊)の最終地点です
テーマの集約
  • 新たなバランス状態は物語全体のテーマやメッセージを集約し、それまで描かれてきた出来事や選択に対する結果として提示されます
読者への余韻
  • 物語全体が終わった後も、この段階で描かれる状況や感情が読者や観客に深い印象を残し、作品への共感や考察を促します
注意点
  • 新たなバランス状態は単なる「元通り」ではなく、「変化」を伴う必要があります
  • 主人公や世界が何も変わっていないように見える場合、それまでのストーリー全体が無意味になってしまう可能性があります
  • ポジティブかネガティブかにかかわらず、この段階では主人公の旅路とその結果として得られたものを明確に示すことが重要です

まとめ: 7段階の道程の使い方

1. ストーリー・イベントのリストアップ
  • まず、ストーリーで起こり得るイベントをリスト化します
  • 各イベントは「一文」で簡潔にまとめ、細かいディテールにはこだわらず、基本的な発想を素直に書き出しましょう
  • 主人公やライバルの行動を中心に、最低でも「5つ」、できれば「10~15個」のイベントが作れると理想的です
  • これらのアイデアは、たとえ最終的に作品に採用されなくても、創作過程では重要な資産となります
2. イベントを順序化
  • リストアップしたイベントを、大まかな順序で並べます
  • これは最終的な完成形ではなく、ストーリーがどのように進展するかを把握するための仮配置です
  • 出だしから物語の結末までの流れを俯瞰し、全体像をつかむことが目的です
3. 7段階の道程に当てはめる
  • 各イベントを1つずつ検討しながら、7段階の道程(欠陥・欲求 → 自己発見)に沿った構造を特定します
  • 最初にストーリーの「終わり」にあたる自己発見(主人公が学ぶこと)を明確化し、その後「出だし」に戻って主人公の欠陥や欲求を特定します
  • 終わりから逆算することで、物語全体が自己発見という最終地点に向かう一貫性を確保できます
4. 心理的自己発見と道徳的自己発見
自己発見には「心理的自己発見」と「道徳的自己発見」の両方を含めます。
  • 心理的自己発見: 主人公が自分自身について気づく内面的な変化
  • 道徳的自己発見: 主人公が他者や社会との関わり方について学ぶ倫理的な成長
主人公が最後に何を学ぶか具体的に考え、それが物語全体のテーマやキャラクターアークと一致するよう調整します。
5. 柔軟性を持つ
  • 自己発見や他の段階で決定した内容は、後から柔軟に変更できる余地を残しておきます
  • ストーリー全体はパズルのようなものであり、一部が解決すると他の部分も自然と形作られることがあります
  • 簡単な部分から解決しつつ、難しい部分へ進み、必要に応じて後戻りして調整します
6. 困窮状態
  • 主人公が物語冒頭で直面する危機や困難を設定します
  • その困窮状態は、主人公の弱点から自然に生じたものであるべきです
7. 欲求
  • 主人公に具体的で明確なゴール(欲求)を与えます
  • ゴール達成には多くの行動が必要であり、物語の最後まで主人公を導くものとします
8. ライバル
  • ライバルを掘り下げるには「主人公とライバルが争っていることで一番深いものは何か?」を考えます
  • 主人公と同じゴールを目指し、主人公の弱点を攻撃する能力を持つライバルを設定します
  • ライバルは複数でもよいが、メインライバルは主人公と同等以上にゴールへの執着心を持たせます
  • メインライバルには、主人公の最大の弱点を突く特別な能力を与えます
9. プラン
  • 主人公がゴール達成のために取る行動(プラン)を詳細に設計します
  • プランは多段階で構成し、失敗した場合に調整可能な柔軟性を持たせます
  • 独創的かつ複雑なプランにより、ストーリー展開を豊かにします
10. 決戦
  • 主人公とメインライバルによる最終的な対決を描きます
  • 決戦ではゴールの勝敗が決定し、主人公にとって究極試練となる強烈な経験であるべきです
  • 対決形式(アクション、暴力、言葉など)は物語に応じて選択します

参考資料


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最終更新:2025年02月17日 23:25