囚人のジレンマ

囚人のジレンマ


囚人のジレンマは、ゲーム理論の一つであり、個々の合理的な選択が全体として最善の結果をもたらさないという状況を示すモデルです。


囚人のジレンマの概要

基本設定
  • 2人の囚人が別々に尋問され、自白するか黙秘するかを選択します
  • 2人とも相談できない状況に置かれています
選択肢と結果
  • 両者が黙秘: 軽い刑(例: 懲役1年)
  • 一方が自白し、もう一方が黙秘: 自白した方は釈放、黙秘した方は重い刑(例: 懲役3年)
  • 両者が自白: 中程度の刑(例: 懲役2年)[1][3]
ジレンマの本質
  • 個々に最適な選択(自白)が、全体としては非効率な結果(両者が自白して中程度の刑)を招くことです
  • 協力(両者が黙秘)する方が全体として利益が大きいにもかかわらず、裏切り(自白)を選んでしまう傾向があります

物語創作への応用

物語創作において、囚人のジレンマはキャラクター間の信頼や裏切りをテーマにしたストーリー展開に利用できます。例えば、犯罪者同士が互いに裏切ることで自己利益を追求する状況や、信頼関係を築くための葛藤を描くことができます。このような設定は、キャラクター間の緊張感や心理的な駆け引きを生み出し、物語に深みを与えます。

囚人のジレンマとナッシュ均衡の関係

ナッシュ均衡とは、各プレイヤーが他のプレイヤーの戦略を考慮した上で、自分の戦略を変えても利得が増えない状態を指します。つまり、誰も自分だけでは状況を改善できない安定した状態です。
関連性
  • 囚人のジレンマでは、両者が自白することがナッシュ均衡となります
  • なぜなら、どちらか一方が戦略を変えても、それ以上の利得を得ることができないためです
  • つまり、相手が自白している状況で自分だけ黙秘しても不利になるので、自白することが合理的な選択となります
パレート最適との違い
  • ナッシュ均衡は必ずしも全体の利益を最大化するわけではありません
  • 囚人のジレンマでは「互いに黙秘」がパレート最適ですが、それはナッシュ均衡にはなりません
  • これは、個々の合理的な選択が社会全体にとって最適な結果をもたらさないことを示しています

このように、囚人のジレンマはナッシュ均衡パレート最適の違いを明確に示す例として、ゲーム理論で頻繁に取り上げられます。

作品例

フリーゲーム『少女と囚人のジレンマ』
「少女と囚人のジレンマ」は、2002年に公開されたフリーゲームで、ゲーム理論の一つである囚人のジレンマをテーマにしています。このゲームは、プレイヤーが見知らぬ牢獄で目覚め、リップという名の少女と共に脱出を試みるという設定です。脱出するためには「トク」というポイントを集める必要があり、そのために「なかよしゲーム」を行います。
ゲームのルールは以下のとおりです。
  • プレイヤーとリップは、それぞれ「すき」と「きらい」のカードを持ち、同時に一枚選んで出します。
  • 両者が「すき」を出した場合、共に1点のトクを得ます。
  • 一方が「きらい」を出し、もう一方が「すき」を出した場合、「きらい」を出した方が3点得て、「すき」を出した方は2点失います。
  • 両者が「きらい」を出した場合、共に1点失います。
  • このプロセスを10回繰り返し、最終的なトクの点数によって脱出できるかが決まります[1]。
このゲームは、囚人のジレンマの構造を持っています。プレイヤーとリップが協力して「すき」を選び続ければ、両者が脱出できる可能性があります。しかし、自己利益を追求して「きらい」を選び続けると、一方的な利益を得ることはできても、両者が共に脱出することは難しくなります。このように、協力と裏切りの選択肢がプレイヤーに与えられ、それによってストーリーが進行します。

このゲームは、プレイヤーに対して信頼や協力の重要性を問いかけるものとなっており、物語創作において囚人のジレンマを体験するユニークな方法を提供しています。

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最終更新:2024年11月03日 11:24