マクガフィン
マクガフィン(MacGuffin または McGuffin) は、アルフレッド・ヒッチコックが提唱した造語で、
プロット・デバイスの一種。
その具体的な内容は重要でないが、登場人物にとって必要なアイテムで行動の動機となり、物語を前に進める効果があります。
マクガフィンの定義
マクガフィン (MacGuffin または McGuffin) は、以下の特徴を持つ作劇上の概念です:
- 登場人物にとって重要で、ストーリーの進行に不可欠なアイテムや要素
- 物語の成立には必要だが、それ自体の具体的な内容は重要ではない
- 代替可能な性質を持つ
機能と特徴
マクガフィンの主な機能と特徴は以下の通りです:
- 動機付け: 登場人物に行動の理由を与える
- プロット駆動: ストーリーを前進させる
- 注目の的: 物語の序盤で言及され、重要性が強調される
- 重要性の低下: 物語が進むにつれて、その存在感が薄れていく場合がある
- 多様性: 物体に限らず、出来事や人物もマクガフィンになり得る
使い方
- 導入: 物語の序盤でマクガフィンを紹介し、その重要性を強調する
- 動機付け: 登場人物がマクガフィンを追求する理由を明確にする
- 展開: マクガフィンを中心にストーリーを展開させる
- 柔軟性: 必要に応じてマクガフィンの具体的な内容を変更可能
- クライマックス: 物語の山場でマクガフィンを再登場させるか、あるいはその存在を忘れさせる
注意点
- 複数のマクガフィンを使用する場合、「プロット・クーポン」と批判される可能性がある
- マクガフィン自体の具体的な内容よりも、それが物語に与える影響に焦点を当てる
作品例
マクガフィンとして選ばれやすい物
これらの例では、マクガフィンは物語を駆動する重要な要素として機能していますが、その具体的な内容は物語の本質にとってさほど重要ではありません。例えば、『ONE PIECE』の「ひとつなぎの大秘宝」は、主人公たちの冒険の動機付けとなっていますが、その正体は物語が進むにつれて明らかになっていきます。
また、泥棒や怪盗が主人公の作品では、「最高級のダイヤモンド」のような貴重品もマクガフィンとして機能することがあります。これらのアイテムは、物語の展開に必要ではありますが、ダイヤモンドがエメラルドや金塊に置き換えられても、基本的なストーリーの構造は変わりません。
マクガフィンの重要な特徴は、それが「換えの効くもの」であり、読者や観客の感情移入を助ける演出効果を持つことです。これにより、作者は物語の展開を柔軟に操作し、登場人物の動機付けを明確にすることができます。
No |
分類 |
例 |
作例 |
1 |
貴重品や価値のあるもの |
宝石や貴金属 |
『シャレード』の「25万ドル (金塊)」 |
芸術品(絵画や彫刻など) |
『マルタの鷹』の「鷹の彫像」 |
古代の遺物や歴史的価値のある品 |
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2 |
機密情報や重要書類 |
スパイ映画でよく使われる機密文書 |
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暗号化されたデータや情報 |
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地図や設計図 |
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3 |
神秘的または超自然的なアイテム |
魔法の道具や聖遺物 |
『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』の 「デッドマンズ・チェスト」 |
未知の力を秘めた物体 |
『サクラダリセット』の黒い石 |
伝説の品 |
『レイダース/失われたアーク』の「聖櫃(アーク)」 『ONE PIECE』の「ひとつなぎの大秘宝」 |
4 |
科学技術関連のアイテム |
革新的な発明品や装置 |
『キッスで殺せ』の「白熱する光を放つ箱」 |
危険な兵器や薬品 |
『汚名』の「ウラニウムの入ったワインの瓶」 『M:I III』の「ラビット・フット」 |
未知の科学的発見 |
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5 |
象徴的な意味を持つもの |
権力の象徴(王冠、印璽など) |
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特定の組織や個人に関連する品 |
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6 |
不明瞭または謎めいたもの |
内容が明かされないブリーフケースやスーツケース |
『パルプ・フィクション』の「ブリーフケース」 『RONIN』の「スーツケース」 |
正体不明の物体や存在 |
『北北西に進路を取れ』の 「ジョージ・キャプランという名の男」 |
7 |
代替可能な一般的なアイテム |
特定の鍵やパスワード |
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通行許可証や身分証明書 |
『カサブランカ』の「通行許可証」 |
『汚名』(原題: Notorious)の「ウラニウムの入ったワインの瓶」
- 物語の重要なアイテム: この「ウラニウムの入ったワインの瓶」は、映画のプロットにおいて中心的な役割を果たすマクガフィンです
- スパイ活動の対象: 主人公のアリシア・ハバーマン(イングリッド・バーグマン演じる)は、ナチスのスパイ組織に潜入し、この瓶の存在を突き止めることを任務としています
- 隠蔽の手段: ナチスのスパイたちは、ウラニウムをワインの瓶に隠して密輸しようとしています。これは、当時の核兵器開発に関連する重要な物質でした
- 緊張感の源: 瓶の中身が発見されることへの恐怖が、物語全体に緊張感をもたらしています
- 時代背景の反映: 第二次世界大戦後の冷戦初期を背景としており、核兵器開発競争への不安を象徴しています
- ヒッチコック的手法: 監督のヒッチコックは、この瓶を通じて観客の想像力をかき立て、サスペンスを高めています
このウラニウムの入ったワインの瓶は、物語を動かす重要なアイテムでありながら、それ自体は物語の本質ではありません。これは典型的なマクガフィンの使用例であり、キャラクターの行動を動機づけ、物語に緊張感をもたらす役割を果たしています。
『サクラダリセット』の黒い石
この物語は「咲良田」という架空の都市を舞台とし、約半数の住民が
超能力的な能力を持っていますが、街を出ると能力の記憶が消えてしまいます。
そして「管理局」という公的機関が能力を管理しています。
物語では「黒い石」というマクガフィンが登場し、これを手にすると咲良田を支配できるという噂があります。
- 特徴
- 黒い石のような形状をしています
- これを手にすると咲良田を支配できるという噂がありますが、真偽は不明です
- 作中でも「マクガフィン」という名称を意図的に使用しています
- 当初は津島の机の引き出しにありましたが、後にケイの手に渡りました
- 佐々野が撮影した写真の中で、相麻菫がマクガフィンらしきものを持っている様子が写っていました
- 役割
- 村瀬陽香がマクガフィンを探すことが、物語の重要な要素となっています
- ケイは、マクガフィンが実は菫によって用意された「小道具」であると考えています
- マクガフィンの目的は、必要な能力者をケイのもとに集めることでした
このように、マクガフィンは物語を動かす重要なアイテムでありながら、その本質は単なる「小道具」であったという複雑な設定になっています。これは、物語における
伏線や謎解きの要素として巧妙に使われています。
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最終更新:2025年02月02日 23:29