バフォメティアン

ある男は南米の探索へ赴いた。そこには男の知らない世界が広がり、何匹もの魔王級魔獣が闊歩していた。
男はある程度進んだところで、これ以上の探索は不可能だと悟り、少しの収集物を持って北米へと帰還する。
男の持ち帰った物品の多くは未知の魔獣由来の物で、それらの中のひとつにその巨大な肉塊があった。それは他の魔獣が食べ残したものというわけではなく、爪で抉られたような形状から魔獣同士の戦闘で脱落した肉片だと思われる。
その肉を持ち帰り、男は仲間と共にそれを食した。
男はある程度進んだところで、これ以上の探索は不可能だと悟り、少しの収集物を持って北米へと帰還する。
男の持ち帰った物品の多くは未知の魔獣由来の物で、それらの中のひとつにその巨大な肉塊があった。それは他の魔獣が食べ残したものというわけではなく、爪で抉られたような形状から魔獣同士の戦闘で脱落した肉片だと思われる。
その肉を持ち帰り、男は仲間と共にそれを食した。
一日目、男は激しい高熱に襲われた。
二日目、男は猛烈な吐き気を催し、仲間達も高熱に苛まれる。
三日目、男の表皮が変化し始めた。肉が爛れ、後から後から別の肉が生え始める。それは龍のようだった。
四日目、男の腰から新たに肉塊が形成され始める。この頃に少しづつだが額から二本の硬質の角も顔を覗かせ始める。
五日目、腰から形成された肉に新たに感覚が生まれる。動かせる、男は自身の腰の肉を尾として動かすことが出来ると気付く。
二日目、男は猛烈な吐き気を催し、仲間達も高熱に苛まれる。
三日目、男の表皮が変化し始めた。肉が爛れ、後から後から別の肉が生え始める。それは龍のようだった。
四日目、男の腰から新たに肉塊が形成され始める。この頃に少しづつだが額から二本の硬質の角も顔を覗かせ始める。
五日目、腰から形成された肉に新たに感覚が生まれる。動かせる、男は自身の腰の肉を尾として動かすことが出来ると気付く。
数ヶ月後、男の姿は辛うじて人型を止めているだけで、龍人であるかのような姿だった。あの肉を食した者で最も変化が速かったのが男であった。男は鏡に写に映る自身の姿が、南米へ渡る前、人から聞いたバフォメットと酷似していることに気が付く。
男はバフォメットが支配者であると知っていた。己が絶対的王者であり、それ以下のものどもは皆下僕。
男はあるひとつのひらめきをした。ならば全ての人間が等しく絶対的王者になれば、人々は平等になれるのではないか。男は平和主義者であった。戦争に涙し、うたを歌う。格差のなち皆が幸せな世界を望んでいた。
人間というものは絶望的な状況において己の理想に、願いにすがりたいものなのだと思う。
男は狂っていた。簡単に考えれば行き着く筈の答えに気付かず、己の絶対的正義を信じて仲間達に平和の教えを説いた。
仲間達は皆、疑いもせず男の正義に賛同した。
我々こそが、我々"新"人類であるバフォメティアンこそが救世主なのだと。
男はいつしか父と呼ばれるようになった。
最初に父は保存していた肉を他の者達にも食べさせるよう命じた。
バフォメティアンの子らは闇夜に紛れて恵まれない人々へ少しずつ肉を分け与えた。彼らは喜んで肉を食べた。そして子らは彼らを歓迎した。
彼らはやがてバフォメティアンの子となった。
父は涙した。バフォメティアンの子らは皆が平等であった。子らの輪は次第に拡大し、父は追い求めた理想はこんなにも簡単に手の届く場所にあったのかと知った。
知った気になっていた。バフォメティアンの謳う平等、その実は父による子らの支配によるものだった。そこに真の平等は存在せず、歪んだ傲慢による歪められた、いつわりの、かたちだけの平等がそこには存在していた。
心優しい彼はその事を知らない。
男はバフォメットが支配者であると知っていた。己が絶対的王者であり、それ以下のものどもは皆下僕。
男はあるひとつのひらめきをした。ならば全ての人間が等しく絶対的王者になれば、人々は平等になれるのではないか。男は平和主義者であった。戦争に涙し、うたを歌う。格差のなち皆が幸せな世界を望んでいた。
人間というものは絶望的な状況において己の理想に、願いにすがりたいものなのだと思う。
男は狂っていた。簡単に考えれば行き着く筈の答えに気付かず、己の絶対的正義を信じて仲間達に平和の教えを説いた。
仲間達は皆、疑いもせず男の正義に賛同した。
我々こそが、我々"新"人類であるバフォメティアンこそが救世主なのだと。
男はいつしか父と呼ばれるようになった。
最初に父は保存していた肉を他の者達にも食べさせるよう命じた。
バフォメティアンの子らは闇夜に紛れて恵まれない人々へ少しずつ肉を分け与えた。彼らは喜んで肉を食べた。そして子らは彼らを歓迎した。
彼らはやがてバフォメティアンの子となった。
父は涙した。バフォメティアンの子らは皆が平等であった。子らの輪は次第に拡大し、父は追い求めた理想はこんなにも簡単に手の届く場所にあったのかと知った。
知った気になっていた。バフォメティアンの謳う平等、その実は父による子らの支配によるものだった。そこに真の平等は存在せず、歪んだ傲慢による歪められた、いつわりの、かたちだけの平等がそこには存在していた。
心優しい彼はその事を知らない。
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