SCP-3456

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SCP-3456 - (2020/02/20 (木) 17:42:35) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/11/26 Sun 12:50:34
更新日:2024/02/18 Sun 05:01:37
所要時間:約 27 分で読めます




この恐ろしい怪物の見た目は、タミーが見たところでは、大きな馬のようで、脚には幅の広いひれのようなものがついていた。
口はまるで鯨のように裂け、そこから吐き出す息は、醸造鍋から噴き出る蒸気のようだった。
目は一つしかなかったが、これがまるで火のように赤かった。
この上にまたがっているのが、というより背中から生えているように見えたのだが、脚のない大男で、腕はまるで地面に届くほどだった。頭は荒縄の玉(直径は通例3フィート)くらいもあり、その巨大な頭は今にも転げ落ちそうに、右から左へ、左から右へと肩の上を転がっていた。
しかし、タミーにとって最も恐ろしかったのは、怪物に皮膚がないことであった。皮膚が全くないことで、怪物の裸身はいよいよ恐ろしく見えた-
(キャサリン・ブリッグス著 「妖精事典」より引用)

SCP-3456とは、SCP財団本部が収容しているSCPオブジェクトである。
SCP-3000コンテストの出品作の一つ。

特別収容プロトコル

SCP-3456のオブジェクトクラスKeter。公にされている中では最凶最悪のクラスである。
しかも現時点でSCP-3456は収容されていない。
というのも、こいつは戦災や災害などの何らかの大規模な災いが起こっているところに出没するブツなので。
収容はおろか無力化の試みも、ことごとく失敗している。

目撃者にはクラスGという非常に重度の記憶処理が施される。
また治療(という名のおそらくは記憶処理)は、周囲1km以内に淡水が存在する場所で行われる。

歴史上のSCP-3456の出現記録は全て抹消する、或いは「神話」「戦争神経症が原因」「PTSDやヒステリーの産物」などと扱い、またSCP-3456による被害についてもヤツに関しての言及を徹底的に伏せ、「軍事衝突」や「自然災害」などのカバーストーリーに置き換える事となっている。

SCP-3456の出現の可能性が高い地域は財団職員により定期的に監視される必要がある。
が、直接SCP-3456の姿を見るのは避けるべき、となっている。

クラスの割にはあまりに簡易にも思えるが、
むしろ「あまりに凶悪かつ収容不可能なブツ」であるがゆえにこれだけしか手が打てない、という見方もできるだろう。そういう意味ではあの某口に出したら絶対攫うマンにも通ずる部分がある。
クソトカゲアベル?奴らも凶悪だが、それでも曲がりなりにも財団の施設内に収容できている。だからそこそこ詳細な"お付き合いの方法"を書けたのだ。

ナックラヴィー

さて、説明に入る前に触れておきたい妖怪が一つある。
スコットランドの妖怪、「ナックラヴィー」というヤツである。

…あ、ナックラヴィーと聞いて忍殺関連の方が最初に頭に浮かんだヘッズ諸君はどこかで対抗ミームの摂取をするか、或いはお帰りいただきたい。

ナックラヴィーとはスコットランド・オークニー諸島に伝わる半人半馬の妖怪。
冒頭の一文はキャサリン・ブリッグス著「妖精事典」に記載されている、ナックラヴィーに遭遇したというタマス氏(タミー)の証言の部分の抜粋である。

ナックラヴィーは海の妖怪の一つ。
馬のような本体の背に、人間の上半身が生えている、或いは馬の首から上が人間形の上半身になっているという姿をしている(タマス氏が遭遇したのは恐らく前者のタイプ)。

赤い一つ目のついた「人間」の頭部は3フィート、つまり約90cm程の直径を有する。
腕は地面につくほど長い。
また、海の怪異であることからか、馬の部分の脚にはヒレが付いていると言われている。
そして最大の特徴-それは、皮膚が無いということだ。
皮膚がないが故に皮下の筋肉組織などが露出しており、「黄色い血管をタールのようにドス黒い血が流れているのが見えた」「巨大な腱が動くたびに伸びたり縮んだり絡まったりしていた」という悍ましい姿をしている。

ナックラヴィーは海から出現し、植物を枯らし、出会う家畜や人間を皆殺しにし、行く先々で禍を撒き散らす。
さらに吐息は有害とも言われている。

こんなグロテスク且つ危険性の高いナックラヴィーであるが、海の怪異であるためか淡水には弱く、
川や湖を越えて逃げれば振り切ることができるという。

…何故、こんな日本では多少マイナーかも知れない妖怪について触れたのか、だって?
確かに見た目のインパクトは凄まじいが、それでもSCPの記事で書くことじゃないだろう、だって?

…実はこのナックラヴィーの正体は、カバーストーリーにより「伝承」ということにされたSCP-3456の疑いがあるから、である。(メタ的には単純に3456の元ネタ)
向こうの世界のキャサリン・ブリッグス女史はもしかしたら財団エージェントだったのかもしれない



SCP-3456 - The Orcadian Horsemen(オークニー諸島の馬男)


説明

SCP-3456はウマ科動物に似た、四足歩行生物型の実体。
これまでに複数の3456実体が確認されているが、いずれの個体も通常のウマ科動物とははっきりと異なっている。
主な特徴は、体毛がない・三ツ又の蹄・厚みのある透明な皮膚・馬の頭部とは別に存在する、背から生えた人間の上半身型の部位などである。
「人間」の部分は場合によっては複数存在することもあるらしい。

人型胴体部分はそれぞれが一対の腕と一つの頭部を有しており、
腕の長さは3456本体の体高の約二倍という長いもの。これ故「腕」を引きずるようにしている。
またその「手」の部分は指の代わりに5本の鋭い骨が突き出している。
多くの3456個体の頭部は、鼻相当の部分に大きな穴が一つ開いているのみである(これ故『巨大な一つ目がある』ように見えたと思われる)。
この穴は発声器官、或いは口のようであり、ここから最大110dBの大声で叫ぶことができる。ちなみに110dBという数値は、クルマのクラクション、或いはヘリコプターの目の前に匹敵する音量である。
体格は個体により様々であり、確認されている最大級の個体は体高30m・体長15mである。…馬ってレベルじゃねえ。
SCiPのお約束どおり?既存の兵器では傷一つ付けられない。

SCP-3456は、自然災害や戦禍などの何らかの災害が起こっている場所に出没する。
災いの規模によっては複数回出没することもある。
19世紀以降の様々な災禍は、どうやらこいつが少なからず関与しているらしいが…。
かなり頭は回るようであり、目をつけた相手をハメたり待ち伏せしたり、或いは心理操作までして追い詰める。これ故明確な知性があるSCiPである、と仮定されている。

対象=被害者がうっかりこいつを目撃してしまうと、それはSCP-3456に目をつけられたということにもなってしまう。
対象に目をつけた3456はどういうわけか対象の場所をリアルタイムで把握して、対象をひたすら捕獲することに心血を注ぐ。
対象に目をつけた3456は環境を利用して自身の姿を隠し、対象を追い詰める。
しかもなかなかしつこいようで、生還者の証言からすると最初の出現地点を超えてまで追ってくるようだ。

これらの行動を繰り返し、しかも「意図的に」自分の姿を他人に見せることにより自ら"目撃者"=目をつけた相手を増やし、大量の人間を捕獲してから消失する。
捕まった人間がどうなるか?そんなものはわからん、何故なら捕まった人間が戻ってきてないのだし。

これでだいたいこいつの特性がわかっただろうが、
こいつはあの言及したやつ絶対攫うマンに似た特性なのである。
…但し一応なりとも温厚なアレと違いめちゃくちゃ凶悪なSCiPだし、逃げる方法も無いことはない(後述)のだが。
また、時折「シャイなあんちくしょうが仮に自分から姿を見せに行くならKeter」とか言われるけど、
SCP-3456はまさにそれをやっている「自分で目撃者を増やして襲うシャイガイ」ともいえる。

…こんなSCP-3456だが、意外な弱点がある。
それは「淡水を渡れない」という点。
淡水を渡れないがゆえに、川や湖を越えて逃走すればもう追ってこない。
この弱点は、イラクの自由作戦に於いてバスラで活動していた財団エージェントにより発見された。どこにでもいるのな、財団エージェント。
当時のエージェントは約3体の3456に追い回されていたものの、チグリス川の対岸に逃げたところ連中がチグリス川を渡る橋に足を乗せようとしないことに気づき、「あ、こいつら川というか淡水渡れねー」という事が発覚。
どうやら直接渡らずとも、橋ですらダメらしい。


SCP-3456から逃げ切った人は追記・修正をお願いします。



















































































































 

警告。アクセス試行を検出しました。適切な資格情報をスキャンしています。

レベル5クリアランス資格情報を承認しました。

さて、このSCP-3456であるが、
あろうことか日本においての出現の記録も存在している。
日本国内において奴が出現した要因となったのは、あの東日本大震災。

この事案は2011年の東日本大震災における、福島県でのSCP-3456の出現の詳細が含まれた記録である。
地震が何らかの異常存在によって引き起こされたかを確認するために、福島県の避難住民に続き財団の偵察チームが数部隊福島入りをしたのだが、
その際にSCP-3456が地震発生より複数回出没、計2562名もの行方不明者を出している。
大多数の住民の避難が完了してから64時間後に警戒区域内での3456の出没が一旦止まったことも、偵察チームのメンバーを油断させるには十分なものとなったようであり、それ故遭遇してしまったようだ。

事案報告書I-3456-32

記録日時: 2011年3月18日 14:00:00

序: 偵察チームは4名1組の班で派遣され、各チーム1名がヘルメット搭載型のカメラ機器を装備していた。以下のログは第3班を取り巻く出来事を記述するものである。全8班のうち3班がSCP-3456と遭遇したが、第1班と第6班のカメラはSCP-3456個体との接触初期に破壊された。このログは第3班と司令部の間に交わされた音声および映像の転写です。班の他メンバーは、ブライアンズ指揮官と通信担当者の音声通信を受信していません。

記録開始

[ヘルメット搭載カメラのスイッチが入り、偵察班が輸送ヘリコプターを離れる。カメラは工作員の頭に合わせて動くため、班の前方・後方の通りが両方とも映っている — 通りは顕著な構造的被害を受けており、コンクリートの歪みや亀裂が数多く見られる。]

ブライアンズ: こちら第3偵察班、オレンジリーダー。司令部、聞こえるか?

司令部: 聞こえています、オレンジリーダー。

[映像は左右を向き、標準的なフィールドエージェント装備を身に付けた他2名の人物を映し出す。]

ブライアンズ: マイクチェック。

ロペス: こちら、ロペスだ。

チョウ: チェック、チェック、機能してますか?

バイヤーズ: 音声明瞭です、指揮官。

[ブライアンズが画面を指しているのが見える。]

ブライアンズ: 司令部、バイヤーズのヘルメット内カメラから送信は届いているか?

司令部: カメラからは明確な送信を取得しています。ナビゲーションが座標を送信中です。エージェント ロペスとチョウがカント計数機を装備しています。覚えておいてください、標準からのあらゆる逸脱が更なる調査の根拠となります。アノマリーに遭遇した場合は、その位置を無線で伝えてくれれば収容チームを派遣します。如何なる状況でもあなたの班がアノマリーと交戦することは避けてください。現時点から、司令部の通信は全てあなたに向けるものとします。

ブライアンズ: 了解です、司令部。

[カメラは僅かに前方に傾き、エージェント バイヤーズの手首に付いた四角形の機器を映す。]

ブライアンズ: OK、私たちの目標は南方に3クリック先だ。ここで荒川を渡らなければならん。チョウ、ロペス、移動中もカント計数機をチェックし続けてもらいたい。一瞬でも数値に妙な点が見られたら何かしら言ってくれ。分かったな?

ロペス: イエス・サー!

チョウ: 分かりました。

ブライアンズ: バイヤーズ、俺の近くを離れないように。

[続く10分間で、第3班は破壊された街並みや道路を5ブロック移動する。異常活動の兆候は見られない。]

ロペス: ヘイ、ボス、俺のカウンターに今しがたデカいブレがあったぞ。

チョウ: 私の方もです、針はおよそ3秒間、赤の位置を指し続けていました。

[ブライアンズは手を上げて停止を促す。偵察隊メンバーが通りで立ち止まる。バイヤーズはゆっくりと360度を見渡し、上昇したヒューム値の原点を発見しようと試みている。]

ブライアンズ: 司令部、問題は無さそうか?

司令部: 問題ありません、オレンジリーダー。映像・音声ともに何も検出されていな—

[この時点で司令部は、鈍くリズミカルに何かを叩くような音の存在に気付いた。音の大きさは、発生源とカメラマイクの間に約300mの距離が開いていることを示すものだった。]

ブライアンズ: 司令部?

司令部: その場で待機してください、オレンジリーダー。

ロペス: ボス、あれが聞こえますか?

[音はやや大きくなり、距離は300mから250mまで接近した様子が示されている。]

チョウ: 馬が舗装路を歩いているような音です。

[エージェント バイヤーズが周辺環境を見渡したため、再びカメラが360度回転する。2分間の音量上昇に続き、音は唐突に止む。]

[何かの砕ける音が聞こえ、カメラが180度旋回する。ロペスのカント計数機が舗装路に落ち、ガラスが割れているのが映っている。]

ロペス: クソッたれ。

チョウ: 指揮官…

ブライアンズ: 司令部、問題が発生したようだ。

[カメラ視点は地面に落ちたカント計数機から上昇し、200m先の交差点に立っているSCP-3456を映す。カメラは実体にズームし、司令部は透き通った肌と、馬の背の中央に融合したヒト胴体に着目する。ヒト胴体はぐったりとした姿勢を維持しており、約30秒間身動きしない。]

ブライアンズ: 司令部、どうやら地震を引き起こした実体を発見できたようだ。

司令部: 否です、オレンジリーダー。SCP-3456には地震発生との関連がありません。[通信担当者は高位クリアランスの偵察司令部職員と話し始める] オドネル! SCP-3456の出現を確認!

ブライアンズ: 何? あれが3456か? 奴はここで何をしてる?

[ヒト胴体が動き始め、ゆっくりと直立姿勢になってゆく。腕が振り回され、周囲の構造物を損傷・破壊してブライアンズの注意を引く。]

司令部: オレンジリーダー、司令部はUAVドローンによる空爆を承認しました。班を通りから左手にある2棟の高層建築に退避させてください。

ブライアンズ: 了解、司令部。

[カメラは班に呼び掛けるブライアンズを5秒間映した後、実体に焦点を合わせる。SCP-3456は腕を動かすのを止めている。実体は偵察班の方を振り向き、約5秒間大声で鳴く。]

司令部: オレンジリーダー、班をそこから退避させなさい! 見られています!

ブライアンズは脇道を指差し、カメラはその方向に回転してフレーム内に巨大な高層建築を映す。

ブライアンズ: 全員移動! 早く!

[カメラが揺れ始め、バイヤーズが軽く地面を見る際に傾いた後、水平に戻る。映像はやや左を向き、接近してくるUAVドローンを捉えた後、右側に回転する。SCP-3456が班に向かって突進し、画面に向かって腕を伸ばしているのが分かる。UAVドローンがぼやけた影としてカメラに写り込み、爆発が起こり、SCP-3456は呻き声を上げて粉塵の雲の中に姿を消す。]

ブライアンズ: 殺ったか、レジーナ?

司令部: いいえ、ジョージ。速度が落ちるだけです。

[班は高層建築に入り、階段を上り始める。班が建物の8階に到着した時点でカメラの揺れが治まる。]

ブライアンズ: レジーナ、一体なんだってあの野郎はここにいるんだ。

司令部: [通信担当者と偵察責任者の間での議論が聞こえる。]

[画面が激しく振動し始め、SCP-3456が建物に接近してくる音が聞こえる。ブライアンズが班のメンバーを大型備品クローゼットのドアに誘導しているのが映っている。バイヤーズがドアを閉めたため、映像には窓の光を遮る影が映り込むようになる。]

[バイヤーズにより、カメラは一時的に暗視モードに切り替えられる。カメラがさらに4回振動した後、SCP-3456が接近してくる音が止まる。SCP-3456は窓の外側で荒々しく息を吐いている。]

ブライアンズ: レジーナ、聞こえるかレジーナ。

司令部: [上述の議論がまだ継続しているのが聞こえる。]

ブライアンズ: 畜生。

ロペス: あいつがそこで何やってるか、見る方法がありゃいいんですがね。

ブライアンズ: カメラがある。

バイヤーズ: ドアの外に頭を突き出す気は無いわよ。

チョウ: あの、ここって備品クローゼットですね?

ロペス: ああ。

チョウ: バイヤーズ、この辺に箒はありませんか?

レンズが左側を向き、箒が映る。

バイヤーズ: ええ、あなたのすぐ右側。

チョウ: ヘルメットを投げてください。

[エージェント バイヤーズがヘルメットを脱いでエージェント チョウに手渡したため、画面が軽く揺れ動いて逆さまになる。カメラがもう数回揺れ、懐中電灯のスイッチが入る音とテープを裂く音が聞こえる。]

[映像の揺れが停止し、何かを叩く音がする。]

チョウ: 良し、これで何が起こっているか分かるでしょう。遠隔ディスプレイはありますね?

ブライアンズ: 野郎が何をしてるのか見てやろうじゃないか。良いアイデアだったぞ、チョウ。あれが何にせよ、消え失せていればいいんだが。

バイヤーズ: 相変わらず機転が利くわね。

[映像が前後に揺れ、クローゼットのドアが軋みながら開く音が聞こえる。レンズが窓から入り込む光を検出し、暗視モードが無効化される。SCP-3456の手が窓の側面を掴んでおり、顔面が左側からフレームに入り込んでくる。対象の目が複数回前後に動く。SCP-3456は軽く息を吐いてカメラレンズを曇らせる。SCP-3456は叫び声を発し、それによってカメラが床に落下。ドアが声圧で勢いよく閉まる音が聞こえる。SCP-3456は窓の外に少しの間留まっているが、やがて側面から手を離し、カメラ視界から姿を消す。]

[SCP-3456の影が建物から離れ、フレーム外に出る。カメラが揺れ、ゆっくりと備品クローゼットに引き戻される。カメラは60秒間揺れ続けた後、エージェント バイヤーズの手元に戻る。SCP-3456の立てる物音が聞こえなくなるまでさらに3分が過ぎる。他3名の班のメンバーは上記の出来事によって明らかに動揺を示している。]

司令部: オレンジリーダー、あなたの班はまだ無事ですか。

ブライアンズ: レジーナ、いったい何がどうなってやがる。

司令部: あなたたちの他に2つの班が、SCP-3456と遭遇しました。あれは本来ここに存在するはずではなかったのですが…

ブライアンズ: はずではなかっただと? 司令部は確認も取らずに私たちを送り込んだのか。

司令部: ジョージ、この通信は監視されているんですよ。

ブライアンズ: 知ったことか。お前たちは敵対実体が存在して“いないかもしれない”ホットゾーンに私とその班を送り込んだ。私には彼らに知らせる必要があるんだ。

司令部: それはダメです、オレンジリーダー。セキュリティクリ-

ブライアンズ: セキュリティクリアランスがどうした、私たちはたった今あの怪物と顔を突き合わせたんだぞ。こんな状況でお役所的な手続きなんぞ気にしていられるか。

[無線通信に10秒の沈黙。]

司令部: あれが何なのかを班に通知することはできません。

ブライアンズ: いい加減にしろよ、レジーナ。

司令部: あれが好まない事柄を通知することはできます。

[5秒の沈黙。]

ブライアンズ: それはつまり…

司令部: 淡水です。

[15秒の沈黙。]

ブライアンズ: そりゃ助かるよレジーナ、それで私たちはどうすればいい、瓶に入れた水を浴びせて奴を溶かすのか?

司令部: ジョージ、荒川に掛かっている橋を渡れば、あの実体は追跡が不可能になります。

[ブライアンズは手首の機器の、明るく点っているディスプレイに目をやる。]

ブライアンズ: レジーナ、架橋地点はここからまだ1.5クリックも先なんだ。とてもできそうにない。

司令部: 少々時間をください。

[30秒間の沈黙。ブライアンズの、続けて他3名の班メンバーのディスプレイが再び点る。映像が下向きに傾く。]

司令部: あなたたちの本来のルートは、川幅の狭い上流で荒川を渡るものでした。最も近い渡河地点、川が最も広くなっている場所に再設定しています。約1km先で、身を隠すために建造物を使えば15分ほどかかるでしょう。回収ヘリが既に向かっています。

ブライアンズ: 了解、司令部… 他の2チームの状況は?

司令部: [くぐもった会話] 接続途絶状態です。

[ブライアンズは振り返り、班の各メンバーの顔を見回した後、バイヤーズを直視する。]

ブライアンズ: アン、すまないがドアから頭を出して、奴がそこにいないかどうか確かめてくれるか。

[視点が僅かにずれ、バイヤーズがクローゼットのドアから外を除く。SCP-3456の姿は無い。]

バイヤーズ: オール・クリアです。

ブライアンズ: OK、作戦はこうだ、諸君。私たちはここに本来存在すべきでない輩と出くわしてしまった。司令部は退避経路を設定してくれたが、そこに辿り着くためには荒川を渡らなければならない。

チョウ: 何か特別な理由があってのことですか? 何故彼らはここに我々を拾いに来れないんです?

ブライアンズ: 奴にどんな事ができるか見ただろう。司令部はヘリが空から叩き落とされるリスクを侵したくないのさ。あのブツは淡水を渡ることができない。川の最も広い地点は1km南だ。影に身を潜めながら、素早く静かに移動する。今のところ、知っておくべきはそれだけだ。

[ブライアンズは移動を促す合図を送る。班は続く15分間を、様々な建物を渡り歩くのに費やす。やがて班は橋まで約50ヤードの地点、大きな交差点から数メートル進んだ場所で停止する。バイヤーズが周囲の建物を見回し、カメラ視点が左から右へと360度回転する。SCP-3456の兆候は無い。]

ブライアンズ: 司令部、橋から50ヤードの地点だ。実体の現れる兆し無し。

司令部: ヘリは橋の上に停まっているはずです、見えませんか?

[バイヤーズが正面を向き、カメラがズームすると、CH-47チヌーク・ヘリコプターが橋に停まっているのが映る。]

ブライアンズ: 了解、司令部。確認した。

ロペス: 嗚呼マリア様、俺たちゃ助かったんだな。

[班が前方へと進み始めるが、立ち止まる。カメラが数回激しく揺れ、カント計数機の警報を示すピッピッという音が鳴り始める。]

[SCP-3456が5m前方にある左側の通りから出現し、偵察班と直接的に顔を向き合わせる。ヒト胴体は右側に傾いており、馬とヒトの身体が同時に叫び声を上げる。橋から小火器の発砲音が聞こえ、実体の皮膚に当たるのが確認できる。2発のRPG弾が首に命中するが効果は見られない。]

ブライアンズ: サノバビッチめ、待ち伏せてやがったのか。

チョウ: どうすればいいんです?

[カメラはブライアンズを映し、彼がベルトから2発のスタングレネード缶を引き抜くのを捉える。]

ブライアンズ: 走るぞ。

[ブライアンズはグレネードのピンを抜き、班を振り返る。]

ブライアンズ: 目を庇え。おい、そこのブス!

[ブライアンズはグレネードを宙に放り投げ、前に走り始める。バイヤーズは閃光を避けるために目線を下げる。破裂音と、SCP-3456が呻く声が聞こえる。バイヤーズが顔を上げると、前方にロペスとブライアンズの姿が見える。班は橋に辿り着く直前まで来ている。カメラが僅かに左を向き、チョウがバイヤーズと並走しているのを映す。]

[映像が突然回転する。バイヤーズの視点が地面と同じ高さまで下落し、後ろへ引き戻され始める。カメラが持ち上げられ、バイヤーズの叫びが聞こえる。視点が上を向くと、SCP-3456の手がバイヤーズの左脚を掴んでいるのが見える。バイヤーズの視点がもう一段階上がり、彼女が叫びながら空中に上昇してゆく様子を捉える。カメラの移動が停止し、SCP-3456の顔に焦点が合う — 実体はこの時点で微笑んだことに留意すべし。レンズが実体の額に埋め込まれている何かに焦点を合わせようとズームする。カメラ映像が途絶する前に、金の十字架と第一次大戦時のイギリス歩兵用ヘルメットが映る。]

記録終了

結: 映像記録のタイムスタンプは、SCP-3456が映像途絶時に非実体化したことを示しています。エージェント アン・バイヤーズおよびルザン・チョウは行方不明と宣言され、現在も発見されていません。

「金の十字架」「第一次大戦でのイギリス軍のヘルメット」…?
これが意味するものとは…。



淡水の向こう側から追記修正ををお願いします。


SCP-3456 - The Orcadian Horsemen
by DrBleep
http://www.scp-wiki.net/scp-3456

SCP-3456 - オークニー諸島の馬男
by C-Dives
http://ja.scp-wiki.net/scp-3456

Incident Log I-3456-032
by DrBleep
http://www.scp-wiki.net/incident-log-i-3456-032

事案記録 I-3456-032
by C-Dives
http://ja.scp-wiki.net/incident-log-i-3456-032

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