SCP-3936

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SCP-3936 - (2021/07/12 (月) 17:27:26) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2020/08/05 Wed 00:31:45
更新日:2024/04/29 Mon 13:08:02
所要時間:約 6 分で読めます




彼らは財団に忠実だった。しかし、誰も称えることはできない。


SCP-3936は、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するSCPオブジェクトの一つである。

オブジェクトクラスは、Thaumiel。そう、あのデウス・エクス・マキナやらウツボモドキやら、金属のわっかやらと同じ、財団にとっての最終兵器、そして両刃の剣である。

特別収容プロトコル


特別収容プロトコルとはいっても、このオブジェクトは財団によって作られたものなので、定期的なチェックが入るだけである。こいつの稼働を維持するために、現地のスタッフが必要なメンテナンス・修理を行う。

SCP-3936の外で行われた活動はすべて、ここで記録される。また、遡及的な改変、すなわち過去を変えるタイプの現実改変に影響される恐れのある記録はここにバックアップされる。

概要


以上の説明を聞いてお察しの通り、このオブジェクトはとある収容サイトの一つである。それも、ただの隠匿施設ではない。

SCP-3936は、スクラントン・ボックスの技術を応用して作られた、除外サイト-01そのものである。
スクラントン、という名前を聞けば、スクラントン現実錨を思い浮かべる人がほとんどだと思われる。しかし、名前こそ同じだが、SCP-1451の記述によれば、とある組織の機器をリバースエンジニアリング(機器をバラして解析することで、その仕組みや製造法を明らかにする行為)した結果得た財団のテクノロジーらしいので、恐らくあの恐ろしい空間とは無関係である。

んでこの箱、大半の現実改変・歪曲に耐えられるように設計されている*1
つまりは、除外サイト-01というのは、内部を丸ごとスクラントン・ボックスと同様に、現実を改変されないように設計されたオブジェクトなのである。サイトの外で何か現実改変が、それこそ世界が丸ごと変わってしまうような深刻なもの(具体例としてはK-クラスシナリオ)が起きたとしても、この中の情報を頼りに、世界を元通りにできてしまう可能性だってあるのだ。これを頭に入れておいてほしい。

この内部には最大100人の職員を収容することができる。財団サイトの中には数千人規模が働く主要サイトもあるので、決して多いほうとは言えない。設置された機械によって、現地のスタッフは外部の動向を傍受・監視し、これを記録することができる。また、記録される情報の中には、改変の魔の手がすぐそばに迫っているとO5評議会が判断したものも含まれる。

所属する職員は、月に一回の定期報告を通信で行うことが定められている。

…さて、こんな財団にとってはかなりの重要施設、及びThaumielオブジェクトだが、一つ問題点がある。

それは、このサイトは現在、稼働していないということである。
SCP-2000「呼んだ?」

補遺 3936-1


01/12/18/04、除外サイト-01の応答が消失した。本来ならこの日に月例報告がなされるはずだったが、来ないことを不審に思った財団は、機動任務部隊 Qeztel-12 ("こちらをご覧ください!")を派遣した。

派遣された彼らは、内部で財団職員を一人も発見することができなかった。それどころか、SCP-3936に記録されていたはずの情報が、すべて削除されていた。

考えられる限り最悪の事態ではあるが、同サイトのカフェテリアの中で、おおよそ人間だったものであるとは思えない死体が多数発見された。どうもこいつら、シアン化物の摂取により死んだらしい。

その死体の特徴を以下に示す。

  • 凡そ星型と言える全身構造
  • おそらく物体の操作に使用される2つの主要な体肢
  • 歩行に使用されると思われる2つの体肢
  • 胴体の様な構造の上に配置される制御ノード*2。2次及び3次の制御ノードは確認されていない。
  • 多くの既知の生物種が保有する3臓器循環系システムではなく、単一の器官による循環系システム。
  • 空洞の体内と、そこに存在する微小な筋肉。これによって全身を自由に制御していたことが示唆されている。
  • 味は通常の豚肉に似たものであるとされている。
  • 確認可能なメタレセプターの重大な欠如。
  • Korenvatius属の化石にのみ確認される構造の目

現在これらの死体は解剖にかけられている。

その後、SCP-3936には唯一、Ezekiel T. Jones博士と名乗る人物のメッセージが遺されていたことが発覚した。もちろん、こんな名前の人物が財団に存在した履歴は一切ない。

「我々は我々自身の封じ込めを行います。ありがとう。貴方たちがこれを知る必要はないでしょう。」

除外サイト-01に駐在していた職員は、現在でも行方不明である。

何があったのか


まず、財団が「奇妙な」と表現している死体についてだが、

「体の構造はおおよそ星形」
「物の操作、歩行に使う体肢がそれぞれ二本ずつ」
「身体の制御機関が一つだけ」
「循環系の臓器は単一で、複数ではない」
「体内は空洞、筋肉が存在する」

…うん。

これ普通の人間だよね。

死体の特徴において、「味は豚肉に似たものであるとされる」、って、調査隊はこの奇妙な死体を食したのだろうか?それに、「Korenvatius属」という生物の分類はない。

それから、日付の表示についてだが、「01/12/18/04」という表記。
何故区切りが四つに分かれているのか。普通は(アメリカ式なら)「月/日/年」という区切りのはずだ。

基底現実の財団世界には、「機動部隊」という役職は存在しても、「機動任務部隊 Qeztel-12」などという部隊は存在しない。

我々にとってしてみれば、これらの記述のほうが「奇妙な」ものである。

…察してくれた方も多いと思うが、つまり、この報告書における財団にとっては、こういった記述はごく当たり前のものなのである。

考えられる可能性


これを執筆したTanhony氏によると、
「そこでは何かがあった。しかし、それは謎である」(ほぼ直訳)
とのこと。明確な答えは結局、報告書に記されてはいない。なので、一つの可能性を纏める。

SCP-3936は外部から現実改変の影響を受けないように設計されたオブジェクトである。なので、この中で起きた出来事として完結させるのには無理がある。
ということは、除外サイト-01を除いた、全世界で起こったと考えた方が自然である。

過去のどこかの時点で、それこそあのブロンズリングとか長野の大ウツロくらいの、世界規模の現実改変が起きた。
その際に、我々人類の身体も、第四の壁を隔てた我々とは全く異なる姿の、異形の何かに置き換えられてしまったのだろう。それが、当たり前になるというおまけ付きで。
つまり、この報告書における財団世界は、モロにK-クラスシナリオ、それも歴史を書き換えるCK-クラス:再構築シナリオ、もしくは地球の支配種が交代するSK-クラス:支配シフトシナリオという、完遂してしまったらもうどうしようもない世界の終わりを喰らってしまったのである。

除外サイト-01の職員たちは、恐らくこの惨状を観測していたはずである。サイト自体は改変から守られているが、外で起きた改変をどうこうすることはできない。再起不能なほどの現実改変を目の当たりにした彼らにとって、変わり果てた基底現実は、もはやどうしようもないものであった。

そして、彼らはこう考えたのである。
「ここまでみんな変わっちまったら、むしろ異常なのは俺らの方じゃね?」

世界が下品に彩られたあの日を覚えているだろうか。変わり果てた我々の視界を「元々そうだった」と思い込まされた、アンニュイ・プロトコルの発動したあの日を。

SCP-3936の職員は、それを自らに適用したのだ。現実が根幹から変わった外界に、余分な要素を持ち込まないために、彼らはサイト内部で自らを封じ込めたのである。

後に残ったのは、シアン化物の容器と、博士の覚悟の一言。

彼らの覚悟は、誰にも語り継がれない。

SCP-3936

Working as Intended(職務に忠実であれ)

しかし、そこには確かに、財団に忠実な職員たちがいた。


追記・修正は、除外サイトの死体を食べてからお願いします。




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