ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン 超常心理分析書

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ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン 超常心理分析書 - (2021/04/22 (木) 22:12:31) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2021/04/22 Thu 00:07:47
更新日:2024/02/15 Thu 09:11:02
所要時間:約 9 分で読めます




『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン 超常心理分析書』とは、2002年にフットワーク出版社から出版された書籍。
著者は大沼孝次。

概要

タイトル通り、『ジョジョの奇妙な冒険』の第6部『ストーンオーシャン』を取り扱った書籍である。
しかし聞きなれない出版社名からもわかる通り、集英社公認ではないアンオフィシャルな内容……いわゆる「謎本」というジャンルの一冊になる。

ここで「謎本」というジャンルについて軽く解説する。
「謎本」とは、ベストセラー「磯野家の謎」に端を発するアニメ・漫画などに関する非公式解説本の総称である。
「著作権的にどうなの?」と思われるかもしれないが、別に漫画やアニメの感想や考察を書くこと自体は著作権的に何の問題もない行為なので一切問題はない。
ただし、アンオフィシャルなので、公式版元の画像は一切使用されていない。
オフィシャルな書籍と区別する際は、公式画像が使用されているかどうかに注目するとわかりやすいだろう。
一般的には「謎本」の範疇には含まれないが、「空想科学読本」みたいなジャンルの本と思えばいいかもしれない。

もちろん非公式な内容であるため、公式設定と矛盾することはザラにあるが、基本的には「そういうもの」と割り切って読むものであるとされる。
そもそもあくまで「考察」しているだけなので、細かく目くじら立てるのも大人げないだろう。

……さて、本題であるが本書は「ストーンオーシャン」の謎本である。
内容的には、まだ完結していない時期の出版であり、取り上げているのは1巻~9巻までの解説となっている。
ただでさえ難解なジョジョシリーズの中でもとりわけ複雑な6部の解説書なのだから、多少の間違いがあったぐらいでわざわざ話題にするようなものではないのだが……

主なツッコミどころ

なお、タイトル通り本書は「心理分析書」なので、登場キャラの性格・心理分析に結構な紙幅を割いているのだが、この部分については主観的な部分も多く、正しいとも間違っているとも言いづらいのでここでは取り上げない*1
以下では あくまで客観的に見て明らかに変な箇所だけ取り上げる

  • 1部~5部を読んでいない
本書最大のツッコミどころであり問題点 。まずこの時点で色々な意味でアウトだろう。
巻末の参考書籍を見ると、なんとストーンオーシャンの1~9巻(となぜか生物と教育の解説書が1冊ずつ)しか参考にしていない。
つまり、ジョジョ世界の1~5部を完全にスルーして6部だけ解説するというあまりにもあまりな暴挙に打って出るのだ。
設定を(一応)リセットした7部の考察本なら問題なかっただろうが……。

そのため、基本的な部分でアウトな解説が非常に多い。

DIOの設定を知らない
ジョジョ全編における最大のキーキャラクターの一人であるDIOの設定を 根本から勘違いしてジョジョを解説する という前代未聞の暴挙。
そのせいでジョンガリ・Aの解説で、「元軍人」「承太郎と敵対していた男の元部下」という情報だけで
承太郎がジョンガリの上官を殺したせいでジョンガリは承太郎を恨んでいる というあまりにもトンチンカンな解説を始める始末。
そもそも、ジョンガリの年齢設定と「20年以上前の事件」というセリフをちゃんと照らし合わせれば、承太郎が殺したのがジョンガリの軍人時代の上官などではない*2ことぐらい明白なのだが…。

特に笑えるのは、プッチ神父(この時点では名前が出ていないので「神父」表記)の解説。

1988年、当時16歳であり、神学校を目指す学生であった彼はエジプトから来たという「時を止めることができる男」と出会い、親しくなった。
「時を止めることができる男」とは空条承太郎。
彼にとって承太郎は若く、美しく、しかしながら何百年も生きているような風格もあり。
彼は承太郎に魅力を感じ、多大なる影響を受けた。
彼もエジプトに行ったりもしてみたという。
承太郎は彼に「天国に行く方法があるかも知れない」と語った。
それは精神の行き着く先であると承太郎は言う。
(中略)
その具体的な方法は一冊のノートに記録しているのだと語った。
しかし、そのノートは彼が読む前の1989年、エジプトで焼却されてしまう。
焼却したのは承太郎であった。
承太郎は焼却することによって、それを永遠に封印したのだった。
(P142より引用)

そう、 承太郎とDIOを同一人物だと思い込んでいるのである 。「何百年も生きているような」が文字通りの意味だということも全く気付いていない。
「承太郎が自分で書いた天国に行く方法を自分で燃やしてその記憶を読もうとDISCを狙う」……というなんだか非常にややこしい構図が筆者の頭の中でできているようである。
さらには「承太郎に ホモめいた感情 を抱いている」というすさまじい解説まで。

そもそも6部のあらすじ部分にちゃんと「承太郎がDIOを倒した」 ことは明記されているのだが…。

「DIOの首筋に承太郎と同じアザがあるから同一人物」ともしているのだが、なんで同じアザがあるのかすら気づいていない。

あと、なぜか一貫してDIOを「デオ」と読んでいる。…無論、「DIO」は「ディオ」であり英語圏で「デイオ」などと発音することは無い。
しかも、「なんでクウジョウ・ジョウタロウをデイオと呼ぶのか?」と勝手にわけのわからない疑問まで作り出している始末。

「承太郎とDIOが同一人物」という意味不明の勘違いから考察を進めたせいで、 承太郎と神父が協力して刑務所内にスタンド能力をばらまいている という根本からおかしい解説もされている。

〇「」の存在を知らない
「ストーン・フリーは後天的に得た能力」という解説は正しいのだが、そもそもスタンド能力発現の鍵となる「矢」の存在と設定を知らないため、
スタンド能力は誰でも容易く得ることができる という危うく死にかけたホリィさんや広瀬康一からすると憤慨物の解説がされている。
また「現実的な解釈としては」と断ってはいるが、「(矢じりが入った)ペンダントからは 常時幻覚剤のようなものが散布されているのではないか 」という妙な解説も。

〇承太郎の職業を知らない
もちろん6部時点では「海洋学者」であり他の何物でもない。
しかし本作では 「嘘」と決めつけた 挙句 「言葉使いからインテリジェンスが感じられない」 とファンにテメーは俺を怒らせたと言わせたいとしか思えない事を書く。
3部・4部で繰り広げられた承太郎の戦いを全く知らないため、「敵と戦っていた」というセリフから勝手に解釈して「FBIとかCIAの秘密諜報部員を髣髴とさせる」と勝手に書いて、
「空条承太郎の職業は謎である」 と明確な設定を放棄して勝手に謎に仕立て上げている。

  • 徐倫たちはサイボーグ?
前書きで「人間にDISCが挿入されたり飛び出したりするなんてあり得ない」と解説するのは確かに妥当と言えば妥当だが、なぜかそこから
実は徐倫たちは罪を犯した人型サイボーグなのでは? というあり得ない方向に話が進む。
確かに近未来(2011年)設定ではあるが……。

  • 関係ない話を詰め込みすぎ
刊行時期の関係上、確かにまだまだストーリーが進んでいないので仕方ない部分はあるのだが、それにしたってジョジョと何の関係もない話の量が多すぎる。……というか前述したようにちゃんと1部~5部読んでいればその辺でちゃんとした解説ができたはずなのだが……。
特に3章は「人間の体から発する不可思議なエネルギーの謎」と題して、20ページに渡ってオーラや超能力などのオカルトな話を長々と解説する。 最後のほうに思い出したようにジョジョのワードが出る以外、一切ジョジョとは関係ない
せっかく「臨死体験」というワードを取り上げているのだから、「天国」について深く踏み込んでみてもよかったのではないだろうか?
またエルメェスの解説では「ペンダントで手を切ってバイキンでも入ったのか」というだけの理由から、 微生物とウィルスについて4ページに渡ってジョジョと関係ない話が繰り広げられる
細かいが、「動物性のウィルスと植物性のウィルスがいる」という意味不明な解説もツッコミどころ。
エンポリオもこの時点では謎が多すぎたという事情はあるにせよ、「幽霊」というだけのキーワードから幽霊にまつわる四方山話を長々と語っている。
一番ヤバいのはおそらくスポーツ・マックスで、「エルメェスと彼女の姉はメキシコ系移民→ ロサンゼルスにはメキシコ料理店が多い 」という何の脈絡もない話が展開される。
あと、「アメリカにある料理店はマズい」「ヨーロッパ系人種は味音痴」「日本食こそ至高」といきなり軽く海外ディスな発言まで飛び出す。

  • 1980年代の子供たちの間で「セーラー服と機関銃」が流行った?
第4章「作品の魅力を徹底分析」では、ジョジョに繋がる日本の文化史を解説……していると思われるのだが、やはりここも色々とおかしい。
1970年代ぐらいまでは概ね間違ってはいないのだが、バブル期に子供たちの間で流行っていた作品として筆者が挙げているのがなぜか「セーラー服と機関銃」「夢千代日記」「異人たちとの夏」「木村家の人々*3」など 異様に渋い 。本当にこんなのが子供たちの間で流行ったのか?
というか、1980年代の漫画文化を語るのに、 ドラゴンボール すら出さないとは……。

  • なぜかスタンドを「ロボット」として扱う
確かに機械的なデザインが多いのは事実だろうが、だからって「ロボットのようなもの」と一貫して扱っているのはやはり変だろう。
特に、「極端に言うと『鉄人28号』がたくさん出てきて、そのロボット同士が戦っているような印象を受ける」という感想は、いくら「極端に言うと」と断っているとはいえあまりに極端すぎる。

  • 今後の展開を大胆予測
最後の章である5章は、このように題してストーンオーシャンの今後の展開の予測に充てられている。
もちろんまだまだ完結していない時期の「予測」なので、間違っていることは別に問題ではない。
しかしやっぱりその前提になっている知識が色々と間違っているため、どう見ても首をひねらざるを得ないものになっているのだ
特に、「今までのところ死亡しているのは敵対者だけだから、エルメェスやFFが死亡する可能性は極端に低いだろう」という考察は、 3部や5部の展開を知っている人からすれば明らかに根拠薄弱 だろう。
なお、その他の考察もおおむね外れているのだが、前述のように外れていることそのものは別に問題視するようなものではないだろう。

なお、全体的に言えば「大外れ」と言わざるを得ない考察だが、絶妙にかすっているところもなくはない。
「ホワイト・スネイクが能力によりあの世に吹き飛んでしまい、あの世で主人公たちと激闘を繰り広げる」という大筋について言えば、相違点も多いが かなり正解に近い部分を含んでいる と言えなくもないかもしれない。(まぁその他の部分は概ね間違っているので「まぐれ当たり」の範疇を出ないだろうが…)。

余談

ちなみに本書はあの「トンデモ本の世界」シリーズでも取り上げられ、第11回日本トンデモ本大賞にもノミネートされている。
トンデモ度で言えばなかなかのものだったのだが、「忍者のラビリンス」という 現代日本にも超能力者や他の星の高等生命体である忍者は生息している と説く奇書に惜しくも敗れ去っている。


追記・修正は1部~5部までもちゃんと読んでからお願いします。

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