自衛隊

「自衛隊」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

自衛隊 - (2020/12/30 (水) 19:23:28) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/10/29 Mon 10:21:37
更新日:2024/03/20 Wed 11:47:48
所要時間:約 21 分で読めます




「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、
事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」
自衛隊宣誓文より 一部中略



自衛隊は日本国が保有する「自衛のための必要最小限度の」軍事組織。

「自衛隊は軍隊であるのか?」
これは自衛隊創設以来、現在に至るまで議論され続けられている問題であり、そのため常に微妙な立場に立たされている「矛盾を抱えた組織」である。
ただし自分たちが戦後日本における軍隊であると自覚している節も散見され、隊員経験者らの中には自分が元『職業軍人』であると自覚し、公言するケースもある。
例として仮面ライダースーパー1=沖一也役で知られる高杉俊介氏は元陸上自衛隊員の経歴を持つ事で有名だが、
氏は仮面ライダーSPIRITS巻末インタビューで、このまま職業軍人でいるのか迷っていたとハッキリ述べている。
また、吉田茂元首相も政府答弁で「自衛隊は戦力なき軍隊である」と答えていたため、
設立当時の政府関係者も実質的には『GHQ指令に則って再建された日本軍』と認識していたのが伺える。



【概要】

日本国が保有する軍事組織であり陸・海・空自衛隊によって構成される。
旧日本軍と違い最高司令官は内閣総理大臣であり、シビリアンコントロールが行われている。
総兵力は約25万人であり、海洋国家のため特に海・空に重点が置かれた整備が行われており、
特にその戦力はアメリカ軍との連携によって最大の能力が発揮できるように設計され、戦略が立てられている。


【歴史】

第二次世界大戦での敗戦後、日本は軍備を解体され有名な「戦争と軍備の放棄」を謳った憲法9条を盛り込んだ日本国憲法を制定したが、
朝鮮戦争の勃発とトルーマン大統領の『トルーマン・ドクトリン』における戦略の大転換で防衛用の軍備の必要性に気づいた米政府がほぼ強引にGHQに指令し、
なんとか理屈を考えて「日本国内の治安維持」の名目が立てられて1950年に警察予備隊が創設され、同年に保安隊を経由し、
1954年に自衛隊に改編されて現在に至る。

自衛隊は戦後50年にわたり実戦を一度も経験していない世界的に見て稀有な組織であり、
国連の平和維持活動や同盟軍であるアメリカの戦争にも参加することなく、この状態は永遠に続くものと思われていた…。


しかし冷戦終結後情勢は激変することになる。


湾岸戦争においても多国籍軍に参加せず日本政府は130億ドルにも上る資金援助を行ったが、
戦後、各国から全く評価されず、そればかりか「日本は安全を金で買っている」「一国だけの平和主義」と痛烈に批判された。

なお湾岸戦争終結後に行われたペルシャ湾の掃海期間中、ある米軍高官が、
「自国のエネルギー源の70%を中東に依存している日本のタンカーを守るため、何故合衆国や他国の若者が危険に身を晒さなければならないのか」
と本音を漏らした際、
ペルシャ湾掃海派遣部隊の指揮官として湾岸の夜明け作戦に参加していた落合畯1等海佐(最終階級は海将補)は

「日本人だってこれまでに130億ドル、つまり日本国民一人当たり1万円ずつ払って立派に国際貢献しているではないか」

と反論したが、件の米軍高官から、

「100ドル(当時の日本円で1万円相当)払えばペルシャ湾に来なくていいのだったら、俺は今ここで100ドル払ってやるよ」

と返されて何も言えなくなった事があったらしい。


同じく湾岸戦争集結後にクウェートが新聞に掲載した感謝の意を示す広告ではアメリカを中心とした多国籍軍11か国の国旗に加えて合計30の国の名前が載っていたが日本の名前は無かった。
前述の通り増税によって130億円という資金を捻出して提供したにも関わらず、国際社会からはまったく評価されない*1という顛末は日本にとって大きなトラウマと言え、同時に転換点となった。

これ以降、国連のPKOなどの海外派遣に自衛隊は積極的に参加することになる。
2003年には自衛隊初となる戦地であるイラクへと兵力を派遣し、現在もソマリアの海賊対策のためアデン湾やジブチに陸・海・空自衛隊を派遣している。

そして近年は経済力を得て力を得た中国の脅威に対抗するために再び方針転換をすることとなった。
今まで海洋国家ということで優先されていた空・海のみならず多くの島を領土に持つことから島嶼防衛にも力を入れており、それまで後回しにされた陸にも多くの新装備や部隊が配備・編成されている。


【軍事組織】

○[陸上自衛隊]

約16万人。
自衛隊最大の人員を抱える陸上組織。
冷戦時代はソ連の侵攻に備えて、北方機動特別演習や北転事業を実施するなど、北海道での対着上陸作戦を重視していた。
しかし、冷戦終結後は島嶼防衛やゲリラコマンド対策を主軸に置き、南西方面への緊急展開作戦や対テロ作戦及び市街戦へ傾倒している。
かつては島国でありながら戦車1200両及び迫撃砲・無反動砲を除く火砲1000門/両(ただし旧式器材込みで額面上程強力では無い)保有と、
機甲科(戦車・偵察)や特科(砲兵)の整備に努力を払ってきたが、現在は普通科(歩兵)や化学科(NBC対処)の装備改善を図っている。

前身組織である警察予備隊の初期段階では、旧陸軍将校は極力排除され、旧内務官僚からの転出者が主導権を握っていたが、東西冷戦の激化により警察予備隊に「軍隊」としての性格がより一層求められるようになると、中佐以下の旧陸軍将校が多数入隊し、さらに特別幹部として元陸軍大佐10名が入隊することになった。これにより、警察予備隊が保安隊を経て陸上自衛隊となった際には、旧陸軍出身者が幹部の大半を占めるようになり、旧陸軍の伝統や戦略・戦術思想が陸上自衛隊に継承されるようになった。
旧陸軍将校の親睦団体であった「偕行社」は現在、陸上自衛隊の元幹部の親睦団体となっている。
キャッチフレーズは「用意周到、動脈硬化」。
海上・航空では既に廃止された「自衛隊生徒」制度を唯一維持しており、中卒の男子が入学出来る「高等工科学校」(旧称少年工科学校)を持つ。

10式戦車
自衛隊の最新鋭戦車。
世界的に珍しい完全新規設計の戦車であり、世界最高水準の性能を誇る。
しかし、予算の関係もあって十分な数が配備されるかどうか危惧されている。
現行の防衛大綱では戦車を300両まで削減する事が目標となったため、今後は機動戦闘車と並行配備される模様である。
なお周辺諸国の関係による配置転換によって10式戦車は北海道・九州に集中配備される予定。

●16式機動戦闘車
平成28年度(2016年度)に制式化される装輪式の装甲戦闘車両。
ゲリラコマンドや主力戦車を除く装甲戦闘車両に対抗する目的で開発された。
74式戦車の実質的な後継として、主に機動師団や機動旅団及び本州の作戦基本部隊へ配備される。
現行の25大綱(2014年~2023年)では約200両の調達が予定されていて、初年度は1両当たり約7億円の予算が計上された。

●野外炊具
おそらく陸上自衛隊で一番実戦を経験している装備品。
屋外でも温かい食事を提供できる車両型の調理器で、灯油バーナーを使った炊飯器、同じく灯油バーナーを使用したかまどで煮物や味噌汁などを調理できる。ただし灯油バーナーの火力調節が難しく、焼き物に関しては実質無理らしい。
とあるサイトでは一時期使用経験のある自衛官と思しき解説で細かく欠点が記述されていたことがある。
非常時でも米にこだわるあたり、日本人らしいと言えばらしい。
イベントで自衛隊が参加する場合展示されることも多く好評、青島から立体化もされている。

●野外入浴セット
野外炊具と並んで実戦経験が多い装備品。
諸説あるが日本航空123便墜落事故で製造元が自衛隊に提供したところ好評だったことから正式採用されたともいわれている。
ライフラインが途絶した環境下でも温かい風呂へ入ることができる。大災害の際に被災地へ派遣されることが多く、その時には所属元の駐屯地に因んだ暖簾が入り口にかけられる。

●浄水セット
野外入浴セットとはセットで運用されることが多い装備。
派遣先では水不足になっていることも多くこの装備では淡水を真水に変えることが出来る。
しかし真水は日本の基準ではそのまま飲料水にはできないことから入浴セットの水として使われることが多い。
近年では淡水だけでなく汚水を真水に変える浄水セットⅡ型も登場し配備が進んでいる。


海上自衛隊

約4万5千人。
旧日本海軍の伝統を引き継いだ後継組織であり、特に対潜・機雷掃海の練度は世界有数だった。
詳細は項目を参照。
米海軍との連携で最大限の能力を発揮できるように整備されており、対潜能・機雷掃海に特化していた。
キャッチフレーズは「伝統墨守、唯我独尊」

いずも型護衛艦
ひゅうが型を上回るヘリコプター搭載護衛艦(DDH)。
その大きさと拡張性を生かし艦隊旗艦や輸送艦、病院艦などマルチに対応できるようになっている。
その一環として日本海軍以来の艦上戦闘機運用可能にする準備が進められている。

そうりゅう型潜水艦
2,900トン型とも称される。
自衛隊初のAIP搭載型潜水艦であり、世界最大の通常動力型潜水艦。
SS-511(11番艦)以降はAIPではなく、リチウム・イオン蓄電池を採用している。


[航空自衛隊]

約4万5千人。
空自の元となる新空軍構想は旧陸軍航空関係者たちによって計画され、空海軍構想を練っていた旧海軍航空関係者の一部も合流する形で組織された。
防空・要撃に特化した装備体系であり、憲法上の問題から戦略爆撃機は保有してこなかったが、戦闘爆撃機は「支援戦闘機」として国内開発を行っていた。
早期警戒機の配備はベレンコ中尉亡命事件後と遅く、空中給油機に至っては2000年代に入るまで導入されていなかった。
かつて戦闘機部隊は要撃(FI)と支援(FS)に別れていたが、現在は区分を解消している。
2023年頃に他国でも重要視されている宇宙での作戦も視野に入れた【航空宇宙自衛隊】に改変される予定。
キャッチフレーズは「勇猛果敢、支離滅裂」

F-15J/DJ
第4世代ジェット戦闘機。F-15C/Dの空自仕様で、調達数は世界第一位のアメリカ空軍に次ぐ213機。
冷戦後の戦闘機部隊の削減に伴い一部は教育部隊へ配置転換されたため、ある意味すごく贅沢な運用をしていると言える。
近代化改修により今後も第一線を担う模様だが、1985年以前に生産された約100機については次期F-Xへの更新が検討されていた。
この未改修F-15を偵察型に改修し偵察部隊に配備する計画もあったが頓挫、それに伴い偵察部隊は閉隊され無人機偵察にシフトした。

●F-35A
統合打撃戦闘機計画に基づいて開発された第5世代ジェット戦闘機。
F-4EJ改の後継としてA型が採用され当初42機の配備を計画、価格に応じて調達数を増やす可能性も示していた。
航空自衛隊における初期作戦能力の獲得は2020年以降になると見られており、2020年までF-4を酷使していた。
なお短距離/垂直離着陸可能なB型の導入検討が報道されたが、小野寺五典防衛大臣は記者会見で「検討の事実はない」と否定していた*2
後にいずも型に搭載する艦載機としてB型の導入が確定、また改修が施されないF-15もF-35に置き換えることが確定した。

F-2A/B
対艦攻撃を主な任務とする第4世代ジェット戦闘機。以前は「支援戦闘機」という区分であったが、前述の通り、現在は区分が解消されている。
日本で独自開発する予定であったが、日本の工業力ではエンジンの要求性能を満たせなかったこと、
アメリカとの貿易摩擦解消など、様々な要因で日米共同開発という形になった。
F-16をベースとして作られている。
対艦ミサイルを四発積むことが可能。
今度はこちらの後継機選定が課題となっており、他国との共同開発も選択肢に入っていたが2020年時点では国内開発で進むことが決まっている。

【予算】


自衛隊の年間予算は約4兆7千億円。これは世界第7位(ちなみに第1位はアメリカの70兆円)であり、世界中でも高額の軍事予算を確保している。
しかし、実は対GDP比でみれば0.9%(※NATO基準の算定だと1.15%)であり、これは世界最低の水準である。
そして、周辺国が猛烈な軍拡を行っている中、自衛隊の予算は日本経済の不調や、
少子高齢化に伴う今後社会保障費の累乗倍での増額の予測もあって、今後も減少か横ばいを続けると考えられていた。
しかし脅威となりつつある中国への対抗が火急の課題となり、僅かながらではあるものの予算も増えつつある。

【災害派遣】

日本国が世界でも有数の災害大国であることを反映してか自衛隊は世界最多の災害救助・復興活動を行っている。
航空自衛隊の救難隊は民間での救助活動が困難場合救援要請を受けることも多い。
海上自衛隊の救難隊は更にUS-2などの装備も保有していることから海難事故では「最後の砦」とも呼ばれている。
第224飛行隊は担当地区に多くの離島を抱えることもあり最も出動回数が多い部隊でもある。

2011年に発生した東日本大震災においては延べ10万人もの自衛官が派遣され多くの人命が救われた。
この活動は国民の自衛隊への理解・好感へと繋がっている。

【装備】


自衛隊の装備は特に陸上・海上自衛隊において国産品の割合が非常に高い。

あと、どうしたわけか調達した軽機関銃がどいつもこいつも欠陥品という謎のジンクスがある。

【自衛官になるには】}

採用区分は多数あるが、体力と根性に覚えのある者はとりあえずお近くの自衛隊地方協力本部(地本)で聞いてみることをおすすめする。
日本国籍を持ち、それぞれの採用区分に合った年齢と身体的条件であれば試験を受けてみよう。
昔は任期制なら結構簡単に入れた時代もあったが、最近は民間の不景気により公務員志向が高まり、それに反して予算上採用人数が絞られたため難易度が上がっている。


様々な採用区分により難易度は差があるが、自衛隊の学校から入るコースは基本全寮制 *3で、数年間厳しい上下関係に耐え抜く根性が必要となる。
幹部自衛官を目指す防衛大学校および防衛医科大学校はかなりの高偏差値。
特に普通の私立医大なら高額な学費のかかる医学部の中、学費がタダの防衛医科大学は人気も高く合格者はほとんど偏差値70以上のトップ高校からばかりであるが、
医学科は6年間に及ぶ缶詰生活でビシビシしごかれながら送るためドロップアウトして普通の国立大医学部に逃げる者も定期的にでる。
看護学院は4年制の防衛大学校看護科に改変され、こちらも卒業後は幹部となる。
防衛医大は卒業後9年の年季があり、これより前に退官すると経費を返還しないといけない。
女性及び海上・航空の採用は高卒年齢以上からのみ。高卒以上で受験できる航空学校もある。
男子は陸上自衛隊にのみ高等工科学校(旧称少年工科学校)という中卒受験可能な枠が存在し、ここでは高卒資格が取れて卒業後は下士官相当の曹からのスタートになる。これも少年工科学校時代よりは減ったとはいえ在学中から給料が出る。
(かつては航空、海上にもあったがなくなった)
また大卒後から幹部候補生学校に入る道もある。
3年以内くらいで一区切りの「任期制自衛官」は一番ヒラからのスタートである。


【余談】


自衛隊は装備の喪失を非常に気にする組織であり、それは映画撮影の協力にも表れている。主に洒落にならない航空自衛隊が気にしやすい。
平成ガメラの撮影時、監督は怪獣によるF-15の撃墜を撮影しようとしたが航空自衛隊は「それはちょっと…」と言い難色を示したため、
監督は脚本の書き直しを余儀なくされたことがあり、その結果怪獣に相対する人間の組織としては異例の強さを発揮することとなった。
陸戦装備以上に撃墜=死である航空装備では架空のものであっても縁起が悪すぎるので仕方がない面がある。
ゴジラや戦国時代へのワープは現実ではまず起きないが、航空機の墜落は現実に起きており空自はそれで 仲間も、守るべき国民も殺しているのだ
ただし必ずしも協力しないわけではなく救難隊が主役となったアニメ『よみがえる空 -Rescue Wings-』ではF-15が墜落・殉職者も出ている。*4

関連して、自衛隊は映画制作には協力的なのだが、「バトル・ロワイアル」シリーズと「皇帝のいない八月」に関しては例外で一切の撮影協力を拒否している。
前者は作品内容が自衛隊のあり方とは真逆(国民に銃を向け、あまつさえ殺し合いを強制する)のため、*5後者は自衛隊がクーデターを起こす内容のため当然といえば当然である。
また映画版『戦国自衛隊』では「出演者を体験入隊させる」所までは協力を得られたものの、「自衛隊が戦争をする」・「途中で勝手に抜ける隊員が登場する」等の理由により兵器等の貸し出しはNGとなり、戦車のレプリカを制作。
後に『ぼくらの七日間戦争』や2003年のドラマ『さとうきび畑の唄』に流用された。
ゴジラ2000 ミレニアムでは無断で改造戦車を出したために一時期自衛隊の協力が得られなかったことがある。




追記・修正は彼ら自衛隊が血を流す日が来ないことを願いながらお願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/