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事件の輪郭の外側も絡むので、ここは黒文字一色で表記する。
「パカパカ」は子供やてんかん持ちの人にとってはかなり刺激が強いもので、早い話このスイッチを強烈に入れるものだった。
さらに当時はブラウン管の時代、今の液晶よりも光刺激が非常に強かった上、富野由悠季はピンクと青という組み合わせがこれを助長したという可能性にも触れている。
だが、同時に世相自体が「アニメとは小さい子が見るようなものである」「テレビを見て人が倒れるなんてオカルトじゃあるまいし」という時代でもあった。「YAT安心!宇宙旅行」でも原因不明の事件とされて終わったのはそういう理由。
早い話、当時は親や病気を持ってる側の自己責任という扱いだったのだ。そもそもバリアフリーなんて概念は90年代後半からやっと本格化したわけだし。
そのためポケモンばかりが話題になっているが、当時のアニメではむしろ頻繁に使われていた。まだCGなんて夢のまた夢だった時代ということもあり、迫力のある画を限られたリソースでお手軽に出せるパカパカはむしろ単なる工夫の一環。
たとえば「フタエノキワミ、アッー!」で違法アップロードネタにされているシーンも、オトリヨセー!やガトチュエロスタイム!のシーン、つまり九頭竜線や牙突零式のシーンでは思いっきりパカパカ(青白と黒でいいのかな?)が使われているし、
もっとすごいのは美味しんぼのお蔵入り回「真夏の氷」。お蔵入りされた理由が地下水への無根拠な批判とされているが、「バーのダンスを表現するために赤青黄の三原色での激しいパカパカが使われている」ことも原因のひとつと言われている。ほんとに何の前触れもなく、21世紀では絶対に見ないレベルの点滅が出てきて時代を感じる。
これらは本当に90年代までのアニメならごくごく当たり前に見た技法だったが、このポケモンショックが社会問題化したことにより「パカパカ」がテレビ局から自粛を求められる(つまり事実上の禁止)。これによりアニメーターの負担が一気に増え、「ポケモンが余計なことをしなければ」という怨嗟の声も上がった。
一方テレビにかじりついて見ること自体が道徳的に見直されるようになり、特にこち亀の「て、て、テレビを見るときは~!」のアイキャッチは保護者層から非常に高い評価を得ることになった。
この一件以降、HTMLタグやGIF画像という形でパカパカを再現するブラクラが日本各地で作られたが、「単に目が痛くなるだけで不快」で終わった。愛生会病院なんて覚えてる奴いないだろ
言ってしまえば「資質(持病)を持つ人間があまり気分のすぐれないときにブラウン管の画面で3秒間に36回という点滅に晒されて初めて気絶する」ものなので、素人がやろうと思ってできるものではなかったのだ。まぁうっかりできちゃったら無限アラート事件みたいに書類送検されそうだけど
一方で動画制作などでも「冗談でもパカパカっぽいものを使うと本気で怒る人間が出てくる」など、動画制作の幅を狭めてしまうことにもなった。
最初は「ピカチュウの陰謀で消えたポケモン」というマニア向けのネタだったもの。
これ自体は要するにジョークであり、事実とは異なるデマ。
そもそもパカパカを起こしたシーンはポリゴンは映っておらず、ただの乗り物なので、悪くないというか無関係である。
ではなぜ、ポリゴンがどうのと言われるようになってしまったのか?
これには様々な考察があり、表題のタイトルが由来している可能性や、当時は現在の「ポケモンショック」ではなく「ポリゴンショック」などの俗語の方が広まっていた事など、単一の原因とは考えにくい。
世相としては、1998年のニッポン放送で放送されていたラジオ番組、「ポケモンアワー」において、アニメ関係者が「ポリゴンの名誉回復になるような話を作りたい」とのコメントを発したことがあるので、当時からポリゴンへの風当たりが強かったのは間違いない。
既に世間では知らぬものはいないと言えるほど有名なタイトルとなっていたポケモンである。
その不祥事はマスコミにとっては格好のネタであるし、「ポケモン自体が悪」「ゲームやアニメ自体が悪」という風潮の報道が行われていた時代な事もあって、根本的な原因である表現手法についての言及をほとんどしておらず、単純に「ポケットモンスター」を批判的に報道されていた(ガンダムシリーズの富野由悠季も原因である手法に触れないマスコミに苦言を呈していた)。
ゲーム自体が悪という風潮が強まれば、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったポケモンというブランドがこのまま終わりかねない。
そこで取られた手段が「自粛」、つまりほとぼりが冷めるまで待つことだったであろう事は想像に容易い。世相的にも選択肢はなかっただろう。
しかし、この処置は第三者に様々な憶測を飛び交わせる結果にも繋がった。
憶測は憶測を呼び、関係者以外知る由もないことにもかかわらず、「ポリゴンに罪をかぶせてトカゲのしっぽのように切り落とした」といったものが事実であるかのように喧伝されるようになる。
実際のところ、ポリゴンにすべての責任を擦り付けたことでポケモンというビッグブランドの存続に成功した……という説すら裏付ける証拠はない。
2023年シリーズ終了までポリゴンが登場していない事なども、こうした憶測を加速させた。
……と、この流れを見たならば、賢明な諸兄は後の展開がすぐに読めただろう。
そう、 過激なバッシングの後に待っていたのは、反動による過激な擁護、その反動のバッシング、その反動……の繰り返しである。
ネットの評判は反動を伴った化学反応を起こし、ポリゴンへの擁護と共に他のポケモンも巻き込んでバッシング、という過激な応酬によるヘイトスピーチのような流れに変わっていった。
「ピカチュウがポリゴンを身代わり出頭させて生き残った」といったネタや、「 ミミッキュの中身は身代わり出頭で死んだポリゴン」などのかなり複雑化した派生ネタも登場し、これらがジョークと知らずに根も葉もないデマへと変貌していく。
やがて「ピカチュウが悪いということにしたい」というネタの横行により、ついには「ピカチュウが擁護されていることに対する反骨」のように、 場外乱闘の様相を呈する事となる。
ここまでくると、ポリゴンが悪い悪くない以前に、もはやポリゴンと関係がない。
ニコニコ百科など外部の記事で見られるものはこれらの名残と言えるだろう。
ギネス記録にもなっている他、サウスパークやシンプソンズでもさんざんネタにされた。
サウパに至っては日本では当該回が放送禁止になっちゃったし。
また、ポリゴン一族はアニメで出すことができないという事情から「アニメとは違うブランドである」ということを示す場合にも非常に便利なキャラクターともとれる。
たとえば本家の対戦環境やポケモンカードではポリゴン2が一時期猛威を振るっていた他、スマブラDXでもモンスターボールから飛び出してくる。
他にもミュウツー(映画)の「誰が産んでくれと頼んだ……!」系のネタでは、フィオネやカセキメラ組とともにやり玉に挙げられる。これも割と定番のネタである。
ポケモンカードのユンゲラー、スマブラSPの不知火舞、MTGのオーコ、 いつの間にか仲間に加入している5人目、 ジーザァス!ジジジジジジジジーザァス!など、 出禁を食らったこと自体が個性・話題になるキャラというのもいるわけだし。
今はアニメだけがすべてではなく、様々な媒体で一次・二次消費がなされる。この世間で本当の意味で不遇なのは「 途方もなく影が薄いやつ」なのだ。
って考え方もできるんだから、あんまりカリカリしない方がいいと思うよ。
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