登録日:2012/01/01 Sun 02:15:53
更新日:2025/05/31 Sat 08:54:20
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1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒
関東大震災 発生
関東は
未曾有の震災に見舞われた。
推定での被災者は190万人。10万5千人余が死亡あるいは行方不明になったとされる。
当時は現在よりもインフラが整っていたわけではなく、何より首都で起こったことによる混乱も大きかったことから、物資が行きわたらず二次災害が起きるような悲惨な状況だっただろうことは想像に難しくない。
社会や日本史、道徳の授業で聞くことや、災害関係のニュース特集で現在も取り上げられることは多いので、誰もがどこかしらでこの震災のことを聞いたことはあるだろう。
そして、戦前を代表する女流歌人、「与謝野晶子」が被災の後に発表した詩…それが本項目である「大震後第一春の歌」である。
長詩「君死にたまふこと勿れ」は非常に有名で、このタイトルというか言葉を聞いたことある人はいるかもしれない。
当時、東京の麹町区富士見町に居を構えていた彼女にとってもこの災害は例外なく降りかかった。(麹町区富士見町とは現在でいう千代田区富士見のことで、現在は与謝野夫妻の居住跡の碑が建てられている。)
この時晶子は
源氏物語研究として現代語訳本の製作作業を行っており、約10年かけてきたこの作業もようやく終わりの目途が立ち、完成へと迫っていた。
だが、震災により起こった火災によって
数千枚の原稿全てが焼失、研究を断念せざるを得ない状況となってしまった。
この時の無念を謳った短歌も残している。
震災は人の命だけでなく、当時生きていた人々が残そうとしていた多くの芸術品も失わせていたのである。
そのような災害を経験して2年後の1925年に評論集「砂に書く」を出版し、その中に収録されたのが本項目の詩である。
以下、全文
「大震後第一春の歌」
与謝野晶子
おお大地震と猛火、その急激な襲来にも我々は堪えた。
一難また一難、何でも来よ、
それを踏み越えて行く用意がしかと何時でもある。
大自然のあきめくら、見くびってくれるな、
人間には備わっている刹那に永遠を見通す目、
それから、上下左右へ即座に方向転移の出来る飛躍自在の魂。
おおこの魂である、
鋼の質を持った種子、火の中からでも芽をふくものは。
おおこの魂である、
天の日、大洋の浪、それと共に若やかに燃え上がり躍り上がるのは、
我々は「無用」を破壊して進む。
見よ、大自然の暴威も時に我々の助手を勤める。
我々は「必要」を創造して進む。
見よ、溌剌たる素朴と未曾有の喜びの精神と様式とが前に現れる。
誰も昨日に囚われるな、
我々の生活のみずみずしい絵を塗りの剥げた額縁に入れるな。
手は断えず一から図を引け、
トタンと荒木の柱との間に、汗と破格の歌とをもって
かんかんと槌の音を響かせよ。
法外な幻想に、愛と、真実と、労働と、科学とを織り交ぜよ。
古臭い優美と泣き虫とを捨てよ。
歴史的哲学と、資本主義と、性別と、階級別とを超えたところに、
我々は皆自己を試そう。
新しく生きる者に日は常に元日、時は常に春。
百のわざわいも何ぞ、千の戦いで勝とう。
おお窓毎に裸の太陽、軒毎に雪の解けるしずく。
震災を挑発し、捩じ伏せようとすら感じられる晶子の苛烈なながらも情熱的な気性と、当時の人の力を信じた強い意志が見て取れる詩であることが伺え、感じ取れる詩である。
地震大国である日本。阪神淡路大震災、
東北地方太平洋沖地震、令和には能登半島地震等…関東大震災以降も巨大な地震は各地で起きている。
それでも決して諦めることなく災厄を乗り越えていこうとする言葉やそこから感じられる覚悟が歌われているこの詩は、今でも多くの人達に勇気を与え、共感を呼んでいるのだ。
余談だが、現代語訳していた源氏物語は震災によって原稿が焼失したのは上記の通りだが、これは初めて翻訳・作成したものというわけではなく、1912年から13年にかけて「新訳源氏物語」として刊行したものが最初である。
2回目に行っていたものが今回焼失してしまったものである。
そして1938年から39年にかけて「新新訳源氏物語」として3回目の源氏物語の現代語訳版を刊行している。
追記・修正お願いします
- 誰この精神的イケメン。精神的イケメンでメンタル強いのね。嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-01-16 19:55:08)
- 長さ約2分、ほぼ元の詩の引用、項目としてアウトじゃないですかね -- 名無しさん (2024-07-02 12:46:30)
- 50年経ってるからパブリックドメインになっているハズ ただ短いのは同意 -- 名無しさん (2024-07-02 12:49:46)
- 加筆修正依頼に出しましょうか -- 名無しさん (2024-07-07 16:14:27)
- このメンタリズムを持った人間に力道山がかち合っていたら果たして勝てたであろうか… -- 名無しさん (2025-05-22 18:22:02)
最終更新:2025年05月31日 08:54