ヴァーズゴスの血王/Bloodlord of Vaasgoth(MtG)

登録日:2011/08/29(月) 00:13:58
更新日:2024/05/29 Wed 10:08:46
所要時間:約 4 分で読めます




ヴァーズゴスの血王とは、TCGの元祖「マジック:ザ・ギャザリング」の最新基本セット、M2012で登場したクリーチャー・カードである。

プレリリース特典として初めて公開された血王のイラストは、長い銀髪をたなびかせた若き吸血鬼の戦士という、超絶イケメンだった。
そのイケメンさたるや、公式でもそのイケメンっぷりで専用デッキを作られた覇者、ジョー・カディーンに匹敵する程である。

Bloodlord of Vaasgoth / ヴァーズゴスの血王 (3)(B)(B)
クリーチャー-吸血鬼 戦士
狂喜3(このターン、いずれかの対戦相手にダメージが与えられている場合、このクリーチャーはその上に+1/+1カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。)
飛行
あなたが吸血鬼クリーチャー呪文を唱えるたび、それは狂喜3を得る。
3/3

特定の部族を強化する、いわゆるロード系クリーチャーにあたる血王は、狂喜によりこれから戦場に出る吸血鬼すべてに+3/+3という巨大な修正を与えてくれる。
さらに自身も狂喜を達成することで、5マナ6/6として戦場に出せるのだ。
イケメンロード、まさに最強の吸血鬼。
基本セット2012(M12)のリミテッド環境にはそこまで吸血鬼はいないのだが、自身の基本スペックが優秀なため強力である。
当時の黒の吸血鬼には、攻撃するだけで対戦相手のライフを削る1マナのクリーチャー「鼓動の追跡者」や、土地を出すだけで墓地から戦場に戻ってくる「恐血鬼」などがおり、さらにフェッチランドが環境にあったので相手が勝手にライフを失っている可能性もある。
このどことなくソリン・マルコフを思わせる尊大なイラストにふさわしい重量感あるロードは、これまでの吸血鬼デッキに足りなかった「吸血鬼ってドラキュラとかカーミラのイメージなのに、なんか全然貴族感がないよね」というフレイバー面のマスターピースになったのだった。
まさにM12の黒を代表する、伝説級の神話レアなのである。













さて、本題に入ろうか。
ちょっとマジックをやり込んだ人ならわかるだろうが、この血王…構築だとすさまじく弱いのだ。
コレを搭載するということは吸血鬼デッキにするということだが、当時(M11以降)の吸血鬼デッキは軽量の吸血鬼を展開して序盤から攻め立てるウィニー型のデッキ。
自軍を強化するロードとしては、5マナと重いくせに後続しか強化しない、それも不確実なケツ王はお呼びでない。《エルフの大ドルイド》とか《ジョラーガの戦呼び》とか、他のロードを少しは見習ってもらえないものか。
吸血鬼にとらわれない黒のファッティとして使うなら、虐殺のワームやら墓所のタイタンやらファイレクシアの抹消者やらがいる。
というか吸血鬼にすら《マラキールの血魔女》という、プロテクション(白)のおかげで当時猛威を振るっていた《悪斬の天使》を食い止められる強力なカードが存在していた。黒系のデッキで悪斬対策に使われた由緒正しいカードである。
そんなカードすら時代の流れで抜けてしまった時にさっそうと登場したケツ王。黒使いは激しい悲嘆にくれたものである。

リミテッドなら確かに強いが、構築だと箸にも棒にも掛からない。そんなケツ王が、あろうことかM12の貴重な神話レア枠を埋めてしまった。
M12で抜擢されたプレインズウォーカー《ソリン・マルコフ》は「イケメンだから」というとんでもない理由(実際にはイニストラードのプレビューみたいな意味もあったんだろうけど)だったし、黒のレア・神話レア枠は惨憺たるラインナップ。《墓所のタイタン》以外は構築級のレアがほとんどなかった。
どう見てもネタカードにしか見えない《ソリンの復讐》*1通称ソリンキャノン)が実用級の部類に入るという悲惨すぎる有様に加え、ファイレクシア・マナのせいで白や青が《四肢切断》という優秀な除去を手に入れてしまったことや、それに対して黒が得られたものがほぼなかったこともあり、黒スレは「一人去る時」という自虐ネタでこの上なく盛り上がっていた。黒スレのネタがキレキレだった全盛期である。
ソリンキャノン強いだろって?当時の黒スレはそういう意見言うと総すかん食らったんです

同じように新規カス神話レアとして、赤に憤怒生まれのヘルカイト(7マナ6/6飛行、狂喜6)というデカいだけが取り柄のドラゴンが同セットにいるが、ファッティなら不安定かつウィニーに噛み合わない狂喜によるロード能力よりも、より巨大なサイズの方が有用なので、まだケツ王よりマシ。

過去には、M10の
Vampire Nocturnus / 吸血鬼の夜侯 (1)(B)(B)(B)
クリーチャー-吸血鬼
あなたのライブラリーの一番上のカードを公開した状態でプレイする。
あなたのライブラリーの一番上のカードが黒である限り、吸血鬼の夜侯とあなたがコントロールする他の吸血鬼は+2/+1の修整を受けるとともに飛行を持つ。
3/3

と、M11の
Captivating Vampire / 蟲惑的な吸血鬼 (1)(B)(B)
クリーチャー-吸血鬼
あなたがコントロールする他の吸血鬼クリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
あなたがコントロールするアンタップ状態の吸血鬼を5体タップする:クリーチャー1体を対象とし、それのコントロールを得る。それはそれの他のタイプに加えて吸血鬼になる。
2/2

という、二種の吸血鬼ロードが存在した。
とくに前者は吸血鬼デッキを環境上位にのし上げた強力クリーチャーであり、吸血鬼デッキが吸血鬼デッキであるための重要クリーチャーであった。
4マナはやや重い上に強化が不確実だが、その爆発力は半端ない。
後者はあまり活躍できはしなかったものの、3マナと軽く、ミラディンの傷跡期の高速化した環境では軽いロードというのはそれなりの利点があった。クリーチャーを奪う効果はほぼインクの染み扱いだったが、3マナのロードというだけでこの情けないハゲより十分偉かったのである。

この「闇夜の侯爵」「オカマバーの店長」に比べられば、「ケツ王」などただのケツに過ぎなかったのだ。

これらの悲惨さから、シェオルドレッドを上回り、スケベ覇者に並ぶ黒スレのアイドルと化している。








なお、銀髪ロン毛の超絶イケメンのケツ王はプレリリース特典の限定版であり、一般パックのケツ王は


ハ ゲ

のオッサンである。


追記・修正はケツ王と憤怒生まれのヘルカイトのfoil版を100枚ずつ集めてからお願いします。

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最終更新:2024年05月29日 10:08

*1 7マナ10点ドレインという逆に潔さすら感じる脳筋ソーサリー