カエンタケ

登録日:2012/04/17 Tue 09:32:01
更新日:2025/03/23 Sun 17:55:19
所要時間:約 5 分で読めます





山々を分け入り

ほう、よくぞここまでたどり着いたものだ

ご苦労だった…と言いたいところだが

キミには消えてもらおう。


我ら菌類と人類、幾千年の闘争は


我らの勝利により終焉を迎える……


どこまでもがき苦しむか、見せてもらおう。





死 ぬ が よ い



















この先には

暴力的で

鬼のような

菌類が

あなたをまっています。


それでも閲覧しますか?


はい  上等  正に恐悦至極














カエンタケはニクザキン科ツノタケ属に属するキノコ。
天然化学兵器と表されるほど極めて強力な毒性を有し、毒性ではまさに最強最悪の毒キノコである。

画像出典:相模原市立博物館の職員ブログ、23年4月26日閲覧、https://bit.ly/3He1L8e


カエンタケという名前通りまるで燃える炎のような赤色と、幾重にも枝分かれした棒のような形が特徴。
色と形から「火炎茸」というわけだが、見ようによっては地獄から助けを求める亡者の手指にも見えるような……。
しかし中の果肉は白く非常に固い。

キノコ≒菌類なので自力で栄養は作れないため、今のところは他の菌糸類の栄養分を奪って生育しているのではないかと考えられている。



最大の特徴は先にも述べた通り、含有するマイコトキシン類による極めて強力な毒性。
その強力さたるや致死量たったの3g
一本どころか一かじりでもすれば充分に死ねます。

誤食率、致死性において世界最強の毒キノコと名高いドクツルタケが15g(ちょうど一本分)であることからもいかに強力かがわかるだろう。

不幸にも口にしてしまえば嘔吐・腹痛・下痢のキノコ毒お馴染みの中毒症状から始まり。

全身の皮膚が爛れ

呼吸困難に陥り

動くことさえままならず

まともに言葉も発せられなくなり

血中の白血球・赤血球が激減し

新たに血液を造ることも叶わないまま

生命維持に必要な多数の臓器の機能が停止する


という数え厄満とも称される多彩な中毒症状が生物のありとあらゆる部位を破壊しつくす。まさにオーバーキル。

僅か2、3日で悶え苦しみながら死に至り、万に一つ助かったとしても、

小脳の萎縮による運動障害

脱皮・脱毛

という追加攻撃に一生苦しめられる事になる。
その強烈な毒性はかつてベトナム戦争で使用された化学兵器に酷似している。


また汁には皮膚刺激性があり、触れるだけでも炎症を起こす。
こちらに関してはそこまで強烈なものというわけでもなく、体質や汁に触れた状況次第ではほとんど症状が出ないことすらある……が、目に入ったりするとさすがに危険だし、発ガン性などの長期的なリスクもありうる*1ため、甘くは見ないほうがいい。
素人は見かけても触ったりせず、駆除の必要があるなら専門家に任せよう。

味は非常に苦く、齧ってしまうと先にも述べた汁の影響から口内が酷い口内炎になる。
また「一口、口に含んだだけで頭部を鈍器でぶん殴られた衝撃に襲われる」という体験談もある。
「苦っ」…これが彼の最期の言葉だった…という感じになりかねない。マジで。

キノコの有毒判断には口に含んで味をみる方法もあるが、カエンタケに関しては絶対に行ってはならない。
というかこれはカエンタケじゃなくても非常に危険な行為なのでダメ、絶対。
他にも仮に食べられるキノコでも生食はダメという種はかなり多いので、キノコ全般において基本的に生食も厳禁。


しかし先に述べた通り、毒々しすぎる見た目や固い肉質といった食欲の失せる要素に加え、そもそもが希少なキノコであることから実際の中毒例は非常に少ない。
近年は確認事例が増加傾向にある*2ようだが、同時に世間での認知度も高まっているので、知らずに食べてしまう人は今後もそう多くは現れないだろう。色々と見た目が特徴的すぎるし……。
一応、実際に誤食事例があった可食菌としてベニナギナタタケが挙げられる。幸い肉質の固さなど異なる特徴も多数あるので判別はそこまで難しくはないが、注意はしておくべきである。
また、いわゆる冬虫夏草との誤認事例もあるようだ。一見似ても似つかないように見えるが、キノコは育ち具合や状態の良し悪しで見た目が大きく変わってしまうこともあるので、ありえない話とも言い切れない。


そのため近年まで毒があるのかすら分からない有様で、「有毒」ではなく「食用に適さない」程度の認識しかなかったりした。
90年代あたりまでのキノコ図鑑には食不適食毒不明という記載があったり、そもそも載ってなかったりなんてことはザラだった。


この強力な毒性については多少の報告はあったものの、マウス検査で24時間以内に症例が出なかったりしたために、疑いがあるのみで確信するまでには至っていなかった。
しかし1999年に、旅館のロビーに置かれていた*3カエンタケを客が盗みだし、酒に浸してキノコ酒として飲んだら30分後ぐらいに5人全員の体調が悪くなり(そのものを食べた者もいる模様)、5人のうち3名が重症で入院。2日後に1名が亡くなり、残り2名も脱毛や脱皮などを伴う症状で長期入院したという中毒事件が発生。
これがきっかけとなり、強力な毒性を持つことが完全に判明した。


一応江戸時代の植物図鑑『本草図譜』『梅園菌譜』に彩色図版とともに「大毒ありといへり」と記録されてるので、
どうやって調べたのかは不明(実体験があったのか、小動物に食べさせたのか、イメージなのか*4)だが、昔にはその危険性が認識されていたようだ。


そういうわけで、毒性に関しては相当に強烈なものがあるカエンタケだが、実際の被害という点ではそこまでのものでもなかったりする。
上の方で「死ぬがよい」とか散々煽ってるように近年はとかく危険性についてセンセーショナルに取り上げられがちだが、「別に自発的に人を襲うわけでもないし、元々あった生態系の中で生きているだけの存在なのに、過度に危険性を強調して駆除を煽るのはいかがなものか」という声も少なからずある。
実際、ひどい水虫にかかった足の画像が「カエンタケに触れたことによる皮膚炎の症状」として拡散されたり、「近くで息をするだけで危険」とか「触れただけで死ぬ」などと明らかに間違った情報が出回ることがあったりと、ネット上でも「最強の毒キノコ」というイメージが一人歩きしすぎている節がある。
子供が知らずに触ったり口に入れたりしてしまう危険もあるので、公園などでは駆除されるのもある程度致し方ない部分もあるのだが、彼らも人類の敵とかではなく素手で触れたり食べたりしなければ何の害もないごく普通のキノコである、ということは念頭に置いておきたい。










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最終更新:2025年03月23日 17:55
添付ファイル

*1 カエンタケの主要な毒成分であるトリコテセン系マイコトキシンについてはまだ明確な知見が得られていないが、それと類似の毒素には発ガン性があることが知られている

*2 枯れ木の近くによく生えるため、ナラ枯れの拡大に伴って数を増やしていると言われる

*3 珍しいキノコを見つけたので飾る用途で置いていたらしい

*4 (食用キノコのカンゾウタケの発見例は江戸時代にさかのぼるのだが、そこではイメージからか「毒アリ」と記載されている