薬屋のひとりごと

登録日:2021/03/06 Sat 23:45:44
更新日:2025/04/13 Sun 12:06:12
所要時間:約 12 分で読めます







これ、毒です。

宮中に名探偵誕生!?



『薬屋のひとりごと』とはヒーロー文庫より刊行されているライトノベル
作者は日向夏。イラストはしのとうこ。2025年1月時点で既刊15巻。

●目次

◇概要

中華風の帝国を舞台に、後宮に勤める薬師の娘「猫猫」が、その知識を基に謎の宦官・壬氏とともに王宮で起こる事件を解決していく後宮ミステリー×ラブコメもの。
事件一つ一つのエピソードそのものは短編に近く、あまり複雑な事件では無いことが多いが、それらが実は裏でつながりを持っており、全体として見ると大きく複雑な事件や陰謀となっている、というような展開が多い。

元は小説家になろうで連載されているオンライン小説で、書籍化は2012年9月に主婦の友社の女性向けレーベル『Ray Books』で後宮編がソフトカバー化されたのが最初となる。
しかし、宮廷編の完結を待たずに同レーベルが休刊したために全1巻となり、ヒーロー文庫へ移籍。よってヒーロー文庫版1巻は、Ray Books版から加筆修正された形になっている。
書籍化にあたって文章や内容がより読みやすいように再構成されている。
作者曰く「webはノーマルエンドで書籍はグッドエンド」。

書籍化された後もオンライン版は削除されておらず、読むことが可能。

コミカライズは『月刊ビッグガンガン』(作画:ねこクラゲ・構成:七緒一綺)と『月刊サンデーGX』(作画:倉田三ノ路)の2誌で連載されている。
同じ内容を連載しているにもかかわらず(物語の構成や描写方法、絵柄は異なるが)、どちらも評価が高く売り上げも良いという珍しいことになっている。
大体、前者がキャラクター同士の絡みやラブコメ要素が強め、後者が殺人ラブコメと出版社が同じだからかミステリー要素強めでサクサク物語が進むと評判。
ちなみに2種類ある理由は原作者にも謎との事。
スクエニ版が既刊14巻(2025年4月)、副題『猫猫の後宮謎解き手帳』のついている小学館版は既刊19巻(2025年4月)。
2023年2月時点で全シリーズ累計部数は2100万部を突破しており、アニメ化前の作品としては驚異的な記録となっている。

2023年10月から日本テレビ系でテレビアニメが2クールで放送。アニメーション制作はTOHO animation STUDIOとOLM。
2025年1月からは第2期が放送開始し、ここから23時枠の全国ネットに昇格した。


◇あらすじ



大陸の中央に位置する、とある大国。その皇帝のおひざ元に一人の娘がいた。
名前は、猫猫(マオマオ)。
花街で薬師をやっていたが現在とある事情にて後宮で下働き中である。
そばかすだらけで、けして美人とはいえぬその娘は、分相応に何事もなく年季があけるのを待っていた。
まかり間違っても帝が自分を“御手付き"にしない自信があったからだ。
そんな中、帝の御子たちが皆短命であることを知る。
今現在いる二人の御子もともに病で次第に弱っている話を聞いた猫猫は、興味本位でその原因を調べ始める。
呪いなどあるわけないと言わんばかりに。
美形の宦官・壬氏(ジンシ)は、猫猫を帝の寵妃の毒見役にする。
人間には興味がないが、毒と薬の執着は異常、そんな花街育ちの薬師が巻き込まれる噂や事件。
きれいな薔薇にはとげがある、女の園は毒だらけ、噂と陰謀事欠かず。
壬氏からどんどん面倒事を押し付けられながらも、仕事をこなしていく猫猫。
稀代の毒好き娘が今日も後宮内を駆け回る。

(第1巻あらすじより)




◇舞台・用語

物語の舞台となっている、大陸中央部に位置する大国。
中華風で時代背景は中世前半くらい。
明確な身分制度自体はないものの、国全体の雰囲気として、身分意識、貴族意識が強い傾向にある。
帝制でトップに皇帝を頂き、皇帝の力が強い一方で、地方では下記の名持ちの一族といった豪族による自治権も認められている。
詳細は個別項目を参照。

●名持ちの一族
姓と名以外に家を示す“一文字”を与えられ、それを名乗る事が許されている一族*1
代表的な一族は、皇族直属の部下として仕える「馬」の一族や、国の北部を治める「子」の一族、奇人変人が多い芸術家・研究者の「羅」の一族など。


  • 後宮
皇帝の後継者を産むために妃たちが住む、街に匹敵する規模の宮殿。
中に入ることが許可されているのは、皇帝及び皇帝に近しい親類とその側近、妃とその侍女及び後宮で勤める女官、そして男としての象徴を切り取った宦官のみである。


  • 花街
猫猫の生まれ育った土地。
現代でいうところの風俗街であり、娼館が多く立ち並ぶ。
街(というか客層)の性質上、美女は「妓女(風俗嬢/ホステス)としての素質あり」と見なされやすく*2、女を売り物とする人攫いや強姦の標的にもなりやすい。
その道に進む気のない猫猫はトラブルを避けるためあえて野暮ったい恰好をしている。





◇登場人物

CVは前がアニメ版、後が原作小説の限定特装版(9・11・12巻)に付属したドラマCDでのキャスト。
特に記載がない場合はアニメ版(ドラマCD共通キャストも含む)。

◆主要人物

  • 猫猫(マオマオ)
声:悠木碧
本作の主人公。
痩せ型の体型にそばかすだらけの顔立ち。
が、実はそばかすはあえて醜くなるための化粧で、それを落とすと割と整った顔立ちをしている。これは、容姿端麗なのが割れると襲われる、誘拐されるなどのリスクが高まるため。
驚いたときなど、時折名前にちなんで猫耳などが描かれる。

花街で薬師の羅門のもとで育ち、自身も薬師として生きてきた。
それゆえに幅広い医療と薬の知識を持つ。
また、それ以外の方面でも知識は豊富であるほか、非常に優れた観察眼も持っている。
性格は基本的に善良で正義感も強い方だが、一方で身分や立場の差が厳しい世界に育ってきたこともあり、ドライで達観したものの見方や言動をすることも多く、降りかかる厄介事は極力避けようとする傾向にある。
人付き合いはあまり得意ではなく、それゆえに友人は少ない。

主人公なのでマイルドに描かれてはいるが、作中での言動はぶっちゃけマッドサイエンティスト。こと毒や薬、その元となる漢方薬等には並々ならぬ執着心を持ち、それに対する好奇心と探究心は周囲から度々ドン引きされている。
自分で調合した薬の効果を試すために自身の左腕を実験台に用いており、そのため左腕は傷だらけで、普段は包帯で隠してある*3
また、その影響で毒が効きにくく酒精(アルコール)にもべらぼうに強い体質になっている。ただし蕎麦アレルギーを持っており、それは克服できていない。
毒の症状フェチの気があり、毒を口にすると恍惚とした表情になる癖を持つ。この癖はかなり敏感かつ正確で、毒見役をする際は主にこの癖で毒の有無を判断している。
反面、傍から見ると毒を口にしたように見えないというある意味毒見役として致命的な欠点にもなっており、周囲の人間が本当に毒が入っているのかを疑った結果、毒見した食べ物を第三者が食べて倒れるという二次被害を起こした事も。
ちなみに、専門分野はあくまで薬学であり、医術は範囲外。
「死体に関わるとそのうち死体欲しさに墓荒らしや殺人に手を出しかねない」という理由で羅門から死体には近寄らないようにと言い含められている(その話を聞いた他の人々も納得している)。
本人的にはそれくらいの分別はあるつもりでショックに思っているものの、とりあえず従っている。

薬草採取で外出したときに人攫いにあい、後宮務めの下級女官として売り飛ばされる形で後宮に入った。
なお、この時点の立場は人攫いから派遣された身であり、彼女が稼いだ金は人攫いがピンハネできる仕様。そのため、少しでも潤わさないためにわざと無能を装っていた*4
一方で後宮での生活自体は「毒見役として堂々と毒を口にできる」「やり手婆の勧誘から逃れられる」という理由で気に入っている。
壬氏に薬師としての能力を知られたことで玉葉妃付きの侍女に抜擢され、その後壬氏に正式に雇われ宮廷に勤め続けることとなる。

  • 壬氏(ジンシ)
声:大塚剛央/櫻井孝宏
後宮を統括する青年の宦官。
大変な美形で男女問わず人を魅了する美貌の持ち主。男性に媚薬を仕込んだ差し入れを送られるほど
現状から更にわずかにでも美しくなろうものならブレーキの甘い人間はぶっ飛ぶと、変装で口紅一つ付けることすら禁断行為扱いを食らうレベル。
一方で本人の性格は割と粘着質で腹黒。
また、気に入らないことがあると拗ねるなど子供っぽい一面もある。
仕事ぶりは極めて優秀であり、後宮以外についても数多くの仕事を手広くこなしているが、その反面苦労を背負い込みやすい傾向にある。

猫猫の優秀さを知ったことで彼女を上級妃である玉葉の侍女に抜擢し、以降も何かと関わるようになる。
猫猫からは悪くは思われてはいないもののぞんざいに扱われることが多い。が、本人はそんな扱いが新鮮らしく、ナメクジを見るような眼で見られると嬉々として語っていたとのこと。
自らの外観に全く惑わされないことから猫猫に興味を抱きはじめ、やがて好意を抱くようになる。
それ以降、猫猫に対して何かと不器用なアプローチを行うものの、猫猫にはなかなか気づいてもらえない。

その正体は皇帝の実弟・華瑞月。
病弱ということにしており、瑞月として人前に出ることは滅多にない。
その特殊な素性から、宦官を装ってはいるものの、実はいわゆる宦官ではない。そのため、切り取ってはおらず、性欲を抑制する薬を常用している。薬について、高順からはそのうち不能になると言われている。
正体を隠して後宮に勤めている理由は、自身の持ち前の美貌を活用し、後宮や宮廷内の不穏分子を炙り出すため。
自身も皇位継承権を持っているが、帝位は望んでおらず、むしろ候補から外れるために、後宮の治安の安定と跡継ぎとなる皇子の健やかな成長を望んでいる。



◆上級妃

後宮内で最も位が高い4人の帝の妃。
基本的に国内有力者の縁者や友好国の王族から嫁いできており、皇帝の後継者となる男児を産んだ妃が皇后になる。

  • 玉葉(ギョクヨウ)
声:種﨑敦美日笠陽子
翡翠宮に住む上級妃。位は貴妃。
上級妃の中で最も皇帝の寵愛を受けており、皇帝との間に娘・鈴麗(リンリー)がいる。
赤い髪と緑の目が特徴。
交易の中心地である西都を取り仕切る楊玉袁(ヨウギョクエン)の娘だが、妾の娘であり、正妻の息子である兄との仲は良くない。
猫猫が密かに送った忠告のおかげで中毒を回避できたことから猫猫に恩義を感じ、壬氏の進言により下女だった猫猫を自らの侍女の1人に抜擢した。

聡明で思慮深い性格で笑顔を絶やさず、他人へ接する際も身分等を気にすることはない。
その性格から侍女達には強く信頼されている。
一方で壬氏の猫猫への気持ちを知っていてかつそれを面白がったりからかったりなど、やや意地悪な一面も。

ちなみに、当初は梨花は衰弱、里樹は対象外、阿多は不妊と、上級妃の悉くが「子供を作る」という役割を果たせなかったため、その負担が集中して寝不足になっていた。
ただ、行為自体は嫌いではないらしく、猫猫から娼館の性テクニックを伝授されたときは、非常に乗り気だった。

  • 梨花(リファ)
声:石川由依
水晶宮に住む上級妃。位は賢妃。彼女自身も皇族に連なる家の出身。
皇帝の間に息子がいたが、物語の開始時点で息子は衰弱しており(白粉に含まれていた鉛が原因)、その後亡くしている。
自身も同様の理由で衰弱していたが、猫猫の看病で回復した。
病床に臥せっていたため、帝の寵愛が離れてしまっていたが、元々一番好みに近いスタイルだったため、それを使うようにアドバイスされた後は無事に寵愛を取り戻せた。
この件でそっち方面の教師という認識を持つようになり、玉葉とともに新たに講義を依頼した。

物語開始時は息子の衰弱が原因で玉葉妃に当たり散らすような一面も見られたが、本来の性格は気高くも寛大で、器の大きな人物である。
一方で、仕える侍女は彼女をブランド品のように認識していて思慮に欠ける*6


  • 里樹(リーシュ)
声:木野日菜
金剛宮に住む上級妃。位は徳妃。
国随一の名家である卯の一族の出身。14歳。

9歳の時に超重度のロリコンだった先帝の妃として嫁がされ、その直後に先帝が亡くなったことで未亡人として尼寺に出家、さらにその後現帝に嫁がされたというとんでもない境遇の持ち主。
そのあまりにもあんまりな境遇から、他人には比較的ドライな傾向にある猫猫も戦慄し、憐れんだ。
皇帝も彼女のことは昔からよく知っており、妃というよりも、娘かあるいは年の離れた妹のように思っている。皇帝が彼女を上級妃に迎え入れたのも、そうしなければ地方豪族の妾として嫁がされるということを知り、哀れに思ったため。
しかし里樹を保護する建前として「妃」という立場を与えているので他の妃にするように夜這いに行くわけにもいかず、その後の扱いには困っている。
本人にしても夜の耐性は皆無で、猫猫の夜テクニック講座の際は茫然としていた。

その特異な経歴から、後宮でも彼女のことをよく思わない者がほとんどで、侍女たちからすらも嫌われ、いじめられている。
しかし、侍女らが結託して自分たちこそが味方で外部は全て敵だと刷り込んでおり、そもそも嫌がらせを受けていること自体知らない。
この内、毒見役だった女性は自分の嫌がらせで下手をすると死にかねなかったことを知り、改心。表立って止めはしないものの、多少のブレーキとなっている。
猫猫は彼女が近くにいるならとりあえず大丈夫と考えるなど、真っ当に彼女のフォローに勤めているようである。


  • 阿多(アードゥオ)
声:甲斐田裕子
柘榴宮に住む上級妃。位は淑妃。
皇帝の乳姉弟で幼馴染。皇帝が東宮時代に迎えた唯一の妃。
文武双方に優れ、度量と胆力も併せ持ち、人望も厚い作中随一の逸材。
その能力から、もし妃としてではなく、もっと他の形で皇帝のそばにいれば 、政はよりうまくいったのではないだろうかと言われている。
現帝の最初の息子を授かったが、難産となったうえに先帝の次男が同日に生まれたことで医官をそちらに取られ、対処が遅れたことで子宮を喪い、二度と子供が産めない身体になった。
さらにその子供も幼くして亡くしてしまう。

その存在は皇帝にとっても特別だったようで、子を成せない以上は本来ならば後宮を去らなければならないにもかかわらず、皇帝の意向により上級妃にとどまり続けた。
しかし、流石にそれにも限界があったようで、作中で上級妃の座を降り、後宮から去った。
その後は離宮に移って皇帝の相談役となる。

ちなみに、里樹妃は先帝の妃だったため2人はかつて姑と嫁の関係で、一時期は共に現帝の妃であった。


  • 楼蘭(ロウラン)
阿多妃に代わって淑妃の座につき、柘榴宮に入った上級妃。
先帝の時代から重用されていた大豪族、子昌の娘。
派手な衣装や奇抜な衣装を好み、妖艶で掴みどころのない性格をしている。
しかもその衣装や化粧の仕方を毎日のように変えており、皇帝も彼女に会う度に別人のごとく雰囲気が変わるので戸惑っているという。
猫猫の講義も聞く気一切なし、と何のためにいるのか不明なレベル。
ちなみに、徹底的に自分が帝から興味を持たれないようにして意中の相手へ武勲をあげて下賜されるようにした下級妃がいるが、それと同じように意図的なものかは不明。


◆後宮

  • 虞淵(グエン)
声:かぬか光明/小形満
後宮の医官。どじょうひげをはやした小太りの宦官。
故郷の村の金策のために宦官になり、人はいいが医官としての能力は低く、猫猫には陰でやぶ医者と呼ばれている*7
当初は自分の仕事場を荒らす存在として警戒されていたが、なんだかんだで猫猫とは仲良くやっており、医局は彼女らの溜まり場となっている。

  • 小蘭(シャオラン)
声:久野美咲
後宮の下級女官。猫猫の数少ない友人の1人。
実家は貧困農家であり、半ば売られるような形で後宮にやってきた。ただし、本人は後宮の仕事が気に入っている様子。
明るく無邪気な性格。
おしゃべりで噂話好きであり、猫猫にはしばしば後宮内の情報を得るための情報源として利用される。
お菓子が大好き。

  • 子翠(シスイ)
声:瀬戸麻沙美
後宮の女官。猫猫の数少ない友人の1人。
猫猫、小蘭、子翠の3人でつるむことが多い。
明るく朗らかな性格だが、虫が大好きな変わり者。
猫猫とは何かと話が合い、しばしば一緒に虫取りをしている。

  • 高順(ガオシュン)
声:小西克幸津田健次郎
壬氏の側近の屈強な男性。
真面目な性格だが意外とお茶目な一面もある。猫猫から堅苦しい呼び方はやめてくれと言われるや、「小猫(シャオマオ)(マオちゃん)」と呼ぶようになった。
壬氏が幼い頃から彼に仕えており、何かと振り回される苦労人。
宦官を装ってはいるものの、彼もまたいわゆる宦官ではない。
実は既婚者であり、子供どころか孫までいる。そのため、壬氏と違って不能になる可能性を一切恐れていない。
末の息子の馬閃は壬氏と同い年の武官。


  • 深緑(シェンリュ)
声:勝生真沙子
医局とは別に存在する診療所を取り仕切る年配の女官。
聡明で、医療の知識はやぶ医者よりも持っているが、仕事には厳しい肝っ玉母さん風の性格。


  • 芙蓉妃
中級妃。
踊りの上手さに定評があったようだが、皇帝の御前でその踊りに失敗したことで寵愛を失い、そのショックで夢遊病に罹ってしまう。
以降、夜な夜な後宮の東門の上で踊る姿が目撃されるようになり、このことで後宮内に「幽霊騒ぎ」の噂が流れるようになる。

  • 毛毛(マオマオ)
医局のネズミ捕り〝盗賊改〟。その正体は何故か後宮内にいた三毛猫。
鈴麗にせがまれたことで皇帝が翡翠宮で飼うことを認め、直々にこの官職を賜った。
おじさんたちを骨抜きにし、壬氏に猫の良さを認識させた。
名前については猫猫は納得していない。

◆宮廷

  • 皇帝
声:遠藤大智
茘帝国の皇帝。
巨乳の女性を好み、猫猫からは好色親父と思われている。
しかしその実、部下の進言にもしっかりと耳を傾け、身分にとらわれずに有能な人間は積極的に重用するなど政治能力に長けており、何事にも寛大で器も大きい、皇帝たるに相応しい明君とも呼べる人物。
猫猫からは「帝という生き物」と表現される。
また、子供を作るという仕事のために後宮を訪れているが、妊娠中の玉葉の所にも訪れ彼女とその子供と談笑するなど、父性も持ち合わせている。
一方で妃一人では受け止めきれないほどの相当な絶倫であり、そのせいか妃達からは寵愛の独占を望む相手としては殆ど見られていない。
先帝の性癖については若干憎しみすら感じられるレベルで毛嫌いしており、幼女(具体的には14歳の里樹)には関心を持たない、というより意図的に距離をおいている描写がある。

  • 先帝
茘帝国の前皇帝で、上述した現皇帝の父親。物語開始時点で既に故人。
先々代だった女帝(先帝にとっての母、現皇帝にとっての祖母)によって傀儡にされていた反動からか、重度のロリコンという難儀な性癖を抱えていた。
10歳に満たない幼女を妃として娶っては行為に及び、実際に産事もある模様。
この行いで現皇帝を含む多くの者から恨みを買っており、作中で起きた事件にはそれが火種となったものもある。
ぶっちゃけ本作における諸悪の根源。地の文で昏君(ルビはばかとの)と書かれるくらいに。

  • 女帝
茘帝国の前皇帝の母親で現皇帝にとっては祖母に当たる人物。物語開始時点で既に故人。
異母兄弟が全員流行病で亡くなってしまい、末子であった彼女の息子に皇帝の座が回ってきてしまい、性格が統治者には向かない息子にかわり国を統治したため「女帝」と称されている。
一人息子を守るために他の皇族を粛正したり、晩年は痴呆が進み正常な判断ができず、それがある名持ちの一族を滅ぼす切っ掛けとなったりと、やらかし度合いは先帝に並ぶ…というかこっちの方がひどいかもしれない。

  • (カン) 羅漢(ラカン)
声:桐本拓哉
帝国の軍師で将軍。軍事部門の最高権力者。
狐目に片眼鏡といった風貌。
相貌失認で他人の顔が識別できず、人間が碁石のようにしか見えない一方で「優れた人間はその能力に応じて、異なる将棋の駒のように見える」という能力を持っている。
その力により人材の抜擢や人員配置の能力については他の追随を許さず、勘も鋭い。
かなり飄々とした性格で掴みどころがなく、食えない性格をしており、「変人軍師」と陰で呼ばれている。
何故か猫猫には嫌われている。


  • 李白(リハク)
声:赤羽根健治/内匠靖明
園遊会で〝参加賞〟を渡したことでひょんなことがきっかけで猫猫と知り合いになった武官。
真面目でお人好しな性格で顔立ちも良い。
まだ若いが、羅漢に能力を見出されて隊を任されている、さながら若手のホープといった人物。

用事で花街に戻る際に『宮廷の外に出るには身の安全の保証人が必要』という条件を知り、猫猫が見返りとして『花街の最高級妓女と"お茶"出来る』紹介状をチラつかせて取引を持ち掛け保証人となった。

猫猫からはそれなりに信頼されており、知恵が必要となった時には猫猫に力を借り、猫猫もまた武官の助けが必要となった際には李白の助けを借りるといった関係を築いている。


◆花街

  • (カン) 羅門(ルォメン)
声:家中宏
花街の医者で、猫猫の養父。
それと同時に師匠でもあり、猫猫からは尊敬されている。
作中トップクラスの頭脳と、たゆまぬ修練にて医術を修めた真の天才。西方の国に留学した経験もある。
洞察力や考察力も極めて高く人格も穏やかだが、猫猫からは「致命的なまでに運がない」、羅漢からは「要領が悪いが優秀」と評されており、不幸体質。

かつては後宮医官の宦官であったが、阿多妃の息子を死なせてしまったことが原因で後宮を追放され、花街に流れ着いた。
それにあたって、膝の骨を抜かれており、うまく歩くことができない。



  • やり手婆
声:斉藤貴美子
花街一の高級楼閣である緑青館を取り仕切る老婆。本名不明。
猫猫にとっては羅門と同じく育ての親。
守銭奴で金にがめつい、したたかな性格。
ややリアリスト気味だが、義理と人情を重んじ、面倒見の良い一面もある。
本来なら叩き出されても仕方がない病床の鳳仙を置き続けている。
本人が意図しないとはいえ、かつて仁義に背く真似をした羅漢については当たりが強い。
将来のアテのない猫猫を妓女にしようと考えていたが、壬氏が支度金を持って猫猫をスカウトしに来たことで、彼女が宮廷で働くことを許可した。
鳳仙を妊娠させておきながら音信不通となった羅漢が姿を見せた時はかつてないほど激昂しており、客をとるどころか廃人同然となり死を待つだけとなった鳳仙を離れに置いていたことから、鳳仙の母親ではないかという考察がある。


  • 梅梅(メイメイ)
声:藩めぐみ
緑青館のトップ妓女「三姫」の一人。
羅漢から囲碁や将棋の手ほどきを受けて育ち、その関係上羅漢も多少は彼女のことを気にかけているが、顔が認識できるほどではない。
歌や遊戯で客を楽しませる事が出来るので、本来なら既に妓女としては引退も視野に入る段階でもトップ3の座に君臨している才女でもある。

三姫は猫猫にとって姉同然であり、「◯◯小姐(ねえ)ちゃん」と呼ばれている。
実は羅漢に男としての好意を抱いていたらしい。

元々は後述の鳳仙の禿だった。


  • 白鈴(パイリン)
声:小清水亜美
緑青館のトップ妓女「三姫」の一人で、3人の中では最年長。
舞を得意とするが、夜に負け戦がないと評される床上手。
本人の性欲も非常に強く、客がいない時は男性従業員どころか禿にまで手を出す色欲魔と化すらしい。
活きが良くて筋肉質な男性がタイプなんだとか。
また、出産の経験はないにもかかわらず母乳が出る特異体質であり、猫猫の乳母となっていた。
このため猫猫にとっては姉であるのと同時に母親同然の女性である。

先の猫猫が連れてきた李白の相手をして見事に骨抜きにし、やり手婆の手腕により生かさず殺さずの搾り取り状態と化した*8
ちなみに李白は白鈴の好みと合致しており、フラグを匂わせている。


  • 女華(ジョカ)
声:七海ひろき
緑青館のトップ妓女「三姫」の一人。3人の中では最年少。
妓女(風俗嬢)とは思えないほどの卓越した頭脳の持ち主。
彼女との会話についていければ科挙に合格できるとすら言われている。
ただし男嫌いで少々難有り。


  • 鳳仙(フォンシェン)
声:桑島法子
猫猫の母親。
元妓女で、現在は緑青館の離れに住んでいる。なろう連載版には登場しない。
緑青館の中でも有数の稼ぎ頭であり、卓越した美貌と羅漢すら負かすレベルの頭脳を兼ね備えた才媛……だったのだが、
ある客との子供を産んだ(=この時の子供が後の猫猫である)ことで妓女としての価値がガタ落ちしてしまい、以降は所構わず客を取り続けた結果、梅毒に感染してしまった。
初期に適切な処置が行われなかったこともあって体のあちこちが腐り落ちており、現在では寝たきりで余命幾ばくもない状態。
猫猫は時折彼女がいる離れを訪れ、気休めにもならないと知りつつも薬を飲ませている。
なお、猫猫が緑青館の三姫から可愛がられているのは、彼女らが鳳仙の妹分だからである。



◇余談

  • 2024年2月からは、厚生労働省の「電子処方箋キャンペーン」のキャラクターとしても起用された。
    キャッチコピーにはそのものズバリ「これ、毒です」が使用され、勝手な薬の飲み合わせが毒になることを啓発している。
    また、省の広報誌『厚生労働』2月号でも紹介され、表紙には猫猫が起用された*9。普段は滅多に売り切れない広報誌だがこの号ばかりは即刻完売になったとか。

  • 2025年3月からは、日本薬剤師会とのコラボでポスターとオリジナルイラストの薬手帳が作成され、全国の薬局窓口で配布された。こっちは薬の効能について「これ、毒です」とは書かれていない。

  • 漫画『名探偵コナン』のコミックス第99巻掲載のおまけコーナー「名探偵図鑑」において猫猫が紹介されている。オススメは「一巻(後宮編)」との事。作中でも「薬局のひとりごと」なんてどこかで聞いたようなタイトルの本をコナンが手にしてたりする。

  • 登場人物の漢字の読みが中国語・日本語・音読みや訓読みがまちまちなのは
    原作者がアニメ化どころか書籍化もないだろうと思い、区別しやすさのみ優先してそこまで統一しようと考えなかったため。


これ、追記・修正です。

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最終更新:2025年04月13日 12:06

*1 とは言え一族全員が一文字を名乗ることを許される訳ではなく、名乗れるのは家を背負えるとして認められた者だけである模様

*2 猫猫も縁者であるやり手婆からしつこく妓女の勧誘を受けている

*3 事情を知らない他の人間は「養父に虐待された痕」と大体勘違いしている。後述の通り猫猫と羅門の関係は極めて良好

*4 その後、玉葉の侍女の機転で、通常の給金はミスの弁済のために0、それとは別に毒見役の特別報酬として給金相当の額が支給される形となった。

*5 仮に皇帝が死んだ場合に次の皇帝になることが確約されている人。正当な後継ぎ

*6 例えば、彼女の子供の命を奪った鉛入りの白粉を、病床に伏せている彼女にこの白粉が一番綺麗だからという理由だけで塗る、など。

*7 というか名前が出てきたのは結構後である

*8 本来は猫猫は安価コースの"お茶"をさせるだけ程度で考えていたが、婆がしれっと高額フルコースを選択させ、差額の分の上客を連れてくるように誘導した。

*9 同誌は通常芸能人を表紙にしており、アニメのキャラクターが表紙を飾るのはこれが初めて。