ジョゼ・モウリーニョ

登録日:2013/11/01 Fri 12:54:43
更新日:2022/06/13 Mon 17:42:34
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チェルシーには最高の選手がいる。そして今、最高の監督を手に入れた。
傲慢だとは言わないで欲しい。本当の事なのだからね。
私は欧州王者だ。私は“スペシャル・ワン"だと思っている。



ジョゼ・モウリーニョ(José Mourinho)とは、ポルトガル出身のサッカー監督。
史上初めてプレミア・セリエA・リーガエスパニョーラのいわゆる欧州三大リーグを全て制した指揮官で、2000年代以降最も成功した監督の一人である。
ニックネームはジョゼ、モウ、スペシャルワン(特別な存在)、ハッピーワンなど。


【前歴】

プロサッカー選手としての経験は持たない。父親が元選手で監督だったため裕福な家庭でサッカーに親しんで育つが、クリスマスの家族の食事中に父親がクラブからの電話でクビを宣告されるという原体験を味わっている。
早々に選手の道を諦めると指導者を志してイングランドに留学、体育教師やユースコーチを経て
スポルディング・リスボンの監督に就任した英国の名将ボビー・ロブソンの通訳に抜擢されチャンスを掴む。
戦術眼を認められたモウリーニョはロブソンに付いてFCバルセロナに移りアシスタントコーチに昇格、ロブソンが去った後もバルサに残りオランダの戦術家ルイ・ファン・ハールに仕えた。


【監督として】

ファン・ハールが解任されると帰国し37歳にしてポルトガル三強の一つベンフィカで監督業のスタートを切る。
ベンフィカでは政治的理由(モウリーニョを買っていたクラブ会長が会長選で負けてしまった)で不本意な結果に終わるが
中堅クラブのウニオン・レイリアを上位に躍進させ、続いて栄転したFCポルトで02-03シーズンにリーグとUEFAカップを、03-04にリーグ・リーグカップ・UEFAチャンピオンズリーグの三冠を獲得。一躍世界のトップレベルに上り詰めた。
翌年引き抜かれたチェルシーではチームを50年振りのプレミア制覇に導きさらに連覇を達成。
09-10にセリエA・インテルで二度目のCL優勝と三冠を達成。
キャリアの頂点として乗り込んだレアル・マドリードでは古巣バルセロナと死闘を繰り広げ11-12にリーガ史上初の勝ち点100到達とリーグ優勝を果たした。
しかしマドリーではクラブの悲願であるCL優勝に届かず契約を打ち切って退任。
13-14シーズンよりチェルシーに戻り、翌シーズンはリーグ戦は独走状態で5シーズンぶり5度目のリーグ優勝に導いた。
ところが15-16シーズンは第16節の時点で4勝3分9敗の16位と極度の大不振に陥り、解任されてしまった。
16-17シーズンからはマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任、EL優勝を達成。
これにより、CLとELの両方を複数チームで制した史上初の監督となった。
19年11月からはトッテナムの監督に就任。20年7月6日のエヴァートン戦での勝利で、プレミアリーグの歴史では5人目となる通算200勝を達成したが、就任2シーズン目となる2021年4月19日に解任された。
カラバオカップの決勝戦を数日後に控える中での解任劇であり、FCポルト以降の監督キャリアで初めて無冠でチームを去ることになった。
翌21-22シーズンからはASローマの監督に就任。同シーズンから設立されたUEFAヨーロッパカンファレンスリーグにて優勝を果たし、チームに14年ぶりのタイトルをもたらした。
決勝進出決定時および優勝決定時には人目を憚らず涙を流し、「私はロマニスタだ」とローマへの愛を口にした。
また、この戴冠を以てUEFAが主催する国際大会であるCL・EL・ECLの全てを制覇した初の監督となった。


【キャラクター】

「私の半生を映画化するとしたら主演はジョージ・クルーニーしかいないだろうね。妻もそう言ってくれている」


俳優ばりのハンサムなルックスをアルマーニで固め、自信と野心に溢れたビッグマウスでマスコミを騒がせ続けるサッカーにおけるメディア時代の寵児。
監督としては全ての試合展開を予想していると言われる綿密なスカウティングと人心掌握の巧みさで知られ、
イブラヒモビッチやエトー、マテラッツィといったいわゆる問題児、扱い辛いとされる選手たちからも絶大な信頼を勝ち取っている。
反面攻撃的な言動や相手への敬意を欠くとも取れる派手なパフォーマンスから嫌う者も多く、選手関係者、一般のファンに至るまで熱狂的な信者かアンチかとにかく好き嫌いの分かれる人物である。

もっとも好き嫌いが分かれるというのは指揮する選手たちからも同様であり、たびたび所属選手との確執が報じられる。
とりわけレアル・マドリード時代は中心選手と折り合いが合わなかった模様。セルヒオ・ラモスとイケル・カシージャスの両名が「モウリーニョを解任しないならクラブを去る」と幹部に直談判するというショッキングな出来事も。
チェルシー再就任後はケヴィン・デ・ブライネやモハメド・サラーらを戦術的にフィットさせられず関係も険悪に。
マンチェスター・ユナイテッドではとりわけポール・ポグバとの確執が封じられた。


ピッチでも挑発行為や審判への抗議による退席処分は日常茶飯事で累計1億円以上もの罰金を支払ってきた。
試合終了間際にカウンターのため素早くスローインを入れようとした相手選手のユニフォームを引っ張って退場になったこともある(これはさすがに『愚かな行為だった』と謝罪)。


【舌戦】

マインドゲーム(ピッチ外の駆け引き)の達人。
言葉の魔術師と呼ばれるモウリーニョは他のチームの監督はもちろん、相手選手や評論家とも舌戦を繰り広げメディアを賑わせてきた。
その一部を紹介する。


(ベンフィカで起用法に不満を漏らしたFWサブリーをあえて希望通りに出場させて)
「彼は16分間で5回もボールを失って相手のカウンターの起点になった。10番は味方の攻撃と守備を繋ぐ重要なポジションだ。こちらの守備と相手の攻撃を繋ぐようなプレーをしてはならない!」


アレックス・ファーガソン(マンチェスター・U監督)「チェルシーのように資金さえあれば勝てるわけではない」
「その通りだ。去年私はポルトを率いて10倍の資金力を誇るマンチェスター・Uに勝ったのだから」


ヨハン・クライフ(元FCバルセロナ監督)「モウリーニョのサッカーは結果だけを重視している」
「クライフは引退してゴルフ三昧で暮らしながら過去の名声によって懸命に働いている者を好き勝手批判している。先達に教えは乞うが彼が私に何を教えられるというのか?CL決勝で結果主義者のカペッロに0-4で負ける方法など知りたくない」


「ベンゲルはチェルシー、チェルシーと他人の事情を詮索するのが好きな『覗き魔』だ」
アーセン・ベンゲル(アーセナル監督)「モウリーニョの発言は常軌を逸している。私は言うべきことを言ってきただけでチェルシーに何の強迫観念も抱いていない」
「私の手元にはミスター・ベンゲルの120ページにわたる対チェルシー発言集がある。将来的にはこれで図書館ができるだろうね」


ベンゲル「(モウリーニョがチェルシーを優勝候補でないと繰り返すのは)失敗を恐れているからだ。勝負に加わらなければ負けないのだから」
「私が失敗を恐れているように見えるとしたら、それは私があまり失敗したことがないからじゃないか?その点ベンゲルはスペシャリストだ。8年間もタイトルを取れていない。それは失敗だ」


ピエトロ・ロ・モナコ(カターニャGM)「『普通に戦えばカターニャには勝てる』などと言う奴は殴られて歯を叩き折られるべきだ」
「チベットのモナコ(僧侶)やバイエルンのモナコ(伊語でミュンヘン)、モナコGPなら知っているがモナコさんとやらは知らないね。私を利用して有名になりたいなら金を払ってもらいたい。私を広告に起用する企業がそうするようにね。したがってモナコさんのためにこれ以上タダで働く気はないよ」


ズデネク・ゼーマン(ローマ監督)「モウリーニョは自分の凡庸さを覆い隠すのが上手い偉大な伝達者」
「私は誰の意見でも尊重する。ゼーマン氏も同様だ。…ところでゼーマンってどこの選手だ?ローマの監督?知らないね。今バカンス中で暇があるから彼がどんなタイトルを勝ち取ったか(※ゼーマンはビッグタイトルの経験がない)グーグルで調べてみるよ」


(マドリーの前監督だったペジェグリーニが率いるマラガと対戦して)
「私はたとえマドリーを追われてもマラガ(格の落ちるクラブの意)を率いることはない。別のビッグクラブに行く。それがペジェグリーニとの違いだ」


(マドリーとバルサの乱闘の際バルサのコーチ ティト・ビラノバの目を指で突いたことが問題になって)
「ピト(おちん○ん)・ビラノバだか誰か知らないが隠すことなど何もない」


シャビ(FCバルセロナ)「モウリーニョはスペインサッカーを壊した」
「その通りだ。私はバルセロナを壊してしまった」


【名言】

「良いサッカーをしていないから負けるのだ。相手より劣ったところがあるから負けるのだ。良いサッカーをしたのに負けたなどと言うのは偽善に過ぎない」


「私が世界一の監督だという意見には賛成できない。それはとんでもない間違いだ。だが、私以上にいい仕事をしている監督はいないとも思っている」


「選手を責めるのはやめてくれ。彼らはワールドクラスの選手たちだ。全ての責任は私にある」


(マイコンについて)
「当時、こんな話が耳に入っていたんだ。年末をブラジルで過ごすため、彼が故意にイエローカードをためているとね。本当かどうか調べてみたよ。すると年内最後のシエナ戦を前に判明したんだ。あと1枚で出場停止だと。確信したよ。“あの話は本当だ”そこで彼に言った。“警告を受けたら休日返上だ。私はバカでない”とね。すると彼はこう返してきた。“もしゴールしたら?”と。それを面白いと思った私は、2点取れと言った。彼はやったよ。でもユニフォームを脱いで、結局警告を受けた。得点後は抱き合って喜んだよ。彼はブラジルで長めの休暇を過ごした。なぜって、警告をもらって出場停止だからね」


『バルセロナのサッカーだけが理想だ』」などと言う賢い人々はグーグルの検索で得た知識でサッカーを知った気になっているんだろう」







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最終更新:2022年06月13日 17:42