伊知割 石(いじわるばあさん)

登録日:2014/02/06 Sun 16:32:00
更新日:2025/04/12 Sat 19:08:05
所要時間:約 3 分で読めます




伊知割 石(いじわる いし)」とは、『サンデー毎日』に連載された漫画『いじわるばあさん』の登場人物にして主人公である。
漫画の作者が『サザエさん』や『エプロンおばさん』と同じ長谷川町子さんなので、
この伊知割 石もおだやかなおばあちゃん…ではなく…


概要

『いじわるばあさん』のタイトル通り、数々の意地悪やいたずらで人々を困らせるのが生きがいのばあさん。
意地悪の対象は家族や知人に留まらず、通行人など見境が無い。
泥棒などの犯罪者に対して正義感を見せる時もあるが、結局自分がいたずらをしたいだけであり、何も悪いことをしていない相手でも嬉々としていじわるをする。

当然、家族や町の人々からは疎ましく思われており、一回暴漢に襲われた際に警察が「恨みを持っている人」を探したら数百人規模と思われる長蛇の列ができた。
誘拐犯に誘拐されたこともあるが、同居する息子夫婦は脅迫状をゴミ箱に捨てるなど全く心配していなかった。
本人も変装して自分の評価を聞き落ち込んだことがあったが、それでも意地悪はやめていない。

たまにはいいこともするが、続かない。2コマ目では人助けして、4コマ目ではいじわるしてる。
というか、「今日一日はいじわるしない」と宣言したら、ストレスで倒れてしまった。
一方で、彼女の行ったいじわるが結果的にいい方向へと進んだり*1、逆に先んじてやり返されたりといったケースもある。
毛糸が欲しいと言われ、細切れにした毛糸で偽の毛糸玉を作って渡すが、それが自分へのプレゼントの赤いちゃんちゃんこ用であったことを知った時は流石に後悔した。

このキャラクターが生まれた経緯は、作者が海外の人気漫画『いじわるじいさん(原題:『Egoist(エゴイスト)』)』に出会ったことに起因する。
これを読んだ長谷川町子が「日本の老人ホームで喧嘩っ早いのはいつもばあさんの方だろう」「じいさんよりばあさんを意地悪にした方がしっくり来る」と着想を得た事でいじわるばあさんが描かれる事となった。
元々は前作『エプロンおばさん」の脇役だったが、作者が『サザエさん』のような平和な作品に描き飽きていた事もあり、彼女を主人公として連載化。結果、『サザエさん』以上の売り上げを記録したとか。

なお、作者の長谷川町子は元々こういうキャラクターを描くのは得意なようで、カツオのいたずらの数々に『いじわるばあさん』のルーツが見られる他、『エプロンおばさん』も彼女とは別にイヤミばかり吐くキャラクターが登場していたりもする。


○人物像

タマネギ頭に眼鏡を掛けた丸顔の、典型的なおばあちゃん。
見た目自体は悪辣な感じはないが、悪だくみを思い付き、実行する際のニヤニヤ顔は印象的。
一応本名が設定されているものの、家族以外に友人がほぼ居ないため、基本的に出て来ない。

夫とはかなり前に死別している。石は家庭を顧みない関白亭主だったと言っていたが、
本当のことを知る関係者からは石の鬼嫁ぶりが語られている。
また夫の口寄せを依頼した霊媒をもぶん殴ったことも。

普段は勤め人の長男とその家族達と生活しているが、家族は石の意地悪に悩まされているため、
医者の次男と漫画家の三男の家庭に回されたり、老人ホームに預けられることもある。
だがすぐに長男の家庭に戻っている。
石の押入れには大量の老人ホームの看板があり、
老人ホームでも意地悪をやらかしては閉鎖させ、道場破り的なことをやってきたようである。

年は、連載時の年代や回想シーンで結婚適齢期に結婚、出産したことから、
大体明治20年代生まれの75歳くらい。
また、若い頃は女学校に通っていたこと、書生が住み込んでいるような家庭で育っていることから、
裕福な生まれだったようだ。

基本は和服姿だが、ボーリング・スケート時等洋服を着るシーンもよくある。

実は一度死んだことがあるが、地獄にて罪人を懲らしめていた鬼を「手ぬるいぞ!」と罵り金棒で殴ったため、
閻魔大王「この婆さんは地獄では預かりかねる」と言われ生き返る。

鬼灯「なぜ私が現世視察から帰るまで留めておかなかった!スカウトしたかったのに!」

また珍しく善行を積んだ時、天国では神様が「これっぽっちで大きな顔されてこっちにこられちゃ堪らん。来たら追い返しなさい」と天使に
命令するという一幕も。

天国にも地獄にも居場所のないいじわるばあさん、彼女はまだまだ、長生きしそうである…。


○実写版

ドラマ版では「波多野タツ」となり青島幸男(元都知事)が演じ、後に原作と同じ名で市原悦子も演じた。70年代には藤村有弘(『ひょっこりひょうたん島』のドン・ガバチョ)も「ツヨ」の名で演じたバージョンもあったという。
やってることにそれほど違いは無いのだが、対象が老人を食い物にする悪徳業者などの悪党に限られている為、今で言うダークヒーローのような存在。
ちなみに青島は最初この役を引き受けた時、参議院議員になるため降板し8代目古今亭志ん馬(その後さらに高松しげおとも)と交代したという。
だが80年代再びばあさん役を演じた時、何と議員をやりながらドラマに出演。しかもワイドショー司会者も並行してやりドラマ開始時に直木賞作家になった。
…後の某県知事や府知事兼市長が、現職の時はあくまで「政治家」としてテレビ出演したのと比べると…。同期の某都知事だって執筆活動を継続するくらいで留めたのに…。
一応「選挙」時のみテレビを自粛すれば後は大丈夫みたいだが。
またドラマに比べると圧倒的に地味だがアニメ版も存在し、実写版演者の一人である高松しげお版と平成時代に放送された野沢那智版があった。
なぜか市原以外皆「男」が婆さん役を演じているがどうなのだろう。


○いじわるばあさんが行った主ないじわる


  • カビの生えたそうめんを着色し、「線香」と称して売る。
  • 土管で寝るホームレスを、入り口にセメントで蓋をして閉じ込める。
  • 溺れている人を助けるために有刺鉄線を投げる。
  • 愛鳥週間なのをいい事に、鳥の剥製技師をいきなり殴る。
  • 葬式に行く長男にワライタケを食わせる。
  • ケンカ中の夫婦を仲裁すると言いつつ、大げんかさせて離婚に導く。
  • 密出国志願の青年をだまして遊覧船に密航(船長公認)させる。
  • 壊れた真珠を節分だからと言って外にばらまく。
  • 火事のビルから飛び降りた人の真下に剣山を投げ込む。
  • こたつの中に扇風機(自分が仕掛けた事を忘れて自分で引っかかる)。
  • 自動車事故を起こした男に水と言って酒を飲ませ、飲酒運転の罪も着せる。
  • 野良犬に火鉢の灰をぶちまける。
  • 無関係な客と同伴のフリをして、電話を借りると言ってトンズラ。無銭飲食。
  • ゲスト出演した磯野家をすさまじくぞんざいに扱う。
  • 新婚カップルが乗る座席の裏に「童貞」・「非処女」と張り紙をする。
  • 忘れ物を届けに父を探す娘に、反対の方角を教える(ただし尋ねた方も心得ていて逆方向を行く)。
  • トイレットペーパーをランプのかさと取り換える。

もっと色々な悪事を働いているが、キリが無いので割愛する。

またいじわる以外でも
  • 未成年の孫と共に18禁のエロ映画を見に行く(本人曰く足して2で割ればいい)。
  • 何でもない普通のミニスカ姿を視られてなぜか人に逃げられる(本人としてはとっても失礼)。
  • 物忘れ(ボケ)対策に体操をするも、ノーパンなのを忘れて逆立ちしてしまう。
  • 自宅の庭で行水するはずが、原作者に背景を書き換えられ、通行人に行水する様子を見られる。
等とんでもないシーンもいくつかある。

作中では他作者のキャラと顔を合わせる場面があり、海外旅行編では外国の『いじわるじいさん』に意地悪され、ご近所では「いいお相手がいる」と、連載当時『毎日新聞』で連載されていた『フクちゃん(作:横山隆一)』の「おじいさん(フクちゃんの伯父兼養父)」を紹介されたりした。
また青島版では最後の登場となったSPドラマで、『踊る大捜査線』(主人公の名字がテレビ版当時都知事だった青島から来ている)の湾岸署「スリーアミーゴス」とも対面し、ラストでは彼らにも意地悪していた。



ちなみにその姿は後に、『毎日新聞』に連載された西原理恵子の漫画『毎日かあさん』の主人公デザインの元になった。



追記修正しないと意地悪するよ!

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  • 濃すぎるキャラクター性
  • ※主人公です
  • お前のような主人公がいるか
  • 本名だと誰かわからない人
最終更新:2025年04月12日 19:08

*1 子供が縄跳びをすることを見越してあちこちに切れ込みを入れた縄を子供たちに渡すものの、それを浮浪者の男性が横取りし、その縄で首つり自殺を図ろうとするが、縄が切れて未遂に終わる。